Windows 10/11 の「Phone Link(旧称 Your Phone)」は、標準アプリの扱いになっていて UI からアンインストールできず戸惑いがちです。本記事では、管理者権限がある場合の完全削除、権限がない社用 PC での無効化/リンク解除、よく出るエラーの対処、再発防止や再インストールまで、現場でそのまま使える手順とコマンドをまとめて解説します。
「Phone Link(旧称 Your Phone)」を削除/無効化したい
質問の要点
- Windows 10/11 で Phone Link を消したいが、「設定」や「アプリと機能」のアンインストールがグレーアウトで選べない。
- PowerShell/DISM で完全削除するには? あるいは リンクの解除だけを行うには?
- 管理者権限が無い社用 PCではどう対処する? 情シス側で押さえるべき設定は?
結論だけ先に:解決策サマリー
| 状況 | 手順・ポイント |
|---|---|
| 完全にアンインストールしたい(推奨) | 1) PowerShell を管理者として起動 2) どちらかを貼り付けて実行(停止→削除の安全版) # 念のため起動中プロセスを停止 Stop-Process -Name YourPhone -Force -ErrorAction SilentlyContinue # 現在ログオン中ユーザーだけ削除 Get-AppxPackage -Name "Microsoft.YourPhone" | Remove-AppxPackage # すべての既存ユーザーから削除 Get-AppxPackage -Name "Microsoft.YourPhone" -AllUsers | Remove-AppxPackage 3) 新規ユーザーへの自動配布も止める(プロビジョニング削除)Get-AppxProvisionedPackage -Online `| Where-Object DisplayName -eq "Microsoft.YourPhone"` | Remove-AppxProvisionedPackage -Online |
| 「アクセスが拒否された」などのエラー | ・本当に「管理者として実行」で開いているか確認。 ・ -AllUsers を外し、まず自分のユーザーだけに実行。・企業ポリシー(WDAC/AppLocker/MDM)でブロックされている場合は情シスに依頼。 |
| 管理者権限を使えない場合の代替 | ・設定 > プライバシーとセキュリティ > Phone Link を無効化をオフ。 ・Phone Link の歯車(設定) > My Devices からスマホを Remove してリンク解除。 ・アプリの詳細設定で「終了」「修復」「リセット」を順に実行(サインアウト情報を消去)。 |
| タスクバーやスタートに残骸が残る | ・残ったタイル/ピン留めは右クリック > ピン留めを外す。 ・キャッシュやレジストリの残りは数 MB 規模。実害はほぼ無いので気にしなくてよい。 |
| 再インストールしたい | ・Microsoft Storeで「Phone Link」を検索し「入手」。 ・プロビジョニングまで消した場合は、Store から入れるだけで再利用可能。 |
| Windows 10 で Appx モジュール読み込みエラー | ・Windows PowerShell 5.xを使用(PowerShell 7 では Appx モジュールが未搭載の場合あり)。 ・それでもダメなら管理者で cmd を開き、次を実行:DISM /Online /Remove-ProvisionedAppxPackage /PackageName:Microsoft.YourPhone_* ※実際はワイルドカード不可の環境もあるため、下の「DISM の確実な手順」を参照。 |
| 一時管理者で 0x80073D19 が出る | ・そのユーザーに Phone Link が入っていないときの表示。 ・ -AllUsers を外して自分の SID にだけ実行すると通ることがある。 |
なぜ UI から消せないのか
2022 年末以降、Phone Link は「Windows コンポーネント」扱いとなり、設定やアプリ一覧の[アンインストール]がグレーアウトする構成に変わりました。これは OS のクイックスタート体験やスマホ連携を標準とする方針に沿ったものです。完全に消すには、Appx パッケージの削除(Remove-AppxPackage)と、プロビジョニングの削除(Remove-AppxProvisionedPackage/DISM)という 2 段構えが最短ルートになります。
PowerShell で「完全削除」する手順(管理者)
事前確認
- 「スタート」ボタンを右クリック → Windows Terminal(管理者) または Windows PowerShell(管理者) を開きます。
- 実行ポリシーの制限に引っかかる場合は、社内ポリシーに従ってください(無理に変更しない)。
ステップ 1:起動中プロセスを止める(任意だが安全)
