TypeScriptで非同期ループ処理にPromise.allを使う方法と注意点

TypeScriptでの非同期ループ処理は、パフォーマンスと効率を最大限に引き出すために、正しい手法を選ぶことが重要です。特に複数の非同期処理を同時に実行する場合、単純にループで処理を行うだけでは効率が悪くなりがちです。ここで、非同期処理の並列実行を可能にするPromise.allが役立ちます。しかし、このPromise.allを適切に使用しないと、思わぬエラーやパフォーマンスの低下を招くことがあります。本記事では、Promise.allを使った非同期ループ処理のメリットと注意点、さらにasync/awaitとの組み合わせ方について詳しく解説し、実際のコード例を交えて理解を深めます。

目次

非同期処理の基礎

非同期処理とは、プログラムが他の処理を待つことなく、別のタスクを並行して実行できる機能です。JavaScriptやTypeScriptでは、非同期処理は主にPromiseasync/awaitを使って実装されます。例えば、APIリクエストやファイルの読み書きなど、処理に時間がかかる操作を行う際に、非同期処理を利用することで、プログラム全体の実行がブロックされることを防ぎます。

Promiseの役割

Promiseは、将来完了する可能性のある処理を表現するオブジェクトで、3つの状態を持っています。

  • Pending(保留中): 非同期処理がまだ完了していない状態。
  • Fulfilled(成功): 非同期処理が正常に完了した状態。
  • Rejected(失敗): 非同期処理がエラーなどで失敗した状態。

Promiseはこれらの状態変化を追跡し、処理が完了した際に結果を取得できるため、他のコードと連携させやすくなります。

非同期ループ処理の課題

非同期処理をループ内で使う際には、いくつかの課題が生じることがあります。特に、forforEachなどのループ構文を使用して非同期関数を呼び出す場合、期待通りに動作しないことが多いです。これらの課題を無視すると、処理の順序が乱れたり、パフォーマンスが低下したりする可能性があります。

逐次実行と並行実行の違い

非同期処理をループ内で行う場合、多くの開発者は逐次実行(1つの処理が完了してから次の処理が始まる)を想定してしまいがちです。しかし、ループ内でawaitを使用すると、ループ全体が逐次的に進行してしまい、複数の処理が同時に実行されるという並行実行の利点が失われます。

例えば、以下のコードではawaitが各ループの内部で実行されているため、逐次的に処理が行われ、全ての処理が完了するまでの時間が長くなってしまいます。

for (let item of items) {
  await asyncFunction(item);
}

forEachやmapの落とし穴

JavaScriptのforEachmapといったメソッドは、非同期処理を意図的にサポートしていません。これにより、これらのメソッド内でawaitを使った場合でも、Promiseが正しく解決されない場合があります。非同期処理を伴うループにはfor...ofmapPromise.allの組み合わせが推奨されます。

Promise.allの基本的な使い方

Promise.allは、複数のPromiseを同時に実行し、それらすべてが解決されるのを待つ便利なメソッドです。複数の非同期処理を並行して実行することで、効率を大幅に向上させることが可能です。特にループ内で非同期処理を行う場合、Promise.allを活用すると、逐次実行される非効率な処理を改善できます。

Promise.allの構文

Promise.allの基本的な使い方は非常にシンプルです。Promiseの配列を引数に渡すことで、それらすべてが解決されるまで待機します。すべてのPromiseが解決されたときに、結果が配列として返されます。

const promises = [asyncFunction1(), asyncFunction2(), asyncFunction3()];
Promise.all(promises).then(results => {
  console.log(results); // すべての非同期処理の結果が表示される
});

Promise.allの動作

Promise.allは次のように動作します。

  1. 引数として渡されたすべてのPromiseが同時に実行される。
  2. すべてのPromiseが解決されるまで待機する。
  3. どれか1つでもPromiseが拒否(reject)されると、Promise.all全体が拒否され、エラーが発生する。

