TypeScriptでforEachメソッドを使ったコレクション操作の基本と応用

TypeScriptでコレクション操作を行う際、forEachメソッドは非常に有用なツールです。forEachは、配列やSet、Mapといったコレクションの各要素に対して、指定した処理を順次実行するために使用されます。JavaScriptでも広く使われているこのメソッドは、TypeScriptにおいても型安全な形で活用することができ、コレクション操作の可読性や効率性を向上させます。

本記事では、forEachメソッドの基本的な使い方から、応用的な操作方法まで、初心者にも分かりやすく解説します。コレクションの扱い方を効率化し、実践的な開発に役立つ知識を身につけることができます。

目次

forEachメソッドの基本的な使い方

forEachメソッドは、TypeScriptの配列やセットに含まれる各要素に対して、指定した関数を一度ずつ実行するためのメソッドです。以下は基本的な使い方の例です。

配列に対するforEachの使用例

以下のコードでは、配列の各要素を順番に取得し、それを出力しています。

const numbers = [1, 2, 3, 4, 5];

numbers.forEach((num) => {
    console.log(num);
});

この例では、forEachの引数として与えられたコールバック関数が、配列内の要素1つ1つに対して呼び出されます。この場合、出力は以下のようになります。

1
2
3
4
5

forEachメソッドのシンプルな動作

forEachメソッドは、コレクションの要素に対して一度ずつ関数を実行するため、ループを使う場合に比べてより直感的で、コードの可読性を向上させます。また、forEachは返り値を持たないため、単に各要素に対して処理を行う場合に適しています。

forEachとコールバック関数の仕組み

forEachメソッドの核心には、コールバック関数という概念があります。forEachは、配列やセット内の各要素に対して指定されたコールバック関数を順番に実行します。このコールバック関数には、要素自体やそのインデックス、さらには元のコレクション全体を引数として渡すことができます。

コールバック関数の引数

コールバック関数は通常、次の3つの引数を受け取ることができます。

  1. currentValue: 現在の要素
  2. index: 現在の要素のインデックス(位置)
  3. array: 元の配列

以下はこれらの引数を使った具体例です。

const fruits = ["apple", "banana", "cherry"];

fruits.forEach((fruit, index, array) => {
    console.log(`Fruit: ${fruit}, Index: ${index}, Array: ${array}`);
});

このコードでは、次のような出力が得られます。

Fruit: apple, Index: 0, Array: apple,banana,cherry
Fruit: banana, Index: 1, Array: apple,banana,cherry
Fruit: cherry, Index: 2, Array: apple,banana,cherry

コールバック関数内で、配列の要素、インデックス、元の配列全体にアクセスできるため、さまざまな用途に対応することが可能です。

コールバック関数の応用例

コールバック関数を工夫することで、より複雑な処理を行うことができます。たとえば、配列内の値を加工してログに出力する場合などです。

const prices = [100, 200, 300];

prices.forEach((price, index) => {
    const withTax = price * 1.1; // 10%の税金を追加
    console.log(`Item ${index + 1}: $${withTax.toFixed(2)}`);
});

この場合、各商品の価格に税金を追加した結果が以下のように出力されます。

Item 1: $110.00
Item 2: $220.00
Item 3: $330.00

このように、forEachとコールバック関数を組み合わせることで、要素ごとに複雑な処理を行うことができます。

forEachを使う際の注意点

forEachメソッドは、コレクション内のすべての要素に対して処理を行うために非常に便利ですが、いくつかの制限や注意点があります。これらの制約を理解しておくことで、forEachを適切に活用できます。

1. 早期終了ができない

forEachメソッドの最大の制限の一つは、途中でループを中断することができない点です。forEachでは、breakreturnを使用してループを途中で終了することができません。すべての要素に対して処理が強制的に行われます。

たとえば、forループでは特定の条件で処理を中断することができますが、forEachではそれができません。

const numbers = [1, 2, 3, 4, 5];

// このコードは正常に動作しない
numbers.forEach((num) => {
    if (num === 3) {
        return; // ループは続行される
    }
    console.log(num);
});