Stop-Process -Name YourPhone -Force -ErrorAction SilentlyContinue
ステップ 2:現在ユーザーから削除
Get-AppxPackage -Name "Microsoft.YourPhone" | Remove-AppxPackage
「このパッケージは見つかりません」等が出たら、そのユーザーには既に無いだけです。次へ進みます。
ステップ 3:既存の全ユーザーから削除
Get-AppxPackage -Name "Microsoft.YourPhone" -AllUsers | Remove-AppxPackage
端末上の他アカウントにも展開されているコピーをまとめて外します。アクセス拒否が出る場合は、MDM/AppLocker/WDAC 等の制約を疑います。
ステップ 4:新規ユーザーへの自動配布(プロビジョニング)を止める
Get-AppxProvisionedPackage -Online `
| Where-Object DisplayName -eq "Microsoft.YourPhone" `
| Remove-AppxProvisionedPackage -Online
これを実行しておくと、今後作られるユーザーに Phone Link が自動で入らなくなります(再発防止)。
状態確認(任意)
Write-Host "Appx 存在確認(全ユーザー)"
Get-AppxPackage -AllUsers -Name "Microsoft.YourPhone" | Select Name, PackageFullName, Status
Write-Host "プロビジョニング確認"
Get-AppxProvisionedPackage -Online | Where-Object DisplayName -eq "Microsoft.YourPhone"
DISM を使った確実な削除(管理者・Windows 標準)
PowerShell の Appx モジュールが使えない環境や Windows PowerShell 5.x が利用できない状況では、DISM でプロビジョニングを確実に外します。管理者で cmd を開き、次の順に実行します。
ステップ 1:プロビジョニング名を特定
DISM /Online /Get-ProvisionedAppxPackages | findstr /i YourPhone
「PackageName : Microsoft.YourPhone_<バージョン>_neutral_~_8wekyb3d8bbwe」のように表示されるので、完全一致の文字列をコピーします。
ステップ 2:該当のパッケージを削除
DISM /Online /Remove-ProvisionedAppxPackage /PackageName:Microsoft.YourPhone_<バージョン>_neutral_~_8wekyb3d8bbwe
ワイルドカード(*)が使えない環境では、この方法が最も確実です。以降、新規ユーザーに自動配布されなくなります。
管理者権限がない場合の「無効化」ワークフロー
社用 PC で管理者権限が無いときは、無理に迂回せず、リンク解除・権限オフ・データ消去の三段構えで影響をゼロに近づけます。
リンク解除
- Phone Link を起動し、左下の歯車(設定)をクリック。
- My Devices(または「デバイス」)から、連携済みスマホを選択し Remove(削除)。
- 念のため同じ Microsoft アカウント側でもモバイル連携を解除(サインアウト)。
アプリの権限をオフ(OS 側)
- 設定 > プライバシーとセキュリティ > Phone Link を無効化 を開き、トグルをオフ。
- 通知へのアクセスやバックグラウンド実行も、アプリの詳細設定から「バックグラウンド アプリの権限:常に禁止」に変更。
ローカルデータを消去
- 設定 > アプリ > インストールされているアプリ > Phone Link を開く。
- 詳細オプションから「終了」→「修復」→「リセット」の順に実行。
この操作で、アイコンは残るものの、実体としては「リンクも権限も無い」状態になります。社内規程に従って、情シスへの申請や報告も忘れずに。
よく出るエラーと実戦的な対処
0x80073D19:パッケージが見つからない
- そのユーザーに Phone Link が インストールされていないだけです。
-AllUsersで全体を確認するか、自分のユーザーだけ対象に実行します。 - プロビジョニング(新規ユーザー向けの下地)が残っていないかを確認しましょう。
0x80073CFA/アクセスが拒否された
- 管理者で開いていない、あるいは WDAC/AppLocker/MDM 等の企業ポリシーで削除が禁止されています。情シスに依頼するのが正攻法です。
- まずは自分のユーザーだけ削除(
-AllUsersを外す)→ プロビジョニングを DISM で外す、の順に切り分けます。
PowerShell 7 でモジュールが無い/コマンドが見つからない