これにより、処理全体を並行して実行し、時間の短縮が期待できる反面、1つでもエラーが発生すると全体が失敗するという特性も持っています。

Promise.allの使用例

以下の例では、非同期関数を使って複数のAPIリクエストを並行して処理し、結果をまとめて取得しています。

async function fetchData() {
  const urls = ['https://api.example1.com', 'https://api.example2.com', 'https://api.example3.com'];
  const promises = urls.map(url => fetch(url)); 
  const responses = await Promise.all(promises);
  const data = await Promise.all(responses.map(response => response.json()));
  return data;
}

この例では、urls.map()で各URLに対して非同期リクエストを発行し、それをPromise.allで並行して実行しています。これにより、逐次処理に比べて大幅に高速な処理が可能です。

Promise.allを使う際の注意点

Promise.allは複数の非同期処理を効率よく並行して実行するために非常に便利ですが、適切に使用しないと予期しない問題が発生することがあります。ここでは、Promise.allを使用する際に気をつけるべき重要なポイントについて解説します。

1つのPromiseが失敗すると全体が失敗する

Promise.allは、渡されたすべてのPromiseが解決されるのを待つという特性を持っていますが、1つでもPromiseが拒否(reject)された場合、全体が失敗として扱われます。このため、複数の非同期処理の中でどれか一つでもエラーが発生すると、他の処理が成功していても結果は得られません。

const promises = [
  fetch('https://api.example1.com'),
  fetch('https://api.example2.com'),
  Promise.reject(new Error('Intentional failure')),
];

Promise.all(promises).then(results => {
  console.log(results);
}).catch(error => {
  console.error('Promise.all failed:', error); // 1つのPromiseが失敗するとここが実行される
});

上記のコードでは、1つのPromiseが拒否されたため、全体が失敗としてキャッチされます。これを避けるためには、Promise.allSettledを使用することも考えられます(後述します)。

非同期処理の順序が保証されない

Promise.allを使うと、すべてのPromiseが並行して実行されますが、それぞれのPromiseの完了順序は保証されません。したがって、順序を意識して処理を行いたい場合には、Promise.allだけでは不十分です。

たとえば、順序通りに結果を処理する必要がある場合は、Promise.allの返り値として配列を使い、その順番で処理を行うことが必要です。

エラーハンドリングの重要性

複数の非同期処理を行う際、すべてが成功するとは限りません。そのため、Promise.allを使う場合には、個々のPromiseに対するエラーハンドリングが非常に重要です。特に、ネットワークリクエストや外部APIの呼び出しのようにエラーが発生しやすい処理では、個別にエラーをキャッチするか、後述のPromise.allSettledを利用することが推奨されます。

エラーハンドリングの例

const promises = [
  fetch('https://api.example1.com').catch(error => ({ error })),
  fetch('https://api.example2.com').catch(error => ({ error })),
];

Promise.all(promises).then(results => {
  results.forEach(result => {
    if (result.error) {
      console.error('Error:', result.error);
    } else {
      console.log('Success:', result);
    }
  });
});

このように、各Promiseでエラーが発生した場合でも、適切にキャッチして処理を続行できます。

メモリ消費量の増加に注意

Promise.allで大量の非同期処理を一度に実行すると、メモリ消費量が増加することがあります。特に、並行処理するPromiseの数が多すぎる場合、リソースを圧迫する可能性があります。このような場合は、Promiseの数を制限するためにバッチ処理を行ったり、処理を少しずつ進める工夫が必要です。

Promise.allを使う際は、このような落とし穴に注意しつつ、適切に非同期処理を管理することが重要です。

async/awaitとの組み合わせ

Promise.allasync/awaitと非常に相性が良く、両者を組み合わせることで、よりシンプルで可読性の高い非同期処理を実現できます。async/awaitは、Promiseベースの非同期処理を同期処理のように記述できるため、コードの可読性が大幅に向上し、エラーハンドリングもシンプルになります。