この例では、num === 3の条件でループを中断するつもりですが、forEachではそれができないため、すべての要素が処理されます。

代わりに、forループやsomeeveryメソッドを使うことで条件付きでループを中断することが可能です。

2. 非同期処理には不向き

forEachメソッドは同期的に動作するため、非同期処理を行いたい場合には不向きです。たとえば、forEach内でawaitを使うことは期待通りに動作しません。

const asyncFunction = async (num: number) => {
    return new Promise((resolve) => {
        setTimeout(() => {
            console.log(num);
            resolve(num);
        }, 1000);
    });
};

const numbers = [1, 2, 3, 4, 5];

// 非同期処理が期待通り動作しない
numbers.forEach(async (num) => {
    await asyncFunction(num); // すべてが同時に処理される
});

このコードは、forEachがすべての要素に対して同時に非同期処理を実行してしまい、順番に実行されません。非同期処理が必要な場合は、for...ofループを使用することが推奨されます。

3. パフォーマンスの問題

非常に大規模なデータセットに対してforEachを使用すると、パフォーマンスに影響が出ることがあります。特に、forEachは返り値を持たないため、純粋に各要素を処理するだけの場面に適しており、大量のデータを効率よく処理したい場合には、mapreduceなどの他の配列メソッドを検討することが賢明です。

4. スコープの問題

forEach内で宣言した変数のスコープは関数内部に限定されますが、グローバルスコープを意識せずに誤って操作してしまうと予期しない動作が発生する可能性があります。特に、関数外の変数や状態に影響を与える操作は慎重に行う必要があります。


これらの注意点を理解しておくことで、forEachを安全かつ効果的に活用することができます。他のメソッドと適切に使い分けることも、開発において重要です。

forEachとmapの違い

TypeScriptには、forEach以外にも配列操作のためのメソッドがいくつか存在します。特にmapは、forEachと似た使い方ができるため混同されやすいですが、両者には明確な違いがあります。ここでは、forEachmapの違いと、それぞれの用途について詳しく解説します。

1. 処理の目的

forEachmapの最も大きな違いは、処理の目的にあります。

  • forEach: 各要素に対して関数を実行し、特定の副作用を伴う処理(例: コンソールに出力する、データを外部に送信するなど)を行う場合に適しています。返り値はなく、配列自体を変更することもありません。
  • map: 各要素に対して関数を実行し、その結果を基に新しい配列を生成します。元の配列を変更することはなく、必ず同じ長さの新しい配列が返されます。

2. 返り値の違い

forEachは返り値を持たないため、処理の結果は保持されません。単に各要素に対して副作用のある処理を行うために使います。

const numbers = [1, 2, 3, 4, 5];
numbers.forEach(num => {
    console.log(num * 2); // 副作用(コンソールに出力)
});

一方、mapは各要素に処理を施した新しい配列を返します。処理結果を元に別の配列を生成したい場合に使用します。

const numbers = [1, 2, 3, 4, 5];
const doubled = numbers.map(num => num * 2); // 新しい配列を生成
console.log(doubled); // [2, 4, 6, 8, 10]

この例では、元の配列numbersを変更せず、新しい配列doubledが生成されます。

3. 適切な使用シーン

forEachは、配列の各要素に対して副作用を伴う操作を行いたいときに便利です。例えば、コンソールへの出力、DOM操作、外部APIへの送信などが考えられます。

const users = ['Alice', 'Bob', 'Charlie'];
users.forEach(user => {
    console.log(`Hello, ${user}!`); // 副作用(挨拶メッセージの出力)
});

一方、mapは、各要素を加工した新しいデータを取得したいときに使用します。元のデータを変更せずに、新しい配列を作りたい場合に最適です。

const users = ['Alice', 'Bob', 'Charlie'];
const greetings = users.map(user => `Hello, ${user}!`);
console.log(greetings); // ['Hello, Alice!', 'Hello, Bob!', 'Hello, Charlie!']

