Apache仮想ホスト設定の基本から応用まで完全解説

Apacheの仮想ホストは、一台のサーバーで複数のWebサイトを運用できる強力な機能です。たとえば「example.com」と「test.com」という2つのサイトを、1台のサーバーで別々に管理できます。これにより、コスト削減やサーバーリソースの効率的な活用が可能となります。

仮想ホストは、ドメイン名やIPアドレスによってWebサイトを区別し、それぞれ異なるコンテンツや設定を適用できます。特に、レンタルサーバー業者や企業内で複数のサービスを展開する際に欠かせない技術です。

本記事では、仮想ホストの基本概念から具体的な設定方法、SSLを利用したセキュアな仮想ホストの構築、トラブルシューティングまでを詳しく解説します。仮想ホストを活用することで、1台のサーバーで効率的に複数のWebサイトを運営できるようになります。

仮想ホストの設定は難しいイメージがありますが、一つひとつ丁寧に設定していけば初心者でも簡単に扱えるようになります。これからApacheを使ってWebサイトを運用したい方や、複数のドメインを管理したい方に向けて、分かりやすく説明していきます。

目次

仮想ホストとは何か


仮想ホスト(Virtual Host)は、1台のWebサーバーで複数のドメインやWebサイトを同時に運用するための仕組みです。Apacheでは「VirtualHost」ディレクティブを使って設定し、リクエストされたドメインに応じて異なるコンテンツを配信できます。

たとえば、「example.com」と「test.com」を1つのApacheサーバーで運用し、それぞれに異なるWebサイトを表示させることが可能です。これにより、物理的なサーバーを複数台用意する必要がなくなり、コスト削減や管理の簡略化が実現します。

仮想ホストの役割


仮想ホストの主な役割は以下の通りです。

  • 複数のWebサイト運営:1台のサーバーで複数のサイトをホストできるため、サーバーリソースを効率的に利用できます。
  • ドメインごとの設定管理:異なるドメインごとに個別の設定が可能です。たとえば、「example.com」はPHPを使い、「test.com」は静的HTMLサイトといった使い分けができます。
  • SSL/TLSの導入:ドメインごとに異なるSSL証明書を適用し、安全な通信を実現します。

仮想ホストが必要な理由


仮想ホストが求められる主な理由は以下です。

  • コスト削減:サーバーを複数用意する必要がなく、ハードウェアコストを大幅に削減できます。
  • 管理の簡略化:1台のサーバーで複数のWebサイトを管理するため、運用がシンプルになります。
  • 拡張性:必要に応じて新しいドメインやサイトを簡単に追加できます。

仮想ホストの具体例


以下の例は、2つのドメインを仮想ホストで設定する方法です。

<VirtualHost *:80>
    ServerName example.com
    DocumentRoot /var/www/example
</VirtualHost>

<VirtualHost *:80>
    ServerName test.com
    DocumentRoot /var/www/test
</VirtualHost>

この設定では、「example.com」にアクセスすると/var/www/exampleのコンテンツが表示され、「test.com」では/var/www/testのコンテンツが表示されます。

仮想ホストは、効率的なサーバー運用の基本となる技術であり、適切に設定することでスムーズなWebサイト運営が可能になります。

名前ベースの仮想ホストとIPベースの違い


Apacheの仮想ホストには大きく分けて「名前ベースの仮想ホスト」と「IPベースの仮想ホスト」の2種類があります。それぞれの方式には特徴があり、運用環境や要件に応じて使い分ける必要があります。

名前ベースの仮想ホストとは


名前ベースの仮想ホストは、1つのIPアドレスで複数のドメインを運用する方法です。リクエスト時に送られる「Hostヘッダ」を利用して、アクセスされたドメインに応じたコンテンツを配信します。

特徴

  • メリット
  • IPアドレスが1つで済むため、リソースを節約できる。
  • 新しいサイトを追加する際にIPアドレスを増やす必要がない。
  • コストが低い。
  • デメリット
  • SSLの設定が複雑になる(SNI対応が必要)。
  • 同じポートで複数のサイトを運用するため、セキュリティ設定が求められる。

設定例

<VirtualHost *:80>
    ServerName example.com
    DocumentRoot /var/www/example
</VirtualHost>

<VirtualHost *:80>
    ServerName test.com
    DocumentRoot /var/www/test
</VirtualHost>


