Swiftにおける列挙型(Enum)は、特定の値をグループ化し、それらを意味のある形で整理するために使用される強力なデータ型です。列挙型を使用すると、関連する定数や値を1つのタイプとしてまとめることができ、コードの可読性や安全性が向上します。例えば、曜日や交通信号の状態など、有限の値しか取り得ないデータを扱う際に非常に便利です。
Swiftの列挙型は、単純な定数のグループを超え、関連値やメソッドを持たせることも可能です。本記事では、列挙型を使った特定の条件に基づく処理方法について詳しく解説します。
列挙型のケースを使用した基本的な条件分岐
Swiftでは、列挙型の各ケースを条件分岐に用いることで、コードの読みやすさと信頼性を向上させることができます。基本的な条件分岐としては、switch
文を使って列挙型の各ケースに対して異なる処理を行います。switch
文は、列挙型の全てのケースを網羅する必要があり、漏れがあるとコンパイル時にエラーが発生するため、バグの防止に役立ちます。
enum TrafficLight {
case red
case yellow
case green
}
let currentLight = TrafficLight.red
switch currentLight {
case .red:
print("Stop")
case .yellow:
print("Slow down")
case .green:
print("Go")
}
この例では、TrafficLight
列挙型の各ケースに対して異なる動作を定義しています。currentLight
がred
の場合には「止まれ」、green
の場合には「進め」といった具合に処理を分岐しています。
`switch`文を用いた列挙型ケースの判別方法
Swiftのswitch
文は、列挙型のケースを簡単かつ明確に判別するための主要な方法です。switch
文は、列挙型のすべてのケースを網羅する必要があり、これにより未処理のケースを防ぐことができます。未処理のケースがある場合、コンパイルエラーとなるため、安全性が高まります。
`switch`文の基本構造
switch
文を使用して、列挙型の各ケースに対する処理を行います。以下は、その基本的な構造です。
enum Weather {
case sunny
case cloudy
case rainy
}
let todayWeather = Weather.sunny
switch todayWeather {
case .sunny:
print("It's a sunny day!")
case .cloudy:
print("It's a bit cloudy today.")
case .rainy:
print("Don't forget your umbrella!")
}
この例では、Weather
という列挙型が定義され、sunny
、cloudy
、rainy
の3つのケースがあります。switch
文を使用して、現在の天気に応じたメッセージを表示しています。
デフォルトケースの使用
列挙型のすべてのケースを網羅しない場合には、default
ケースを追加する必要があります。例えば、新しいケースが追加されても、すぐに対応できない場合などに役立ちます。
enum Beverage {
case coffee
case tea
case juice
}
let chosenBeverage = Beverage.tea
switch chosenBeverage {
case .coffee:
print("You chose coffee.")
case .tea:
print("You chose tea.")
default:
print("You chose something else.")
