Apache仮想ホストごとのCORSポリシー設定完全ガイド

Apacheで仮想ホストごとにCORS(Cross-Origin Resource Sharing)ポリシーを設定する方法について詳しく解説します。
Webアプリケーションでは、異なるドメイン間でのリソース共有が必要になるケースが多くありますが、セキュリティ上の理由からデフォルトでは制限されています。これを制御するのがCORSです。

Apacheは仮想ホスト(Virtual Host)機能を利用して、同一サーバー上で複数のWebサイトやアプリケーションをホストできます。それぞれの仮想ホストに対して個別にCORSポリシーを設定することで、異なるドメインごとに適切なセキュリティ設定を行うことが可能です。

本記事では、CORSの基礎知識からApacheでの設定方法、仮想ホストごとに異なるポリシーを適用する手順、そして設定の確認方法やトラブルシューティングについて詳しく解説します。
これにより、複数のWebアプリケーションを安全かつ効率的に運用できるようになります。

目次

CORSとは何か


CORS(Cross-Origin Resource Sharing)は、異なるオリジン間でのリソース共有を可能にするWeb標準の仕組みです。オリジンとは、「プロトコル」「ドメイン」「ポート」の3要素で構成され、これらがすべて一致する場合のみ同一オリジンとみなされます。

例えば、https://example.com から https://api.example.com にリクエストを送る場合、ドメインが異なるため異なるオリジンとなります。この際、ブラウザはセキュリティ上の理由からクロスオリジンのリクエストをブロックします。これに対し、CORSを設定することで特定のオリジンからのリクエストを許可することができます。

CORSの重要性


CORSは以下のような理由で重要です。

  • セキュリティの向上:不要なオリジンからのリクエストを防ぎ、データの不正アクセスを防止します。
  • Webアプリケーションの柔軟性:異なるドメイン間でAPIを共有できるため、フロントエンドとバックエンドを異なるオリジンで運用する際に役立ちます。
  • ユーザー体験の向上:制限されたオリジンのみを許可することで、アプリケーションの安全性を保ちつつ、必要なリソースの共有を可能にします。

CORSの仕組み


CORSは、サーバーがHTTPレスポンスヘッダーにAccess-Control-Allow-Originを付与することで動作します。例えば、以下のようなヘッダーがサーバーから返されると、そのオリジンからのアクセスが許可されます。

Access-Control-Allow-Origin: https://example.com

また、すべてのオリジンからのアクセスを許可する場合は次のように設定します。

Access-Control-Allow-Origin: *

CORSを正しく設定することで、セキュリティを損なわずに異なるオリジン間のリソース共有が可能となります。

ApacheでのCORS設定の基本


ApacheでCORSを有効にするには、主にApacheの設定ファイル(httpd.confapache2.conf)、または仮想ホストの設定ファイルを編集します。mod_headersモジュールを使用して、必要なHTTPレスポンスヘッダーを追加することでCORSを制御します。

mod_headersモジュールの有効化


まず、Apacheでmod_headersが有効になっているか確認します。有効でない場合は、以下のコマンドで有効化します。

a2enmod headers
systemctl restart apache2

これにより、CORS関連のヘッダーを操作できるようになります。

基本的なCORS設定例


すべてのオリジンからのリクエストを許可するシンプルな設定は以下のようになります。

<IfModule mod_headers.c>
    Header set Access-Control-Allow-Origin "*"
</IfModule>

特定のオリジンのみを許可する場合は、オリジンを指定します。

<IfModule mod_headers.c>
    Header set Access-Control-Allow-Origin "https://example.com"
</IfModule>

POSTやPUTなどのメソッドを許可する


デフォルトではGETやHEADなどのシンプルなリクエストのみが許可されます。POSTやPUTを許可するには以下を追加します。

<IfModule mod_headers.c>
    Header set Access-Control-Allow-Origin "https://example.com"
    Header set Access-Control-Allow-Methods "GET, POST, OPTIONS"
    Header set Access-Control-Allow-Headers "Authorization, Content-Type"
</IfModule>

Preflightリクエストへの対応


ブラウザは安全でないメソッド(POST, PUTなど)を使用する際に「preflightリクエスト」を送ります。これに対応する設定例です。

<IfModule mod_headers.c>
    Header set Access-Control-Allow-Origin "https://example.com"
    Header set Access-Control-Allow-Methods "GET, POST, OPTIONS"
    Header set Access-Control-Allow-Headers "Authorization, Content-Type"
    Header set Access-Control-Max-Age "3600"
</IfModule>

この設定で、クライアントが一度preflightリクエストを送ると、結果が1時間(3600秒)キャッシュされます。

ApacheでCORSを正しく設定することで、Webアプリケーションが他のオリジンと安全に通信できるようになります。次は仮想ホスト単位でのCORS設定方法を詳しく見ていきます。

仮想ホストとは?


