Reactで実現するコンポーネント分離と再利用性を高める状態管理の設計例

React開発において、状態管理はアプリケーションのパフォーマンスや可読性、メンテナンス性を大きく左右する重要な要素です。特に、コンポーネントの分離と再利用性を意識した状態管理の設計は、スケーラブルなコードベースを構築するうえで欠かせません。しかし、どのように状態を管理し、コンポーネント間で共有するべきかは、プロジェクトの規模や要件によって異なります。本記事では、Reactの特性を活かし、効果的に状態管理を設計する方法について具体例を交えながら解説します。これにより、複雑なアプリケーションでも安定して動作し、将来的な変更にも対応しやすい設計を学ぶことができます。

目次

状態管理の基本とReactの特性


Reactは、コンポーネントベースのUIライブラリとして設計されており、状態(State)を管理しながら動的なUIを構築するのに最適なフレームワークです。状態管理の基本を理解することで、Reactの特性を活かした効率的なアプリ開発が可能になります。

状態(State)の役割


状態(State)は、Reactコンポーネントのデータを表します。状態は時間の経過やユーザー操作に応じて変化し、それに伴ってUIが再レンダリングされます。たとえば、ボタンのクリック数やフォームの入力値などが状態として扱われます。

プロップス(Props)との違い


状態(State)はコンポーネント内で管理されるのに対し、プロップス(Props)は親コンポーネントから子コンポーネントに渡されるデータです。状態は変更可能ですが、プロップスは基本的に読み取り専用であり、コンポーネントの動作を制御するために使われます。

Reactの特性

  1. 単方向データフロー: データは親コンポーネントから子コンポーネントへ一方向に流れます。この設計により、アプリケーションの状態が一貫性を保ち、バグを減らせます。
  2. 仮想DOM: 状態が更新されると、Reactは仮想DOMを使ってUIの差分を効率的に更新します。これにより、パフォーマンスが最適化されます。
  3. 再利用可能なコンポーネント: 状態管理を適切に設計することで、他のプロジェクトや部分的に再利用可能なコンポーネントを作成できます。

状態管理の基本を押さえたうえで、次のステップでは状態管理がどのようにコンポーネントの分離と再利用性に影響を与えるかを詳しく見ていきます。

コンポーネント分離と再利用性の重要性

Reactの強みであるコンポーネントベースの設計は、効率的な状態管理と密接に関連しています。コンポーネントの分離と再利用性を意識することで、コードの可読性とメンテナンス性が向上し、プロジェクト全体のスケーラビリティを高めることができます。

コンポーネント分離の目的


コンポーネント分離とは、アプリケーションを小さく独立した単位に分割することを指します。このアプローチには以下の利点があります:

  1. 責務の明確化: 各コンポーネントが特定の機能に専念するため、責務が明確になります。
  2. コードの可読性向上: 小さなコンポーネントに分割することで、コードの理解が容易になります。
  3. 変更の影響範囲の限定: 変更が必要な場合、影響が限定的になり、リグレッション(不具合の再発)のリスクを低減します。

再利用可能なコンポーネント設計


再利用可能なコンポーネントを設計するには、次のポイントに注意します:

  1. 汎用的な設計: 特定の状況に依存しないように設計し、プロップスを使って柔軟性を持たせます。
  2. 状態とロジックの分離: コンポーネントのロジックをフックやコンテキストに分離することで、再利用性を高めます。
  3. デザインシステムの構築: ボタンや入力フィールドなどのUI要素を再利用可能な形でまとめ、デザインの一貫性を保ちます。

コンポーネント分離の例


たとえば、Todoリストアプリを考えた場合、以下のようにコンポーネントを分けることができます:

  • TodoList: Todoアイテムをリストとして表示するコンポーネント。
  • TodoItem: 各Todoアイテムを表現するコンポーネント。
  • TodoInput: 新しいTodoアイテムを追加するための入力フィールドを提供するコンポーネント。

コンポーネント分離と再利用性を意識した設計は、開発の効率化だけでなく、状態管理の設計にも好影響を与えます。この基盤をもとに、次に状態管理ライブラリの選択肢とその特徴を見ていきます。

状態管理ライブラリの選択肢と特徴

Reactの状態管理を最適化するためには、プロジェクトの規模や要件に適したライブラリを選ぶことが重要です。ここでは、主な状態管理ライブラリの特徴と選択のポイントを解説します。

