TypeScriptのリテラル型は、コードの型安全性を大幅に向上させる強力なツールです。リテラル型を使用することで、特定の値だけを型として指定できるため、予期しないエラーを未然に防ぐことが可能です。本記事では、リテラル型の基本的な使い方から応用例、型推論やエラーハンドリングでの活用方法までを解説し、実際のプロジェクトでどのように利用できるかを詳しく紹介します。リテラル型を効果的に活用することで、より型安全なコーディングを実現し、バグの少ないコードを目指しましょう。
リテラル型とは何か
リテラル型とは、TypeScriptにおいて特定の値そのものを型として扱う機能です。通常の型定義では、数値や文字列などの一般的な型を指定しますが、リテラル型を使用することで「特定の値」しか受け付けない変数や関数の引数を定義することが可能です。たとえば、"yes"
や "no"
といった特定の文字列を型に指定することで、受け入れる値を明確に制限できます。
リテラル型は、型チェックをより厳格にし、予期しない動作やエラーを防ぐための重要な要素となります。特定の値に依存する処理を行う際に、この型を使うことで、開発者は安心してコードを記述でき、実行時エラーを回避することができます。
リテラル型の基本的な使い方
リテラル型の基本的な使い方は、特定の値そのものを型として宣言することです。たとえば、ある変数に "yes"
か "no"
という値しか許可しないようにリテラル型を使用することができます。これにより、想定外の値が代入されることを防ぐことが可能です。
シンプルな例
次のコード例では、yes
または no
しか許可しないリテラル型を定義しています。
let answer: "yes" | "no";
answer = "yes"; // 正常
answer = "no"; // 正常
answer = "maybe"; // エラー: 型 '"maybe"' を型 '"yes" | "no"' に割り当てることはできません。
この例では、answer
という変数は "yes"
または "no"
という文字列リテラルしか受け付けません。間違った値を割り当てると、TypeScriptはコンパイル時にエラーを報告し、バグを事前に防ぐことができます。
数値リテラル型の例
リテラル型は数値でも使用可能です。例えば、1
か 2
しか許可しない変数を定義する場合:
let option: 1 | 2;
option = 1; // 正常
option = 2; // 正常
option = 3; // エラー: 型 '3' を型 '1 | 2' に割り当てることはできません。
このように、リテラル型を活用することで、値を限定し、コードの型安全性を向上させることができます。
リテラル型の応用:定数化による型安全性の向上
リテラル型を使うことで、定数を型に取り入れ、さらに型安全なコードを実現することが可能です。これは、特定の値に対してのみ動作するロジックを作成する際に非常に有効です。例えば、ステータスや設定オプションなど、選択肢が固定されている場合に活用できます。
定数とリテラル型の組み合わせ
リテラル型を用いることで、定数の値を型として定義し、それを使ってより堅牢なコードを記述できます。次の例では、アプリケーションの状態を示す定数をリテラル型で定義し、それを引数に取る関数を実装しています。
type Status = "active" | "inactive" | "pending";
function updateStatus(status: Status) {
console.log(`ステータスが${status}に更新されました。`);
}
updateStatus("active"); // 正常
updateStatus("inactive"); // 正常
updateStatus("done"); // エラー: 型 '"done"' を型 'Status' に割り当てることはできません。
このコードでは、Status
型を "active"
、"inactive"
、"pending"
という特定の文字列に制限しています。これにより、想定外の値が渡されることを防ぎ、誤った状態更新のリスクを回避できます。
定数オブジェクトのリテラル型化
リテラル型は、定数オブジェクトや設定オプションにも適用可能です。以下の例では、設定オプションをリテラル型で定義しています。
const Config = {
theme: "dark" as const,
language: "en" as const
};
function applyConfig(config: typeof Config) {
console.log(`テーマ: ${config.theme}, 言語: ${config.language}`);
}
applyConfig(Config); // 正常
as const
を使うことで、オブジェクトのプロパティをリテラル型として扱い、変更されない定数として扱います。この方法を使うと、オブジェクト全体の一貫性を保ちながら、型安全なコードが書けるようになります。
このように、リテラル型を定数化することで、型の安全性がさらに向上し、予期しないエラーや誤った値の入力を防ぐことができるのです。
ユニオン型とリテラル型の組み合わせ
リテラル型はユニオン型と組み合わせることで、さらに柔軟で強力な型定義が可能になります。ユニオン型は複数の型を一つにまとめたもので、リテラル型を使うことで、指定した特定の値の中から一つを選ぶような型制約を定義できます。この組み合わせは、選択肢が限られている場合や、操作のバリエーションが明確に決まっている場合に特に役立ちます。
ユニオン型とは
ユニオン型は、複数の型を並べ、それらの型のいずれかを許可する型です。リテラル型と組み合わせることで、指定した値だけを許可する制約が作れます。次の例では、"small"
, "medium"
, "large"