4. パフォーマンスと効率性

forEachは単に各要素を処理するだけですが、mapは新しい配列を作成するため、メモリ消費や処理時間に多少の差が生じることがあります。特に、大量のデータに対して頻繁に操作を行う場合、処理内容に応じて適切なメソッドを選ぶことが重要です。

  • forEachは、処理結果を保持する必要がない場合に向いており、シンプルな反復処理を効率的に行います。
  • mapは、新しいデータセットを生成する必要がある場合に優れていますが、無駄なコピーを避けるために適切に使用する必要があります。

5. 実際の例での違い

以下は、forEachmapの使い方の違いを実際のシナリオで示した例です。

const numbers = [1, 2, 3, 4, 5];

// forEachを使って副作用を伴う処理
numbers.forEach(num => {
    if (num % 2 === 0) {
        console.log(`${num} is even`); // 副作用(出力)
    }
});

// mapを使って新しい配列を生成
const doubled = numbers.map(num => num * 2);
console.log(doubled); // 新しい配列 [2, 4, 6, 8, 10]

forEachでは偶数の数字をコンソールに出力する副作用のある処理を行い、mapでは元の配列をもとに新しい配列を生成しています。


このように、forEachmapはそれぞれ異なる目的を持っており、状況に応じて使い分けることが重要です。処理の結果を返したい場合はmap、単に処理を行いたい場合はforEachを使うのが基本的な使い方です。

オブジェクトのforEach処理方法

TypeScriptでは、forEachメソッドは主に配列やセット、マップなどのイテラブルなコレクションに対して使用されますが、オブジェクトに対しても似たような反復処理を行うことができます。オブジェクトは厳密には配列ではありませんが、そのプロパティを列挙するための方法としてObject.keysObject.entriesを使用し、forEachを組み合わせることが可能です。

オブジェクトに対するforEachの使用方法

オブジェクトにはforEachメソッドが直接的には存在しませんが、オブジェクトのプロパティに対してforEachを使って処理を行う方法はいくつかあります。たとえば、オブジェクトのキーや値を取り出し、それに対して処理を実行するためにObject.keys()Object.entries()を利用することができます。

Object.keys()を使った反復処理

Object.keys()を使えば、オブジェクトのキーを配列として取得でき、forEachを適用することができます。

const user = {
    name: "Alice",
    age: 25,
    job: "Developer"
};

Object.keys(user).forEach((key) => {
    console.log(`${key}: ${user[key as keyof typeof user]}`);
});

このコードは次のように出力します。

name: Alice
age: 25
job: Developer

Object.keys()はオブジェクトのすべてのキーを取得するので、それに対してforEachを使って処理を行うことができます。

Object.entries()を使った反復処理

Object.entries()を使うと、オブジェクトのキーと値をペアで取得し、それをforEachで処理することが可能です。

const user = {
    name: "Alice",
    age: 25,
    job: "Developer"
};

Object.entries(user).forEach(([key, value]) => {
    console.log(`${key}: ${value}`);
});

このコードは次のように出力されます。

name: Alice
age: 25
job: Developer

Object.entries()はオブジェクトのキーと値をペアで返すため、処理の中で両方の情報を同時に扱うことができ、forEachによる効率的な操作が可能になります。

プロパティを動的に操作する応用例

オブジェクトのプロパティを動的に変更したり、集計を行ったりする場合にも、forEachを応用することができます。例えば、ユーザーのデータを収集し、プロパティに基づいて集計処理を行う場合です。

const scores = {
    math: 90,
    english: 85,
    science: 88
};

let totalScore = 0;

Object.values(scores).forEach((score) => {
    totalScore += score;
});

console.log(`Total Score: ${totalScore}`);

この例では、各教科のスコアを合計し、最終的な総得点を計算しています。出力は以下の通りです。

Total Score: 263

オブジェクトに対する処理の利点

  • キーや値に対する処理の柔軟性: Object.keys()Object.entries()を利用することで、オブジェクトの構造に関係なく簡単に操作できる。
  • 複雑なデータ構造への対応: ネストされたオブジェクトでも、これらのメソッドを組み合わせることで柔軟に処理できる。

forEachは配列やセットだけでなく、オブジェクトにも応用できる強力なツールです。Object.keys()Object.entries()を使うことで、TypeScriptのオブジェクトを効率的に操作し、複雑な処理を行うことが可能です。

forEachでの配列内操作の応用

TypeScriptでforEachメソッドを使用すると、単純な要素の反復処理だけでなく、配列内のデータをフィルタリングしたり、変換処理を行ったりすることも可能です。ここでは、forEachを使って配列内の要素を効率的に操作する応用例を紹介します。