主な状態管理ライブラリの比較

Redux

  • 特徴: 中央集中型の状態管理を提供し、単一のストアでアプリケーション全体の状態を管理します。
  • 利点:
  • 状態の変更履歴をトラッキング可能。
  • 大規模プロジェクトに適しており、コミュニティが充実。
  • 課題:
  • ボイラープレートコードが多くなりがち。
  • 学習コストが比較的高い。

Zustand

  • 特徴: 軽量でシンプルなAPIを提供する状態管理ライブラリ。Reduxに比べてセットアップが簡単です。
  • 利点:
  • シンプルな構文で、学習コストが低い。
  • コンポーネントに依存せず、柔軟に状態を管理可能。
  • 課題:
  • 状態が複雑になる場合、他のライブラリに比べてサポートが薄い場合がある。

Context API

  • 特徴: Reactの標準APIとして提供され、プロバイダを介してコンポーネントツリー全体に状態を渡すことができます。
  • 利点:
  • ライブラリのインストール不要。
  • 小規模プロジェクトやグローバル状態が少ない場合に最適。
  • 課題:
  • 状態が頻繁に変更される場合、コンポーネントツリー全体が再レンダリングされる可能性がある。

Recoil

  • 特徴: Reactのために設計された状態管理ライブラリで、アトム(最小の状態単位)による分割管理が可能。
  • 利点:
  • 状態を粒度細かく管理でき、パフォーマンスを最適化可能。
  • Reactとの親和性が高い。
  • 課題:
  • 他のライブラリに比べてまだ新しく、コミュニティやドキュメントの充実度が劣る場合がある。

ライブラリ選択のポイント

  1. プロジェクト規模: 小規模なプロジェクトにはContext APIやZustand、大規模なプロジェクトにはReduxやRecoilが適しています。
  2. 状態の複雑さ: 状態がシンプルであれば軽量なライブラリ、複雑であれば高機能なライブラリを選択します。
  3. パフォーマンス要件: 再レンダリングの制御が重要な場合は、RecoilやZustandのような細分化が可能なライブラリが有利です。

これらの選択肢を理解したうえで、次に効率的な状態管理を支援するフォルダ構成の例を紹介します。

状態管理を考慮したフォルダ構成の例

Reactアプリケーションの開発では、フォルダ構成を工夫することで、状態管理が効率的になり、保守性が向上します。ここでは、状態管理を考慮したフォルダ構成の具体例を紹介します。

推奨フォルダ構成

以下は、Reactアプリケーションで状態管理を行う際の一般的なフォルダ構成例です。

src/
├── components/      # 再利用可能なUIコンポーネント
│   ├── Button/
│   ├── Header/
│   └── TodoItem/
├── features/        # 各機能ごとに状態とロジックを分離
│   ├── todos/
│   │   ├── TodoList.jsx
│   │   ├── TodoInput.jsx
│   │   ├── todosSlice.js
│   │   └── todosSelectors.js
│   └── auth/
│       ├── LoginForm.jsx
│       ├── authSlice.js
│       └── authSelectors.js
├── hooks/           # カスタムフック
│   ├── useAuth.js
│   └── useTodos.js
├── store/           # 状態管理ライブラリの設定
│   ├── store.js
│   └── rootReducer.js
├── utils/           # ユーティリティ関数
│   ├── api.js
│   └── helpers.js
└── index.js         # アプリケーションのエントリーポイント

構成のポイント

1. **components フォルダ**

  • 再利用可能なUIコンポーネントを格納します。
  • プロジェクト内で共通して使用されるボタンやヘッダーなどを管理します。

2. **features フォルダ**

  • アプリケーションの各機能に関連するコンポーネント、状態管理ロジック(例: Reduxスライスやセレクター)を機能単位でまとめます。
  • 状態管理ロジックをtodosSlice.jsauthSlice.jsに分離することで、各機能の依存関係が明確になります。

3. **hooks フォルダ**

  • 再利用可能なロジックをカスタムフックとして抽象化します。
  • 状態や副作用の管理を簡潔に記述できます。たとえば、認証状態を管理するuseAuthフックや、Todoデータを取得するuseTodosフックが含まれます。