のいずれかを選べる型をユニオン型とリテラル型で定義しています。
type Size = "small" | "medium" | "large";
function selectSize(size: Size) {
console.log(`選択されたサイズ: ${size}`);
}
selectSize("small"); // 正常
selectSize("medium"); // 正常
selectSize("extra-large"); // エラー: 型 '"extra-large"' を型 'Size' に割り当てることはできません。
この例では、Size
型は "small"
、"medium"
、"large"
のいずれかのみが許可されており、それ以外の文字列が渡されるとエラーが発生します。このように、ユニオン型とリテラル型を組み合わせることで、コードの型安全性を高め、入力の制約をより明確にすることができます。
複数のリテラル型を使った柔軟な設計
リテラル型を複数の型と組み合わせることで、さらに柔軟な設計が可能です。例えば、以下のコードでは、操作モードと動作ステータスの組み合わせをユニオン型で定義しています。
type Mode = "auto" | "manual";
type Status = "on" | "off";
function setMode(mode: Mode, status: Status) {
console.log(`モード: ${mode}, ステータス: ${status}`);
}
setMode("auto", "on"); // 正常
setMode("manual", "off"); // 正常
setMode("auto", "pause"); // エラー: 型 '"pause"' を型 'Status' に割り当てることはできません。
このように、複数のリテラル型とユニオン型を組み合わせることで、複雑なルールや条件を型で表現し、型安全性を確保しながらも柔軟なコードを記述できます。
ユニオン型とリテラル型の組み合わせは、選択肢が固定された場合や、異なる値を柔軟に扱いたい場面で特に役立ちます。これにより、誤った入力がされる可能性を減らし、コードの信頼性を高めることができます。
テンプレートリテラル型の活用
TypeScriptでは、文字列リテラル型をさらに強力に拡張した「テンプレートリテラル型」を使用することができます。これは、通常のリテラル型を柔軟に扱えるようにし、文字列の一部を動的に生成するような型を作成できる機能です。テンプレートリテラル型を活用することで、より複雑な文字列パターンを表現しつつ、型安全性を維持できます。
テンプレートリテラル型の基本
テンプレートリテラル型は、通常のJavaScriptのテンプレートリテラル(バッククォートで囲んだ文字列)と似ていますが、型として利用することで、特定の文字列パターンを制限できます。以下はその基本的な例です。
type Size = "small" | "medium" | "large";
type Label = `${Size}-shirt`;
let myShirt: Label;
myShirt = "small-shirt"; // 正常
myShirt = "large-shirt"; // 正常
myShirt = "extra-large-shirt"; // エラー: 型 '"extra-large-shirt"' を型 'Label' に割り当てることはできません。
この例では、Label
型は "small-shirt"
、"medium-shirt"
、"large-shirt"
のいずれかを許可します。テンプレートリテラル型を使うことで、リテラル型の組み合わせに基づく文字列パターンを効率的に定義でき、誤ったパターンの文字列を防ぎます。
テンプレートリテラル型の応用例
テンプレートリテラル型は、複数のパターンを含む複雑な型定義に非常に便利です。例えば、次のコードでは、ユーザーのアクションとその状態を組み合わせた文字列型を定義しています。
type Action = "create" | "update" | "delete";
type State = "success" | "failure";
type LogMessage = `${Action}-${State}`;
function logAction(message: LogMessage) {
console.log(`ログ: ${message}`);
}
logAction("create-success"); // 正常
logAction("delete-failure"); // 正常
logAction("update-error"); // エラー: 型 '"update-error"' を型 'LogMessage' に割り当てることはできません。
ここでは、LogMessage
型が "create-success"
, "update-failure"
のような特定のパターンを許可し、それ以外の文字列にはエラーを発生させます。このようにテンプレートリテラル型を使うことで、より細かい文字列パターンを型で管理し、予期しないエラーパターンを未然に防ぐことができます。
パラメータ化されたテンプレートリテラル型
テンプレートリテラル型は、他の型と組み合わせてパラメータ化された型を作成することも可能です。以下の例では、動的に構築されるURLの形式を型で保証しています。
type Endpoint = "user" | "post";
type Method = "get" | "post";
type APIRequest = `${Method}/api/${Endpoint}`;
function fetchFromAPI(request: APIRequest) {
console.log(`APIリクエスト: ${request}`);