この設定では、1つのIPアドレスで「example.com」と「test.com」の両方を運用できます。

IPベースの仮想ホストとは


IPベースの仮想ホストは、異なるIPアドレスを使ってドメインごとにWebサイトを運用する方法です。各仮想ホストに固有のIPアドレスを割り当てることで、ポート番号やHostヘッダに依存せずにサイトを分離できます。

特徴

  • メリット
  • SSL証明書をドメインごとに簡単に設定できる。
  • サイトごとに異なるポートやIPアドレスを利用できるため、セキュリティが高い。
  • デメリット
  • サーバーごとに複数のIPアドレスが必要となり、コストがかかる。
  • IPアドレスの枯渇問題に直面する可能性がある。

設定例

<VirtualHost 192.168.1.10:80>
    ServerName example.com
    DocumentRoot /var/www/example
</VirtualHost>

<VirtualHost 192.168.1.11:80>
    ServerName test.com
    DocumentRoot /var/www/test
</VirtualHost>


この設定では、「example.com」と「test.com」に異なるIPアドレスが割り当てられています。

使い分けのポイント

  • コストを抑えたい場合:名前ベースの仮想ホストを選択します。
  • SSLをドメインごとに設定する必要がある場合:IPベースの仮想ホストが適しています。
  • セキュリティやポート分離を重視する場合:IPベースが推奨されます。

仮想ホストの方式を正しく選ぶことで、効率的かつ安全なWebサーバーの運用が可能になります。

Apacheで仮想ホストを設定する手順


Apacheで仮想ホストを設定するには、設定ファイルを編集し、ドメインごとに適切なディレクティブを記述します。以下では、名前ベースの仮想ホストを設定する具体的な手順を解説します。

1. 必要なディレクトリとファイルの準備


仮想ホストごとに専用のドキュメントルートを作成します。たとえば「example.com」と「test.com」を運用する場合は以下のように準備します。

sudo mkdir -p /var/www/example.com/public_html  
sudo mkdir -p /var/www/test.com/public_html  


それぞれのディレクトリにindex.htmlを配置して、動作確認用のコンテンツを準備します。

echo "<h1>Welcome to example.com</h1>" | sudo tee /var/www/example.com/public_html/index.html  
echo "<h1>Welcome to test.com</h1>" | sudo tee /var/www/test.com/public_html/index.html  

2. Apacheの仮想ホスト設定ファイルを作成


Apacheでは、仮想ホストの設定ファイルを「/etc/apache2/sites-available/」に作成します。

sudo nano /etc/apache2/sites-available/example.com.conf  


以下の内容を記述します。

<VirtualHost *:80>  
    ServerAdmin admin@example.com  
    ServerName example.com  
    ServerAlias www.example.com  
    DocumentRoot /var/www/example.com/public_html  

    <Directory /var/www/example.com/public_html>  
        AllowOverride All  
        Require all granted  
    </Directory>  

    ErrorLog ${APACHE_LOG_DIR}/example.com_error.log  
    CustomLog ${APACHE_LOG_DIR}/example.com_access.log combined  
</VirtualHost>  


「test.com」の場合も同様に設定ファイルを作成します。

sudo nano /etc/apache2/sites-available/test.com.conf  
<VirtualHost *:80>  
    ServerAdmin admin@test.com  
    ServerName test.com  
    ServerAlias www.test.com  
    DocumentRoot /var/www/test.com/public_html  

    <Directory /var/www/test.com/public_html>  
        AllowOverride All  
        Require all granted  
    </Directory>  

    ErrorLog ${APACHE_LOG_DIR}/test.com_error.log  
    CustomLog ${APACHE_LOG_DIR}/test.com_access.log combined  
</VirtualHost>  

3. 仮想ホストを有効化


作成した仮想ホスト設定をApacheに適用するために、有効化します。

sudo a2ensite example.com.conf  
sudo a2ensite test.com.conf  


Apacheの設定を再読み込みします。

sudo systemctl reload apache2  

4. hostsファイルの設定(ローカルテスト用)


DNSが設定されていない場合、ローカルでテストするには「/etc/hosts」に以下のように記述します。

127.0.0.1 example.com  
127.0.0.1 test.com  

5. 動作確認


ブラウザで「http://example.com」「http://test.com」にアクセスし、それぞれの仮想ホストが正しく表示されることを確認します。

ポイント

  • ドメインがDNSに設定されている場合は、hostsファイルの編集は不要です。
  • 必ずディレクトリのパーミッションを確認し、Apacheがアクセスできるようにしておきます。
  • 設定に問題がある場合は「sudo apachectl configtest」で構文エラーを確認できます。