配列の要素を条件でフィルタリング

forEachを用いて、配列内の要素を条件に基づいてフィルタリングし、特定の条件を満たす要素のみを新しい配列に保存することができます。次の例では、数値の配列から偶数のみを抽出しています。

const numbers = [1, 2, 3, 4, 5, 6];
const evenNumbers: number[] = [];

numbers.forEach((num) => {
    if (num % 2 === 0) {
        evenNumbers.push(num);
    }
});

console.log(evenNumbers); // [2, 4, 6]

この例では、forEach内で偶数かどうかをチェックし、偶数の場合にのみ新しい配列evenNumbersに追加しています。

配列の要素を変換して新しい配列を作成

forEachmapのように新しい配列を返さないため、要素を変換して新しい配列を作成するには、手動で新しい配列に変換後の値を追加する必要があります。次の例では、配列のすべての要素に対して2倍の値に変換し、新しい配列に保存します。

const numbers = [1, 2, 3, 4, 5];
const doubledNumbers: number[] = [];

numbers.forEach((num) => {
    doubledNumbers.push(num * 2);
});

console.log(doubledNumbers); // [2, 4, 6, 8, 10]

この例では、元の配列numbersを変更せず、新しい配列doubledNumbersに2倍にした数値を格納しています。

複数の配列をforEachで同時に操作

複数の配列を並行して処理する場合にも、forEachを応用することができます。次の例では、2つの配列から要素を取得して、それぞれの値を足し合わせた結果を新しい配列に保存します。

const arr1 = [1, 2, 3];
const arr2 = [4, 5, 6];
const sumArray: number[] = [];

arr1.forEach((num, index) => {
    sumArray.push(num + arr2[index]);
});

console.log(sumArray); // [5, 7, 9]

この例では、arr1arr2の要素を同時に参照し、それらを足し合わせた結果をsumArrayに保存しています。

ネストされた配列の操作

ネストされた配列(多次元配列)に対しても、forEachを用いて処理を行うことができます。次の例では、2次元配列の各要素にアクセスして、その内容をコンソールに出力しています。

const matrix = [
    [1, 2, 3],
    [4, 5, 6],
    [7, 8, 9]
];

matrix.forEach((row) => {
    row.forEach((num) => {
        console.log(num);
    });
});

この例では、まず外側の配列(行)に対してforEachを適用し、次にその各行(列)の要素に対してもforEachを適用しています。出力結果は次のようになります。

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累積操作(集計処理)の実装

forEachを使用して、配列内の要素を累積して集計処理を行うことも可能です。次の例では、数値の配列を合計しています。

const numbers = [10, 20, 30, 40, 50];
let total = 0;

numbers.forEach((num) => {
    total += num;
});

console.log(`Total: ${total}`); // Total: 150

この例では、forEachを使ってtotalに各要素を累積し、最終的な合計値を出力しています。


forEachメソッドは、単なるループ処理だけでなく、条件に基づいたフィルタリングや、要素の変換、複数の配列に対する並行処理、ネストされた配列の操作、さらには累積処理まで幅広い応用が可能です。これらのテクニックを使いこなすことで、TypeScriptでのコレクション操作をより効率的に行うことができます。

SetやMapに対するforEachの活用例

TypeScriptでは、SetMapといったコレクションデータ型もforEachメソッドをサポートしています。これにより、配列だけでなく、これらのデータ構造に対しても要素を効率的に反復処理することができます。ここでは、SetMapに対するforEachの具体的な活用例を紹介します。

Setに対するforEachの活用

Setは、一意の要素を持つコレクションで、重複する値を保持しません。forEachを使うことで、各要素に対して処理を行うことが可能です。

以下は、Setに対してforEachを適用する基本的な例です。

const uniqueNumbers = new Set([1, 2, 3, 4, 5]);

uniqueNumbers.forEach((num) => {
    console.log(num);
});

