TypeScriptのジェネリクスを活用してコードの再利用性を高める方法

TypeScriptは、JavaScriptのスーパーセットであり、型安全性や静的型付けなどの特徴を持つことで、より安全かつ効率的なコーディングが可能になります。その中でも、ジェネリクスはTypeScriptの強力な機能の一つで、コードの再利用性や柔軟性を向上させるために重要な役割を果たします。ジェネリクスを使用することで、異なる型に対応する汎用的なコードを記述でき、実装の重複を避けることができます。本記事では、TypeScriptにおけるジェネリクスの基本から応用例までを解説し、コードの再利用性を高めるための具体的なテクニックを紹介します。

目次

ジェネリクスとは

ジェネリクスとは、TypeScriptにおいて汎用的な型を扱うための仕組みです。通常、関数やクラスは特定の型を指定して定義されますが、ジェネリクスを使うことで、どの型にも対応できる柔軟なコードを記述することが可能です。これにより、異なる型を扱う関数やクラスを複数回定義する必要がなくなり、コードの重複を避けつつ型安全性も確保できます。

ジェネリクスの記法は、関数やクラス、インターフェースの宣言部分に、型の引数としてTなどのパラメータを使用することで実現します。例えば、ジェネリックな関数は、型が異なる引数を受け取りながらも、同じロジックを実行することができます。

ジェネリクスの基本的な使い方

ジェネリクスを使うことで、特定の型に依存しない汎用的なコードを記述できます。ここでは、簡単な例を通じてジェネリクスの基本的な使い方を紹介します。

ジェネリック関数の定義

ジェネリクスを使った関数は、関数名の後に<T>のように型パラメータを定義し、その型を関数内で使用します。以下は、ジェネリクスを用いて、任意の型の値を返す関数の例です。

function identity<T>(arg: T): T {
    return arg;
}

このidentity関数は、引数の型を指定せず、呼び出すときにその型が決まります。次のように使うことができます。

let num = identity<number>(42);  // 数値型として使用
let str = identity<string>("Hello");  // 文字列型として使用

このように、ジェネリクスを使うことで、型の違いにかかわらず、同じロジックを使って異なる型のデータを処理できるのです。

ジェネリック配列の利用

次に、ジェネリクスを使って配列を処理する関数の例を見てみます。

function logArray<T>(items: T[]): void {
    items.forEach(item => console.log(item));
}

この関数は、どの型の配列でも受け取ることができ、ジェネリクスを利用することで、型安全なコードを実現しています。

logArray<number>([1, 2, 3]);  // 数値の配列を処理
logArray<string>(["a", "b", "c"]);  // 文字列の配列を処理

ジェネリクスは、TypeScriptの型安全性を保ちながら、柔軟で再利用可能な関数やクラスを作成するために非常に有効な手法です。

型の柔軟性を高める

ジェネリクスは、異なる型に対応する汎用的なコードを記述できるため、TypeScriptでの型の柔軟性を飛躍的に高める重要な機能です。ジェネリクスを使うことで、関数やクラスが特定の型に依存せず、幅広いシチュエーションで利用できるようになります。

複数の型に対応するジェネリクス

ジェネリクスでは、複数の型を同時に扱うこともできます。以下は、2つの異なる型を受け取るジェネリック関数の例です。

function pair<T, U>(first: T, second: U): [T, U] {
    return [first, second];
}

このpair関数は、異なる2つの型を引数として受け取り、それらをペアとして返します。次のように、異なる型の組み合わせで利用可能です。

let pair1 = pair<string, number>("Age", 30);
let pair2 = pair<boolean, string>(true, "Success");

これにより、異なる型の組み合わせを柔軟に処理できるコードが実現します。

型制約を付けたジェネリクス

ジェネリクスを使用する際に、型に制約を設けることも可能です。これにより、特定のプロパティやメソッドを持つ型のみに適用される汎用的なコードを作成できます。以下の例では、ジェネリクスに型制約を設け、オブジェクトがlengthプロパティを持つ場合にのみ利用できる関数を作成します。

function logLength<T extends { length: number }>(item: T): void {
    console.log(item.length);
}

この関数は、lengthプロパティを持つ型(配列や文字列など)でのみ使用可能です。

logLength([1, 2, 3]);  // 配列の長さをログ出力
logLength("Hello");    // 文字列の長さをログ出力

このように、ジェネリクスを用いることで、柔軟かつ型安全なコードを簡単に作成できるだけでなく、特定の条件を満たす型にのみ適用できるコードを構築することも可能になります。