Apacheで仮想ホストを設定することで、複数のWebサイトを効率的に運用できるようになります。

複数ドメインを運用する方法


Apacheの仮想ホスト機能を活用することで、1台のサーバーで複数のドメインを効率的に運用できます。特に名前ベースの仮想ホストは、IPアドレスを節約しながら複数のドメインをホストするのに最適です。ここでは、複数のドメインを使った仮想ホストの運用例とその設定方法を解説します。

1. ドメイン構成の計画


仮に以下のような3つのドメインを運用するとします。

  • example.com (メインサイト)
  • blog.example.com (ブログサイト)
  • shop.example.com (ECサイト)

これらを1台のApacheサーバーで管理します。

2. ドキュメントルートの作成


ドメインごとに個別のドキュメントルートを作成します。

sudo mkdir -p /var/www/example.com/public_html  
sudo mkdir -p /var/www/blog.example.com/public_html  
sudo mkdir -p /var/www/shop.example.com/public_html  


テスト用のindex.htmlをそれぞれに配置します。

echo "<h1>Welcome to example.com</h1>" | sudo tee /var/www/example.com/public_html/index.html  
echo "<h1>Welcome to blog.example.com</h1>" | sudo tee /var/www/blog.example.com/public_html/index.html  
echo "<h1>Welcome to shop.example.com</h1>" | sudo tee /var/www/shop.example.com/public_html/index.html  

3. 仮想ホスト設定ファイルの作成


それぞれのドメイン用に仮想ホスト設定ファイルを作成します。

example.comの設定

sudo nano /etc/apache2/sites-available/example.com.conf  
<VirtualHost *:80>  
    ServerAdmin admin@example.com  
    ServerName example.com  
    DocumentRoot /var/www/example.com/public_html  

    <Directory /var/www/example.com/public_html>  
        AllowOverride All  
        Require all granted  
    </Directory>  

    ErrorLog ${APACHE_LOG_DIR}/example.com_error.log  
    CustomLog ${APACHE_LOG_DIR}/example.com_access.log combined  
</VirtualHost>  

blog.example.comの設定

sudo nano /etc/apache2/sites-available/blog.example.com.conf  
<VirtualHost *:80>  
    ServerAdmin admin@blog.example.com  
    ServerName blog.example.com  
    DocumentRoot /var/www/blog.example.com/public_html  

    <Directory /var/www/blog.example.com/public_html>  
        AllowOverride All  
        Require all granted  
    </Directory>  

    ErrorLog ${APACHE_LOG_DIR}/blog_error.log  
    CustomLog ${APACHE_LOG_DIR}/blog_access.log combined  
</VirtualHost>  

shop.example.comの設定

sudo nano /etc/apache2/sites-available/shop.example.com.conf  
<VirtualHost *:80>  
    ServerAdmin admin@shop.example.com  
    ServerName shop.example.com  
    DocumentRoot /var/www/shop.example.com/public_html  

    <Directory /var/www/shop.example.com/public_html>  
        AllowOverride All  
        Require all granted  
    </Directory>  

    ErrorLog ${APACHE_LOG_DIR}/shop_error.log  
    CustomLog ${APACHE_LOG_DIR}/shop_access.log combined  
</VirtualHost>  

4. 仮想ホストの有効化とApacheの再起動


作成した仮想ホスト設定を有効化し、Apacheを再起動します。

sudo a2ensite example.com.conf  
sudo a2ensite blog.example.com.conf  
sudo a2ensite shop.example.com.conf  
sudo systemctl reload apache2  

5. hostsファイルの編集(ローカルテスト用)


DNSがまだ設定されていない場合は、ローカルテスト用に「/etc/hosts」を編集します。

127.0.0.1 example.com  
127.0.0.1 blog.example.com  
127.0.0.1 shop.example.com  

6. 動作確認


ブラウザで「http://example.com」「http://blog.example.com」「http://shop.example.com」にアクセスし、それぞれの仮想ホストが正しく表示されることを確認します。

応用例:ワイルドカードを使ったサブドメイン管理


サブドメインが多い場合は、ワイルドカードを利用した仮想ホスト設定が便利です。

<VirtualHost *:80>  
    ServerAdmin admin@example.com  
    ServerName *.example.com  
    DocumentRoot /var/www/example.com/public_html  
</VirtualHost>  