仮想ホスト(Virtual Host)とは、1台のApacheサーバーで複数のドメインやWebサイトを同時にホストするための仕組みです。これにより、同一のIPアドレスやサーバーリソースを共有しながら、異なるWebサイトを個別に運用できます。

例えば、1つのApacheサーバーでexample.comapi.example.comを運用したい場合、それぞれを仮想ホストとして設定することで、別々のWebサイトとして扱うことができます。

仮想ホストの種類


仮想ホストには、主に以下の2種類があります。

名前ベースの仮想ホスト


同じIPアドレスを複数のホスト名で共有する方式です。ホスト名(ドメイン名)を基に、リクエスト先のWebサイトを振り分けます。
:

<VirtualHost *:80>
    ServerName example.com
    DocumentRoot /var/www/example
</VirtualHost>

<VirtualHost *:80>
    ServerName api.example.com
    DocumentRoot /var/www/api
</VirtualHost>


これにより、example.comapi.example.comで異なるコンテンツを配信できます。

IPベースの仮想ホスト


各仮想ホストが異なるIPアドレスを使用する方式です。IPごとに異なるWebサイトを運用する必要がある場合に利用されます。

<VirtualHost 192.168.1.10:80>
    ServerName example.com
    DocumentRoot /var/www/example
</VirtualHost>

<VirtualHost 192.168.1.11:80>
    ServerName api.example.com
    DocumentRoot /var/www/api
</VirtualHost>

仮想ホストを使用するメリット

  • コスト削減:1台のサーバーで複数のサイトを運用できるため、コストを抑えることができます。
  • 柔軟な運用:ドメインごとに異なるコンテンツや設定を適用でき、自由度が高まります。
  • 効率的なリソース利用:サーバーのCPUやメモリを効率的に活用できます。

仮想ホストは、複数のプロジェクトやサービスを1台のサーバーで管理する際に不可欠な機能です。次は、仮想ホストごとに異なるCORSポリシーを設定する理由について解説します。

仮想ホストごとに異なるCORSポリシーを設定する理由


仮想ホスト単位でCORSポリシーを分けることには、セキュリティや運用面での多くのメリットがあります。Webアプリケーションが複数のドメインやサブドメインで運用されることが一般的になっている中で、各仮想ホストに適切なCORSポリシーを設定することが重要です。

異なるドメイン間での柔軟な制御


仮想ホストごとにCORSを設定することで、以下のようなシナリオに対応できます。

  • APIサーバーとWebフロントエンドの分離
    例えば、api.example.com では複数のフロントエンドからのリクエストを許可する一方で、admin.example.com は特定のオリジン(管理者用フロントエンド)からのみアクセスを許可するなど、用途に応じた制御が可能です。
  • パブリックとプライベートのリソース管理
    一部の仮想ホストでは、外部からのアクセスを広く許可し、他の仮想ホストでは厳格なアクセス制限を設けることで、リソースの公開範囲を明確に分けることができます。

セキュリティの強化


CORSはクロスサイトスクリプティング(XSS)やクロスサイトリクエストフォージェリ(CSRF)といった攻撃を防ぐ役割を果たします。仮想ホスト単位で細かくポリシーを設定することで、セキュリティをさらに強化できます。

例:

  • public.example.com は任意のオリジンからのアクセスを許可
  • secure.example.com は特定のオリジンのみ許可
<VirtualHost *:80>
    ServerName public.example.com
    Header set Access-Control-Allow-Origin "*"
</VirtualHost>

<VirtualHost *:80>
    ServerName secure.example.com
    Header set Access-Control-Allow-Origin "https://admin.example.com"
</VirtualHost>

開発・ステージング環境の分離


仮想ホストを使って、開発環境(dev.example.com)と本番環境(www.example.com)を分けて運用する場合、それぞれ異なるCORSポリシーを適用することで、誤ったアクセスが発生するリスクを防ぐことができます。

アクセス制御の柔軟性


プロジェクトごとに異なるクライアントアプリケーションが存在する場合、それぞれの仮想ホストで必要なCORSポリシーを設定することで、クライアントごとに適切なアクセス許可を与えることができます。