Promise.allとasync/awaitの併用

Promise.allは複数の非同期処理を並行して実行するのに優れていますが、async/awaitを使用することで、非同期処理が完了するまで待機する構造を直感的に表現することができます。以下は、Promise.allasync/awaitを組み合わせた基本的な使用例です。

async function fetchData() {
  const urls = ['https://api.example1.com', 'https://api.example2.com', 'https://api.example3.com'];
  try {
    const responses = await Promise.all(urls.map(url => fetch(url)));
    const data = await Promise.all(responses.map(response => response.json()));
    return data;
  } catch (error) {
    console.error('Error fetching data:', error);
  }
}

この例では、awaitを使用してPromise.allで返されたPromiseが解決されるのを待ってから、次の処理に進んでいます。これにより、コードがシンプルかつ直感的に書けるため、複雑な非同期処理を扱う際に非常に有用です。

逐次実行と並行実行のバランス

async/awaitを使った非同期処理では、ループ内でawaitを使うと逐次実行になりますが、Promise.allを使えば並行実行が可能です。どちらの方法が適しているかは、シナリオによります。以下に、それぞれの実行方法を比較します。

逐次実行の例

逐次実行では、1つの非同期処理が完了するまで次の処理が開始されません。

async function processSequentially(items) {
  for (const item of items) {
    await asyncFunction(item);
  }
}

この場合、各asyncFunctionが完了するまで次のアイテムは処理されず、処理全体に時間がかかる可能性があります。

並行実行の例

並行実行では、すべての非同期処理が同時に開始されます。これにより、逐次実行よりも高速に処理が完了します。

async function processConcurrently(items) {
  const promises = items.map(item => asyncFunction(item));
  await Promise.all(promises);
}

この方法では、すべてのasyncFunctionが同時に実行され、全ての処理が終了するまで待機します。

async/awaitでのエラーハンドリング

async/awaitはエラーハンドリングも非常にシンプルに行えます。try...catch構文を使用して、非同期処理中に発生するエラーをキャッチし、適切に処理することが可能です。

async function fetchData() {
  try {
    const data = await Promise.all([fetch(url1), fetch(url2), fetch(url3)]);
    return data;
  } catch (error) {
    console.error('Error in fetch:', error);
  }
}

これにより、Promise.all内のいずれかの非同期処理でエラーが発生した場合でも、エラーを捕捉して処理を続行することができます。try...catchを使用することで、コードのエラーハンドリングが明確かつ簡潔になります。

まとめ

Promise.allasync/awaitの組み合わせは、複数の非同期処理を効率よく扱うための強力なツールです。特に非同期ループ処理で並行実行を実現しつつ、エラーハンドリングもシンプルに行えるため、パフォーマンスと可読性のバランスをとるのに最適です。

実際のコード例

ここでは、Promise.allを使用した具体的なTypeScriptのコード例を紹介し、非同期処理を並行して実行する方法を理解します。以下のコード例では、複数のAPIエンドポイントからデータを取得し、それらを処理する場面を想定しています。

APIリクエストを並行して処理する

次のコードでは、複数のAPIからデータを取得し、Promise.allを使って全てのリクエストを並行して処理します。これにより、リクエストの順序にかかわらず、すべての結果が得られるまで待機します。

async function fetchMultipleData() {
  const urls = ['https://api.example1.com/data', 'https://api.example2.com/data', 'https://api.example3.com/data'];

  try {
    // URLごとにfetchリクエストを作成し、Promiseの配列を作成
    const fetchPromises = urls.map(url => fetch(url));

    // 全てのPromiseが解決されるのを待つ
    const responses = await Promise.all(fetchPromises);

    // 各レスポンスのJSONデータを取得
    const dataPromises = responses.map(response => response.json());
    const allData = await Promise.all(dataPromises);

    console.log(allData);
    return allData;
  } catch (error) {
    console.error('Error fetching data:', error);
  }
}

コード解説

  1. 非同期関数の定義: async functionとして関数を定義し、内部で非同期処理を行います。
  2. Promiseの配列を作成: urls.map()を使用して、各URLに対してfetchリクエストを発行し、その結果をPromiseの配列として格納します。
  3. Promise.allで並行処理: Promise.allで全てのリクエストが完了するまで待機します。この時点で、各fetchの結果であるResponseオブジェクトの配列が得られます。
  4. レスポンスをJSONに変換: 各レスポンスのJSONデータを並行して取得するため、再度Promise.allを使用します。
  5. 結果を処理: 全てのJSONデータが取得されると、それらを配列として返します。