}
fetchFromAPI("get/api/user"); // 正常
fetchFromAPI("post/api/post"); // 正常
fetchFromAPI("delete/api/user"); // エラー: 型 '"delete/api/user"' を型 'APIRequest' に割り当てることはできません。
この例では、APIRequest
型が "get/api/user"
などの形式に制限されており、不正なリクエストパターンを防ぎます。テンプレートリテラル型は、このようにパラメータを含む複雑な構造を表現するのに最適です。
テンプレートリテラル型を活用することで、コードの型安全性を強化し、より複雑な文字列操作を型レベルで管理できるようになります。これにより、エラーを減らし、開発者にとってメンテナンスしやすいコードを実現することが可能です。
リテラル型の型推論と制約
TypeScriptでは、リテラル型の型推論が強力で、コンパイラが特定のリテラル値を元に自動的に型を決定します。しかし、リテラル型には推論の制約があり、特定の状況では思い通りの型が推論されないこともあります。リテラル型の型推論の仕組みとその制約について理解しておくことは、意図した通りに型安全なコードを記述するために重要です。
リテラル型の型推論
TypeScriptは変数に値を割り当てた際、その値を基にリテラル型を推論します。次の例を見てみましょう。
let greeting = "hello";
この場合、greeting
変数の型は自動的に "hello"
というリテラル型ではなく、string
型として推論されます。これは、TypeScriptが変数に割り当てられた値のリテラル型を推論するのではなく、より汎用的な型を割り当てるためです。この挙動は、後から別の文字列を代入する可能性がある場合を考慮してのものです。
リテラル型を維持するためには、明示的に型を指定するか、const
を使ってリテラル型に固定する必要があります。
const greetingConst = "hello"; // greetingConstの型は "hello"
let greetingLiteral: "hello" = "hello"; // 明示的なリテラル型の指定
このように、const
を使うと値が変更されないため、リテラル型として扱われ、greetingConst
の型は "hello"
に固定されます。
リテラル型の制約
リテラル型は非常に強力ですが、いくつかの制約があります。特に、動的に生成される値や柔軟な操作が必要な場面では、リテラル型の活用が難しいことがあります。以下の例では、その一つの例を示します。
function printMessage(message: "success" | "error") {
console.log(message);
}
let userMessage = "success";
printMessage(userMessage); // エラー: 型 'string' を型 '"success" | "error"' に割り当てることはできません。
ここで、userMessage
には "success"
という値が割り当てられていますが、型推論によって userMessage
は string
型となり、リテラル型 "success"
ではなくなっています。そのため、printMessage
関数に渡すことができません。この問題を解決するには、リテラル型として型を明示する必要があります。
let userMessage: "success" = "success";
printMessage(userMessage); // 正常
このように、リテラル型を使用する際には、適切に型を明示するか、const
で値を固定することで、型推論による制約を回避できます。
TypeScriptの型推論とリテラル型の活用
TypeScriptの型推論は強力ですが、リテラル型においては推論される型が期待と異なることがあります。そのため、明示的な型定義や const
を使うことでリテラル型を正しく活用し、型安全性を向上させることが重要です。リテラル型を利用することで、より厳密な型チェックが可能となり、コードの堅牢性を確保することができます。
エラーハンドリングでのリテラル型の利用
リテラル型は、エラーハンドリングの場面でも非常に有効です。特定のエラーメッセージやステータスコードをリテラル型で定義することで、エラー処理の際に型安全性を確保し、予期しないエラーや無効なエラーメッセージが発生することを防ぐことができます。これにより、エラーの種類や状態を明確に管理し、コードの可読性と信頼性を高めることができます。
リテラル型を使ったエラーステータスの定義
まず、リテラル型を使用して、特定のエラーステータスやエラーメッセージを定義します。これにより、エラーステータスに指定した範囲外の値が渡されることを防ぎます。
type ErrorStatus = "404" | "500" | "403";
type ErrorMessage = "Not Found" | "Internal Server Error" | "Forbidden";
function handleError(status: ErrorStatus, message: ErrorMessage) {
console.log(`エラーが発生しました。ステータス: ${status}, メッセージ: ${message}`);
}
handleError("404", "Not Found"); // 正常
handleError("500", "Internal Server Error"); // 正常
handleError("400", "Bad Request"); // エラー: 型 '"400"' を型 'ErrorStatus' に割り当てることはできません。