この設定では、「shop.example.com」「blog.example.com」などすべてのサブドメインが同じドキュメントルートを参照します。

仮想ホストを活用することで、多様なWebサイトを一元管理し、効率的な運用が可能となります。

SSLを使った仮想ホスト設定


SSL(Secure Sockets Layer)を使った仮想ホスト設定は、Webサイトのセキュリティを強化し、通信を暗号化するために重要です。特に、ユーザーの個人情報を扱うECサイトやログイン機能を持つサイトでは、SSLの導入が必須となります。ここでは、ApacheでSSLを設定し、仮想ホストに適用する手順を解説します。

1. 必要なモジュールを有効化


SSLを利用するには、ApacheのSSLモジュールを有効にする必要があります。

sudo a2enmod ssl  
sudo systemctl restart apache2  

2. SSL証明書の取得と設置


SSL証明書は、商用CA(Certificate Authority)から購入するか、Let’s Encryptなどの無料の証明書を利用します。ここではLet’s Encryptを使って証明書を取得する方法を紹介します。

Certbotのインストール

sudo apt update  
sudo apt install certbot python3-certbot-apache  

証明書の取得

sudo certbot --apache -d example.com -d www.example.com  


このコマンドを実行すると、Let’s Encryptが証明書を取得し、自動的にApacheの仮想ホスト設定が変更されます。

3. SSL仮想ホスト設定の手動追加


手動でSSL仮想ホストを設定する場合は、以下のように仮想ホスト設定を編集します。

sudo nano /etc/apache2/sites-available/example.com-le-ssl.conf  

以下の内容を記述します。

<IfModule mod_ssl.c>  
<VirtualHost *:443>  
    ServerAdmin admin@example.com  
    ServerName example.com  
    ServerAlias www.example.com  
    DocumentRoot /var/www/example.com/public_html  

    <Directory /var/www/example.com/public_html>  
        AllowOverride All  
        Require all granted  
    </Directory>  

    SSLEngine on  
    SSLCertificateFile /etc/letsencrypt/live/example.com/fullchain.pem  
    SSLCertificateKeyFile /etc/letsencrypt/live/example.com/privkey.pem  

    ErrorLog ${APACHE_LOG_DIR}/example.com_error.log  
    CustomLog ${APACHE_LOG_DIR}/example.com_access.log combined  
</VirtualHost>  
</IfModule>  

4. HTTPからHTTPSへのリダイレクト


SSL証明書が適用されたら、HTTPアクセスを自動的にHTTPSへリダイレクトするように設定します。

<VirtualHost *:80>  
    ServerAdmin admin@example.com  
    ServerName example.com  
    DocumentRoot /var/www/example.com/public_html  
    Redirect permanent / https://example.com/  
</VirtualHost>  

5. 設定の適用と確認


仮想ホストの有効化とApacheの再起動を行います。

sudo a2ensite example.com-le-ssl.conf  
sudo systemctl reload apache2  

6. 証明書の自動更新設定


Let’s Encryptの証明書は90日間有効です。自動更新を設定しておくことで、期限切れを防ぐことができます。

以下のコマンドで、証明書の自動更新が設定されているか確認します。

sudo certbot renew --dry-run  

7. 動作確認


ブラウザで「https://example.com」にアクセスし、鍵マークが表示されればSSLが正しく適用されています。

トラブルシューティング

  • 証明書エラーが出る場合:証明書ファイルのパスを再確認してください。
  • HTTPS接続できない場合:ファイアウォールで443ポートが開放されているか確認します。
sudo ufw allow 443  

SSLを使った仮想ホストの設定により、セキュアな通信が可能となり、ユーザーからの信頼性が向上します。Let’s Encryptを活用すれば、無料で手軽にSSLを導入できるため、積極的に活用しましょう。

仮想ホスト設定のトラブルシューティング


仮想ホストの設定は便利ですが、構成ミスや環境要因によってエラーが発生することがあります。Apacheが正しく動作しない場合や、期待通りのサイトが表示されない場合は、問題の原因を特定して迅速に対処する必要があります。ここでは、仮想ホスト設定でよくあるエラーとその解決方法について解説します。

