エクスプローラーに並ぶ「OneDrive – 〇〇」の“〇〇”が旧ユーザー名や長すぎる企業名のままだと、視認性やパスの長さに直結して困ります。本記事では安全な手順でローカル表示名だけを変える方法、組織全体に短いテナント名を反映させる運用、そして名前を気にせず運用する代替策まで、実務で使えるレベルの具体策を一気に解説します。
前提:何が「変えられる/変えられない」か
OneDrive 同期クライアントは、エクスプローラーのナビゲーションウィンドウ(左ペイン)に「OneDrive – 〇〇」という表示名を出します。これは次の2つに分けて考えると分かりやすいです。
- ローカルPC上の表示名(シェル表示/レジストリの値):ユーザーごとに変更可能。レジストリの書き換えでそのPCの見え方だけ変えられます。
- テナント(組織)名に由来する同期フォルダー名:Microsoft 365 の組織名(テナント表示名)から作られます。管理センターで組織名を変更すれば、新規セットアップや再リンク時に新しい表示名へ移行します。
注意したいのは、SharePoint/OneDrive のURL(例:tenant.sharepoint.com)は変わらないこと。パス長対策は別途行う必要があります。
想定シナリオ
- 個人PCで今すぐ表示名だけ変えたい(旧ユーザー名「Caleb」を別名へ)
- 社内全ユーザーの表示名を短く統一したい(長すぎる会社名を短縮)
- 名前は触らず運用でカバーしたい(ショートカット/ドライブ割り当て)
ローカルPCで「OneDrive – 〇〇」の表示名だけを変える(レジストリ編集)
この方法は、そのPCに限って表示名を差し替えるテクニックです。管理者権限がある個人PCで手っ取り早く整えるのに有効です。
作業前の安全対策
- 重要ファイルのバックアップ:別ドライブや外付けストレージにコピーします。
- OneDrive を終了:タスクバーの雲アイコン → [その他] → [OneDrive を終了]。
- (推奨)復元ポイントの作成:
Windows 検索で「復元ポイントの作成」→ システムの保護 → [作成]。
注意:レジストリの編集は自己責任です。誤操作は環境を不安定にします。必ずバックアップしてから進めてください。
編集する主なレジストリの場所
検索のコツ:レジストリエディタ(Win + R → regedit)の「編集 → 検索」で、いま表示されている古い名前(例:OneDrive – Caleb)や会社名の一部を検索し、該当する値だけを置換していきます。
| キーの場所 | 主な値 | 役割/備考 |
|---|---|---|
HKEY_CURRENT_USER\Software\Microsoft\OneDrive\Accounts\Business1\UserFolder | (文字列・パス) | 同期フォルダーの実パス。 表示名に旧名が含まれている場合は置換。 |
HKEY_CURRENT_USER\Software\Microsoft\OneDrive\Accounts\Business1\ScopeIdToMountPointPathCache\{GUID} | (文字列・パス) | マウントポイントキャッシュ。旧名を新名に置換。 |
HKEY_CURRENT_USER\Software\Microsoft\OneDrive\Accounts\Business1\Tenants\{GUID}\{パス} | (複数の値) | テナント単位の設定。旧名が含まれていれば置換。 |
HKEY_CURRENT_USER\Software\SyncEngines\Providers\OneDrive\{GUID}\MountPoint | (文字列・パス) | マウントポイントの実体。ここも置換対象。 |
HKEY_LOCAL_MACHINE\SOFTWARE\Microsoft\Security Center\Provider\CBP\{GUID}\NAMESPACE | (文字列) | シェル名前空間表示に関与。権限で編集不可の場合あり。 |
環境によっては Business2 / Business3、あるいは個人用アカウント Personal の配下にも設定が存在します。同様に検索して該当箇所のみを置換してください。