逐次実行の場合との比較

逐次実行で同様の処理を行うと、以下のように各リクエストが1つずつ順番に実行されるため、時間がかかります。

async function fetchSequentialData() {
  const urls = ['https://api.example1.com/data', 'https://api.example2.com/data', 'https://api.example3.com/data'];

  try {
    const allData = [];
    for (const url of urls) {
      const response = await fetch(url);
      const data = await response.json();
      allData.push(data);
    }
    console.log(allData);
    return allData;
  } catch (error) {
    console.error('Error fetching data:', error);
  }
}

このコードは、各fetchリクエストが順番に実行されるため、処理にかかる時間は並列実行よりも長くなります。Promise.allを使えば、全てのリクエストを同時に処理できるため、パフォーマンスが向上します。

エラーハンドリングの強化

非同期処理では、エラーハンドリングが非常に重要です。上記のコードでもtry...catchを使用していますが、特に複数のリクエストが失敗する可能性がある場合、エラーハンドリングの強化が求められます。個別のエラー処理を行いたい場合は、以下のように各Promiseでエラーをキャッチすることもできます。

async function fetchWithIndividualErrorHandling() {
  const urls = ['https://api.example1.com/data', 'https://api.example2.com/data', 'https://api.example3.com/data'];

  const fetchPromises = urls.map(async (url) => {
    try {
      const response = await fetch(url);
      return await response.json();
    } catch (error) {
      console.error(`Error fetching from ${url}:`, error);
      return null; // エラーが発生した場合はnullを返す
    }
  });

  const allData = await Promise.all(fetchPromises);
  console.log(allData);
  return allData;
}

このコードでは、各fetchリクエストが個別にエラーハンドリングされ、エラーが発生した場合はnullを返すようにしています。これにより、部分的に失敗したリクエストがあっても、他のリクエストが正常に処理されることを確認できます。

まとめ

Promise.allを使った実際のコード例から、非同期処理を効率的に並行実行する方法を学びました。特にAPIリクエストやファイル処理など、複数の非同期タスクを一度に実行したい場面では、Promise.allは非常に有効です。また、エラーハンドリングも適切に行うことで、堅牢な非同期処理が実現できます。

パフォーマンスの最適化

Promise.allを使用した非同期ループ処理では、正しく実装することでパフォーマンスを大幅に向上させることができます。特に、複数の非同期処理を同時に実行できるため、逐次実行と比較して処理速度が向上し、アプリケーションの応答性が改善されます。ここでは、Promise.allによるパフォーマンスの最適化について具体的な例とともに解説します。

並行処理による速度向上

逐次的に処理を行う場合、各非同期タスクが完了するまで待機するため、全体の処理時間が長くなります。しかし、Promise.allを使えば、複数のタスクを並行して実行できるため、全体の処理時間を短縮できます。

例えば、次のコード例では、Promise.allを使用しない逐次実行では各APIリクエストが順次処理され、全てのリクエストが完了するまでの時間が長くなります。

async function fetchSequentially(urls: string[]) {
  const results = [];
  for (const url of urls) {
    const response = await fetch(url);
    const data = await response.json();
    results.push(data);
  }
  return results;
}

このコードでは、1つのリクエストが完了するまで次のリクエストが実行されません。これをPromise.allを使って並行処理に変更すると、全てのリクエストが同時に実行され、処理速度が向上します。

async function fetchConcurrently(urls: string[]) {
  const fetchPromises = urls.map(url => fetch(url).then(res => res.json()));
  const results = await Promise.all(fetchPromises);
  return results;
}