ジェネリクスによるコードの再利用性向上

ジェネリクスを活用することで、TypeScriptのコードの再利用性を大幅に向上させることができます。具体的には、ジェネリクスを使うことで異なる型のデータを扱う関数やクラスを一つの汎用的な形で実装でき、同じコードを複数回書く必要がなくなります。これにより、保守性が向上し、エラーのリスクが低減します。

汎用関数での再利用

通常、異なる型のデータに対して似た処理を行う場合、各型ごとに異なる関数を定義する必要がありますが、ジェネリクスを使用すると、型に依存しない汎用的な関数を定義できます。例えば、リストから最小値を取得する関数を考えてみます。

function getMin<T>(items: T[], compare: (a: T, b: T) => number): T {
    return items.reduce((prev, curr) => (compare(prev, curr) < 0 ? prev : curr));
}

この関数は、数値でも文字列でも、その他の型のデータでも利用可能です。以下の例では、数値の配列と文字列の配列で同じ関数を使って最小値を取得しています。

let minNumber = getMin([10, 5, 3, 8], (a, b) => a - b);  // 3
let minString = getMin(["apple", "banana", "pear"], (a, b) => a.localeCompare(b));  // "apple"

このように、汎用的な関数を作成することで、異なる型のデータに対しても同じコードを再利用できます。

ジェネリクスクラスによるコードの再利用

クラスでも同様に、ジェネリクスを使うことで柔軟かつ再利用可能な構造を作成できます。以下は、スタック(LIFO)データ構造を表すジェネリクスクラスの例です。

class Stack<T> {
    private items: T[] = [];

    push(item: T): void {
        this.items.push(item);
    }

    pop(): T | undefined {
        return this.items.pop();
    }

    peek(): T | undefined {
        return this.items[this.items.length - 1];
    }

    isEmpty(): boolean {
        return this.items.length === 0;
    }
}

このStackクラスは、どの型に対しても利用でき、型に応じたスタックを作成できます。

let numberStack = new Stack<number>();
numberStack.push(10);
numberStack.push(20);
console.log(numberStack.pop());  // 20

let stringStack = new Stack<string>();
stringStack.push("hello");
stringStack.push("world");
console.log(stringStack.pop());  // "world"

ジェネリクスを使用することで、異なる型に対応した汎用的なクラスや関数を一度定義すれば、後からさまざまな場面で再利用可能になり、コードの保守性が向上します。また、これにより、冗長な実装を削減でき、コード全体の品質が向上するのです。

関数でのジェネリクス活用

ジェネリクスは関数の中でも非常に効果的に使うことができます。関数でジェネリクスを使用することで、特定の型に依存しない柔軟な関数を作成でき、異なる型のデータに対して一貫した処理を提供することが可能になります。ここでは、関数におけるジェネリクスの具体的な活用方法を見ていきます。

ジェネリック関数の定義と使用例

ジェネリック関数は、関数名の後に型パラメータを指定することで作成されます。この型パラメータは、関数の引数や戻り値の型に使用されます。以下は、単純なジェネリック関数の例です。

function reverseArray<T>(items: T[]): T[] {
    return items.reverse();
}

このreverseArray関数は、任意の型の配列を受け取り、その配列を逆順に並び替えて返す関数です。型に依存しないため、数値の配列や文字列の配列など、さまざまな型のデータで利用できます。

let numArray = reverseArray<number>([1, 2, 3, 4]);  // [4, 3, 2, 1]
let strArray = reverseArray<string>(["a", "b", "c"]);  // ["c", "b", "a"]

このように、ジェネリクスを使うことで、異なる型のデータを扱う場合でも、コードを一度定義すれば汎用的に再利用できます。

複数の型パラメータを持つジェネリック関数

関数は複数の型パラメータを持つこともでき、これによりさらに柔軟な関数を作成することができます。次の例は、異なる2つの型を引数として受け取るジェネリック関数です。

function combine<T, U>(first: T, second: U): [T, U] {
    return [first, second];
}

この関数は、異なる型の2つの値をペアとして結合し、タプルとして返します。次のように使えます。

let combined = combine<string, number>("Age", 30);  // ["Age", 30]
let mixed = combine<boolean, string>(true, "Active");  // [true, "Active"]