}
この例では、coffee
とtea
以外の選択肢が選ばれた場合にdefault
ケースが実行されます。default
を利用することで、すべてのケースを明示的に処理しなくても、動作するコードを簡単に作成できます。
複数のケースをまとめて処理する方法
Swiftのswitch
文では、複数の列挙型のケースに対して同じ処理を行いたい場合、ケースをカンマで区切ってまとめることができます。これにより、コードを短くし、同じ処理を何度も書く必要がなくなります。
複数のケースをまとめる方法
複数のケースを1つの処理にまとめる場合、switch
文の中でカンマを使ってケースを並べます。例えば、交通信号の黄色と赤が「注意」と「止まれ」という同じアクションを必要とする場合、以下のようにまとめて記述することが可能です。
enum TrafficLight {
case red
case yellow
case green
}
let currentLight = TrafficLight.yellow
switch currentLight {
case .red, .yellow:
print("Caution or Stop")
case .green:
print("Go")
}
この例では、red
とyellow
の両方が同じメッセージを出力します。複数のケースをまとめることで、コードの重複を避け、メンテナンスが容易になります。
範囲や値でまとめるケース
switch
文では、列挙型だけでなく、数値や範囲を用いた条件でも同様に複数のケースをまとめて処理できます。これにより、特定の範囲に基づく処理を一度に行うことが可能です。
let score = 85
switch score {
case 90...100:
print("Excellent")
case 70...89:
print("Good")
case 0...69:
print("Needs Improvement")
default:
print("Invalid Score")
}
このように、範囲や複数の値をまとめることで、効率的に条件処理を行うことができます。列挙型でも、この方法を使って複数のケースをまとめることが可能です。
条件に基づいた列挙型のデータ取得
Swiftの列挙型には、各ケースに関連する値(associated values)を持たせることができます。これにより、ケースごとに異なるデータを格納し、条件に基づいてそのデータを取得して処理することが可能です。関連値を使用することで、列挙型を単なるケースの集合ではなく、データ構造としても利用できるようになります。
関連値を持つ列挙型
以下は、関連値を持つ列挙型の例です。例えば、支払い方法の列挙型に、クレジットカードの詳細やデジタルウォレットの情報などを関連付けて保持することができます。
enum PaymentMethod {
case cash
case creditCard(number: String, expiry: String)
case digitalWallet(walletID: String)
}
let payment = PaymentMethod.creditCard(number: "1234-5678-9876-5432", expiry: "12/24")
この例では、PaymentMethod
という列挙型が、cash
、creditCard
、digitalWallet
の3つのケースを持ち、creditCard
とdigitalWallet
にはそれぞれ関連するデータ(カード番号やウォレットID)が含まれています。
関連値の取得と条件分岐
switch
文を使って、列挙型の各ケースに関連する値を条件に応じて取得し、処理を行うことができます。以下は、関連値を取得する方法です。
switch payment {
case .cash:
print("Payment method: Cash")
case .creditCard(let number, let expiry):
print("Payment method: Credit Card")
print("Card Number: \(number), Expiry Date: \(expiry)")
case .digitalWallet(let walletID):
print("Payment method: Digital Wallet")
print("Wallet ID: \(walletID)")
}
この例では、creditCard
のケースが選ばれた場合、関連するカード番号と有効期限のデータを取得し、出力しています。関連値はlet
やvar
を使って取得でき、取得したデータはそのまま使って処理を行うことが可能です。
条件付きの関連値取得
switch
文では、条件に応じたパターンマッチングが可能です。例えば、クレジットカードの有効期限が特定の条件に一致する場合だけ処理を行うといったことができます。
switch payment {
case .creditCard(let number, let expiry) where expiry == "12/24":
print("Your card expires in December 2024")
default:
print("Different payment method or expiry")
}
このように、where
句を使って、関連値に対して特定の条件を加えた処理を行うこともできます。
列挙型の関連値を使った高度な条件処理
Swiftの列挙型では、各ケースに関連値(associated values)を持たせることで、柔軟かつ高度な条件処理を実現できます。関連値を使用することで、各ケースごとに異なるデータを保持し、特定の条件に基づいてそのデータを処理することが可能です。これにより、複雑なデータの管理や処理が簡単に行えます。
複数の関連値を持つ列挙型
関連値を使った列挙型では、1つのケースに対して複数の値を持たせることができます。これにより、複雑なデータ構造を列挙型のケースに統合することが可能です。
enum ServerResponse {
case success(message: String, data: [String])