この並行処理により、全てのリクエストが同時に実行されるため、合計の処理時間が大幅に短縮されます。

バッチ処理によるリソース管理

大量の非同期処理をPromise.allで一度に実行すると、リソースが圧迫される場合があります。これは、特にネットワークリクエストやファイルI/Oなどの重い処理を大量に並行実行する場合に発生します。そこで、バッチ処理を行うことで、一度に実行する非同期タスクの数を制限し、リソースの効率的な利用を図ることができます。

次のコードでは、Promise.allで一度に処理するタスク数を制限することで、メモリ消費を抑えつつ効率的に処理を進めます。

async function fetchInBatches(urls: string[], batchSize: number) {
  const results = [];
  for (let i = 0; i < urls.length; i += batchSize) {
    const batch = urls.slice(i, i + batchSize);
    const batchResults = await Promise.all(batch.map(url => fetch(url).then(res => res.json())));
    results.push(...batchResults);
  }
  return results;
}

このコードでは、指定されたバッチサイズに従って、Promise.allを使った並行処理を小分けにして実行しています。これにより、メモリの消費を抑えながら、効率的な非同期処理が可能になります。

非同期タスクの優先順位設定

パフォーマンスを最適化するためには、全ての非同期タスクを無条件に並行実行するのではなく、タスクの重要度に応じて優先順位を付けることが有効です。例えば、ユーザーインターフェースに関連する処理を優先し、バックグラウンドで実行される処理を後回しにすることができます。

以下は、重要な処理を優先して実行し、他の処理を後で並行実行する例です。

async function fetchWithPriority(urls: string[], priorityUrls: string[]) {
  // まず、優先度の高いURLを先に処理
  const priorityPromises = priorityUrls.map(url => fetch(url).then(res => res.json()));
  const priorityResults = await Promise.all(priorityPromises);

  // 次に、残りのURLを並行して処理
  const remainingUrls = urls.filter(url => !priorityUrls.includes(url));
  const remainingPromises = remainingUrls.map(url => fetch(url).then(res => res.json()));
  const remainingResults = await Promise.all(remainingPromises);

  return [...priorityResults, ...remainingResults];
}

このコードでは、優先度の高いURLを最初に処理し、それが完了してから残りのURLを並行して処理します。これにより、重要なデータを先に取得し、ユーザー体験を向上させることができます。

非同期処理の適切な使用でアプリケーションを最適化

非同期ループ処理でPromise.allを活用することで、アプリケーションの応答速度やパフォーマンスを向上させることができます。ただし、大量のタスクを一度に並行処理するとリソースが圧迫される可能性があるため、バッチ処理や優先順位の設定といった工夫が必要です。適切な戦略を採用することで、パフォーマンスとリソースのバランスを最適化できます。

エラーハンドリングのベストプラクティス

非同期処理を行う際、エラーハンドリングは非常に重要です。Promise.allを使用する場合、1つのPromiseが失敗すると全体が失敗として扱われるため、エラーに対する適切な対策を講じておく必要があります。ここでは、Promise.allと非同期処理におけるエラーハンドリングのベストプラクティスについて解説します。

Promise.allでのエラーハンドリング

Promise.allは、渡されたPromiseのうち1つでも拒否(reject)された場合に、すぐにエラーとして扱われます。そのため、複数の非同期処理が並行して行われる場合、どれか一つの処理が失敗すると、他の処理が成功していても結果を得ることができません。

次の例では、Promise.allが1つのPromiseの失敗により全体が失敗することを示しています。

const promises = [
  fetch('https://api.example1.com'),
  fetch('https://api.example2.com'),
  Promise.reject(new Error('Intentional failure')),
];

Promise.all(promises).then(results => {
  console.log(results);
}).catch(error => {
  console.error('Promise.all failed:', error); // エラーが発生するとここが実行される
});

このコードでは、Promise.rejectが意図的にエラーを引き起こし、Promise.all全体が失敗しています。1つのエラーが原因で他の成功した処理も無視されるため、エラーハンドリングが重要です。