これにより、異なるデータ型を組み合わせる関数を柔軟に作成でき、型安全性を損なうことなく利用可能です。

型制約を用いたジェネリクス関数

ジェネリクス関数に型制約を設けることで、特定の型のプロパティやメソッドを持つ型にのみジェネリクスを適用できます。以下の例では、オブジェクトがlengthプロパティを持つ場合にのみ利用可能なジェネリック関数を作成します。

function logLength<T extends { length: number }>(item: T): void {
    console.log(item.length);
}

この関数は、lengthプロパティを持つ型(例えば配列や文字列)に対してのみ呼び出すことができます。

logLength([1, 2, 3]);  // 配列の長さをログ出力
logLength("Hello");    // 文字列の長さをログ出力

型制約を活用することで、汎用的でありながら、特定の条件を満たす型にのみ適用される関数を作成できます。

ジェネリクスを使うことで、関数の再利用性や柔軟性が大幅に向上し、さまざまな型に対応した効率的で安全なコードを提供できるのが、TypeScriptにおける強力な利点です。

クラスでのジェネリクス活用

TypeScriptのジェネリクスは、クラスでも効果的に活用することができます。クラスでジェネリクスを使用することで、クラスが特定の型に依存しない汎用的な設計になり、異なる型に対応できる再利用可能なコードを簡単に作成できます。ここでは、クラスにおけるジェネリクスの活用例を紹介します。

ジェネリッククラスの定義

ジェネリッククラスは、クラス名の後に型パラメータを定義して作成します。この型パラメータは、クラスのプロパティやメソッドの引数、戻り値として使用されます。以下は、ジェネリクスを使用したスタック(LIFO)データ構造のクラスの例です。

class Stack<T> {
    private items: T[] = [];

    push(item: T): void {
        this.items.push(item);
    }

    pop(): T | undefined {
        return this.items.pop();
    }

    peek(): T | undefined {
        return this.items[this.items.length - 1];
    }

    isEmpty(): boolean {
        return this.items.length === 0;
    }
}

このStackクラスは、ジェネリクスを使用することで、任意の型に対して動作する汎用的なスタックを作成できます。

let numberStack = new Stack<number>();
numberStack.push(10);
numberStack.push(20);
console.log(numberStack.pop());  // 20

let stringStack = new Stack<string>();
stringStack.push("hello");
stringStack.push("world");
console.log(stringStack.pop());  // "world"

このように、異なる型のデータに対しても同じクラスを再利用でき、冗長なコードを書く必要がありません。

ジェネリクスを使った複雑なクラス設計

ジェネリクスは、より複雑なクラス設計にも応用できます。たとえば、ジェネリクスを使って複数の型を扱うクラスを作成することも可能です。以下は、2つの型を受け取るペアクラスの例です。

class Pair<T, U> {
    constructor(public first: T, public second: U) {}

    getFirst(): T {
        return this.first;
    }

    getSecond(): U {
        return this.second;
    }
}

このクラスは、異なる型の2つの値を持つペアを作成し、それぞれの値にアクセスできるメソッドを提供します。

let pair = new Pair<string, number>("Age", 30);
console.log(pair.getFirst());  // "Age"
console.log(pair.getSecond());  // 30

このように、ジェネリクスを使うことで、異なる型を組み合わせて柔軟に扱うクラスを設計できます。

型制約を用いたジェネリクスクラス

ジェネリクスに型制約を追加することで、特定のプロパティやメソッドを持つ型のみに適用されるクラスを作成することも可能です。以下は、lengthプロパティを持つ型に限定されたクラスの例です。

class Collection<T extends { length: number }> {
    constructor(private items: T[]) {}

    getLength(): number {
        return this.items.length;
    }
}

このCollectionクラスは、lengthプロパティを持つ型(例えば配列や文字列)を扱うことができます。

let numberArray = new Collection<number[]>([[1, 2, 3], [4, 5]]);
console.log(numberArray.getLength());  // 2

let stringCollection = new Collection<string>(["apple", "banana", "cherry"]);
console.log(stringCollection.getLength());  // 3

型制約を活用することで、型安全性を保ちながら、特定の条件を満たす型に限定されたジェネリクスクラスを作成できます。

クラスでジェネリクスを活用することで、汎用性の高い設計を行うことができ、同じコードを再利用することでメンテナンス性が向上します。また、型制約を導入することで、柔軟性と型安全性を両立したクラス設計が可能になります。

インターフェースとジェネリクス

ジェネリクスはインターフェースにも適用でき、インターフェースが扱う型を柔軟に定義することができます。これにより、特定の型に縛られない汎用的なインターフェースを作成でき、異なる型のデータに対応する実装を統一的に管理することが可能です。ここでは、インターフェースでのジェネリクスの使い方とその利点を見ていきます。