このコードでは、ErrorStatus
と ErrorMessage
をリテラル型として定義することで、特定のステータスコードとエラーメッセージだけが許可されています。これにより、意図しないステータスやメッセージが渡されることがなくなり、型安全なエラーハンドリングが可能になります。
カスタムエラー型の定義と利用
さらに、リテラル型を使ってカスタムエラー型を作成することで、複数のエラー状態をより厳密に管理できます。次の例では、エラーの種類ごとに異なる処理を行う関数を定義します。
type ApiError = {
status: "404" | "500" | "403";
message: "Not Found" | "Internal Server Error" | "Forbidden";
};
function logApiError(error: ApiError) {
console.log(`APIエラー: ステータス - ${error.status}, メッセージ - ${error.message}`);
}
const error: ApiError = { status: "404", message: "Not Found" };
logApiError(error); // 正常
const invalidError: ApiError = { status: "400", message: "Bad Request" };
// エラー: 型 '"400"' を型 '"404" | "500" | "403"' に割り当てることはできません。
このように、ApiError
型をリテラル型で定義することで、エラーオブジェクトの構造を型で管理でき、誤ったエラー情報が渡されることを防ぎます。
エラーコードとメッセージの関連付け
リテラル型を使って、エラーコードとメッセージの組み合わせをより厳密に制御することも可能です。次の例では、エラーステータスに対応するメッセージをリテラル型の組み合わせで保証しています。
type ErrorMap = {
"404": "Not Found";
"500": "Internal Server Error";
"403": "Forbidden";
};
function getErrorMessage<T extends keyof ErrorMap>(status: T): ErrorMap[T] {
const messages: ErrorMap = {
"404": "Not Found",
"500": "Internal Server Error",
"403": "Forbidden"
};
return messages[status];
}
const errorMessage = getErrorMessage("404"); // 正常: "Not Found"
const invalidMessage = getErrorMessage("400"); // エラー: 型 '"400"' を型 'keyof ErrorMap' に割り当てることはできません。
ここでは、ErrorMap
をリテラル型で定義し、エラーステータスとメッセージの関連性を明確に型で表現しています。このようにリテラル型を活用することで、エラーハンドリングがより安全で管理しやすくなります。
エラーハンドリングにリテラル型を使うことで、特定のエラーパターンやステータスコードを厳密に定義し、開発者が予期しないエラーを避けるための堅牢な型安全性を実現することができます。これにより、信頼性の高いエラーハンドリングが可能となり、コードの可読性とメンテナンス性も向上します。
リテラル型の実践例:状態管理
リテラル型は、アプリケーションの状態管理においても非常に有用です。特定の状態やアクションをリテラル型で定義することで、状態遷移が予測可能であり、型安全な状態管理を実現することができます。これにより、アプリケーションの状態が想定外の遷移をすることを防ぎ、バグの少ない堅牢な設計が可能になります。
状態管理でのリテラル型の活用
アプリケーションの状態管理では、例えばローディング中、成功、失敗といった複数の状態をリテラル型で定義し、それぞれの状態に応じた処理を行うことができます。次の例では、シンプルなAPIリクエストの状態管理をリテラル型で表現しています。
type RequestState = "loading" | "success" | "error";
function handleRequest(state: RequestState) {
switch (state) {
case "loading":
console.log("リクエスト中...");
break;
case "success":
console.log("リクエストが成功しました!");
break;
case "error":
console.log("リクエストに失敗しました。");
break;
default:
// このケースはリテラル型により発生しないことが保証されています
console.log("未知の状態");
}
}
handleRequest("loading"); // 正常
handleRequest("success"); // 正常
handleRequest("failed"); // エラー: 型 '"failed"' を型 'RequestState' に割り当てることはできません。
この例では、RequestState
というリテラル型を使い、APIリクエストの状態を "loading"
, "success"
, "error"
に限定しています。これにより、想定外の状態が渡されることがなく、型安全に状態を管理できます。
複数の状態とアクションを管理する
状態管理がより複雑になる場合、リテラル型を使って、状態とそれに関連するアクションを管理することができます。次の例では、ショッピングカートの状態をリテラル型で定義し、状態に応じたアクションを適切に処理しています。