個々のPromiseのエラーハンドリング

各Promiseに対して個別にエラーハンドリングを行うことで、全体の処理が途中で中断されることを防ぐことができます。たとえば、次のように各Promiseにcatchを追加することで、個々のエラーに対処しつつ、処理を続けることができます。

const promises = [
  fetch('https://api.example1.com').catch(error => ({ error })),
  fetch('https://api.example2.com').catch(error => ({ error })),
];

Promise.all(promises).then(results => {
  results.forEach(result => {
    if (result.error) {
      console.error('Error occurred:', result.error);
    } else {
      console.log('Success:', result);
    }
  });
});

このコードでは、各Promiseが失敗した場合でも、そのエラーをキャッチして処理を続行します。これにより、一部の非同期処理が失敗しても、他の成功した処理を正しく受け取ることができます。

Promise.allSettledによるエラーハンドリング

Promise.allSettledは、Promise.allのように1つのPromiseが失敗した時点で処理を中断するのではなく、すべてのPromiseの結果(成功・失敗の両方)を受け取ることができるメソッドです。これを利用することで、エラーが発生しても他のPromiseの結果を失わずに済みます。

const promises = [
  fetch('https://api.example1.com'),
  fetch('https://api.example2.com'),
  Promise.reject(new Error('Intentional failure')),
];

Promise.allSettled(promises).then(results => {
  results.forEach(result => {
    if (result.status === 'fulfilled') {
      console.log('Success:', result.value);
    } else {
      console.error('Failed:', result.reason);
    }
  });
});

このコードでは、Promise.allSettledを使用しているため、全てのPromiseが解決され、各結果が「fulfilled(成功)」または「rejected(失敗)」のステータスで返されます。これにより、どのPromiseが成功し、どれが失敗したのかを明確に確認できます。

エラー発生時のリトライ戦略

ネットワークの問題や一時的な障害が原因でPromiseが失敗することがあります。このような場合、一定回数リトライを試みることで、一時的な問題を回避することができます。

async function fetchWithRetry(url: string, retries: number = 3): Promise<any> {
  for (let i = 0; i < retries; i++) {
    try {
      const response = await fetch(url);
      return await response.json();
    } catch (error) {
      console.error(`Attempt ${i + 1} failed. Retrying...`);
      if (i === retries - 1) throw error; // 最後のリトライで失敗した場合、エラーを投げる
    }
  }
}

const promises = [
  fetchWithRetry('https://api.example1.com'),
  fetchWithRetry('https://api.example2.com'),
];

Promise.all(promises).then(results => {
  console.log('All data fetched successfully:', results);
}).catch(error => {
  console.error('Error fetching data:', error);
});

このリトライ戦略では、指定された回数だけ失敗した処理を再試行し、最終的に成功すれば結果を返します。リトライの回数を設定することで、一時的なエラーを乗り越えて処理を続行することが可能です。

まとめ

Promise.allを使う場合、エラーハンドリングは非常に重要です。Promise.allSettledや個別のcatchブロックを活用して、エラーが発生しても全体の処理が中断されないように設計することがベストプラクティスです。また、リトライ戦略を導入することで、一時的なエラーに柔軟に対応できる設計を目指すことができます。

応用編:Promise.allSettledとの違い

Promise.allPromise.allSettledは、どちらも複数のPromiseを処理するための強力なメソッドですが、その動作には大きな違いがあります。Promise.allは、すべてのPromiseが成功することを前提にしていますが、Promise.allSettledはすべてのPromiseの結果を受け取ることができ、成功・失敗にかかわらず、すべてのPromiseの状態を追跡するために使用されます。この章では、両者の違いと、どの場面でどちらを使うべきかを解説します。

Promise.allの特徴

Promise.allは、渡されたすべてのPromiseが解決(成功)するまで待機し、1つでも失敗(reject)すると即座にエラーが返されます。すべてのPromiseが成功した場合にのみ、成功した結果の配列が返されます。

const promises = [
  fetch('https://api.example1.com'),
  fetch('https://api.example2.com'),
  fetch('https://api.example3.com'),
];

Promise.all(promises).then(results => {
  console.log('All requests successful:', results);
}).catch(error => {
  console.error('One or more requests failed:', error);
});