具体的な手順
- レジストリエディタで、上表のキーと「古い表示名」を含む箇所を検索します。
- 値の中の「古い名前部分」(例:
OneDrive – Caleb)を、希望の新しい名前(例:OneDrive – DevTeamなど)に置換します。 - 編集後、レジストリエディタを閉じ、PC を再起動します。
- OneDrive を起動して、エクスプローラー上の表示名が更新されているか確認します。
トラブルシューティング
・ポルトガル語の報告にあるように、HKEY_LOCAL_MACHINE\...NAMESPACEキーは権限保護で書き換えエラーになる場合があります。管理者権限で regedit を実行するか、該当キーの「詳細設定」で所有者を Administrators へ変更し、必要最小限の編集を行ってください。
・レジストリの整合性が崩れると OneDrive が再同期を促すことがあります。バックアップがあれば再セットアップで復旧可能です。
PowerShell で安全に「該当値だけ」置換する例
GUIより確実に差し替えたい場合、該当パスの値をスキャンして部分一致置換する簡易スクリプトが便利です(管理者で実行)。
# 変更前後の文字列を指定
$old = "OneDrive – Caleb"
$new = "OneDrive – DevTeam"
# チェック対象のキー
$keys = @(
"HKCU:\Software\Microsoft\OneDrive\Accounts\Business1",
"HKCU:\Software\SyncEngines\Providers\OneDrive",
"HKLM:\SOFTWARE\Microsoft\Security Center\Provider\CBP"
)
foreach ($k in $keys) {
if (Test-Path $k) {
Get-ChildItem -Path $k -Recurse -ErrorAction SilentlyContinue | ForEach-Object {
try {
Get-ItemProperty -Path $*.PsPath -ErrorAction Stop | ForEach-Object {
$*.PsObject.Properties | Where-Object { $*.MemberType -eq "NoteProperty" -and $*.Value -is [string] -and $*.Value -like "*$old*" } | ForEach-Object {
$path = $*.PSObject.BaseObject.PSPath
$name = $*.Name
$val = $*.Value -replace [regex]::Escape($old), $new
Set-ItemProperty -Path $path -Name $name -Value $val
}
}
} catch {}
}
}
}
Write-Output "置換完了。再起動後に反映を確認してください。"
※実行前に必ずシステム復元ポイントとレジストリのバックアップ(reg export)を取得してください。
組織全体で短いテナント名を反映させる(推奨運用)
レジストリを触らず、全ユーザーの表示名を段階的に統一するなら、Microsoft 365 管理センターで組織名(テナント表示名)を短縮するのが最善です。
流れの全体像
- 管理センターで「組織情報 → 名前」から会社名(テナント表示名)を短い名称へ変更。
- バックグラウンドで各サービスに反映(数時間~数日)。
- ユーザー側では、OneDrive クライアントを一度[アカウントのリンク解除]→ 再サインインすれば新名称で再構成されます。
重要:この方法はURL(
tenant.sharepoint.comやtenant-my.sharepoint.com)を変えません。
パス長が気になる場合は、ライブラリの階層を浅くする・ファイル名を短縮する・長いフォルダー名を見直す等の並行対策が必要です。
IT管理者向け:変更計画のチェックリスト
