ReactのuseEffect
フックは、Reactコンポーネントの副作用を管理するための重要なツールです。しかし、その中心にある依存配列の設定を誤ると、思わぬエラーやパフォーマンスの低下を引き起こすことがあります。依存配列を正しく設定することは、Reactアプリケーションの安定性を高め、効率的な動作を保証する鍵となります。本記事では、useEffect
の基本的な仕組みから始め、依存配列の設定で陥りやすい罠を避けるためのベストプラクティスを詳しく解説します。初心者から中級者まで、誰でも活用できる知識を提供しますので、ぜひ最後までご覧ください。
useEffectフックの基本的な仕組み
ReactのuseEffect
フックは、コンポーネントがレンダリングされるたびに副作用(サイドエフェクト)を実行するために使用されます。副作用とは、データの取得、DOMの直接操作、イベントリスナーの登録など、Reactコンポーネントの内部状態に直接影響を与えない動作を指します。
useEffectの基本構文
以下は、useEffect
の基本的な構文です:
useEffect(() => {
// 副作用のロジック
return () => {
// クリーンアップロジック(オプション)
};
}, [dependencies]);
- 第一引数:副作用を定義する関数。
- 第二引数:依存配列。これにより、特定の条件でのみ副作用が実行されます。
依存配列の役割
依存配列は、useEffect
がいつ実行されるべきかを制御します。配列内に含まれる値が変更されるたびに副作用がトリガーされます。
- 空の依存配列 (
[]
):初回レンダリング時にのみ副作用を実行。 - 特定の依存値:その値が更新されたときに副作用を実行。
- 依存配列の省略:コンポーネントが再レンダリングされるたびに副作用を実行(非推奨)。
useEffectの動作例
以下は、コンポーネントが初回レンダリング時にAPIコールを行う例です:
useEffect(() => {
fetch('https://api.example.com/data')
.then(response => response.json())
.then(data => console.log(data));
}, []); // 空の依存配列
依存配列が空であるため、このAPIコールはコンポーネントがマウントされたときに1回だけ実行されます。
useEffectの注意点
- 副作用は同期的にではなく、非同期的に実行される。
- クリーンアップ関数は、コンポーネントのアンマウント時や次回の
useEffect
実行前に呼び出される。
useEffect
の正しい理解は、Reactで安定したアプリケーションを構築するために不可欠です。次のセクションでは、依存配列がどのようにエラーを防ぎ、効率的な実行を保証するかを詳しく見ていきます。
依存配列の重要性と典型的なエラー
依存配列の重要性
useEffect
における依存配列は、特定の条件下でのみ副作用を実行するための制御装置です。依存配列を適切に設定することで、以下の利点があります:
- 不要な副作用の防止:依存配列を正しく設定すれば、必要のない再実行を回避できます。
- コードのパフォーマンス向上:無駄な再レンダリングや重複した副作用を防ぐことで、アプリケーションのパフォーマンスが向上します。
- 安定性の確保:副作用が適切にトリガーされることで、予測可能な動作が保証されます。
典型的なエラーとその原因
依存配列を不適切に設定すると、以下のような問題が発生することがあります:
1. 依存配列の不足
依存する値を配列に含めないと、正しく更新されず古い値が使用されることがあります。
例:不足した依存配列
useEffect(() => {
console.log(counter);
}, []); // counterが変更されても再実行されない
結果: counter
の値が変わってもuseEffect
が再実行されないため、期待した動作になりません。
2. 過剰な依存配列
不要な値を依存配列に含めると、必要のない副作用が何度もトリガーされる場合があります。
例:過剰な依存配列
useEffect(() => {
console.log('Effect triggered');
}, [unnecessaryValue]); // 実際には依存不要
結果: unnecessaryValue
が変更されるたびに副作用が実行され、パフォーマンスが低下します。
3. 依存配列の省略
依存配列を省略すると、useEffect
がレンダリングごとに実行され、意図しない動作やパフォーマンス低下につながります。
例:省略した依存配列
useEffect(() => {
console.log('Runs on every render');
});
結果: コンポーネントのレンダリングごとに副作用が実行されるため、効率的ではありません。
典型的なエラーのデバッグ方法
ReactのESLintルール「react-hooks/exhaustive-deps
」は、依存配列の設定ミスを検出するための強力なツールです。必要な依存関係を警告してくれるため、これを活用することで多くのエラーを未然に防ぐことができます。
依存配列エラーの警告例
useEffect(() => {
console.log(counter);
}, []); // Missing dependency 'counter'
正確な依存配列設定の必要性
依存配列が正しく設定されることで、副作用は意図通りに実行され、アプリケーション全体の動作が安定します。次のセクションでは、依存配列を正しく設定する具体的な方法を解説します。
依存配列の正しい設定方法
依存配列の役割と設定の基本
依存配列は、useEffect
内の副作用がどの値に基づいて実行されるかを明確にします。正しい設定のためには、次のポイントを理解する必要があります:
- 副作用で使用するすべての値を依存配列に含める。
- 依存配列に含める値は、Reactの状態やプロップス、または外部スコープの変数です。