case failure(errorCode: Int, errorMessage: String)
}
let response = ServerResponse.success(message: "Data fetched successfully", data: ["Item1", "Item2", "Item3"])
この例では、ServerResponse
という列挙型が、success
とfailure
という2つのケースを持ち、それぞれに関連するデータ(メッセージやエラーコード)を保持しています。
関連値のパターンマッチングを用いた高度な処理
関連値を利用した列挙型では、パターンマッチングを使って各ケースのデータを詳細に処理することができます。例えば、サーバーの応答に応じて、異なるアクションを実行する場合のコードは以下の通りです。
switch response {
case .success(let message, let data):
print("Success: \(message)")
print("Data: \(data)")
case .failure(let errorCode, let errorMessage):
print("Error \(errorCode): \(errorMessage)")
}
この例では、success
の場合には取得したデータを表示し、failure
の場合にはエラーコードとエラーメッセージを出力します。関連値の内容に応じて、各ケースで異なる処理を行うことができるため、柔軟な条件処理が可能です。
関連値を使用したネストされた列挙型の処理
Swiftでは、列挙型のケース内でさらに列挙型を使うこともでき、これによって複雑なデータ構造や処理を簡潔に記述できます。以下は、ネストされた列挙型を使った例です。
enum NetworkError {
case notConnected
case timeout
case serverError(code: Int)
}
enum Result {
case success(data: String)
case failure(error: NetworkError)
}
let apiResponse = Result.failure(error: .serverError(code: 500))
switch apiResponse {
case .success(let data):
print("Data received: \(data)")
case .failure(let error):
switch error {
case .notConnected:
print("No internet connection")
case .timeout:
print("Request timed out")
case .serverError(let code):
print("Server error with code: \(code)")
}
}
この例では、Result
列挙型のfailure
ケースがさらにNetworkError
列挙型を含んでおり、エラーの種類に応じた処理を行っています。このようなネストされた列挙型を使うことで、複雑な条件分岐をシンプルに実現できます。
高度な条件付き処理
関連値を使った列挙型は、where
句を使うことでさらに柔軟な条件付き処理を行うことができます。特定の関連値がある場合だけ、さらに条件を追加して処理を行うことが可能です。
switch apiResponse {
case .failure(let error) where error == .serverError(code: 500):
print("Internal Server Error (500)")
case .failure(let error):
print("Other network error: \(error)")
default:
print("Success")
}
このように、where
句を使って特定の条件に基づいた処理を行うことで、コードの精度と柔軟性を高めることができます。
`if-case`と`guard-case`を使った柔軟な条件処理
Swiftでは、列挙型のケースを判別するためにswitch
文を使う以外にも、if-case
やguard-case
といった条件分岐を使用して、柔軟な処理を行うことができます。これらの構文を使うことで、特定のケースに対して簡単な条件分岐を行い、コードをより簡潔に記述することが可能です。
`if-case`を使った条件処理
if-case
を使用すると、switch
文ほどの構造が必要ない場合に、特定の列挙型ケースに一致するかどうかを判定できます。この方法は、条件が1つだけでよい場合や、短いコードで処理を行いたい場合に便利です。
enum Weather {
case sunny
case rainy(chanceOfRain: Int)
}
let todayWeather = Weather.rainy(chanceOfRain: 80)
if case .rainy(let chance) = todayWeather {
print("It's going to rain with a \(chance)% chance.")
} else {
print("No rain today.")
}
この例では、if-case
を使ってtodayWeather
がrainy
である場合の処理を行っています。関連値も同時に取得でき、必要なデータにアクセスできます。
`if-case`と`where`を使った条件付きのケース判定
if-case
とwhere
句を組み合わせることで、より細かい条件に基づいた処理を行うことも可能です。これにより、単にケースが一致するかどうかだけでなく、特定の条件を満たすかどうかも判断できます。
if case .rainy(let chance) = todayWeather, chance > 50 {
print("High chance of rain: \(chance)%")
} else {
print("Low chance of rain.")