仮想ホストごとに異なるCORSポリシーを設定することは、セキュリティ、柔軟性、効率性の観点から非常に重要です。次は、実際に仮想ホストごとにCORSを設定する具体的な手順について説明します。

仮想ホストごとのCORS設定手順


仮想ホストごとにCORSポリシーを設定することで、複数のドメインやサブドメインを効率的に管理しながら、セキュリティを強化できます。ここでは、Apacheで仮想ホストごとにCORSを設定する具体的な手順を解説します。

1. 仮想ホストの設定ファイルを作成・編集


仮想ホストの設定は、通常/etc/apache2/sites-available/ディレクトリにあります。新規に仮想ホストを追加する場合は以下の手順で作成します。

: api.example.com用の仮想ホスト設定を作成

sudo nano /etc/apache2/sites-available/api.example.com.conf

2. 基本的な仮想ホスト設定


仮想ホストファイルに基本的な設定を記述します。

<VirtualHost *:80>
    ServerName api.example.com
    DocumentRoot /var/www/api
</VirtualHost>

これで、api.example.com へのリクエストは/var/www/apiディレクトリ内のコンテンツが配信されます。

3. CORSの追加設定


CORSポリシーを設定するには、mod_headersを使用して適切なレスポンスヘッダーを仮想ホストごとに追加します。

: 特定のオリジンからのアクセスを許可

<VirtualHost *:80>
    ServerName api.example.com
    DocumentRoot /var/www/api

    <IfModule mod_headers.c>
        Header set Access-Control-Allow-Origin "https://frontend.example.com"
        Header set Access-Control-Allow-Methods "GET, POST, OPTIONS"
        Header set Access-Control-Allow-Headers "Authorization, Content-Type"
    </IfModule>
</VirtualHost>

すべてのオリジンからのアクセスを許可する場合は、*を指定します。

Header set Access-Control-Allow-Origin "*"

4. Preflightリクエストの対応


Preflightリクエストにも対応する場合は、OPTIONSメソッドに対してCORSを許可します。

<VirtualHost *:80>
    ServerName api.example.com
    DocumentRoot /var/www/api

    <IfModule mod_headers.c>
        Header set Access-Control-Allow-Origin "https://frontend.example.com"
        Header set Access-Control-Allow-Methods "GET, POST, OPTIONS"
        Header set Access-Control-Allow-Headers "Authorization, Content-Type"
        Header set Access-Control-Max-Age "3600"
    </IfModule>
</VirtualHost>

5. 設定の有効化


作成した仮想ホストを有効化し、Apacheを再起動します。

sudo a2ensite api.example.com.conf
sudo systemctl reload apache2

6. 複数の仮想ホストでのCORS設定


複数の仮想ホストが存在する場合、それぞれに異なるCORS設定を行います。

:

<VirtualHost *:80>
    ServerName public.example.com
    DocumentRoot /var/www/public

    <IfModule mod_headers.c>
        Header set Access-Control-Allow-Origin "*"
    </IfModule>
</VirtualHost>

<VirtualHost *:80>
    ServerName admin.example.com
    DocumentRoot /var/www/admin

    <IfModule mod_headers.c>
        Header set Access-Control-Allow-Origin "https://secure.example.com"
    </IfModule>
</VirtualHost>

仮想ホストごとに異なるCORSポリシーを設定することで、必要なリソースだけが適切に共有され、セキュリティリスクを軽減できます。次は具体的な設定例をさらに掘り下げて解説します。

設定例とコード解説


ここでは、実際の仮想ホストごとのCORS設定例を示し、各ディレクティブの役割や意味について詳しく解説します。これにより、ApacheでのCORS設定の理解を深めることができます。

シナリオ1:APIサーバーで特定のフロントエンドを許可


フロントエンドhttps://frontend.example.comからのみ、APIエンドポイントhttps://api.example.comへのアクセスを許可する設定例です。

<VirtualHost *:80>
    ServerName api.example.com
    DocumentRoot /var/www/api

    <IfModule mod_headers.c>
        Header set Access-Control-Allow-Origin "https://frontend.example.com"
        Header set Access-Control-Allow-Methods "GET, POST, OPTIONS"
        Header set Access-Control-Allow-Headers "Authorization, Content-Type"
    </IfModule>

    <Directory "/var/www/api">
        Options Indexes FollowSymLinks
        AllowOverride All
        Require all granted
    </Directory>
</VirtualHost>