この例では、Set内の各要素に対してforEachが実行され、出力結果は次の通りです。

1
2
3
4
5

Setは要素の順序に基づいて処理を行うため、各要素が一度ずつ順番に処理されます。

Set内の重複を防ぐ利点

Setを利用する大きな利点は、重複する要素を自動的に排除する点です。そのため、データを一意に保ちつつ処理を行いたい場合、Setは非常に便利です。

const numbers = new Set([1, 2, 2, 3, 4]);

numbers.forEach((num) => {
    console.log(num); // 重複した2は一度しか表示されない
});

この例では、Setが重複する値を排除し、forEachは一意の要素のみを処理します。

Mapに対するforEachの活用

Mapは、キーと値のペアで要素を格納するコレクションです。forEachメソッドを使えば、Map内の各キーと値のペアに対して処理を行うことができます。

以下は、Mapに対してforEachを適用する例です。

const userRoles = new Map([
    ['Alice', 'Admin'],
    ['Bob', 'User'],
    ['Charlie', 'Guest']
]);

userRoles.forEach((role, user) => {
    console.log(`${user}: ${role}`);
});

この例では、Map内のキーであるユーザー名と、値である役割が順に処理され、次のように出力されます。

Alice: Admin
Bob: User
Charlie: Guest

Mapのキーと値に対する処理

MapforEachメソッドでは、コールバック関数にキーと値が順に渡されるため、これらのデータを使った複雑な処理も簡単に実装できます。例えば、ユーザーの役割に応じて異なる処理を行う場合などです。

userRoles.forEach((role, user) => {
    if (role === 'Admin') {
        console.log(`${user} has full access.`);
    } else {
        console.log(`${user} has limited access.`);
    }
});

この例では、Admin権限を持つユーザーにはフルアクセスを、それ以外のユーザーには限定されたアクセス権を付与するメッセージを出力しています。

SetやMapの大規模データに対するforEachの応用

SetMapは、膨大な量のデータを保持する場合でも役立ちます。特にMapではキーと値を関連付けて格納できるため、データベースのような使い方が可能です。次の例は、ユーザーごとのスコアを管理するMapのデータを集計する例です。

const userScores = new Map([
    ['Alice', 50],
    ['Bob', 70],
    ['Charlie', 90]
]);

let totalScore = 0;

userScores.forEach((score) => {
    totalScore += score;
});

console.log(`Total score of all users: ${totalScore}`);

この例では、すべてのユーザーのスコアを合計し、その合計値を表示します。


SetMapに対するforEachの活用により、配列以上に複雑なデータ構造でも効率的に処理を行うことができます。これらのデータ構造を使いこなすことで、TypeScriptでのデータ管理や操作がより柔軟になり、実践的な開発に役立つ多くのシナリオに対応できるようになります。

forEachでエラーハンドリングを行う方法

forEachを使用する際、エラーハンドリングを適切に行うことが重要です。forEach内で例外が発生した場合、通常のtry...catch構文を用いることでエラーをキャッチし、プログラムの予期しない停止を防ぐことができます。ここでは、forEach内でのエラーハンドリングの方法について解説します。

基本的なtry…catchを使ったエラーハンドリング

forEach内で何らかのエラーが発生する可能性がある場合、その処理をtry...catchブロックで囲むことができます。これにより、特定の要素に対する処理中にエラーが発生しても、他の要素の処理を継続することが可能です。

const data = [10, 20, 0, 40, 50];

data.forEach((num) => {
    try {
        if (num === 0) {
            throw new Error('Zero is not allowed');
        }
        console.log(100 / num);
    } catch (error) {
        console.log(`Error: ${error.message}`);
    }
});

この例では、数値が0のときにエラーを発生させ、それ以外の数値は通常通り処理しています。出力結果は次のようになります。

10
5
Error: Zero is not allowed
2.5
2

forEachが進む中で、0に対する処理がエラーハンドリングされ、プログラムはその後も続行されます。

forEach内でのカスタムエラーハンドリング

特定の処理に対して個別にエラーハンドリングを行いたい場合、エラーの種類に応じた処理を分岐させることもできます。次の例では、データ型が正しくない場合に特定のエラーメッセージを出力します。

const items = [10, 'invalid', 30];

items.forEach((item) => {
    try {
        if (typeof item !== 'number') {
            throw new TypeError('Item is not a number');
        }
        console.log(item * 2);
    } catch (error) {
        if (error instanceof TypeError) {
            console.log(`Type Error: ${error.message}`);
        } else {
            console.log(`General Error: ${error.message}`);
        }
    }
});