- Windows 10 の多くの環境では、Windows PowerShell 5.xで Appx モジュールが前提です。スタートメニューの「Windows PowerShell(管理者)」を使ってください。
- PowerShell 5.x でも不可なら、DISM 手順に切り替えましょう。
再発防止のコツ(再配布される問題への対策)
- Remove-AppxProvisionedPackage/DISMでプロビジョニングを外しておく(新規ユーザーへの自動配布を遮断)。
- Microsoft Store の自動更新を管理下に置く。個人 PC では Store の「アプリの更新」をオフ、企業では GPO/MDM で制御。
- 企業環境では、AppLocker/WDAC の Publisher ルールで PFN:Microsoft.YourPhone_8wekyb3d8bbwe を対象に実行を拒否するのが堅実です。
- 「Windows のコンシューマー機能をオフにする」(GPO)を適用して、再配布系の体験を抑制します。
情シス向け:標準化できる一括スクリプト
複数台に同じ作業を行うなら、以下のスクリプトを「管理者として」流すだけで、削除→プロビジョニング除去→検証まで終わります。
# Phone Link 完全削除 & 再配布停止スクリプト(管理者)
$ErrorActionPreference = "Stop"
# 1) プロセス停止
Stop-Process -Name YourPhone -Force -ErrorAction SilentlyContinue
# 2) 現在ユーザー削除
Get-AppxPackage -Name "Microsoft.YourPhone" | Remove-AppxPackage -ErrorAction SilentlyContinue
# 3) 全ユーザー削除
Get-AppxPackage -Name "Microsoft.YourPhone" -AllUsers | ForEach-Object {
try { Remove-AppxPackage -Package $_.PackageFullName -AllUsers -ErrorAction Stop } catch {}
}
# 4) 新規ユーザーへの配布を止める
$prov = Get-AppxProvisionedPackage -Online | Where-Object DisplayName -eq "Microsoft.YourPhone"
if ($prov) {
$prov | Remove-AppxProvisionedPackage -Online | Out-Null
}
# 5) 検証出力
"== Appx(全ユーザー) =="
Get-AppxPackage -AllUsers -Name "Microsoft.YourPhone" | Select Name,PackageFullName,Status
"== プロビジョニング =="
Get-AppxProvisionedPackage -Online | Where-Object DisplayName -eq "Microsoft.YourPhone"
ユーザー向け:削除ではなく「使わせない」チェックリスト
- Phone Link のリンク解除(My Devices → Remove)。
- OS 側トグルをオフ(プライバシーとセキュリティ → Phone Link を無効化)。
- バックグラウンド実行を禁止(アプリの詳細設定)。
- 通知の許可を外す(設定 → 通知)。
- アプリのリセットでサインイン情報やキャッシュを消去。
副作用とリスクの整理
| 項目 | 影響 | 回避・代替 |
|---|---|---|
| Android 通知の PC 表示 | 不可になる | Google Messages for Web、Teams/Outlook 通知など、既存の業務ツールで代替 |
| 写真/ファイルのドラッグ&ドロップ | 不可になる | Nearby Share(Android)、OneDrive/SharePointでの共有 |
| iPhone 連携 | 不可または限定的 | iCloud for Windows(写真/ファイル/ブックマークの同期) |
| 再インストール | Store から可能 | 必要時のみインストール。業務では情シス承認のうえで実施 |
スタート/タスクバーの「残骸」を消す
- スタートに残るタイルは右クリック → スタートからピン留めを外す。
- タスクバーのショートカットも同様に右クリック → タスクバーからピン留めを外す。
- これらは表示の問題であり、機能が再び有効になるわけではありません。
再インストールの手順
- Microsoft Storeを開く。
- 検索ボックスに「Phone Link」と入力し、該当アプリを開く。
- 入手をクリックしてインストール(サインインが必要な場合あり)。
Appx とプロビジョニングの両方を削除していても、Store からの再インストールで問題なく利用を再開できます。
管理部門向け:ポリシーでの無効化アプローチ
繰り返しの問い合わせを減らすには、端末管理での抑止が効果的です。