1. 設定ファイルの文法エラー


問題
Apacheの設定ファイルに文法エラーがあると、Apacheが再起動できません。

解決方法
以下のコマンドで設定ファイルの文法を確認します。

sudo apachectl configtest  


エラーがある場合は、「Syntax error」などのメッセージが表示されます。エラーの詳細を確認し、指摘された行を修正してください。

よくあるミス例

  • <VirtualHost *:80> の閉じタグが抜けている
  • DocumentRootServerName の記述漏れ
  • セミコロン「;」やダブルクォーテーション「”」の不足

2. サイトが表示されない(404エラー)


問題
仮想ホストを設定したが、サイトが表示されず404エラーになる。

解決方法

  • ドキュメントルートの存在確認
    仮想ホスト設定で指定したディレクトリが存在し、正しい権限が設定されているか確認します。
sudo ls -ld /var/www/example.com/public_html  
  • パーミッションの確認
    Apacheがドキュメントルートにアクセスできるようにディレクトリのパーミッションを設定します。
sudo chown -R www-data:www-data /var/www/example.com/public_html  
sudo chmod -R 755 /var/www/example.com  

3. 別の仮想ホストが表示される


問題
アクセスしたサイトが意図したものではなく、別の仮想ホストが表示される。

解決方法
仮想ホストの優先順位が正しく設定されていない可能性があります。Apacheは、最初に定義された仮想ホストをデフォルトとして扱います。

  • デフォルトサイトを無効にして、明示的に仮想ホストを指定します。
sudo a2dissite 000-default.conf  
  • 各仮想ホストにServerNameを明確に記述し、重複がないことを確認します。
<VirtualHost *:80>  
    ServerName example.com  
    DocumentRoot /var/www/example.com/public_html  
</VirtualHost>  

4. SSL設定時のエラー


問題
SSL仮想ホストを設定したが、「証明書が無効」や「接続できません」と表示される。

解決方法

  • SSL証明書ファイルのパスが正しいか確認します。
SSLCertificateFile /etc/letsencrypt/live/example.com/fullchain.pem  
SSLCertificateKeyFile /etc/letsencrypt/live/example.com/privkey.pem  
  • 証明書の期限切れを確認します。
sudo certbot renew --dry-run  
  • HTTPSポート(443)が開放されているか確認します。
sudo ufw allow 443  

5. ポートの競合エラー


問題
「Address already in use」というエラーが表示される。

解決方法
同じポートを複数のサービスが使用している可能性があります。以下のコマンドでポートの使用状況を確認します。

sudo netstat -tuln | grep :80  


他のサービスがポート80や443を使用している場合は、該当サービスを停止するか、仮想ホストで異なるポートを指定してください。

6. ホスト名が解決できない


問題
ドメイン名が正しく仮想ホストにマッピングされていない。

解決方法

  • サーバーのhostsファイルに仮想ホストを追加します(ローカルテスト用)。
sudo nano /etc/hosts  
127.0.0.1 example.com  
127.0.0.1 test.com  
  • 公開サーバーの場合はDNSレコードを確認し、AレコードやCNAMEが正しく設定されているか確認します。

7. Apacheが起動しない


問題
設定後にApacheが起動しなくなった。

解決方法
エラーログを確認して原因を特定します。

sudo journalctl -xe  
sudo tail -n 50 /var/log/apache2/error.log  

Apacheの仮想ホストは柔軟で強力な機能ですが、設定ミスが起きやすい部分でもあります。エラーログや設定チェックコマンドを活用し、トラブルを迅速に解消しましょう。

ログ管理とアクセス制御


仮想ホストごとにログ管理とアクセス制御を適切に設定することで、セキュリティを強化し、トラブル発生時の解析が容易になります。Apacheでは、仮想ホスト単位でエラーログやアクセスログを記録することが可能です。また、特定のIPアドレスやユーザーエージェントからのアクセスを制限することで、不正アクセスを防ぐことができます。

1. 仮想ホストごとのログ設定


仮想ホストごとに独自のログファイルを設定することで、どのサイトで問題が発生しているかをすぐに特定できます。

仮想ホスト設定例

<VirtualHost *:80>  
    ServerAdmin admin@example.com  
    ServerName example.com  
    DocumentRoot /var/www/example.com/public_html  

    ErrorLog ${APACHE_LOG_DIR}/example.com_error.log  
    CustomLog ${APACHE_LOG_DIR}/example.com_access.log combined  
</VirtualHost>  


説明

  • ErrorLog:仮想ホスト単位のエラーログを指定します。
  • CustomLog:アクセスログを記録するファイルを指定します。combinedは、ユーザーエージェントやリファラー情報などを含む詳細なログフォーマットです。