- 無限ループや不要な再レンダリングを防ぐため、依存配列は必要最小限に設定します。
正しい依存配列の具体例
1. 状態やプロップスを依存配列に含める
コンポーネントの状態やプロップスが変更されたときだけ副作用を実行する設定方法です。
例:状態を依存配列に設定
const [count, setCount] = useState(0);
useEffect(() => {
console.log(`Count changed: ${count}`);
}, [count]); // countが変更されたときにだけ実行
結果: count
が更新されたときに副作用がトリガーされます。
2. 外部変数や関数の取り扱い
外部スコープの変数や関数をuseEffect
で使用する場合は、それらを依存配列に含める必要があります。
例:外部関数を依存配列に含める
function fetchData() {
console.log('Fetching data...');
}
useEffect(() => {
fetchData();
}, [fetchData]); // fetchDataが変更されたときだけ再実行
ただし、外部変数や関数が頻繁に変わる場合、適切に管理しないと無限ループが発生する可能性があります。
3. 空の依存配列を使う場合
副作用を初回レンダリング時のみに実行したい場合は、空の依存配列を指定します。
例:初回レンダリング時のみ実行
useEffect(() => {
console.log('Component mounted');
}, []); // 初回マウント時のみ実行
依存配列設定の注意点
1. 関数の依存性を管理
依存配列に関数を追加する場合、useCallback
を使用してメモ化することで不要な再レンダリングを防げます。
例:useCallbackの使用
const memoizedFunction = useCallback(() => {
console.log('This function is memoized');
}, []); // 依存関係が変わらない限り再生成されない
useEffect(() => {
memoizedFunction();
}, [memoizedFunction]);
2. オブジェクトや配列の取り扱い
オブジェクトや配列を依存配列に含める場合、useMemo
を使用してメモ化し、参照の変更による不要な再実行を防ぐ必要があります。
例:useMemoを使用したオブジェクト依存
const memoizedObject = useMemo(() => ({ key: 'value' }), []);
useEffect(() => {
console.log('Object dependency updated');
}, [memoizedObject]);
依存配列設定の最適化
- ESLintルールの利用: 「
react-hooks/exhaustive-deps
」ルールで必要な依存関係を補足。 - メモ化を活用:
useCallback
やuseMemo
で計算量を減らす。
次のセクションでは、不要な再レンダリングを防ぎ、パフォーマンスを向上させる具体的なテクニックを解説します。
不要な再レンダリングを防ぐテクニック
再レンダリングとパフォーマンス問題の背景
Reactでは、状態やプロップスが変更されるとコンポーネントが再レンダリングされます。この際、useEffect
の副作用が頻繁に実行されると、パフォーマンスが低下する可能性があります。適切な手法を用いることで、不要な再レンダリングを防ぎ、効率的な動作を実現できます。
再レンダリングを抑える具体的なテクニック
1. 必要最小限の依存配列
依存配列を正確に設定することで、変更が必要な場合にのみuseEffect
をトリガーします。
例:限定された依存配列
useEffect(() => {
console.log('Effect triggered');
}, [specificDependency]); // specificDependencyが変更された場合のみ実行
- 依存関係を過剰に含めない。
- 必要な依存関係だけを明示的に記述。
2. メモ化を活用
関数やオブジェクト、配列を依存配列に含める場合、それらをメモ化することで再レンダリングを最小限に抑えます。
例:useMemoの使用
const memoizedValue = useMemo(() => calculateExpensiveValue(input), [input]);
useEffect(() => {
console.log('Memoized value updated:', memoizedValue);
}, [memoizedValue]); // メモ化された値が変わった場合のみ実行
例:useCallbackの使用
const memoizedFunction = useCallback(() => {
console.log('Memoized function executed');
}, []);
useEffect(() => {
memoizedFunction();
}, [memoizedFunction]); // 再生成されない関数を依存配列に使用
3. ステートやプロップスの構造を最適化
親コンポーネントで状態管理が複雑になると、子コンポーネントが頻繁に再レンダリングされます。状態を局所化することで、この問題を回避できます。
例:状態の局所化
function ParentComponent() {
const [globalState, setGlobalState] = useState(0);
return (
<>
<ChildComponent />
<button onClick={() => setGlobalState(globalState + 1)}>Update</button>
</>
);
}
function ChildComponent() {