- AppLocker/WDAC:Publisher ルールで Package Family Name(PFN)
Microsoft.YourPhone_8wekyb3d8bbweを拒否。 - GPO:Microsoft Store の自動更新制御、Windows のコンシューマー機能をオフを適用。
- MDM/Intune:ストアアプリの配布/更新をカタログで管理し、Phone Link を配布対象外に。
「消す」より「そもそも配らない・動かさない」設計のほうが安全で、ユーザー体験の一貫性も保てます。
トラブルシューティングをもう一歩深掘り
「インストールされていないのにアイコンがある」
Appx 削除後もスタートメニューの表示が残ることがあります。これはキャッシュ起因で、ピン留めを外せば解決します。時間の経過や再サインインで自動的に消えるケースもあります。
「削除したのに復活する」
- プロビジョニングが残っている(
Get-AppxProvisionedPackageで確認・削除)。 - Store の自動更新で再配布されている(個人:Store の「アプリの更新」をオフ、企業:GPO/MDMで制御)。
「winget で消せる?」
Phone Link は標準コンポーネント扱いのため、winget uninstall が失敗する環境が多いです。確実性を重視するなら、本記事の PowerShell/DISM 手順を使いましょう。
安全に作業するための注意点
- 必ずバックアップを確保(復元ポイント/端末スナップショットなど)。
- 管理者権限が無い職場 PC では、自己判断での削除や規約違反の回避策は行わない(情報セキュリティ規程に従う)。
- ユーザーサポート視点では、無効化とリンク解除でほとんどの要望が満たせます。
代替手段(必要な機能だけ置き換える)
- Android:Nearby Share … 近距離でのファイル共有に特化。ドライバー不要で軽量。
- iPhone:iCloud for Windows … 写真・iCloud Drive・パスワード・ブックマーク等を Windows と同期。
- クラウド共有:OneDrive/SharePoint/Teams でのファイル受け渡しに揃えると運用が安定。
要点の復習(実務メモ)
- UI からは消せない → Appx 削除 + プロビジョニング削除が最短。
- 権限が無ければ リンク解除 + 権限オフ + リセットで実害ゼロへ。
- 復活対策は Remove-AppxProvisionedPackage/DISM と Store 更新の管理。
- 企業では AppLocker/WDAC(PFN:Microsoft.YourPhone_8wekyb3d8bbwe)で抑止が堅実。
付録:コマンド早見表
| 目的 | コマンド | 補足 |
|---|---|---|
| 現在ユーザーから削除 | Get-AppxPackage -Name "Microsoft.YourPhone" | Remove-AppxPackage | 失敗したら PowerShell を管理者で開いているか確認 |
| 全ユーザーから削除 | Get-AppxPackage -Name "Microsoft.YourPhone" -AllUsers | Remove-AppxPackage | ポリシーで拒否される環境あり。企業端末は事前確認 |
| 新規ユーザーへの配布停止 | Get-AppxProvisionedPackage -Online ` | Where-Object DisplayName -eq "Microsoft.YourPhone" ` | Remove-AppxProvisionedPackage -Online | 再発防止の要。最優先で実行 |
| DISM で確実に削除 | DISM /Online /Get-ProvisionedAppxPackages | findstr /i YourPhone DISM /Online /Remove-ProvisionedAppxPackage /PackageName:Microsoft.YourPhone_<バージョン>_neutral_~_8wekyb3d8bbwe | ワイルドカード不可の環境向け。完全一致の名前を使う |
| プロセス停止 | Stop-Process -Name YourPhone -Force -ErrorAction SilentlyContinue | 削除前の安全策。開いていても確実に止める |
最後に
Phone Link は便利な一方で、業務要件やセキュリティ方針によっては存在自体を無くす・無効化する選択が必要です。個人利用では PowerShell/DISM を正しく用いれば短時間でクリーンに、企業利用ではポリシーでの抑止と再配布防止を徹底すると運用が安定します。本記事の手順をそのまま実行すれば、リンク解除だけの軽い対処から、再発防止まで含めた完全削除まで、一通りカバーできます。

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