ジェネリクスを用いたインターフェースの定義

ジェネリクスを使用してインターフェースを定義することで、インターフェースが扱うデータの型を動的に決定できます。以下は、ジェネリックなリポジトリ(データストア)を表すインターフェースの例です。

interface Repository<T> {
    getAll(): T[];
    getById(id: number): T | undefined;
    save(item: T): void;
}

このインターフェースは、T型のデータを扱うリポジトリを定義しており、データ型に関わらず、同じ操作を実行できます。このインターフェースを実装する際には、Tに具体的な型を指定します。

class UserRepository implements Repository<User> {
    private users: User[] = [];

    getAll(): User[] {
        return this.users;
    }

    getById(id: number): User | undefined {
        return this.users.find(user => user.id === id);
    }

    save(user: User): void {
        this.users.push(user);
    }
}

この例では、UserRepositoryクラスがUser型のデータを扱うリポジトリとして定義されています。Repository<T>TにはUser型が指定されているため、getAllgetByIdといったメソッドはUser型を返すようになります。

複数のジェネリクス型を持つインターフェース

インターフェースは複数の型パラメータを持つことも可能です。次の例は、キーと値の型を持つ汎用的なストレージインターフェースです。

interface KeyValueStore<K, V> {
    get(key: K): V | undefined;
    set(key: K, value: V): void;
}

このインターフェースでは、キーと値に異なる型を指定でき、異なる型のペアを管理できます。

class StringNumberStore implements KeyValueStore<string, number> {
    private store: { [key: string]: number } = {};

    get(key: string): number | undefined {
        return this.store[key];
    }

    set(key: string, value: number): void {
        this.store[key] = value;
    }
}

このように、KeyValueStoreインターフェースを実装したクラスは、文字列キーと数値の値を扱う汎用的なストレージを提供します。

型制約を使用したジェネリックインターフェース

ジェネリックインターフェースにも型制約を設けることができます。型制約を使用することで、特定の型に対してのみインターフェースを適用できます。例えば、以下はlengthプロパティを持つオブジェクトを扱うインターフェースです。

interface HasLength<T extends { length: number }> {
    getLength(item: T): number;
}

このインターフェースは、lengthプロパティを持つ型に対してのみ適用可能です。

class StringLengthChecker implements HasLength<string> {
    getLength(item: string): number {
        return item.length;
    }
}

このクラスは文字列の長さを取得するための実装であり、インターフェースの型制約によって、文字列以外の型には適用できないことが保証されます。

インターフェースとジェネリクスを組み合わせることで、再利用可能なコード設計が可能となり、特定の型に依存しない汎用的なインターフェースを作成できます。これにより、異なる型のデータに対しても統一された操作を提供でき、保守性や拡張性が向上します。

複雑なジェネリクスの使用例

TypeScriptのジェネリクスは、シンプルな型にとどまらず、複数の型パラメータや型制約を組み合わせることで、より複雑で柔軟な型システムを実現できます。ここでは、実践的なシナリオでジェネリクスをどのように活用できるかを具体的な例を交えて解説します。

条件付き型(Conditional Types)との組み合わせ

TypeScriptの条件付き型は、ジェネリクスと組み合わせることで、状況に応じた柔軟な型推論を可能にします。以下は、Tが配列かどうかによって異なる型を返す関数の例です。

function getArrayOrItem<T>(value: T | T[]): T {
    return Array.isArray(value) ? value[0] : value;
}

このgetArrayOrItem関数は、引数が配列ならその最初の要素を返し、配列でない場合はその値をそのまま返します。ジェネリクスと条件付き型を使うことで、異なる型の入力に応じた処理を型安全に実装できます。

let num = getArrayOrItem([1, 2, 3]);  // num: number
let str = getArrayOrItem("hello");  // str: string

このように、引数の型に応じた柔軟な動作を実現できる点が、ジェネリクスの強力なポイントです。

マップ型(Mapped Types)との組み合わせ

TypeScriptのマップ型は、オブジェクトの型に対して柔軟な操作を提供する機能です。ジェネリクスと組み合わせることで、複雑な型変換やマッピングが可能になります。次の例では、オブジェクトのプロパティ全てをオプショナルに変換するジェネリクス型を定義しています。

type PartialWithGenerics<T> = {
    [P in keyof T]?: T[P];
};