console.log('Child rendered');
return <div>Child</div>;
}
改善後
function ParentComponent() {
return (
<>
<ChildComponent />
<GlobalStateUpdater />
</>
);
}
function GlobalStateUpdater() {
const [globalState, setGlobalState] = useState(0);
return <button onClick={() => setGlobalState(globalState + 1)}>Update</button>;
}
4. 条件付き副作用
副作用が実行される条件を明確に制御することで、無駄なトリガーを減らします。
例:条件を追加
useEffect(() => {
if (shouldTriggerEffect) {
console.log('Effect triggered based on condition');
}
}, [shouldTriggerEffect]); // 条件に応じて制御
5. レンダリングを遅延させる
useDeferredValue
やReact.memo
を活用して、高負荷の再レンダリングを遅延または最小化します。
例:React.memoの使用
const MemoizedComponent = React.memo(function Component({ prop }) {
console.log('Rendered only when prop changes');
return <div>{prop}</div>;
});
実践例:不要な再レンダリングの抑制
以下は、useEffect
を用いてリストのフィルタリングを行う例です。
最適化前
useEffect(() => {
const filteredItems = items.filter(item => item.active);
console.log(filteredItems);
}, [items]);
最適化後
const memoizedFilteredItems = useMemo(() => {
return items.filter(item => item.active);
}, [items]);
useEffect(() => {
console.log(memoizedFilteredItems);
}, [memoizedFilteredItems]);
まとめ
再レンダリングを防ぐためには、依存配列の最適化、メモ化、状態の局所化、条件付き副作用の活用が重要です。次のセクションでは、外部関数や変数をuseEffect
で正しく管理する方法を詳しく解説します。
外部関数や変数の取り扱い
外部要素を扱う際の課題
useEffect
内で外部の関数や変数を使用する場合、それらが依存配列に正しく設定されていないと、意図しない動作やエラーが発生する可能性があります。特に、外部要素が頻繁に更新される場合、無限ループや不要な再レンダリングの原因となることがあります。
外部関数を依存配列に含める方法
1. useCallbackを活用して関数をメモ化
外部関数が再生成されないようにするために、useCallback
を使用してメモ化します。これにより、依存配列に含める関数が安定し、不要なuseEffect
の再実行を防ぎます。
例:useCallbackを用いたメモ化
const fetchData = useCallback(() => {
console.log('Fetching data...');
}, []); // 空の依存配列でメモ化
useEffect(() => {
fetchData(); // 再生成されない関数を呼び出し
}, [fetchData]); // 安定したfetchDataを依存配列に設定
2. 変数のスコープを明確化
useEffect
内で外部スコープの変数を使用する場合、それが動的に変化する場合は必ず依存配列に含めます。ただし、不要な再実行を防ぐため、変数をメモ化することも検討してください。
例:useMemoでメモ化
const memoizedConfig = useMemo(() => ({
key: 'value',
}), []); // 初期化時のみ作成
useEffect(() => {
console.log('Config:', memoizedConfig);
}, [memoizedConfig]); // メモ化されたconfigを依存配列に設定
依存配列に外部関数を追加しない場合のリスク
外部関数や変数を依存配列に追加しない場合、useEffect
が古い値やロジックを使用し続ける可能性があります。これにより、以下の問題が発生します:
- 状態の不一致: 関数の新しいロジックが反映されない。
- バグの発生: 意図しない挙動やエラーが起こる。
- デバッグの難しさ: 問題の原因を特定するのが困難になる。
不要な再レンダリングを防ぐテクニック
1. 外部関数を特定のタイミングでのみ実行
関数が常に実行されるのを防ぐため、条件付きで実行します。
例:条件付き実行
useEffect(() => {
if (shouldFetchData) {
fetchData();
}
}, [shouldFetchData, fetchData]); // 必要な場合のみ実行
2. グローバル変数を依存配列に含めない方法
グローバルな値(例:コンテキストやリファレンス)を使用する場合は、直接的に依存配列に含めず、その値をラップした関数を活用します。
例:useRefを使用
const lastValue = useRef(null);
useEffect(() => {
if (lastValue.current !== someValue) {
console.log('Value changed:', someValue);
lastValue.current = someValue;