4. **store フォルダ**

  • ReduxやZustandの設定を集中管理します。
  • 状態の初期化や、グローバル状態の統合に必要なコードを格納します。

5. **utils フォルダ**

  • API通信や汎用的なヘルパー関数を管理します。これにより、コードの重複を減らし、メンテナンス性を向上させます。

フォルダ構成のメリット

  • 可読性向上: フォルダを機能ごとに分割することで、開発者がどこに何があるかを簡単に把握できます。
  • 再利用性の促進: 共通コンポーネントやフックを管理しやすくなります。
  • スケーラビリティの確保: プロジェクトが拡大しても、フォルダ構成が崩れず、管理しやすい状態を保てます。

次は、グローバル状態とローカル状態の分離について詳しく解説します。

グローバル状態とローカル状態の分離

Reactアプリケーションにおける状態管理では、状態のスコープ(適用範囲)を適切に分離することが重要です。グローバル状態とローカル状態を区別し、それぞれの特性を活かすことで、アプリケーションのパフォーマンスや可読性を最適化できます。

グローバル状態とローカル状態の違い

1. グローバル状態


グローバル状態は、アプリケーション全体または複数のコンポーネントで共有される必要があるデータです。
:

  • ログイン状態
  • ショッピングカート内の商品リスト
  • アプリ全体で使用されるテーマ設定

特徴:

  • ReduxやContext APIを使って管理することが一般的です。
  • 状態が多くのコンポーネントに影響を及ぼすため、設計を慎重に行う必要があります。

2. ローカル状態


ローカル状態は、特定のコンポーネント内でのみ使用されるデータです。
:

  • フォームの入力値
  • モーダルの開閉状態
  • 一時的なUI状態(例: ボタンのクリック状態)

特徴:

  • コンポーネント内部でuseStateuseReducerを使って管理します。
  • 他のコンポーネントには影響を与えないため、管理が容易です。

状態を分離するメリット

  1. パフォーマンス向上: グローバル状態を過剰に使用すると、無関係なコンポーネントが再レンダリングされるリスクがあります。ローカル状態を適切に活用することで、この問題を回避できます。
  2. 可読性の向上: 状態のスコープが明確になるため、コードの可読性が向上し、デバッグが容易になります。
  3. メンテナンス性の向上: グローバルとローカルの役割を分けることで、変更の影響範囲を制御しやすくなります。

グローバル状態とローカル状態の分離例

以下は、Todoリストアプリにおける状態分離の例です。

// グローバル状態(Reduxを使用)
const todosSlice = createSlice({
  name: 'todos',
  initialState: {
    items: [], // Todoリスト全体
  },
  reducers: {
    addTodo: (state, action) => {
      state.items.push(action.payload);
    },
    removeTodo: (state, action) => {
      state.items = state.items.filter(todo => todo.id !== action.payload);
    },
  },
});

// ローカル状態(React Hooksを使用)
function TodoInput() {
  const [inputValue, setInputValue] = useState(''); // ローカルな入力値
  const dispatch = useDispatch();

  const handleAddTodo = () => {
    dispatch(addTodo({ id: Date.now(), text: inputValue }));
    setInputValue(''); // 入力フィールドをクリア
  };

  return (
    <div>
      <input
        type="text"
        value={inputValue}
        onChange={(e) => setInputValue(e.target.value)}
      />
      <button onClick={handleAddTodo}>Add Todo</button>
    </div>
  );
}

分離設計のベストプラクティス

  1. 状態の責任範囲を明確化: 必要最低限のデータのみをグローバル状態として管理します。
  2. 状態のスコープを意識: コンポーネント内部で完結するデータはローカル状態にします。
  3. 状態の種類に応じた管理方法を選択: ローカル状態はuseState、複雑なロジックにはuseReducer、グローバル状態はReduxやContext APIを使用します。

この分離を適切に行うことで、状態管理がシンプルかつ効果的になり、アプリケーション全体の安定性を向上させることができます。次は、具体的な実装例としてTodoリストアプリを設計・実装してみましょう。

実例:Todoリストアプリの設計と実装

ここでは、実例としてReactを使ったTodoリストアプリを設計・実装します。コンポーネントの分離、状態管理、そしてReactの特性を活かした効率的な設計を学びます。