このPartialWithGenericsは、オブジェクトTの全てのプロパティをオプショナルにします。この型を使用すると、次のような柔軟な型定義が可能です。

interface User {
    id: number;
    name: string;
}

let partialUser: PartialWithGenerics<User> = {
    name: "Alice",  // `id`はオプショナル
};

これにより、PartialWithGenericsを使って、あらゆるオブジェクト型に対して一貫したオプショナルなプロパティのセットを適用できます。

再帰的ジェネリクス型の活用

再帰的ジェネリクス型は、自己参照する型やデータ構造を扱う際に役立ちます。例えば、ツリー構造を表すデータ型を考えてみましょう。

interface TreeNode<T> {
    value: T;
    children?: TreeNode<T>[];
}

このTreeNodeインターフェースは、任意の型の値を持ち、その子要素も同様のツリー構造を再帰的に持つことができます。このように、再帰的な構造を表す際にはジェネリクスが非常に有効です。

let tree: TreeNode<number> = {
    value: 1,
    children: [
        { value: 2 },
        { value: 3, children: [{ value: 4 }] }
    ]
};

この例では、TreeNode<number>型を用いて、数値を持つツリー構造を定義しています。再帰的なジェネリクスにより、階層的なデータ構造も型安全に扱えます。

高度な型制約を持つジェネリクス

TypeScriptでは、ジェネリクスに対して複数の型制約を適用することも可能です。例えば、次のようなインターフェースでは、T型がPersonを拡張し、かつIdentifiableというインターフェースも実装している型に対してのみ使用できます。

interface Person {
    name: string;
}

interface Identifiable {
    id: number;
}

function logPersonWithId<T extends Person & Identifiable>(person: T): void {
    console.log(`ID: ${person.id}, Name: ${person.name}`);
}

この関数は、Personであり、同時にIdentifiableであるオブジェクトにのみ適用されます。

const person = { id: 1, name: "Alice", age: 30 };
logPersonWithId(person);  // OK

このように、複数の型制約を組み合わせることで、より厳密で特定の要件を持つジェネリクスを定義することができます。

ジェネリクスを使った高度な型制約や再帰的な構造、条件付き型などを組み合わせることで、非常に柔軟かつ強力な型システムを実現でき、複雑な要件にも対応する型安全なコードを構築することが可能です。

実践課題: ジェネリクスでコードをリファクタリング

ジェネリクスの理解を深めるために、実際のコードリファクタリングを通じてその活用方法を確認してみましょう。この課題では、既存の非ジェネリックなコードを、ジェネリクスを使って汎用的かつ再利用性の高いコードに書き換えます。

課題の概要

以下のコードは、number型の配列とstring型の配列に対して、それぞれ最大値と最長文字列を取得する関数を定義しています。しかし、両方とも非常に似たロジックを持っているため、ジェネリクスを使用してコードの重複を解消できます。

function getMaxNumber(numbers: number[]): number {
    return numbers.reduce((max, num) => (num > max ? num : max), numbers[0]);
}

function getLongestString(strings: string[]): string {
    return strings.reduce((longest, str) => (str.length > longest.length ? str : longest), strings[0]);
}

この2つの関数は、number型とstring型の違いがあるものの、ロジックとしては「比較」を行い、「最大または最長の値」を取得しているため、ジェネリクスを使って一つの関数に統合できそうです。

リファクタリング手順

  1. ジェネリックな関数の作成
    まず、ジェネリクスを使用して、型に依存せず最大の要素を取得できる汎用的な関数を定義します。この関数は、任意の型の配列を受け取り、比較ロジックを外部から指定できるようにします。
function getMax<T>(items: T[], compare: (a: T, b: T) => number): T {
    return items.reduce((max, item) => (compare(max, item) > 0 ? max : item), items[0]);
}

この関数は、比較するロジックをcompare関数として受け取り、その関数を使って配列の中で最大の値を見つけます。

  1. 比較ロジックの定義
    getMax関数を使用するには、numberstring型の比較ロジックを定義する必要があります。それぞれの型に対応する比較関数を定義して利用します。
let maxNumber = getMax([1, 2, 3, 4, 5], (a, b) => a - b);  // 数値の比較
let longestString = getMax(["apple", "banana", "cherry"], (a, b) => a.length - b.length);  // 文字列の長さを比較
  1. リファクタリング後のコードの確認
    これで、数値の最大値を取得する場合も、文字列の最長値を取得する場合も、同じgetMax関数を再利用できるようになりました。比較ロジックのみを外部から指定することで、異なるデータ型に対して同一のロジックを適用できる汎用的なコードに仕上げています。