コード解説

  • Access-Control-Allow-Origin: https://frontend.example.com からのリクエストのみ許可しています。他のオリジンからのアクセスはブロックされます。
  • Access-Control-Allow-Methods: クライアントがGETPOSTなどのメソッドを使用できるようにします。OPTIONSはPreflightリクエストの際に必要です。
  • Access-Control-Allow-Headers: クライアントがリクエスト時にAuthorizationContent-Typeを指定できるようにします。これにより、API認証トークンの送信が可能になります。

シナリオ2:すべてのオリジンからアクセスを許可


パブリックAPIで、任意のオリジンからのアクセスを許可する場合の設定例です。

<VirtualHost *:80>
    ServerName public-api.example.com
    DocumentRoot /var/www/public-api

    <IfModule mod_headers.c>
        Header set Access-Control-Allow-Origin "*"
        Header set Access-Control-Allow-Methods "GET, POST, OPTIONS"
        Header set Access-Control-Allow-Headers "Authorization, Content-Type"
    </IfModule>
</VirtualHost>

コード解説

  • Access-Control-Allow-Origin: *を指定することで、どのオリジンからでもアクセスを許可します。
  • 汎用APIとして外部公開されるエンドポイントなどで使用されますが、セキュリティリスクが高まるため慎重に使用してください。

シナリオ3:管理者ポータルで特定のドメインのみ許可


管理者専用のポータルサイトに対して、特定のオリジンからのリクエストのみを許可します。

<VirtualHost *:80>
    ServerName admin.example.com
    DocumentRoot /var/www/admin

    <IfModule mod_headers.c>
        Header set Access-Control-Allow-Origin "https://secure.example.com"
        Header set Access-Control-Allow-Methods "GET, POST"
        Header set Access-Control-Allow-Headers "Authorization"
    </IfModule>

    <Directory "/var/www/admin">
        Options None
        AllowOverride None
        Require ip 192.168.1.0/24
    </Directory>
</VirtualHost>

コード解説

  • Require ip: 内部ネットワークからのアクセスのみ許可しています。これにより、外部からの不正アクセスを防ぎます。
  • Authorizationヘッダーの制限: 認証トークンが必要な場合に限りリクエストを許可する設定です。これにより、セキュリティが強化されます。

シナリオ4:複数のオリジンを許可する方法


複数のオリジンからアクセスを許可する場合は、SetEnvIfを使用して柔軟に対応できます。

<VirtualHost *:80>
    ServerName multi-origin-api.example.com
    DocumentRoot /var/www/multi-origin-api

    <IfModule mod_headers.c>
        SetEnvIf Origin "https://frontend1.example.com" ORIGIN_OK
        SetEnvIf Origin "https://frontend2.example.com" ORIGIN_OK
        Header set Access-Control-Allow-Origin "%{Origin}e" env=ORIGIN_OK
        Header set Access-Control-Allow-Methods "GET, POST, OPTIONS"
        Header set Access-Control-Allow-Headers "Authorization, Content-Type"
    </IfModule>
</VirtualHost>

コード解説

  • SetEnvIf: 特定のオリジンに対してのみAccess-Control-Allow-Originを動的に設定します。
  • %{Origin}e: クライアントから送られたオリジンをそのまま反映します。複数のオリジンを許可する際に便利です。

これらの設定例を応用することで、仮想ホストごとに柔軟で安全なCORSポリシーを適用できます。次は、設定ミスによるトラブルシューティング方法を解説します。

設定ミスのトラブルシューティング


仮想ホストごとにCORSを設定する際、細かなミスが原因でCORSエラーが発生することがあります。ここでは、よくある設定ミスの例とその対処法について解説します。

1. CORSヘッダーが適用されていない


症状: ブラウザの開発者ツールで「CORSポリシー違反」のエラーが表示される。
原因: 仮想ホストにCORSヘッダーが正しく適用されていない。
対処法:

  • 仮想ホスト設定が有効になっているか確認
sudo a2ensite api.example.com.conf
sudo systemctl reload apache2
  • mod_headersが有効化されているか確認
sudo a2enmod headers
sudo systemctl restart apache2
  • CORSヘッダーが適切に記述されているか確認
<IfModule mod_headers.c>
    Header set Access-Control-Allow-Origin "*"
</IfModule>

チェックポイント:

  • <IfModule mod_headers.c>が記述されているか確認
  • Access-Control-Allow-Originがリクエストのオリジンと一致しているか確認