このコードでは、'invalid'という文字列に対してTypeErrorをスローし、適切なエラーメッセージを出力します。出力は次のようになります。

20
Type Error: Item is not a number
60

ここでは、異なるエラーの種類に応じた処理を実行することで、エラーハンドリングをより細かく制御しています。

エラーハンドリングの実践的な活用例

たとえば、APIレスポンスから取得したデータを処理する際、データの形式や値に予期しないものが含まれている場合があります。こうした場合、forEachで各データ項目を処理しつつ、エラーハンドリングを適用することが有効です。

const apiResponse = [
    { name: 'Alice', age: 25 },
    { name: 'Bob', age: null },  // 不正なデータ
    { name: 'Charlie', age: 30 }
];

apiResponse.forEach((user) => {
    try {
        if (!user.age) {
            throw new Error(`Age is missing for user: ${user.name}`);
        }
        console.log(`${user.name} is ${user.age} years old.`);
    } catch (error) {
        console.log(`Error: ${error.message}`);
    }
});

この例では、ageが欠落しているデータがある場合にエラーメッセージを出力し、他のユーザーのデータは正常に処理されます。出力結果は次のようになります。

Alice is 25 years old.
Error: Age is missing for user: Bob
Charlie is 30 years old.

非同期処理におけるエラーハンドリングの注意点

forEachは同期的に処理を行うため、async/awaitを使用した非同期処理には適していません。非同期処理でエラーハンドリングを行いたい場合、forEachではなく、for...ofループなどを使用するほうが適切です。forEach内でawaitを使用しても期待通りに動作しないため、以下のような非同期処理の場面では、エラーハンドリングを含めた処理全体を再考する必要があります。

const fetchData = async (id: number) => {
    if (id === 0) {
        throw new Error('Invalid ID');
    }
    return { id, data: 'Sample Data' };
};

const ids = [1, 2, 0, 4];

(async () => {
    for (const id of ids) {
        try {
            const result = await fetchData(id);
            console.log(result);
        } catch (error) {
            console.log(`Error: ${error.message}`);
        }
    }
})();

この非同期の例では、for...ofループを使用して、各idに対してデータを取得し、エラーハンドリングを行っています。


forEachでのエラーハンドリングは、同期的な処理において非常に有用です。適切なエラーハンドリングを行うことで、プログラムの予期しないクラッシュを防ぎ、ユーザーにとって堅牢なアプリケーションを構築することが可能です。また、非同期処理の場合は、forEachに代わるループ処理を使うことが推奨されます。

forEachを使った非同期処理の例

forEachは同期的なメソッドであり、通常は各要素に対して逐次的に処理を行いますが、非同期処理が絡む場合、forEachだけでは期待通りに動作しないことがあります。forEachではawaitを使用しても、各非同期処理が完了する前に次の要素が処理されてしまいます。ここでは、forEachを非同期処理と組み合わせて使用する際の課題と解決策について説明します。

forEachと非同期処理の問題点

forEachは内部的に同期的に処理を行うため、非同期関数を扱う際にawaitを使用しても、すべての非同期処理が並列的に実行され、順次的な動作にはなりません。以下はその例です。

const processData = async (num: number) => {
    return new Promise((resolve) => {
        setTimeout(() => {
            console.log(`Processing: ${num}`);
            resolve(num);
        }, 1000);
    });
};

const numbers = [1, 2, 3, 4, 5];

numbers.forEach(async (num) => {
    await processData(num);
});

console.log('All data processed');

このコードは期待通りには動作しません。各processData呼び出しは並列で実行され、console.log('All data processed')がすぐに実行されてしまいます。出力は次のようになります。

All data processed
Processing: 1
Processing: 2
Processing: 3
Processing: 4
Processing: 5