}
この例では、chanceOfRain
が50%を超えているかどうかも同時に確認し、条件に合致する場合のみ処理が実行されます。
`guard-case`を使った早期リターン
guard-case
は、条件が満たされない場合に早期リターンやエラーハンドリングを行いたいときに使います。これにより、条件に合わない場合に処理を途中で終了し、エラーハンドリングやデフォルト処理に進むことができます。
enum UserAction {
case loggedIn(userID: String)
case loggedOut
}
let action = UserAction.loggedIn(userID: "12345")
func performAction() {
guard case .loggedIn(let userID) = action else {
print("User is not logged in")
return
}
print("Performing action for user \(userID)")
}
performAction()
この例では、guard-case
を使ってloggedIn
でなければ関数を早期リターンし、それ以外の場合にはログイン中のユーザーに対する処理を続けます。これにより、条件を満たすケースだけが処理され、コードの安全性が向上します。
`if-case`と`guard-case`の使いどころ
if-case
は、特定のケースに対してシンプルな条件分岐を行いたい場合に便利です。switch
文ほど厳密な構造が不要で、短いコードで列挙型の判定を行いたいときに最適です。guard-case
は、早期リターンが必要な場合や、処理の途中で条件に合わないケースが発生した際に使います。これにより、読みやすく保守しやすいコードを記述することができます。
これらのテクニックを使うことで、より柔軟かつ効率的な条件処理を行い、Swiftの列挙型を最大限に活用できます。
列挙型のパターンマッチングによる条件分岐
Swiftの列挙型は、強力なパターンマッチング機能を活用することで、特定の条件に応じた柔軟な条件分岐を簡潔に記述できます。パターンマッチングは、列挙型のケースや関連値に基づいて複雑な条件を処理するための強力な手段です。switch
文、if-case
、guard-case
などに加えて、より細かい条件指定が可能です。
パターンマッチングの基本
列挙型のケースだけでなく、関連値を含むケースでもパターンマッチングを使って簡単に条件を分岐させることができます。switch
文を使うと、複数の条件に基づいて列挙型のデータを取り扱うことが可能です。
enum Shape {
case rectangle(width: Double, height: Double)
case circle(radius: Double)
case triangle(base: Double, height: Double)
}
let shape = Shape.rectangle(width: 10, height: 5)
switch shape {
case .rectangle(let width, let height):
print("Rectangle with width \(width) and height \(height)")
case .circle(let radius):
print("Circle with radius \(radius)")
case .triangle(let base, let height):
print("Triangle with base \(base) and height \(height)")
}
この例では、Shape
列挙型の各ケースに関連値が含まれており、switch
文で関連値をパターンマッチングによって取得し、それに基づいて処理を行っています。どのケースにも対応した分岐を明確に書くことができるのがパターンマッチングの利点です。
パターンマッチングと条件付き処理
パターンマッチングは、条件付き処理にも利用できます。関連値に基づくさらに細かい条件指定が可能で、特定の条件を満たすケースのみを処理できます。
enum Temperature {
case cold(celsius: Double)
case warm(celsius: Double)
case hot(celsius: Double)
}
let currentTemp = Temperature.hot(celsius: 35)
switch currentTemp {
case .cold(let celsius) where celsius < 0:
print("It's freezing! Temperature is below zero: \(celsius)°C")
case .warm(let celsius) where celsius >= 10 && celsius <= 25:
print("Nice weather with temperature: \(celsius)°C")
case .hot(let celsius) where celsius > 30:
print("It's really hot! Temperature is \(celsius)°C")
default:
print("It's a comfortable day.")
}
この例では、where
句を使って、各ケースに基づいた関連値に対して追加の条件を設定しています。特定の温度範囲に基づいて異なるメッセージを表示することで、パターンマッチングを用いた高度な条件分岐が可能になります。
値を無視したパターンマッチング
場合によっては、関連値を使わず、ケースだけを判定したいこともあります。関連値が不要な場合には、値を無視するためにアンダースコア(_
)を使って、より簡潔なパターンマッチングを行うことができます。
enum ConnectionStatus {
case connected(userID: String)
case disconnected
case connecting
}
let status = ConnectionStatus.connected(userID: "user123")
switch status {
case .connected(_):
print("The user is connected.")
case .disconnected:
print("The user is disconnected.")
case .connecting:
print("The user is connecting.")