このコードでは、1つでもfetchが失敗すると、Promise.all全体が失敗し、キャッチされたエラーが出力されます。このように、すべてのPromiseが成功することが前提となっている場合、Promise.allが有効です。

Promise.allが適している場面

  • 複数の非同期処理が全て成功しなければならない場合。
  • 1つの処理の失敗が他の処理の結果に重大な影響を与える場合。

たとえば、複数のAPIリクエストが依存関係にある場合など、1つでも失敗した時点で全体を中断する必要がある場面でPromise.allが効果的です。

Promise.allSettledの特徴

Promise.allSettledは、すべてのPromiseが解決または拒否されるまで待ち、それぞれのPromiseの結果を「成功」か「失敗」として返します。これにより、1つのPromiseが失敗しても、他のPromiseの結果はすべて取得できます。

const promises = [
  fetch('https://api.example1.com'),
  fetch('https://api.example2.com'),
  Promise.reject(new Error('Intentional failure')),
];

Promise.allSettled(promises).then(results => {
  results.forEach(result => {
    if (result.status === 'fulfilled') {
      console.log('Success:', result.value);
    } else {
      console.error('Failed:', result.reason);
    }
  });
});

このコードでは、3つ目のPromiseが失敗しても、Promise.allSettledは他のPromiseの成功結果を処理します。これにより、すべての結果を個別に確認できるため、部分的な失敗にも対応できます。

Promise.allSettledが適している場面

  • 成功と失敗の両方の結果を知りたい場合。
  • 失敗した処理が他の成功した処理に影響を与えない場合。
  • すべての結果を評価し、次のステップを計画する必要がある場合。

例えば、複数のAPIリクエストの結果をユーザーに部分的にでも表示したい場合や、個別の処理が独立している場合、Promise.allSettledが有効です。

Promise.allSettledとPromise.allの使い分け

特徴Promise.allPromise.allSettled
エラーハンドリング1つのエラーで全体が失敗すべての結果が返される
成功時の動作全Promiseが成功した場合のみ結果成功・失敗を問わずすべての結果
適用場面すべてが成功しないと意味がない成功・失敗の結果がそれぞれ重要
パフォーマンス失敗時に早期終了し効率的最後まで処理が行われる

Promise.allを使うべきケース

  • データベースのトランザクションのように、全ての処理が成功することが必要な場合。
  • 複数の依存関係がある処理が失敗したら、全体を中止したい場合。

Promise.allSettledを使うべきケース

  • 1つの非同期処理が失敗しても、他の処理の結果を活かしたい場合。
  • 複数の独立したタスクがあり、全体の状態を確認したい場合。

まとめ

Promise.allPromise.allSettledは、それぞれ異なる用途に適しています。Promise.allはすべての非同期処理が成功する必要がある場合に適し、Promise.allSettledは成功と失敗の両方の結果を取得したい場合に最適です。これらの使い分けによって、非同期処理のエラーハンドリングや結果の処理がより柔軟に行えるようになります。

よくある間違いとその対策

非同期処理におけるPromise.allの使用は非常に強力ですが、正しく理解していないと、思わぬミスやパフォーマンスの低下を招くことがあります。ここでは、Promise.allや非同期ループ処理におけるよくある間違いと、それに対する適切な対策を紹介します。

1. `forEach`で`await`を使ってしまう

forEachメソッド内でawaitを使うと、非同期処理が期待通りに実行されないことがあります。forEachはPromiseを返さないため、内部でawaitを使っても処理が逐次的に実行されるのではなく、次のループが即座に開始されてしまいます。

間違った例:

const items = [1, 2, 3];

items.forEach(async (item) => {
  await asyncFunction(item);
});

このコードは、各asyncFunctionが非同期に実行されるため、処理の順序や完了の保証がされません。

正しい対策:

for...ofループを使用することで、各非同期処理が正しく順番に完了するまで待機できます。また、Promise.allと組み合わせることで、処理を並行して実行することも可能です。

const items = [1, 2, 3];

for (const item of items) {
  await asyncFunction(item);
}

または、Promise.allを使って並行処理を行う場合は次のようにします。

const items = [1, 2, 3];

const promises = items.map(item => asyncFunction(item));
await Promise.all(promises);