type CartState = "empty" | "loading" | "filled" | "error";
type CartAction = "addItem" | "removeItem" | "checkout";
function updateCart(state: CartState, action: CartAction): CartState {
switch (action) {
case "addItem":
return state === "empty" || state === "filled" ? "filled" : state;
case "removeItem":
return state === "filled" ? "empty" : state;
case "checkout":
return state === "filled" ? "loading" : state;
default:
return state;
}
}
let currentState: CartState = "empty";
currentState = updateCart(currentState, "addItem"); // 状態は "filled" に変わる
currentState = updateCart(currentState, "checkout"); // 状態は "loading" に変わる
console.log(currentState); // 出力: "loading"
この例では、CartState
と CartAction
をリテラル型で定義し、状態遷移を型で制御しています。これにより、無効な状態遷移やアクションが型レベルで防がれるため、バグの発生を抑えることができます。
状態遷移図に基づいたリテラル型の活用
状態遷移がさらに複雑になる場合、状態遷移図に基づいてリテラル型を設計し、状態ごとに許可されるアクションを明確にすることも可能です。例えば、状態によって実行できるアクションをリテラル型で制限することで、無効な操作を防ぎます。
type State = "idle" | "loading" | "success" | "error";
type AllowedAction<StateType> =
StateType extends "idle" ? "start" :
StateType extends "loading" ? "cancel" :
StateType extends "success" ? "reset" :
StateType extends "error" ? "retry" : never;
function transition<StateType extends State>(
state: StateType, action: AllowedAction<StateType>
): State {
switch (state) {
case "idle":
if (action === "start") return "loading";
break;
case "loading":
if (action === "cancel") return "idle";
break;
case "success":
if (action === "reset") return "idle";
break;
case "error":
if (action === "retry") return "loading";
break;
}
return state;
}
let currentState2: State = "idle";
currentState2 = transition(currentState2, "start"); // 状態は "loading" に変わる
currentState2 = transition(currentState2, "cancel"); // 状態は "idle" に戻る
console.log(currentState2); // 出力: "idle"
このコードでは、状態に応じて実行可能なアクションが型で制限されています。idle
状態では start
アクションのみが許可され、loading
状態では cancel
アクションだけが許可されています。これにより、状態に合わないアクションが実行されることを防ぎ、より安全な状態管理が実現できます。
リテラル型を使った状態管理は、状態遷移の一貫性を保ち、バグを減らし、型安全なアプリケーション設計に貢献します。このような設計は、特に複雑な状態遷移が存在するプロジェクトにおいて有効です。
型安全性を確保するためのベストプラクティス
TypeScriptでリテラル型を活用することで、型安全なコードを実現することが可能です。しかし、リテラル型を効果的に使いこなすためには、いくつかのベストプラクティスを理解しておくことが重要です。ここでは、リテラル型を使用して型安全性を最大限に引き出すための主要なポイントを紹介します。
1. 可能な限り型を明示的に指定する
TypeScriptの型推論は非常に強力ですが、リテラル型を使用する場合、意図しない型推論が行われることもあります。リテラル型を使いたい場面では、型を明示的に指定することが推奨されます。次の例では、リテラル型を明示的に指定することで、予期しない値が代入されるのを防いでいます。
let action: "start" | "stop" = "start"; // 明示的な型指定
action = "stop"; // 正常
action = "pause"; // エラー: 型 '"pause"' を型 '"start" | "stop"' に割り当てることはできません。
型を明示的に定義することで、コードの意図が明確になり、予期しない型の値が使用されることを防ぎます。