| 項目 | 影響 | 対応 |
|---|---|---|
| Teams/Office の表示 | 順次新名称に置き換わる | 告知とFAQを準備 |
| OneDrive 同期表示名 | 再リンクで新名称に | 手順書を配布(5分作業) |
| SharePoint/OneDrive URL | 変わらない | URLは据え置きで案内 |
| ショートカット/スクリプト | 表示名依存なら要更新 | 変数化して影響最小化 |
名前にこだわらない現実的な代替策
どうしても社内ポリシー上レジストリを触れない、変更反映を待てない――そんなときは見え方を工夫して「名前を気にしない」運用が有効です。
クイック アクセスへピン留め(推奨)
- 目的の OneDrive ルートフォルダーを右クリック → [クイック アクセスにピン留め]。
- ピン留め項目の名前は右クリック → [名前の変更] で任意の短い名称にできます(実フォルダー名には影響なし)。
ドライブ文字を割り当て(subst コマンド)
深いパスを仮想ドライブとして割り当てると、アプリ側のパス入力も楽になります。
subst O: "C:\Users\<User>\OneDrive – VeryVeryLongCompanyName"
※再起動で解除されるため、恒久化はログオンスクリプトやタスクスケジューラで設定します。
シンボリックリンク(mklink)で短縮パスを用意
mklink /D "C:\O" "C:\Users\<User>\OneDrive – VeryVeryLongCompanyName"
リンク先は短いが、実体は同じ。アプリやスクリプトからの参照先を短く保てます。
パス長対策・既知の落とし穴
- 長いパスが原因のエラー:Windows 10/11 では長いパスを許可できます。
レジストリHKLM\SYSTEM\CurrentControlSet\Control\FileSystem\LongPathsEnabled(DWORD 1)を有効化、またはグループポリシーで「Win32 長いパスを有効にする」を有効化してください。 - Known Folder Move(KFM)との関係:デスクトップやドキュメントを OneDrive にリダイレクトしている場合、実フォルダー名の変更は厳禁。必ず表示名のみの置換にとどめてください。
- マルチアカウント環境:
Business1/Business2といった複数スロットに同様の設定が存在。検索で見逃しゼロを徹底します。 - アクセス権エラー:HKLM 配下の
NAMESPACEは所有者が TrustedInstaller 等になっており、編集できないことがあります。必要時のみ所有権変更→編集→所有権を元に戻すのが安全です。
実例:旧「OneDrive – Caleb」を「OneDrive – DevTeam」に置換
イメージしやすいように、よくある置換の流れをまとめます。
- OneDrive を終了・バックアップ。
- regedit で
OneDrive – Calebを検索。パスや表示名に含まれる箇所のみ、OneDrive – DevTeamへ置換。 - 上表のキー(UserFolder、MountPoint、Tenants配下、ScopeIdToMountPointPathCache)を重点チェック。
- 再起動 → OneDrive 起動 → Explorer の左ペインで「OneDrive – DevTeam」と表示されることを確認。
管理者が全社適用するときの運用テンプレート
レジストリ編集を禁止するポリシーの企業が大半です。そこで、組織名の短縮 → 各PCで再リンクという王道運用に落とし込み、現場負担を最小化しましょう。
- 変更告知(背景・影響・所要時間・FAQ)。
- ユーザー手順書:OneDrive の [設定] → [アカウント] → [このPCのリンク解除] → 再サインイン。
- ヘルプデスクの一次対応スクリプト(キャッシュクリア、再リンク、KFM 確認)。
- 一部端末で表示が旧名のままの場合は、クリーンセットアップ(OneDrive アンインストール → 再インストール)も選択肢。
よくある質問(FAQ)