アプリの要件

  1. Todoアイテムを追加、削除できる。
  2. グローバル状態とローカル状態を適切に分離する。
  3. Reduxを使ってTodoリスト全体を管理する。
  4. UIとロジックを分離し、再利用可能なコンポーネントを設計する。

フォルダ構成

src/
├── components/
│   ├── TodoInput.jsx
│   └── TodoItem.jsx
├── features/
│   └── todos/
│       ├── TodoList.jsx
│       ├── todosSlice.js
│       └── todosSelectors.js
├── store/
│   └── store.js
└── App.jsx

実装コード

1. Reduxスライスを作成(`todosSlice.js`)

import { createSlice } from '@reduxjs/toolkit';

const todosSlice = createSlice({
  name: 'todos',
  initialState: {
    items: [],
  },
  reducers: {
    addTodo: (state, action) => {
      state.items.push({ id: Date.now(), text: action.payload });
    },
    removeTodo: (state, action) => {
      state.items = state.items.filter(todo => todo.id !== action.payload);
    },
  },
});

export const { addTodo, removeTodo } = todosSlice.actions;
export default todosSlice.reducer;

2. Reduxストアを設定(`store.js`)

import { configureStore } from '@reduxjs/toolkit';
import todosReducer from '../features/todos/todosSlice';

export const store = configureStore({
  reducer: {
    todos: todosReducer,
  },
});

3. Todo入力コンポーネント(`TodoInput.jsx`)

import React, { useState } from 'react';
import { useDispatch } from 'react-redux';
import { addTodo } from '../features/todos/todosSlice';

function TodoInput() {
  const [inputValue, setInputValue] = useState('');
  const dispatch = useDispatch();

  const handleAddTodo = () => {
    if (inputValue.trim()) {
      dispatch(addTodo(inputValue));
      setInputValue('');
    }
  };

  return (
    <div>
      <input
        type="text"
        value={inputValue}
        onChange={(e) => setInputValue(e.target.value)}
        placeholder="Add a new task"
      />
      <button onClick={handleAddTodo}>Add</button>
    </div>
  );
}

export default TodoInput;

4. Todoアイテムコンポーネント(`TodoItem.jsx`)

import React from 'react';
import { useDispatch } from 'react-redux';
import { removeTodo } from '../features/todos/todosSlice';

function TodoItem({ id, text }) {
  const dispatch = useDispatch();

  return (
    <div>
      <span>{text}</span>
      <button onClick={() => dispatch(removeTodo(id))}>Delete</button>
    </div>
  );
}

export default TodoItem;

5. Todoリストコンポーネント(`TodoList.jsx`)

import React from 'react';
import { useSelector } from 'react-redux';
import TodoItem from '../../components/TodoItem';

function TodoList() {
  const todos = useSelector((state) => state.todos.items);

  return (
    <div>
      {todos.map((todo) => (
        <TodoItem key={todo.id} id={todo.id} text={todo.text} />
      ))}
    </div>
  );
}

export default TodoList;

6. アプリのエントリーポイント(`App.jsx`)

import React from 'react';
import { Provider } from 'react-redux';
import { store } from './store/store';
import TodoInput from './components/TodoInput';
import TodoList from './features/todos/TodoList';

function App() {
  return (
    <Provider store={store}>
      <div>
        <h1>Todo List</h1>
        <TodoInput />
        <TodoList />
      </div>
    </Provider>
  );
}

export default App;

設計のポイント

  1. UIと状態管理の分離: Reduxを使用して状態管理を一元化し、コンポーネントはUIに専念します。
  2. コンポーネントの分離: Todo入力、Todoアイテム、Todoリストをそれぞれ独立したコンポーネントとして設計しました。
  3. 再利用性の確保: Todoアイテムコンポーネントは、他のアプリでも再利用可能な形で設計されています。

次は、状態管理におけるテストとデバッグの手法について解説します。

テストとデバッグの手法

状態管理を活用したReactアプリケーションでは、正確な動作を保証するためにテストとデバッグが重要です。ここでは、Reduxを中心とした状態管理に関連するテストとデバッグの具体的な方法を紹介します。

テストの種類

1. ユニットテスト


個々の状態管理ロジック(例: Reduxのリデューサーやアクション)の動作を検証します。

テスト対象:

  • Reducerの挙動
  • Action Creatorの正しさ

例: Reducerのユニットテスト

import todosReducer, { addTodo, removeTodo } from './todosSlice';

describe('todosReducer', () => {
  it('should add a todo', () => {
    const initialState = { items: [] };
    const action = addTodo('Learn testing');
    const state = todosReducer(initialState, action);

    expect(state.items).toHaveLength(1);
    expect(state.items[0].text).toBe('Learn testing');
  });

  it('should remove a todo', () => {
    const initialState = { items: [{ id: 1, text: 'Learn testing' }] };
    const action = removeTodo(1);
    const state = todosReducer(initialState, action);

    expect(state.items).toHaveLength(0);
  });
});

2. コンポーネントテスト


コンポーネントが正しく動作し、状態管理のデータを正確に利用しているかをテストします。@testing-library/reactを使用してレンダリングやユーザー操作を検証します。

例: TodoListコンポーネントのテスト

import React from 'react';
import { render, screen } from '@testing-library/react';
import { Provider } from 'react-redux';
import { store } from '../../store/store';
import TodoList from './TodoList';

test('renders todo items from state', () => {
  store.dispatch({
    type: 'todos/addTodo',
    payload: 'Write tests',
  });

  render(
    <Provider store={store}>
      <TodoList />
    </Provider>
  );

  expect(screen.getByText('Write tests')).toBeInTheDocument();
});

3. エンドツーエンドテスト(E2E)


CypressやPlaywrightを使って、アプリケーション全体のフローをテストします。

  • Todoを追加する操作がUIと状態管理の両方で正しく反映されるかを検証します。

デバッグの手法

1. Redux DevTools


Reduxを使用している場合、Redux DevToolsは強力なデバッグツールです。

  • 状態の履歴追跡: 状態がどのように変化したかを確認できます。
  • アクションの再生: 発生したアクションを再実行して動作を検証できます。
  • 状態の変更ポイント特定: 不正な状態変更の原因を特定可能です。

使用例:

import { configureStore } from '@reduxjs/toolkit';
import todosReducer from '../features/todos/todosSlice';

const store = configureStore({
  reducer: {
    todos: todosReducer,
  },
  devTools: process.env.NODE_ENV !== 'production',
});

2. ログ出力


console.logを使用して、状態やアクションの内容を確認します。ミドルウェアとしてredux-loggerを導入することで、状態とアクションをログ出力できます。

インストール:

npm install redux-logger

使用例:

import { configureStore } from '@reduxjs/toolkit';
import logger from 'redux-logger';
import todosReducer from '../features/todos/todosSlice';

const store = configureStore({
  reducer: {
    todos: todosReducer,
  },
  middleware: (getDefaultMiddleware) => getDefaultMiddleware().concat(logger),
});

3. ブレークポイントを活用


ブラウザのデベロッパーツールを活用して、コードの特定箇所で停止し、状態や変数の値を直接確認します。

テストとデバッグのベストプラクティス

  1. テスト駆動開発(TDD)を実践: 状態管理のロジックを実装する前にテストを書くことで、バグを未然に防ぎます。
  2. 小さな単位でテストを実施: 大規模な変更を加える前に、小さな単位でテストを追加します。
  3. リアルなシナリオを再現: ユーザーの操作を再現するテストを作成し、状態管理が意図したとおりに機能するか確認します。

これらの手法を駆使して、状態管理に関連する動作を効率的かつ正確に検証できます。次は、大規模アプリへの応用例について説明します。

応用例:大規模アプリへの適用方法

Reactアプリケーションが成長するにつれ、状態管理の課題が複雑化します。大規模アプリでは、スケーラブルでメンテナンス性の高い設計を採用することが成功の鍵となります。ここでは、大規模アプリにおける状態管理の課題とその解決策を具体例とともに紹介します。

大規模アプリにおける課題

1. 状態のスケール


アプリケーションが成長すると、状態の種類や数が増え、状態管理が複雑になります。適切に設計しないと、グローバル状態が肥大化してパフォーマンスが低下します。

2. コンポーネント間の依存関係


状態を共有するコンポーネントが増えると、依存関係が複雑化し、変更が他の部分に影響を及ぼしやすくなります。

3. デバッグとテストの困難さ


大規模アプリでは状態の変更が多岐にわたるため、不具合の原因を特定するのが難しくなります。

解決策と実践例

1. 状態の分割とモジュール化


状態を機能ごとに分割し、モジュール化することで、管理しやすくします。

  • 各機能の状態をfeatures/ディレクトリに分割して管理します。
  • 必要に応じて複数のReduxストアを使用し、状態のスコープを明確化します。

例: フォルダ構成

features/
├── auth/
│   ├── authSlice.js
│   ├── LoginForm.jsx
│   └── selectors.js
├── todos/
│   ├── todosSlice.js
│   ├── TodoList.jsx
│   └── selectors.js
├── profile/
│   ├── profileSlice.js
│   ├── ProfilePage.jsx
│   └── selectors.js