課題の完成形

最終的に、関数の重複が解消され、以下のような汎用的なコードが得られました。

function getMax<T>(items: T[], compare: (a: T, b: T) => number): T {
    return items.reduce((max, item) => (compare(max, item) > 0 ? max : item), items[0]);
}

let maxNumber = getMax([1, 2, 3, 4, 5], (a, b) => a - b);
let longestString = getMax(["apple", "banana", "cherry"], (a, b) => a.length - b.length);

console.log(maxNumber);  // 5
console.log(longestString);  // "banana"

まとめと応用

この課題を通じて、ジェネリクスを使うことで、特定の型に依存しない柔軟な関数設計が可能になることを確認しました。さらに、比較ロジックを外部から指定することで、異なる型に対しても一貫した処理を提供できるようになります。

応用として、ジェネリクスを使用したクラスやインターフェースにもこのパターンを拡張することが可能です。実際の開発においても、同様のパターンでコードの再利用性を高め、メンテナンスを容易にすることが期待できます。

ジェネリクスと型安全性

TypeScriptにおけるジェネリクスの大きなメリットの一つは、コードの柔軟性を向上させながら、型安全性を保持できる点です。型安全性とは、プログラムが実行時に型エラーを発生させずに正しく動作することを保証する仕組みであり、ジェネリクスはこれを確保しながら汎用的なコードを書くのに役立ちます。

型安全性の向上

ジェネリクスを使用することで、関数やクラスが異なる型を扱う際に、その型情報を適切に保持し、誤った型が使われないようにすることができます。例えば、以下のようなジェネリック関数では、入力されたデータ型に応じて戻り値の型も自動的に決定されるため、誤った型のデータを扱うことを防ぎます。

function identity<T>(arg: T): T {
    return arg;
}

この関数に数値を渡せば、数値型が返され、文字列を渡せば文字列型が返されます。

let num = identity(42);  // num: number
let str = identity("hello");  // str: string

ジェネリクスを使用することで、型を明示的に指定することなく、TypeScriptが自動的に型を推論してくれるため、型安全なコードを簡単に実現できます。

型制約を使った型安全性の強化

ジェネリクスは、型制約(constraints)を使うことで、特定のプロパティやメソッドを持つ型に対してのみ適用できるようにし、さらに型安全性を強化することができます。例えば、以下の関数はlengthプロパティを持つオブジェクトにのみ適用できるため、誤った型を渡すことを防げます。

function logLength<T extends { length: number }>(arg: T): void {
    console.log(arg.length);
}

この制約により、lengthプロパティを持たない型(例えば、数値型など)を引数に渡すことはできません。

logLength([1, 2, 3]);  // 正常
logLength("Hello");    // 正常
// logLength(42);      // エラー: 'number' 型に 'length' プロパティがない

このように、ジェネリクスを使って特定の要件を満たす型のみ受け付けるようにすることで、型に関する不具合を実行前に防ぎ、コードの信頼性を高めることができます。

ジェネリクスとTypeScriptの型推論

TypeScriptの型推論機能により、ジェネリクスを使用しても開発者が毎回型を明示的に指定する必要はありません。TypeScriptは、渡された引数から適切な型を自動的に推論するため、ジェネリクスを使う場合でもコードが冗長になることを避けられます。

function wrapInArray<T>(arg: T): T[] {
    return [arg];
}

let wrappedNumber = wrapInArray(42);  // 推論で T は number 型になる
let wrappedString = wrapInArray("hello");  // 推論で T は string 型になる

このように、型を明示的に指定しなくても、TypeScriptが型推論を行い、誤った型の使用を防いでくれるのです。

ジェネリクスを使用することで、TypeScriptの型安全性を保ちながら、より汎用的で再利用性の高いコードを書くことが可能になります。特定の型に依存しない柔軟な実装を提供しつつ、型チェックにより実行時エラーを防ぐという両立が、ジェネリクスの大きな利点です。

まとめ

本記事では、TypeScriptにおけるジェネリクスの基本から応用までを解説し、どのようにしてコードの再利用性や型安全性を向上させるかを見てきました。ジェネリクスを活用することで、異なる型に対応した汎用的な関数やクラスを作成し、コードの重複を避けつつ、型制約や型推論によって安全なプログラミングを実現できます。

ジェネリクスは、シンプルな実装から複雑な構造まで幅広い場面で効果を発揮し、柔軟かつ堅牢なTypeScriptコードを書くための強力なツールです。

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