}
}, [someValue]); // Refを用いて変更を追跡
実践例:外部APIとの連携
以下は、useEffect
で外部APIを呼び出す際の実践的な例です。
例:APIコールの最適化
const fetchUserData = useCallback(() => {
return fetch('https://api.example.com/user')
.then(response => response.json());
}, []); // 安定した関数
useEffect(() => {
fetchUserData().then(data => console.log(data));
}, [fetchUserData]); // メモ化された関数を依存配列に設定
まとめ
外部関数や変数を取り扱う場合は、useCallback
やuseMemo
を活用し、依存配列を適切に設定することが重要です。これにより、不要な再レンダリングを防ぎ、コードの効率と安定性を向上させることができます。次のセクションでは、useMemo
やuseCallback
を用いた依存配列設定の最適化についてさらに詳しく解説します。
useMemoとuseCallbackを使った最適化
useMemoとuseCallbackの役割
ReactでuseEffect
の依存配列を最適化するために、useMemo
とuseCallback
は非常に役立つツールです。
useMemo
:高コストな計算の結果をメモ化して再計算を防ぎます。useCallback
:関数の再生成を防ぎ、参照の変更による不要な再実行を抑制します。
useMemoの具体例
useMemo
は、依存配列が変化しない限り、計算結果をキャッシュします。これにより、複雑な計算処理が頻繁に実行されるのを防ぎます。
例:計算結果のメモ化
以下は、リストのフィルタリングを効率化する例です。
const filteredItems = useMemo(() => {
return items.filter(item => item.active);
}, [items]); // itemsが変更された場合のみ再計算
useEffect(() => {
console.log('Filtered items updated:', filteredItems);
}, [filteredItems]); // メモ化された結果を依存配列に設定
メリット:
- 不要な再計算を防止。
- 大量データを扱う場合でもパフォーマンスを維持。
useMemoを使用しない場合のリスク
メモ化を行わない場合、毎回再計算が発生し、特に依存配列が頻繁に変更されるとパフォーマンスに大きな影響を与えます。
useCallbackの具体例
useCallback
は、依存配列が変化しない限り、同じ関数参照を再利用します。これにより、依存配列の安定性を保ちます。
例:関数のメモ化
以下は、データのフェッチ関数をメモ化してuseEffect
で使用する例です。
const fetchData = useCallback(() => {
console.log('Fetching data...');
}, []); // 関数の再生成を防止
useEffect(() => {
fetchData();
}, [fetchData]); // fetchDataが変化しないため、useEffectも安定
メリット:
- 無駄な再生成を防ぎ、効率的。
- 他のフックやコンポーネントに渡す場合も、再レンダリングを抑制。
useCallbackを使用しない場合のリスク
関数がレンダリングごとに再生成され、依存配列に変化が生じるため、useEffect
が毎回実行される可能性があります。
useMemoとuseCallbackの併用例
useMemo
とuseCallback
は、依存配列の安定性を保つために併用できます。以下は、オブジェクトと関数を同時にメモ化する例です。
例:複雑な依存配列の最適化
const memoizedObject = useMemo(() => {
return { key: 'value' };
}, []);
const handleEvent = useCallback(() => {
console.log('Event triggered with:', memoizedObject);
}, [memoizedObject]);
useEffect(() => {
handleEvent();
}, [handleEvent]); // 依存配列が安定
ポイント:
- オブジェクトを
useMemo
でメモ化。 - そのオブジェクトを参照する関数を
useCallback
でメモ化。
パフォーマンス最適化のヒント
1. 必要な範囲でメモ化を実施
- 過剰なメモ化はコードの可読性を損なう可能性があります。
- パフォーマンスに影響を与える箇所に絞ってメモ化を適用。
2. ESLintルールを活用
react-hooks/exhaustive-deps
ルールを有効にして、依存配列のミスを未然に防止。
3. React DevToolsでパフォーマンスを測定
- React DevToolsのプロファイラ機能を使用して、再レンダリングが最適化されているか確認。
まとめ
useMemo
とuseCallback
は、依存配列を安定化し、不要な再計算や再生成を防ぐ強力なツールです。これらを適切に活用することで、Reactアプリケーションのパフォーマンスを向上させることができます。次のセクションでは、API呼び出しと依存配列の高度な応用について解説します。
高度な応用例:API呼び出しと依存配列
useEffectを利用したAPI呼び出しの基本
ReactでのAPI呼び出しはuseEffect
を使用して行うことが一般的です。しかし、依存配列の設定を間違えると、不要な再リクエストや無限ループが発生する場合があります。
例:API呼び出しの基本的な構造
以下は、初回レンダリング時にAPIからデータを取得する例です。
