Windows 11ユーザーが遭遇する可能性のある一般的な問題の一つに、「新しいBITSジョブを作成できませんでした」というエラーメッセージがあります。このエラーは、特に大量のファイル転送や更新を必要とする環境で発生しやすいです。エラーの背景、原因、そして効果的な解決策について深掘りし、Windows 11の安定性とパフォーマンスを保つための方法を探ります。
エラーの原因
「新しいBITSジョブを作成できませんでした」というエラーメッセージは、イベントビューアにイベントID 16398として記録されることが多いです。この問題は、Background Intelligent Transfer Service(BITS)が、グループポリシーによって指定されたジョブの数の上限を超えた時に発生します。BITSは、ネットワークの使用状況に基づいてファイルの転送を管理するWindowsのコンポーネントであり、主にソフトウェアの更新プロセスに利用されます。ジョブの数が設定された上限を超えると、新しいジョブの作成がブロックされ、このエラーメッセージが表示されるのです。この上限は通常、システムの安定性やパフォーマンスを守るために設定されていますが、過剰な制限は作業の妨げとなり得ます。
BITSサービスの停止とファイル削除
この問題を解決するための一つのアプローチは、BITSサービスを一時停止し、BITSによって使用されている一時ファイルを削除することです。以下に、手順を詳細に説明します。
手順1: コマンドプロンプトを管理者権限で開く
- スタートメニューを右クリックし、[Windows システム ツール] > [コマンドプロンプト(管理者)]を選択します。
- 「ユーザー アカウント制御」ダイアログが表示されたら、「はい」を選択して続行します。
手順2: BITSサービスを停止する
- 管理者権限で開いたコマンドプロンプトで、以下のコマンドを入力して実行します。
net stop bits
- このコマンドはBITSサービスを停止します。サービスが正常に停止したことを示すメッセージが表示されるまで待ちます。
手順3: BITSに関連するファイルの削除
- BITSサービスがファイルを一時的に保存するディレクトリに移動し、関連するファイルを削除します。通常、これらのファイルは
C:\ProgramData\Microsoft\Network\Downloader
にありますが、システムによって異なる場合があります。 - ファイルを削除するには、以下のコマンドを使用します。
del /s /q C:\ProgramData\Microsoft\Network\Downloader\*.*
/s
はサブディレクトリにあるファイルも含めて削除することを意味し、/q
は削除の確認を求めないことを意味します。
手順4: Windowsを再起動する
- 全ての手順を完了した後、コンピュータを再起動します。これにより、BITSサービスが自動的に再開され、システムが正常に機能するようになります。
このプロセスを実行することで、BITS関連のエラーが解決し、新しいジョブの作成に関連する問題が解消される可能性があります。ただし、システムによっては異なる手順や追加のステップが必要になる場合があるため、慎重に操作してください。
bitsadminツールによるジョブリセット
BITSジョブが上限に達している場合、bitsadminツールを使用して現在のジョブをリスト表示し、詰まっているまたは不要なジョブをリセットまたは削除することが効果的な解決策となります。この手順は、システム上でBITSがどのように動作しているかを理解し、管理するのに役立ちます。
手順1: コマンドプロンプトを開く
- スタートメニューを検索し、「コマンドプロンプト」を見つけます。右クリックして「管理者として実行」を選択します。
手順2: 現在のBITSジョブをリスト表示
- コマンドプロンプトにて、以下のコマンドを入力して実行します。
bitsadmin /list /allusers
- このコマンドは、システム上の全ユーザーに関連するBITSジョブのリストを表示します。ジョブの状態(例えば、「転送中」、「一時停止中」等)も確認できます。
手順3: 不要なBITSジョブのキャンセルまたはリセット
- ジョブリストから、不要または問題を引き起こしている可能性があるジョブを特定します。
- 特定したジョブをキャンセルまたはリセットするには、以下のコマンドを使用します。
bitsadmin /cancel {ジョブ名}
または
bitsadmin /reset /allusers
/cancel
コマンドは指定したジョブをキャンセルし、/reset
コマンドは全ユーザーのジョブをリセットします。/reset
コマンドは全ジョブを削除するため、使用時には注意が必要です。
手順4: システムの再起動
- 全ての変更を適用し、システムの安定性を保証するために、コンピュータを再起動します。
これらの手順により、BITSサービスの不具合が解消され、新しいジョブの作成がスムーズに行えるようになるはずです。しかし、BITSの使用が頻繁に必要な環境では、グループポリシーの設定を見直し、ジョブの最大数を適切に調整することも重要です。
グループポリシーの確認
問題の根本原因に対処するためには、BITSジョブの作成がグループポリシーによって制限されていないか確認することが重要です。特に組織内のネットワークでは、BITSジョブの最大数がポリシーで制御されている場合があります。以下の手順では、グループポリシーを確認し、必要に応じて設定を調整する方法を説明します。
手順1: グループポリシーエディタを開く
- スタートメニューを検索し、「gpedit.msc」と入力して、グループポリシーエディタを開きます。
手順2: BITSのポリシー設定に移動
- グループポリシーエディタの左側のパネルから、「コンピュータの構成」 > 「管理用テンプレート」 > 「ネットワーク」 > 「Background Intelligent Transfer Service (BITS)」へとナビゲートします。
手順3: ジョブの作成制限に関するポリシーを確認
- 「最大同時転送数の制限」という設定項目を探します。この設定が有効になっている場合、そこで指定されている値がBITSジョブの最大数となります。
- この値が実際の運用において不十分である場合は、「無効」に設定するか、もしくは適切な値に調整します。
手順4: 変更を適用してグループポリシーエディタを閉じる
- 任意の変更を加えた後は、「適用」ボタンをクリックしてから「OK」ボタンをクリックし、グループポリシーエディタを閉じます。
手順5: システムの再起動
- 設定の変更をシステムに適用させるためには、コンピュータを再起動することが必要です。
このプロセスにより、BITSジョブの数が不足している問題に対処することができます。ただし、組織のポリシーによっては、この手順の実施にはIT部門の協力が必要になる場合があります。適切な設定により、Windows 11でのBITSの使用がより効率的かつトラブルフリーになることが期待されます。
まとめ
Windows 11で発生する「新しいBITSジョブを作成できませんでした」というエラーは、イベントID 16398と関連しており、BITSジョブの数がグループポリシーで設定された上限を超えることによって引き起こされます。この問題に対処するには、管理者権限でのコマンドプロンプト操作によるBITSサービスの停止とファイルの削除、bitsadminツールを使用したジョブのリセット、およびグループポリシー設定の確認と調整が有効です。これらの手順を適切に実行することで、システムの安定性を保ちながらエラーを解消し、Windows 11のパフォーマンスを向上させることが可能になります。問題解決のための具体的なアプローチを理解し、適切な対処法を適用することで、より快適なWindows 11環境を維持しましょう。
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