}
この例では、connected
のケースが一致すれば、関連値(userID
)には関係なく処理が行われます。このように、必要のない値を無視することで、コードをよりシンプルにできます。
パターンマッチングの応用
パターンマッチングは、リストやネストされた列挙型、タプルなどの複雑なデータ構造に対しても利用できます。これにより、より高度で柔軟な条件処理が可能になります。
enum Result {
case success(data: [String])
case failure(error: String)
}
let apiResult = Result.success(data: ["Item1", "Item2"])
switch apiResult {
case .success(let data) where !data.isEmpty:
print("Received data: \(data)")
case .success:
print("No data available.")
case .failure(let error):
print("Failed with error: \(error)")
}
この例では、success
のケースで、データが空であるかどうかをwhere
句で確認し、条件に基づいた分岐処理を行っています。これにより、特定のケース内のデータ内容に応じた柔軟な処理が可能です。
パターンマッチングは、Swiftで高度な条件分岐を実現するための強力なツールであり、列挙型の柔軟性を最大限に引き出す手段です。
実際の開発での応用例
Swiftの列挙型とパターンマッチングを使った条件分岐は、実際の開発現場で頻繁に利用されます。特に、アプリケーションの状態管理やAPIレスポンスの処理など、複雑なロジックを簡潔に書く場面で非常に役立ちます。このセクションでは、実際のアプリケーションにおける列挙型の応用例を紹介します。
APIレスポンスの処理
ネットワークを使ったアプリケーション開発では、サーバーからのレスポンスに基づいて処理を分岐させることがよくあります。ここでは、列挙型を使ってAPIレスポンスの状態を管理し、switch
文で条件分岐する例を示します。
enum APIResponse {
case success(data: [String])
case error(code: Int, message: String)
case timeout
}
let response = APIResponse.error(code: 404, message: "Not Found")
switch response {
case .success(let data):
print("Data received: \(data)")
case .error(let code, let message):
print("Error \(code): \(message)")
case .timeout:
print("Request timed out. Please try again.")
}
この例では、APIレスポンスをsuccess
、error
、timeout
の3つの状態で管理しています。エラーが発生した場合には、エラーコードとエラーメッセージを出力し、成功した場合には受け取ったデータを処理します。このように、列挙型を使うことで状態管理を明確にし、可読性の高いコードを実現できます。
アプリケーションの状態管理
列挙型は、アプリケーションの状態を管理するためにも非常に有効です。特に、ログイン状態やネットワーク接続の状態など、複数の状態を扱う必要がある場合に役立ちます。以下は、アプリのログイン状態を列挙型で管理する例です。
enum AppState {
case loggedOut
case loggingIn
case loggedIn(user: String)
}
let appState = AppState.loggedIn(user: "Alice")
switch appState {
case .loggedOut:
print("User is logged out.")
case .loggingIn:
print("User is logging in...")
case .loggedIn(let user):
print("Welcome, \(user)!")
}
この例では、アプリの状態をloggedOut
、loggingIn
、loggedIn
の3つの状態で表し、ログイン状態に応じて異なるメッセージを表示しています。ユーザー名を関連値として格納し、loggedIn
の状態で表示することで、ログイン後の処理も簡潔に管理できます。
フォーム入力のバリデーション
列挙型は、ユーザー入力のバリデーションにも応用できます。例えば、ユーザーが入力した内容が正しいかどうかを列挙型で管理し、条件に応じてエラーを表示する実装です。
enum FormValidationResult {
case success
case failure(error: String)
}
func validateForm(username: String, password: String) -> FormValidationResult {
if username.isEmpty {
return .failure(error: "Username cannot be empty")
} else if password.count < 8 {
return .failure(error: "Password must be at least 8 characters long")
} else {
return .success
}
}
let validation = validateForm(username: "Alice", password: "pass")
switch validation {
case .success:
print("Form is valid")
case .failure(let error):
print("Validation failed: \(error)")
}
この例では、フォームのバリデーション結果を列挙型で管理し、成功か失敗かに応じて適切なメッセージを表示します。失敗時にはエラーメッセージを関連値として扱い、どの条件が満たされなかったかを具体的に伝えることができます。
ユーザーインターフェースの表示状態管理
UIコンポーネントの表示状態や、画面のレイアウトを管理するためにも列挙型が役立ちます。例えば、ロード中、成功、失敗といった状態を列挙型で管理し、表示内容を分岐する例です。
enum ViewState {
case loading
case loaded(content: String)
case error(message: String)
}
let currentState = ViewState.loaded(content: "Welcome to the app!")