Q. レジストリを編集したら OneDrive が「設定が見つかりません」と表示して同期が止まりました。
A. 誤ったキーや値を変更した可能性があります。バックアップから戻すか、いったん OneDrive をアンインストール→再インストールし、サインインして再構成してください。
Q. 表示名を短くしても、実体のフォルダー名(ディスク上のパス)はそのままですか?
A. 本記事の手法は表示名の置換が中心で、実体のフォルダー名は変えません。アプリ互換性を保つ目的でも、実体名の変更は推奨しません。
Q. 共有ライブラリ(SharePoint)の表示名も変えたい。
A. 共有ライブラリの表示名はサイトやライブラリの命名に依存します。OneDrive クライアント側だけでは統一できません。情報設計(サイト名/ライブラリ名の整理)を合わせて検討してください。
Q. 個人用 OneDrive(Personal)でも同じですか?
A. 基本は同様ですが、Accounts\Personal 配下に設定がある点が異なります。検索置換で漏れなく対応するのが安全です。
Q. OneDrive のバージョンアップで元に戻ることはありますか?
A. 将来の仕様変更でレジストリ構造が変わる可能性はあります。長期運用では組織名を短縮→再リンクの運用に寄せるのが安心です。
復旧プラン:うまくいかない時の最終手段
- OneDrive をアンインストール。
- 再起動。
- 最新の OneDrive クライアントをインストール。
- サインインして再構成。必要に応じてフォルダー場所を再指定。
この際、ローカルの古い同期フォルダーは一時退避(リネーム)し、競合や重複を避けてください。クラウド側のファイルは保持されているため、再同期で復旧可能です。
チェックリスト(現場用早見表)
| 目的 | 最短手段 | 運用上の推奨 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 個人PCで今すぐ表示名だけ変更 | レジストリ置換(本記事A) | バックアップ&復元ポイント必須 | NAMESPACEキーは権限要確認 |
| 全社で短い名称に統一 | 管理センターで組織名を短縮 | 再リンク手順を展開 | URLは変わらない |
| 名前は触らず運用で回避 | クイックアクセス/subst/mklink | スクリプトで共通化 | ポリシー準拠を確認 |
実務ナレッジ:現場で役立つ細かなコツ
- 検索は「会社名の一部」+「OneDrive – 」で:フルマッチで見つからないケースを潰せます。
- GUID配下は数が多い:片っ端から書き換えるのではなく、値に旧名が含まれているものだけを対象にしてください。
- 変更履歴を残す:変更したキー・値名・旧値・新値・日時をメモ。ロールバックが容易になります。
- スクリプトは段階実行:まず
-WhatIf相当(出力のみ)でヒット箇所を洗い出し、置換は最後に。 - ユーザー教育:エクスプローラーのクイックアクセスとショートカットの活用を周知すると、見た目の名称問題は多くが解消します。
まとめ:用途別の最適解
- 個人利用:レジストリ編集でローカル表示名だけを即変更。バックアップと復元ポイントを忘れずに。
- 組織運用:管理センターでテナント名を短縮 → 端末は再リンク。長期的に安定し、統制が効きます。
- 代替策:クイックアクセス/subst/mklinkで「名前が長い問題」を現実的に回避。
「OneDrive – 〇〇」の“〇〇”をめぐる悩みは、見え方(表示名)と実体(URL/パス)を切り分ければ、安全かつ短時間で解決できます。まずはバックアップ、次に本記事の手順どおりに進め、最後に再起動と表示確認――この順序を守れば、日々の業務が驚くほどスムーズになります。
付録:今回触れたキー一覧(再掲)
HKEY_CURRENT_USER\Software\Microsoft\OneDrive\Accounts\Business1\UserFolderHKEY_CURRENT_USER\Software\Microsoft\OneDrive\Accounts\Business1\ScopeIdToMountPointPathCache\{GUID}HKEY_CURRENT_USER\Software\Microsoft\OneDrive\Accounts\Business1\Tenants\{GUID}\{パス}HKEY_CURRENT_USER\Software\SyncEngines\Providers\OneDrive\{GUID}\MountPointHKEY_LOCAL_MACHINE\SOFTWARE\Microsoft\Security Center\Provider\CBP\{GUID}\NAMESPACE
※環境により Business2/Business3 や Personal 配下にも類似キーが存在します。必ず検索で該当箇所のみ編集してください。
短縮指針(ネーミングのコツ)
- 会社名は一般に社内で通じる略称へ(例:「VeryVeryLong Company, Inc.」→「VVLC」)。
- 部署名は最短の識別子へ(例:「Product Development」→「PD」)。
- 個人名は苗字のみ・社員番号などに整理(個人情報の露出を抑止)。
最後に
「名前」は使い勝手とセキュリティ、両方に効くインターフェースです。表示名の最小化と分かりやすさのバランスを取りつつ、レジストリ編集はピンポイント・最小限、組織運用は公式手順で全体統制、無理なときは運用テクニックで回避――この三本立てで、今日から生産性を取り戻しましょう。

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