2. 定数は「as const」を活用してリテラル型を維持する
定数や設定オブジェクトを定義する際には、as const
を使用してリテラル型を維持することが効果的です。as const
を付けることで、オブジェクトや配列の値がそのままリテラル型として扱われ、変更されないことが保証されます。
const config = {
mode: "dark",
language: "en"
} as const;
function setConfig(c: typeof config) {
console.log(`設定: モードは ${c.mode}、言語は ${c.language}`);
}
setConfig(config); // 正常
この例では、config
オブジェクトのプロパティがリテラル型として扱われ、変更が許されません。これにより、定数の一貫性が保たれ、型安全性が強化されます。
3. ユニオン型を積極的に活用する
リテラル型とユニオン型を組み合わせることで、柔軟かつ安全な型定義が可能になります。複数のリテラル型をまとめたユニオン型を定義することで、限られた選択肢の中から安全に値を選ぶことができ、型エラーを防ぐことができます。
type Direction = "up" | "down" | "left" | "right";
function move(direction: Direction) {
console.log(`移動方向: ${direction}`);
}
move("up"); // 正常
move("down"); // 正常
move("north"); // エラー: 型 '"north"' を型 'Direction' に割り当てることはできません。
このように、ユニオン型を使用することで、関数が受け取る値をリテラル型で制限し、型安全な操作を実現できます。
4. 複雑な型定義にはテンプレートリテラル型を活用する
複雑な文字列パターンや状態を扱う場合、テンプレートリテラル型を使用して、柔軟でかつ型安全な定義を行うことができます。テンプレートリテラル型を活用することで、異なるリテラル型を組み合わせた型定義が可能です。
type Size = "small" | "medium" | "large";
type Color = "red" | "blue" | "green";
type Shirt = `${Size}-${Color}`;
function selectShirt(shirt: Shirt) {
console.log(`選択されたシャツ: ${shirt}`);
}
selectShirt("medium-red"); // 正常
selectShirt("large-green"); // 正常
selectShirt("extra-large-blue"); // エラー: 型 '"extra-large-blue"' を型 'Shirt' に割り当てることはできません。
このように、テンプレートリテラル型を活用すると、複雑な型定義でも型安全性を維持しつつ、柔軟に対応できます。
5. 型の再利用とメンテナンス性を高める
リテラル型を使うと、型定義が複雑になることがあります。そのため、共通のリテラル型やユニオン型を再利用し、コードのメンテナンス性を高めることが重要です。次の例では、共通のリテラル型を使い回し、複数の関数で同じ型を利用しています。
type Status = "pending" | "completed" | "failed";
function updateStatus(status: Status) {
console.log(`ステータスを更新: ${status}`);
}
function logStatus(status: Status) {
console.log(`ログ: 現在のステータスは ${status}`);
}
updateStatus("pending"); // 正常
logStatus("completed"); // 正常
このように共通の型を定義し、複数の関数やオブジェクトで再利用することで、コードの一貫性が保たれ、型変更時の影響を最小限に抑えることができます。
リテラル型を効果的に活用し、これらのベストプラクティスを遵守することで、TypeScriptの型安全性を最大限に引き出し、堅牢で保守性の高いコードを実現することが可能です。
リテラル型の演習問題
リテラル型を実践的に理解するために、いくつかの演習問題を通じて知識を深めましょう。これらの問題は、リテラル型の基本的な使い方から応用例までをカバーしており、型安全なコーディングの重要性を実感できる内容です。
問題1: APIステータスの管理
以下の関数 handleApiResponse
は、APIのレスポンスを処理する関数です。関数は、"success"
、"error"
、"loading"
のいずれかの状態を受け取る必要があります。リテラル型を使用して、関数の引数の型を制限してください。
function handleApiResponse(status: string) {
switch (status) {
case "success":
console.log("データが正常にロードされました。");
break;
case "error":
console.log("エラーが発生しました。");
break;
case "loading":
console.log("データをロード中です...");
break;
default:
console.log("不明なステータスです。");
}
}
handleApiResponse("success"); // 正常
handleApiResponse("error"); // 正常
handleApiResponse("finished"); // エラーにするにはどうすれば良いか?