ブログ用の仮想ホスト設定

<VirtualHost *:80>  
    ServerAdmin admin@blog.example.com  
    ServerName blog.example.com  
    DocumentRoot /var/www/blog.example.com/public_html  

    ErrorLog ${APACHE_LOG_DIR}/blog_error.log  
    CustomLog ${APACHE_LOG_DIR}/blog_access.log combined  
</VirtualHost>  

2. ログフォーマットのカスタマイズ


デフォルトのログフォーマットに加え、独自のフォーマットを定義して使用することができます。

LogFormat "%h %l %u %t \"%r\" %>s %b" common  
LogFormat "%v %h %l %u %t \"%r\" %>s %b \"%{Referer}i\" \"%{User-Agent}i\"" combined  
  • %h:クライアントのIPアドレス
  • %r:リクエストされたリソース
  • %>s:HTTPステータスコード
  • %{User-Agent}i:ブラウザ情報

3. アクセス制御の設定


仮想ホストごとに、特定のIPアドレスやネットワークからのアクセスを制限することができます。

特定のIPアドレスを許可

<Directory /var/www/example.com/public_html>  
    Require ip 192.168.1.0/24  
</Directory>  


説明

  • 上記の設定では、192.168.1.0/24のネットワーク内からのみアクセスを許可します。

特定のIPアドレスを拒否

<Directory /var/www/example.com/public_html>  
    Require all granted  
    Require not ip 203.0.113.5  
</Directory>  
  • 203.0.113.5のIPアドレスからのアクセスを拒否します。

4. ユーザーエージェントによるアクセス制限


特定のクローラーや不正なユーザーエージェントをブロックすることも可能です。

<Directory /var/www/example.com/public_html>  
    SetEnvIfNoCase User-Agent "badbot" bad_bot  
    Require all granted  
    Require not env bad_bot  
</Directory>  
  • ユーザーエージェントに「badbot」を含むアクセスを拒否します。

5. ベーシック認証の設定


特定のページやディレクトリにパスワード保護を設定することもできます。

パスワードファイルの作成

sudo htpasswd -c /etc/apache2/.htpasswd admin  


仮想ホスト設定

<Directory /var/www/example.com/admin>  
    AuthType Basic  
    AuthName "Restricted Content"  
    AuthUserFile /etc/apache2/.htpasswd  
    Require valid-user  
</Directory>  
  • /adminディレクトリにアクセスする際、ユーザー名とパスワードの入力が求められます。

6. アクセスログの解析


Apacheのログファイルを解析することで、サイトの利用状況や不審なアクセスを確認できます。

sudo cat /var/log/apache2/example.com_access.log | awk '{print $1}' | sort | uniq -c | sort -nr  
  • このコマンドは、アクセス頻度が高いIPアドレスを表示します。

7. セキュリティ向上のためのポイント

  • 不要なディレクトリのインデックス表示を無効化する
Options -Indexes  
  • Apacheのバージョン情報を隠す
ServerTokens Prod  
ServerSignature Off  

仮想ホストごとのログ管理とアクセス制御は、セキュリティ対策やトラブルシューティングに不可欠です。これらを適切に設定することで、Webサイトの安全性と運用の安定性が向上します。

仮想ホストの応用例


仮想ホストは基本的なWebサイトの運用だけでなく、リダイレクト設定やサブドメインの管理、開発環境の分離など多様な用途に活用できます。ここでは、仮想ホストの応用例をいくつか紹介し、実際の設定例を解説します。

1. 特定ドメインから別ドメインへのリダイレクト


サイト移転時やメンテナンスの際、特定のドメインを別のドメインにリダイレクトすることができます。

<VirtualHost *:80>  
    ServerName oldsite.com  
    Redirect permanent / https://newsite.com/  
</VirtualHost>  


ポイント

  • Redirect permanentは301リダイレクトを行います。これにより、SEO的にも移転が正しく検索エンジンに認識されます。

2. サブドメインごとに異なるコンテンツを提供


サブドメインを活用して、サービスごとに異なるサイトを提供します。

<VirtualHost *:80>  
    ServerName blog.example.com  
    DocumentRoot /var/www/blog.example.com/public_html  
</VirtualHost>  