switch currentState {
case .loading:
print("Loading...")
case .loaded(let content):
print(content)
case .error(let message):
print("Error occurred: \(message)")
}
この例では、ViewState
という列挙型を使ってUIの状態を管理しています。状態に応じて「Loading…」と表示したり、コンテンツを表示したり、エラーメッセージを出力する処理を行います。UIの状態管理が明確になり、状態ごとに異なるアクションを簡潔に表現できます。
列挙型とパターンマッチングを使用することで、実際のアプリケーション開発において柔軟で保守性の高いコードを実現できます。状態管理、バリデーション、レスポンス処理など、多くの場面で活用でき、複雑な処理を簡潔に表現できるため、Swiftでの開発効率が向上します。
列挙型ケースによるエラーハンドリング
Swiftの列挙型は、エラーハンドリングの際にも非常に有用です。特に、Result
型や独自の列挙型を使用することで、エラーの種類を明確にし、それに基づいた適切な処理を行うことができます。これにより、コードの可読性が高まり、エラー処理が一元化されるため、バグの防止やデバッグが容易になります。
`Result`型を使ったエラーハンドリング
Swift 5以降では、標準ライブラリにResult
型が導入され、これを使うことで成功か失敗かを明示的に表現し、エラーハンドリングをシンプルに行えます。Result
型は、success
とfailure
の2つのケースを持ち、成功時にはデータを返し、失敗時にはエラーを返します。
enum NetworkError: Error {
case badURL
case timeout
case serverError(code: Int)
}
func fetchData(from url: String) -> Result<String, NetworkError> {
if url == "badurl" {
return .failure(.badURL)
} else if url == "timeout" {
return .failure(.timeout)
} else {
return .success("Data from \(url)")
}
}
let result = fetchData(from: "timeout")
switch result {
case .success(let data):
print("Success: \(data)")
case .failure(let error):
switch error {
case .badURL:
print("Error: Bad URL")
case .timeout:
print("Error: Request timed out")
case .serverError(let code):
print("Error: Server returned error code \(code)")
}
}
この例では、fetchData
関数がResult<String, NetworkError>
を返し、成功時にはデータを、失敗時にはNetworkError
列挙型に基づいたエラーを返します。switch
文でResult
をパターンマッチングし、成功と失敗に応じた処理を行います。これにより、エラーハンドリングが一貫して明確に行えます。
独自の列挙型によるエラーハンドリング
独自の列挙型を使うことで、さらに細かいエラー管理が可能になります。特定のエラー状況に応じたケースを定義することで、エラーハンドリングをシンプルかつ直感的に行えます。
enum FileError: Error {
case fileNotFound
case insufficientPermissions
case unknownError
}
func readFile(filename: String) -> Result<String, FileError> {
if filename == "missing.txt" {
return .failure(.fileNotFound)
} else if filename == "restricted.txt" {
return .failure(.insufficientPermissions)
} else {
return .success("File content of \(filename)")
}
}
let fileResult = readFile(filename: "restricted.txt")
switch fileResult {
case .success(let content):
print("File content: \(content)")
case .failure(let error):
switch error {
case .fileNotFound:
print("Error: File not found")
case .insufficientPermissions:
print("Error: Insufficient permissions")
case .unknownError:
print("Error: Unknown error occurred")
}
}
この例では、FileError
という独自の列挙型を作成し、ファイル読み込み時のエラーを管理しています。ファイルが見つからない場合や、権限が不足している場合など、特定のエラーに応じて適切なメッセージを表示できます。
`do-catch`と列挙型を組み合わせたエラーハンドリング
Swiftでは、do-catch
構文を使って例外的なエラー処理を行います。これに列挙型を組み合わせることで、特定のエラータイプに基づく処理をシンプルに記述できます。
enum DatabaseError: Error {
case connectionLost
case invalidQuery(message: String)
}
func executeQuery(query: String) throws -> String {
if query == "DROP" {