2. 非同期処理の整理


非同期処理を整理し、状態の管理を明確化します。Reduxのredux-thunkredux-sagaを使用して、非同期アクションを効率的に管理します。

例: redux-thunkを用いた非同期アクション

export const fetchTodos = () => async (dispatch) => {
  const response = await fetch('/api/todos');
  const data = await response.json();
  dispatch(setTodos(data));
};

3. セレクターを活用する


再利用可能なセレクターを使用して、必要なデータを抽出することで、状態の依存関係を簡素化します。

例: セレクターの使用

// todosSelectors.js
export const selectTodos = (state) => state.todos.items;

// 使用例
const todos = useSelector(selectTodos);

4. 再レンダリングの最適化

  • React.memouseMemoを使用して、無駄な再レンダリングを防ぎます。
  • 状態を必要とするコンポーネントのみが更新されるよう、状態のスコープを細分化します。

5. サーバー状態の管理


状態管理ライブラリに加え、React QuerySWRを使用してサーバー状態を管理します。これにより、キャッシュやデータの同期が容易になります。

例: React Queryを用いたサーバー状態管理

import { useQuery } from 'react-query';

function TodoList() {
  const { data: todos, error, isLoading } = useQuery('todos', fetchTodos);

  if (isLoading) return <p>Loading...</p>;
  if (error) return <p>Error loading todos</p>;

  return (
    <ul>
      {todos.map(todo => (
        <li key={todo.id}>{todo.text}</li>
      ))}
    </ul>
  );
}

6. コンテナ・プレゼンテーションパターンの採用


状態管理ロジックを「コンテナコンポーネント」、UIを「プレゼンテーションコンポーネント」に分離します。これにより、状態管理とUIの依存関係が明確になります。

例: パターンの分離

// ContainerComponent.jsx
import { useSelector, useDispatch } from 'react-redux';
import TodoList from './TodoList';

function TodoContainer() {
  const todos = useSelector(selectTodos);
  const dispatch = useDispatch();

  const handleDelete = (id) => {
    dispatch(removeTodo(id));
  };

  return <TodoList todos={todos} onDelete={handleDelete} />;
}

// PresentationalComponent.jsx
function TodoList({ todos, onDelete }) {
  return (
    <ul>
      {todos.map(todo => (
        <li key={todo.id}>
          {todo.text}
          <button onClick={() => onDelete(todo.id)}>Delete</button>
        </li>
      ))}
    </ul>
  );
}

大規模アプリへの適用のポイント

  1. 状態のスコープを適切に設計: グローバル状態を最小限に抑え、必要に応じてローカル状態を活用します。
  2. 効率的な非同期処理: サーバー状態をReact Queryなどで管理し、Reduxには必要最小限の状態を保持します。
  3. 状態管理ツールの選定: プロジェクトの規模や複雑さに応じて、最適な状態管理ライブラリを選択します。

これらのアプローチを組み合わせることで、大規模アプリケーションでも効率的に状態を管理し、スケーラブルな設計を実現できます。最後に、この記事のまとめに進みます。

まとめ

本記事では、Reactでのコンポーネント分離と再利用性を考慮した状態管理の設計方法について解説しました。状態管理の基本から、グローバル状態とローカル状態の分離、ReduxやReact Queryなどのライブラリ活用、大規模アプリへの適用例まで、具体的な方法と実装例を紹介しました。

効率的な状態管理を実現するポイントは以下の通りです:

  • 状態のスコープを明確に分け、必要最小限のデータを管理する。
  • コンポーネントを分離し、UIロジックと状態管理をモジュール化する。
  • 状態管理ツールを適切に選定し、非同期処理やサーバー状態も効率的に管理する。

これらを実践することで、スケーラブルで保守性の高いReactアプリケーションを構築することができます。設計例を参考に、次のプロジェクトで活用してください。

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