<VirtualHost *:80>  
    ServerName shop.example.com  
    DocumentRoot /var/www/shop.example.com/public_html  
</VirtualHost>  
  • blog.example.comはブログ用、shop.example.comはオンラインショップ用など、用途ごとにサイトを分けられます。

3. 同じドメインで開発環境と本番環境を分離


同じドメインでも、アクセスするIPアドレスによって開発環境と本番環境を切り替えることができます。

<VirtualHost *:80>  
    ServerName example.com  
    DocumentRoot /var/www/example.com/public_html  
    <Directory /var/www/example.com/public_html>  
        Require all granted  
    </Directory>  
</VirtualHost>  

<VirtualHost *:80>  
    ServerName dev.example.com  
    DocumentRoot /var/www/dev.example.com/public_html  
    <Directory /var/www/dev.example.com/public_html>  
        Require ip 192.168.1.0/24  
    </Directory>  
</VirtualHost>  
  • dev.example.comは社内ネットワークのみアクセス可能に設定します。

4. 特定のディレクトリをパスワード保護


管理画面や特定のページにアクセス制限をかける方法です。

<Directory /var/www/example.com/admin>  
    AuthType Basic  
    AuthName "Admin Area"  
    AuthUserFile /etc/apache2/.htpasswd  
    Require valid-user  
</Directory>  
  • .htpasswdにユーザーを追加することで、パスワード認証が必要になります。
sudo htpasswd -c /etc/apache2/.htpasswd admin  

5. 複数ポートでの仮想ホスト運用


特定のサービスを異なるポートで提供する場合、仮想ホストをポート単位で設定できます。

<VirtualHost *:8080>  
    ServerName dev.example.com  
    DocumentRoot /var/www/dev.example.com/public_html  
</VirtualHost>  
  • http://dev.example.com:8080でアクセス可能になります。

6. ワイルドカードサブドメインの運用


ワイルドカードを利用することで、すべてのサブドメインを同じ仮想ホストで処理できます。

<VirtualHost *:80>  
    ServerName *.example.com  
    DocumentRoot /var/www/example.com/public_html  
</VirtualHost>  
  • どのサブドメインでアクセスしても同じコンテンツが提供されます。

7. アクセス解析とログ分離


仮想ホストごとにアクセスログを分離して管理し、サイトのトラフィックを個別に解析します。

<VirtualHost *:80>  
    ServerName blog.example.com  
    DocumentRoot /var/www/blog.example.com/public_html  
    ErrorLog ${APACHE_LOG_DIR}/blog_error.log  
    CustomLog ${APACHE_LOG_DIR}/blog_access.log combined  
</VirtualHost>  
  • blog_access.logにブログ専用のアクセスログが記録されます。

8. メンテナンスモードの設定


サイトのメンテナンス時に503エラーを表示させ、ユーザーにメンテナンス中であることを知らせます。

<VirtualHost *:80>  
    ServerName example.com  
    DocumentRoot /var/www/example.com/public_html  
    <Location />  
        ErrorDocument 503 /maintenance.html  
        Require all denied  
    </Location>  
</VirtualHost>  
  • メンテナンスページ「maintenance.html」を用意し、通常のアクセスを制限します。

9. 特定のファイルタイプへのアクセス制限


サーバー上の重要なファイルへのアクセスを制限します。

<FilesMatch "\.(htaccess|htpasswd|config|sql)$">  
    Require all denied  
</FilesMatch>  
  • .htaccess.sqlファイルなど、機密性の高いファイルへのアクセスを拒否します。

仮想ホストの応用設定を活用することで、柔軟に多様なWebサービスを運用できるようになります。必要に応じて設定を組み合わせ、セキュリティや運用効率を向上させましょう。

まとめ


本記事では、Apacheの仮想ホスト設定について、基本から応用例まで詳しく解説しました。仮想ホストは、1台のサーバーで複数のWebサイトを効率的に運用するための重要な技術であり、コスト削減や管理の簡略化に役立ちます。

仮想ホストの種類である名前ベースIPベースの違いや、SSLを使ったセキュアなサイトの構築方法、特定のディレクトリをパスワードで保護する方法など、仮想ホストの活用シーンは多岐にわたります。さらに、ログ管理やアクセス制御を適切に行うことで、サーバーのセキュリティと運用の安定性が向上します。

今回の内容を参考に、仮想ホストの設定を柔軟にカスタマイズし、自身のWebサイト運用に役立ててください。仮想ホストを駆使することで、より安全で効率的なサーバー管理が可能になります。

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