throw DatabaseError.invalidQuery(message: "DROP queries are not allowed")
} else {
return "Query executed: \(query)"
}
}
do {
let result = try executeQuery(query: "DROP")
print(result)
} catch DatabaseError.connectionLost {
print("Error: Connection lost")
} catch DatabaseError.invalidQuery(let message) {
print("Error: \(message)")
} catch {
print("An unknown error occurred")
}
この例では、DatabaseError
列挙型を用いて、データベースクエリのエラーハンドリングを行っています。do-catch
ブロックを使って、特定のエラーケースに応じた処理を記述できます。catch
節では、DatabaseError
の各ケースに基づくエラー処理が簡潔に行えます。
列挙型と`try?`、`try!`を使ったエラーハンドリングの簡略化
Swiftでは、エラーハンドリングをより簡略化するために、try?
やtry!
といった構文を使うことができます。これにより、失敗時にエラーを無視するか、強制的に実行することで簡潔なコードを実現できます。
if let result = try? executeQuery(query: "SELECT * FROM users") {
print(result)
} else {
print("Failed to execute query")
}
この例では、try?
を使ってクエリを実行しています。エラーが発生した場合にはnil
が返され、エラーハンドリングを省略することができます。
列挙型を使ったエラーハンドリングは、コードの読みやすさや保守性を向上させ、エラーの種類に応じた適切な処理を行うための非常に強力な手法です。
演習問題: 列挙型を使ったリアルな条件処理
ここでは、列挙型を使った条件処理の実践的な演習問題を通して、理解を深めていきます。列挙型の定義、パターンマッチング、関連値、条件付き処理を活用して問題を解決する方法を考えてみましょう。
問題1: 配送ステータスの管理
配送サービスを管理するアプリケーションを作成する場合、配送の状態を列挙型を使って管理します。各配送のステータスは以下の3つに分類されます。
- 発送済み (
shipped
):追跡番号を保持します。 - 配達中 (
inTransit
):最新の配送状況を保持します。 - 配達完了 (
delivered
):配達日時を保持します。
次の要件を満たすコードを実装してください。
- 列挙型
DeliveryStatus
を定義し、それぞれの状態に応じて関連する情報(追跡番号、配送状況、配達日時)を保持します。 switch
文を使って、配送状態に応じて異なるメッセージを表示する関数checkDeliveryStatus
を作成します。
模範解答例
enum DeliveryStatus {
case shipped(trackingNumber: String)
case inTransit(status: String)
case delivered(date: String)
}
func checkDeliveryStatus(status: DeliveryStatus) {
switch status {
case .shipped(let trackingNumber):
print("Your package has been shipped. Tracking Number: \(trackingNumber)")
case .inTransit(let currentStatus):
print("Your package is currently: \(currentStatus)")
case .delivered(let date):
print("Your package was delivered on: \(date)")
}
}
// 実行例
let package1 = DeliveryStatus.shipped(trackingNumber: "123456789")
let package2 = DeliveryStatus.inTransit(status: "On the way to the delivery center")
let package3 = DeliveryStatus.delivered(date: "2023-10-01")
checkDeliveryStatus(status: package1)
checkDeliveryStatus(status: package2)
checkDeliveryStatus(status: package3)
この解答では、DeliveryStatus
という列挙型を使って配送の状態を管理し、状態に応じて適切なメッセージを出力しています。
問題2: ユーザーのアカウント状態管理
次のようなユーザーのアカウント状態を管理するために、列挙型を使います。
- 有効なアカウント (
active
):ユーザー名とログイン時間を保持します。 - アカウント停止中 (
suspended
):停止の理由を保持します。 - アカウント削除済み (
deleted
):削除された日付を保持します。
この要件に基づいて列挙型を定義し、関数checkAccountStatus
を実装して、各状態に応じたメッセージを表示してください。
模範解答例
enum AccountStatus {
case active(username: String, loginTime: String)
case suspended(reason: String)
case deleted(date: String)
}
func checkAccountStatus(status: AccountStatus) {
switch status {
case .active(let username, let loginTime):
print("User \(username) is currently logged in since \(loginTime).")