非同期処理を順次的に行いたい場合は、forEachの代わりにfor...ofループを使用するのが一般的です。

for…ofで非同期処理を正しく行う方法

forEachではなく、for...ofループを使うことで、非同期処理を順番に実行することができます。次の例では、各非同期処理が完了するまで次の処理が待機されるため、順次的にデータが処理されます。

const processData = async (num: number) => {
    return new Promise((resolve) => {
        setTimeout(() => {
            console.log(`Processing: ${num}`);
            resolve(num);
        }, 1000);
    });
};

const numbers = [1, 2, 3, 4, 5];

const processAllData = async () => {
    for (const num of numbers) {
        await processData(num);
    }
    console.log('All data processed');
};

processAllData();

このコードでは、for...ofループがawaitで非同期処理が完了するのを待ってから次の処理を実行するため、出力は次のように順序通りになります。

Processing: 1
Processing: 2
Processing: 3
Processing: 4
Processing: 5
All data processed

Promise.allを使って並列処理を行う

場合によっては、非同期処理を順次実行するのではなく、並列に実行した方が効率的な場合があります。このような場合、Promise.allを使って複数の非同期処理を同時に実行し、そのすべてが完了するのを待つことができます。

const processData = async (num: number) => {
    return new Promise((resolve) => {
        setTimeout(() => {
            console.log(`Processing: ${num}`);
            resolve(num);
        }, 1000);
    });
};

const numbers = [1, 2, 3, 4, 5];

const processAllData = async () => {
    const promises = numbers.map((num) => processData(num));
    await Promise.all(promises);
    console.log('All data processed in parallel');
};

processAllData();

この例では、Promise.allを使うことで、すべての非同期処理を同時に開始し、すべての処理が完了するのを待ちます。出力は次のようになります。

Processing: 1
Processing: 2
Processing: 3
Processing: 4
Processing: 5
All data processed in parallel

非同期処理が同時に実行されるため、順次処理よりも短い時間で全体の処理が完了します。

エラーハンドリングと非同期処理

非同期処理を行う際には、エラーハンドリングも重要です。try...catchを使って、非同期処理中に発生したエラーをキャッチすることができます。次の例では、try...catchを使って非同期処理中のエラーを適切に処理しています。

const processData = async (num: number) => {
    return new Promise((resolve, reject) => {
        if (num === 3) {
            reject(new Error('Error processing 3'));
        } else {
            setTimeout(() => {
                console.log(`Processing: ${num}`);
                resolve(num);
            }, 1000);
        }
    });
};

const numbers = [1, 2, 3, 4, 5];

const processAllData = async () => {
    for (const num of numbers) {
        try {
            await processData(num);
        } catch (error) {
            console.log(`Error: ${error.message}`);
        }
    }
    console.log('Processing complete');
};

processAllData();

この例では、num3の場合にエラーがスローされ、それがcatchブロックでキャッチされます。出力は次のようになります。

Processing: 1
Processing: 2
Error: Error processing 3
Processing: 4
Processing: 5
Processing complete

非同期処理を伴うforEachは、通常のforEachとは異なる動作を理解する必要があります。順次処理が必要な場合はfor...ofを使用し、並列処理が求められる場合はPromise.allを使うことで、非同期処理を効率的に行うことができます。また、エラーハンドリングを適切に行うことで、堅牢な非同期処理が可能になります。

応用: 複雑なデータ構造の操作

forEachはシンプルな配列やセットに対してだけでなく、複雑なデータ構造にも柔軟に対応できます。特に、ネストされた配列やオブジェクト、さらにその中でのデータ操作が必要な場合にもforEachを効果的に活用することが可能です。ここでは、複雑なデータ構造に対するforEachの応用例を紹介します。

多次元配列の処理

複数次元の配列、つまり配列の中にさらに配列が含まれるようなデータ構造は、一般的に「多次元配列」と呼ばれます。例えば、2次元配列の各要素に対して処理を行いたい場合は、forEachをネストして使うことができます。

const matrix = [
    [1, 2, 3],
    [4, 5, 6],
    [7, 8, 9]
];

matrix.forEach((row) => {
    row.forEach((num) => {
        console.log(num);
    });
});