課題: 関数の引数 status
にリテラル型を使用して、"finished"
のような無効な値が渡されないようにしてください。
問題2: サイズと色の組み合わせ
シャツのサイズと色を選ぶためのリテラル型を定義し、関数 chooseShirt
が正しい組み合わせのシャツを選択できるようにしてください。
type Size = "small" | "medium" | "large";
type Color = "red" | "blue" | "green";
function chooseShirt(size: Size, color: string) {
console.log(`選択されたシャツ: サイズは ${size}、色は ${color}`);
}
chooseShirt("medium", "blue"); // 正常
chooseShirt("large", "yellow"); // エラーにするにはどうするか?
課題: chooseShirt
関数の color
にもリテラル型を適用し、無効な色が選ばれないようにしてください。
問題3: 状態遷移の定義
状態遷移が以下のように制限されている状態管理を考えます。リテラル型を使って、状態遷移が正しく行われるように型定義を完成させてください。
"idle"
からは"loading"
にのみ遷移できる。"loading"
からは"success"
または"error"
に遷移できる。"success"
と"error"
からは"idle"
に戻る。
type State = "idle" | "loading" | "success" | "error";
function transitionState(currentState: State, action: string): State {
switch (currentState) {
case "idle":
return action === "start" ? "loading" : currentState;
case "loading":
return action === "finish" ? "success" : action === "fail" ? "error" : currentState;
case "success":
case "error":
return action === "reset" ? "idle" : currentState;
default:
return currentState;
}
}
let currentState: State = "idle";
currentState = transitionState(currentState, "start"); // "loading" になる
currentState = transitionState(currentState, "finish"); // "success" になる
課題: action
の型をリテラル型にし、無効なアクションが渡されないようにしてください。
問題4: APIエラーメッセージの管理
APIのエラーメッセージをリテラル型で管理し、エラーメッセージが正しい形式で表示されるようにします。
type ApiError = {
status: "404" | "500" | "403";
message: string;
};
function logError(error: ApiError) {
console.log(`ステータス: ${error.status}, メッセージ: ${error.message}`);
}
logError({ status: "404", message: "Not Found" }); // 正常
logError({ status: "401", message: "Unauthorized" }); // エラーにするには?
課題: ApiError
の status
をリテラル型にし、無効なステータスコードが渡されないようにしてください。また、対応するエラーメッセージも制限してみましょう。
問題5: テンプレートリテラル型での拡張
テンプレートリテラル型を使って、シャツのサイズと色の組み合わせを表現し、それを関数に渡すようにしてください。
type Shirt = `${Size}-${Color}`;
function describeShirt(shirt: Shirt) {
console.log(`選択されたシャツは ${shirt} です。`);
}
describeShirt("small-red"); // 正常
describeShirt("large-yellow"); // エラーにするには?
課題: Shirt
型をテンプレートリテラル型で定義し、無効なサイズや色の組み合わせが渡されないようにしてください。
これらの演習問題に取り組むことで、リテラル型を活用した型安全なコーディングの知識を実践的に身に付けることができます。
まとめ
本記事では、TypeScriptにおけるリテラル型の活用方法について、基本的な概念から応用例までを解説しました。リテラル型を使うことで、コードの型安全性が向上し、予期しないエラーを防ぐことができます。ユニオン型やテンプレートリテラル型との組み合わせにより、複雑な状態管理やパターンを型で表現し、開発効率を高めることができるでしょう。リテラル型を効果的に活用し、型安全なアプリケーション開発を目指しましょう。
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