useEffect(() => {
async function fetchData() {
const response = await fetch('https://api.example.com/data');
const data = await response.json();
console.log(data);
}
fetchData();
}, []); // 初回レンダリング時のみ実行
このコードは、空の依存配列[]
によって初回レンダリング時のみに実行されます。
依存配列を動的に設定する例
APIの呼び出しに使用するパラメータが動的に変化する場合、依存配列にその値を含める必要があります。
例:動的なパラメータでAPIを呼び出す
以下は、検索キーワードが変更されたときにAPIを呼び出す例です。
const [query, setQuery] = useState('default');
useEffect(() => {
async function fetchData() {
const response = await fetch(`https://api.example.com/search?q=${query}`);
const data = await response.json();
console.log(data);
}
fetchData();
}, [query]); // queryが変更されるたびに実行
ポイント:
- 依存配列に
query
を含めることで、検索キーワードが変更されたときだけAPIが呼び出されます。
不要なAPI呼び出しを防ぐ工夫
1. デバウンス処理
頻繁に変更される値(例:ユーザーの入力)を依存配列に含めると、APIが過剰に呼び出される可能性があります。これを防ぐには、デバウンス処理を行います。
例:デバウンス処理の実装
const [query, setQuery] = useState('');
const [debouncedQuery, setDebouncedQuery] = useState(query);
useEffect(() => {
const handler = setTimeout(() => {
setDebouncedQuery(query);
}, 500); // 500msの遅延
return () => clearTimeout(handler); // クリーンアップ
}, [query]);
useEffect(() => {
async function fetchData() {
const response = await fetch(`https://api.example.com/search?q=${debouncedQuery}`);
const data = await response.json();
console.log(data);
}
if (debouncedQuery) fetchData();
}, [debouncedQuery]);
効果:
- ユーザー入力が一定時間停止した後にのみAPIが呼び出される。
2. キャンセル処理
API呼び出しが古い状態を元に実行される場合、不要なリクエストをキャンセルする必要があります。
例:AbortControllerを用いたキャンセル処理
useEffect(() => {
const controller = new AbortController();
async function fetchData() {
try {
const response = await fetch('https://api.example.com/data', {
signal: controller.signal,
});
const data = await response.json();
console.log(data);
} catch (error) {
if (error.name === 'AbortError') {
console.log('Request aborted');
}
}
}
fetchData();
return () => controller.abort(); // クリーンアップでリクエストをキャンセル
}, []);
効果:
- コンポーネントがアンマウントされても、不要なAPI呼び出しが発生しない。
実践的な応用:依存配列を活用した条件付きAPI呼び出し
例:複数条件でAPIを呼び出す
以下は、条件に応じてAPIを呼び出す高度な例です。
const [filters, setFilters] = useState({ category: 'all', sort: 'asc' });
useEffect(() => {
async function fetchFilteredData() {
const { category, sort } = filters;
const response = await fetch(`https://api.example.com/items?category=${category}&sort=${sort}`);
const data = await response.json();
console.log(data);
}
fetchFilteredData();
}, [filters]); // filtersが変更された場合に実行
ポイント:
- フィルタの状態(
category
やsort
)が変更されたときにのみAPIを呼び出します。
エラーハンドリングの重要性
API呼び出しではエラーが発生する可能性があるため、適切なエラーハンドリングを行う必要があります。
例:エラー処理
useEffect(() => {
async function fetchData() {
try {
const response = await fetch('https://api.example.com/data');