この例では、まず各行(row)に対してforEachを実行し、さらにその中で各要素(num)にもforEachを適用しています。出力は次のようになります。

1
2
3
4
5
6
7
8
9

多次元配列の操作には、このようにforEachをネストすることで、各レベルの要素にアクセスし、柔軟に操作することができます。

ネストされたオブジェクトの処理

次に、ネストされたオブジェクトのデータ構造に対する操作です。オブジェクトの中にさらにオブジェクトが含まれている場合、その階層を掘り下げていく処理が必要になります。この場合も、forEachObject.keys()Object.entries()を組み合わせて効率的に処理を行うことができます。

const users = {
    group1: { name: 'Alice', age: 25 },
    group2: { name: 'Bob', age: 30 },
    group3: { name: 'Charlie', age: 35 }
};

Object.entries(users).forEach(([group, user]) => {
    console.log(`${group}: ${user.name}, ${user.age}`);
});

このコードは、各グループに所属するユーザーの名前と年齢を出力します。出力結果は次のようになります。

group1: Alice, 25
group2: Bob, 30
group3: Charlie, 35

この方法では、オブジェクトがネストされていても、forEachObject.entries()を使って効率的にデータを取得し、操作できます。

ネストされた配列とオブジェクトの組み合わせ

さらに複雑なケースとして、ネストされた配列とオブジェクトが混在するデータ構造を操作する方法を見てみましょう。次の例では、ユーザー情報の配列があり、その中にオブジェクトがネストされています。このデータ構造に対して、forEachを用いて各ユーザーの情報を出力します。

const userGroups = [
    { groupName: 'Group A', members: [{ name: 'Alice', age: 25 }, { name: 'Bob', age: 30 }] },
    { groupName: 'Group B', members: [{ name: 'Charlie', age: 35 }, { name: 'David', age: 40 }] }
];

userGroups.forEach((group) => {
    console.log(`Group: ${group.groupName}`);
    group.members.forEach((member) => {
        console.log(`  Name: ${member.name}, Age: ${member.age}`);
    });
});

このコードは、各グループに所属するメンバーの名前と年齢を出力します。出力結果は次のようになります。

Group: Group A
  Name: Alice, Age: 25
  Name: Bob, Age: 30
Group: Group B
  Name: Charlie, Age: 35
  Name: David, Age: 40

このように、配列の中にオブジェクトがネストされた複雑なデータ構造も、forEachを使って階層ごとに処理を行うことができます。

実践的な応用例: APIレスポンスのデータ処理

実際の開発では、APIから取得したデータを処理する場合がよくあります。APIのレスポンスは通常、配列やオブジェクトのネスト構造を持っています。このようなデータも、forEachを用いて柔軟に操作できます。

const apiResponse = [
    {
        id: 1,
        name: 'Alice',
        orders: [
            { orderId: 101, product: 'Laptop' },
            { orderId: 102, product: 'Mouse' }
        ]
    },
    {
        id: 2,
        name: 'Bob',
        orders: [
            { orderId: 201, product: 'Keyboard' },
            { orderId: 202, product: 'Monitor' }
        ]
    }
];

apiResponse.forEach((user) => {
    console.log(`User: ${user.name}`);
    user.orders.forEach((order) => {
        console.log(`  Order ID: ${order.orderId}, Product: ${order.product}`);
    });
});

この例では、APIから返されたユーザーとその注文情報を処理しています。出力結果は次の通りです。

User: Alice
  Order ID: 101, Product: Laptop
  Order ID: 102, Product: Mouse
User: Bob
  Order ID: 201, Product: Keyboard
  Order ID: 202, Product: Monitor

このように、複雑なデータ構造でもforEachを適切に使用することで、柔軟で読みやすいコードを実現できます。


複雑なデータ構造に対してforEachを使用すると、ネストされた配列やオブジェクトも効率的に操作できるため、実際の開発における多くのシナリオに対応できます。これにより、データの処理や整形、表示がスムーズに行えるため、より強力なデータ管理が可能になります。

まとめ

本記事では、TypeScriptのforEachメソッドを使用したコレクション操作の基本から応用までを解説しました。単純な配列の操作だけでなく、SetMapといった他のデータ構造や、非同期処理、複雑なネスト構造に対する操作にも応用可能であることを確認しました。forEachは、使い方次第で柔軟にデータを扱うことができる強力なツールです。制約や限界を理解しつつ、適切に活用することで、効率的なコレクション操作が可能になります。

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