case .suspended(let reason):
print("This account is suspended. Reason: \(reason)")
case .deleted(let date):
print("This account was deleted on \(date).")
}
}
// 実行例
let user1 = AccountStatus.active(username: "Alice", loginTime: "10:00 AM")
let user2 = AccountStatus.suspended(reason: "Violation of terms")
let user3 = AccountStatus.deleted(date: "2023-09-30")
checkAccountStatus(status: user1)
checkAccountStatus(status: user2)
checkAccountStatus(status: user3)
この解答では、AccountStatus
列挙型を使い、各アカウント状態に対して適切な処理を行っています。
問題3: チケットの購入処理
列挙型を使ってイベントのチケット購入処理をシミュレートします。次のチケットの状態を定義してください。
- 購入済み (
purchased
):購入者名と購入日を保持します。 - 予約済み (
reserved
):予約者名と予約有効期限を保持します。 - キャンセル済み (
canceled
):キャンセルされた日付を保持します。
そして、関数checkTicketStatus
を作成し、各状態に応じたメッセージを表示する処理を実装してください。
模範解答例
enum TicketStatus {
case purchased(buyer: String, date: String)
case reserved(buyer: String, expiry: String)
case canceled(date: String)
}
func checkTicketStatus(status: TicketStatus) {
switch status {
case .purchased(let buyer, let date):
print("\(buyer) purchased the ticket on \(date).")
case .reserved(let buyer, let expiry):
print("\(buyer) has reserved the ticket. Reservation expires on \(expiry).")
case .canceled(let date):
print("The ticket was canceled on \(date).")
}
}
// 実行例
let ticket1 = TicketStatus.purchased(buyer: "John Doe", date: "2023-09-25")
let ticket2 = TicketStatus.reserved(buyer: "Jane Smith", expiry: "2023-10-10")
let ticket3 = TicketStatus.canceled(date: "2023-10-01")
checkTicketStatus(status: ticket1)
checkTicketStatus(status: ticket2)
checkTicketStatus(status: ticket3)
この問題では、チケットの状態に応じて購入者や予約、キャンセル情報を出力する処理を実装しています。
これらの演習問題を通じて、列挙型を使った条件処理やパターンマッチングの実践的なスキルが身につきます。列挙型の柔軟性を活用して、複雑な状態管理や条件処理を簡潔に実装できるようにしましょう。
まとめ
本記事では、Swiftの列挙型を使った条件処理の基本から応用までを詳しく解説しました。switch
文によるケース判別、複数のケースをまとめて処理する方法、関連値を使った高度な条件分岐、if-case
やguard-case
による柔軟な処理方法、さらにはエラーハンドリングや実際の開発での応用例を通じて、列挙型の強力な機能を学びました。列挙型は、コードの可読性と安全性を向上させ、複雑なロジックをシンプルにする重要なツールです。実践を通じて、列挙型の活用方法をさらに深めていきましょう。
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