if (!response.ok) throw new Error('Network response was not ok');
const data = await response.json();
console.log(data);
} catch (error) {
console.error('Fetching error:', error);
}
}
fetchData();
}, []);
まとめ
useEffect
を利用したAPI呼び出しでは、依存配列の設定と最適化が鍵となります。デバウンスやキャンセル処理を活用することで、効率的で信頼性の高いデータ取得が可能になります。次のセクションでは、依存配列に関するトラブルシューティング方法を詳しく解説します。
トラブルシューティング:依存配列に関する問題の解決方法
依存配列が原因で発生する主な問題
useEffect
の依存配列が適切に設定されていない場合、以下のような問題が発生することがあります:
- 無限ループ: 副作用が繰り返し実行される。
- 不要な再実行: パフォーマンスの低下を引き起こす。
- 期待しない動作: 副作用が正しく動作しない。
以下では、これらの問題の具体的な解決策を紹介します。
無限ループの問題
原因: 副作用内で状態を更新し、その状態を依存配列に含めると、useEffect
が再びトリガーされる。
例:
useEffect(() => {
setCount(prev => prev + 1); // 状態を更新
}, [count]); // 状態を依存配列に含める
解決策:
状態の更新を副作用の外部で制御し、依存配列から外すか、条件を設定します。
修正版:
useEffect(() => {
if (count < 10) {
setCount(prev => prev + 1);
}
}, [count]); // 条件を追加
不要な再実行の問題
原因: 依存配列に不要な値が含まれている場合、useEffect
が過剰にトリガーされる。
例:
const config = { key: 'value' };
useEffect(() => {
console.log(config);
}, [config]); // 毎回異なる参照のため再実行
解決策:
- 値をメモ化して参照の変更を防ぐ。
- 依存配列を最小限に設定する。
修正版:
const memoizedConfig = useMemo(() => ({ key: 'value' }), []);
useEffect(() => {
console.log(memoizedConfig);
}, [memoizedConfig]); // メモ化した値を使用
期待しない動作の問題
原因: 副作用内で使用している変数が依存配列に含まれていないため、古い値を参照している。
例:
useEffect(() => {
console.log(counter);
}, []); // counterを依存配列に含めていない
解決策:
副作用内で使用するすべての値を依存配列に含める。
修正版:
useEffect(() => {
console.log(counter);
}, [counter]); // 必要な値を依存配列に追加
依存配列エラーの防止策
1. ESLintルールの活用
ReactのESLintルール「react-hooks/exhaustive-deps
」を有効にすることで、依存配列に含めるべき値を自動的に検出できます。
例:
useEffect(() => {
console.log(counter); // ESLint警告: Missing dependency 'counter'
}, []);
修正版:
useEffect(() => {
console.log(counter);
}, [counter]); // ESLintに従って修正
2. 必要に応じたeslint-disableの使用
意図的に依存配列を空にする場合は、コメントで警告を無効化します。
例:
useEffect(() => {
console.log('This runs only once');
// eslint-disable-next-line react-hooks/exhaustive-deps
}, []); // 警告を無効化
依存配列のデバッグ方法
1. デバッグツールを活用
- React DevToolsで
useEffect
のトリガー状況を確認する。 - Chrome DevToolsのコンソールで依存配列や変数の変化を監視。
例:
useEffect(() => {
console.log('Effect triggered');
console.log('Dependencies:', dependency);
}, [dependency]);
2. ログを使って依存関係を追跡
依存配列に含まれる値がどのように変更されているかを追跡します。
まとめ
useEffect
の依存配列の設定ミスは、アプリケーションの動作に大きな影響を与える可能性があります。無限ループや不要な再実行を防ぐためには、依存配列を最小限にし、必要な値を正確に指定することが重要です。次のセクションでは、これまでのポイントを総括し、記事を締めくくります。
まとめ
本記事では、ReactのuseEffect
フックにおける依存配列の重要性と設定方法について詳しく解説しました。依存配列の正しい設定は、副作用の制御を最適化し、無限ループや不要な再実行を防ぐ鍵となります。また、useMemo
やuseCallback
を活用することで、パフォーマンスを向上させるテクニックも紹介しました。
適切な依存配列の設定は、Reactアプリケーションの安定性と効率性を大幅に向上させます。特に、デバウンスやキャンセル処理、ESLintルールを活用することで、実践的な問題に対応できるようになります。本記事で学んだ内容を活用し、依存配列の設定をより正確かつ効果的に行ってください。
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