2. `Promise.all`で処理を並列化していない

非同期処理を逐次的に行う必要がない場合でも、awaitを使用して1つずつ処理することで、並列化によるパフォーマンス向上を得られないことがあります。

間違った例:

async function processSequentially(items: number[]) {
  const results = [];
  for (const item of items) {
    const result = await asyncFunction(item);
    results.push(result);
  }
  return results;
}

このコードでは、各asyncFunctionが1つずつ順番に実行されるため、処理全体に無駄な時間がかかります。

正しい対策:

Promise.allを使って、全ての非同期処理を同時に実行することで、処理時間を短縮できます。

async function processConcurrently(items: number[]) {
  const promises = items.map(item => asyncFunction(item));
  const results = await Promise.all(promises);
  return results;
}

3. エラーハンドリングを怠る

Promise.allで1つのPromiseが失敗すると、他のPromiseが成功していても全体が失敗として扱われます。適切なエラーハンドリングを行わないと、失敗した処理が他の成功した結果を隠してしまうことがあります。

間違った例:

const promises = [fetchData1(), fetchData2(), fetchData3()];
const results = await Promise.all(promises); // 1つでも失敗すると全体が失敗

正しい対策:

エラーハンドリングを各Promiseに対して行い、全ての結果を処理できるようにします。Promise.allSettledを使用することも有効です。

const promises = [
  fetchData1().catch(err => ({ error: err })),
  fetchData2().catch(err => ({ error: err })),
  fetchData3().catch(err => ({ error: err })),
];

const results = await Promise.all(promises);

results.forEach(result => {
  if (result.error) {
    console.error('Error:', result.error);
  } else {
    console.log('Success:', result);
  }
});

また、すべてのPromiseの結果を確認したい場合は、Promise.allSettledを使用するのが適切です。

const promises = [fetchData1(), fetchData2(), fetchData3()];
const results = await Promise.allSettled(promises);

results.forEach(result => {
  if (result.status === 'fulfilled') {
    console.log('Success:', result.value);
  } else {
    console.error('Error:', result.reason);
  }
});

4. 非同期処理の過剰な並行実行

Promise.allで大量の非同期処理を一度に実行すると、システムのリソースを圧迫する可能性があります。特に、数百や数千のリクエストを一度に実行すると、サーバーやメモリに負荷がかかり、パフォーマンスが低下する可能性があります。

正しい対策:

処理をバッチ化し、少しずつ実行することでリソースの消費を抑えながら、効率的に処理を進めることができます。

async function processInBatches(items: number[], batchSize: number) {
  const results = [];
  for (let i = 0; i < items.length; i += batchSize) {
    const batch = items.slice(i, i + batchSize);
    const batchResults = await Promise.all(batch.map(item => asyncFunction(item)));
    results.push(...batchResults);
  }
  return results;
}

まとめ

非同期処理におけるよくある間違いは、処理の順序やエラーハンドリング、並行実行の適切な使い方に関するものが多いです。これらの間違いを回避するためには、非同期ループ処理でPromise.allPromise.allSettledを正しく活用し、エラーハンドリングやリソース管理を意識した設計を行うことが重要です。これにより、効率的で堅牢な非同期処理を実現できます。

まとめ

本記事では、TypeScriptにおける非同期ループ処理でのPromise.allの活用法と、その注意点について詳しく解説しました。Promise.allは、複数の非同期処理を並行して実行する強力な手段ですが、正しいエラーハンドリングや適切な使い方をしなければ、思わぬトラブルが発生することがあります。また、Promise.allSettledを使用することで、失敗した処理が他の成功した処理に影響を与えないようにすることもできます。これらの技術を理解し、適切に使い分けることで、非同期処理を効率よく行い、アプリケーションのパフォーマンスを向上させることができます。

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