2. 特定のオリジンが許可されていない


症状: 一部のオリジンからはアクセスできるが、他のオリジンからはブロックされる。
原因: Access-Control-Allow-Originの設定が特定のオリジンに制限されている。
対処法:

  • 複数のオリジンを許可する場合はSetEnvIfを使用
SetEnvIf Origin "https://frontend1.example.com" ORIGIN_OK
SetEnvIf Origin "https://frontend2.example.com" ORIGIN_OK
Header set Access-Control-Allow-Origin "%{Origin}e" env=ORIGIN_OK
  • 全オリジンを許可する場合
Header set Access-Control-Allow-Origin "*"

3. Preflightリクエストが失敗する


症状: OPTIONSメソッドが405エラーを返す。
原因: OPTIONSメソッドが許可されていない。
対処法:

  • OPTIONSメソッドを仮想ホスト設定で許可
<IfModule mod_headers.c>
    Header set Access-Control-Allow-Origin "*"
    Header set Access-Control-Allow-Methods "GET, POST, OPTIONS"
    Header set Access-Control-Allow-Headers "Authorization, Content-Type"
</IfModule>
  • mod_rewriteを使ってOPTIONSリクエストに自動で200を返す設定
RewriteEngine On
RewriteCond %{REQUEST_METHOD} OPTIONS
RewriteRule ^(.*)$ $1 [R=200,L]

4. 設定がキャッシュされている


症状: 設定を変更してもCORSエラーが解消しない。
原因: ブラウザやサーバーにCORSヘッダーがキャッシュされている。
対処法:

  • ブラウザのキャッシュをクリア
  • Apacheのキャッシュをクリア
sudo systemctl restart apache2
  • Access-Control-Max-Ageでキャッシュ時間を短くする
Header set Access-Control-Max-Age "600"

5. サブドメイン間でCORSが機能しない


症状: メインドメインでは正常に動作するが、サブドメインではCORSがブロックされる。
原因: オリジンが完全一致しないため。
対処法:

  • ワイルドカードでサブドメインも許可
Header set Access-Control-Allow-Origin "https://*.example.com"
  • すべてのサブドメインからのアクセスを許可
SetEnvIf Origin "https://(.+).example.com" ORIGIN_OK
Header set Access-Control-Allow-Origin "%{Origin}e" env=ORIGIN_OK

ログで確認する


Apacheのエラーログで、設定ミスの原因を特定します。

sudo tail -f /var/log/apache2/error.log

エラーログに「Header already present」などが表示されている場合は、ヘッダーが二重に定義されている可能性があります。該当箇所を削除し、設定をシンプルにします。

CORSのトラブルシューティングを行う際は、設定ファイルの細部を見直し、必要に応じて段階的に修正していきましょう。次は、CORS設定が正しく機能しているかを確認するテスト方法について解説します。

テスト方法と確認手順


仮想ホストごとにCORSポリシーを設定した後、正しく機能しているかを確認することが重要です。ここでは、CORS設定が期待通りに動作しているかをテストする具体的な方法を解説します。

1. ブラウザの開発者ツールで確認


ブラウザの開発者ツールを使用することで、CORSエラーの詳細を確認できます。

手順:

  1. 対象のWebサイトを開き、F12キーを押して開発者ツールを起動します。
  2. [ネットワーク]タブを選択し、該当するリクエストをクリックします。
  3. [ヘッダー]セクションでAccess-Control-Allow-Originが正しく表示されているか確認します。
  4. エラーが発生している場合は[コンソール]タブに「CORS policy error」と表示されます。

例(成功時のヘッダー例):

Access-Control-Allow-Origin: https://frontend.example.com
Access-Control-Allow-Methods: GET, POST, OPTIONS
Access-Control-Allow-Headers: Authorization, Content-Type

2. CURLコマンドで確認


ターミナルからcurlコマンドを使用して、CORSレスポンスヘッダーが適切に設定されているかを確認できます。

基本コマンド:

curl -I -X OPTIONS https://api.example.com

結果例:

HTTP/1.1 200 OK
Access-Control-Allow-Origin: https://frontend.example.com
Access-Control-Allow-Methods: GET, POST, OPTIONS
Access-Control-Allow-Headers: Authorization, Content-Type


このようにAccess-Control-Allow-Originが表示されていれば、CORSが正しく設定されています。

3. JavaScriptで動作確認


フロントエンドで実際にAPIリクエストを送信して動作を確認します。

fetch('https://api.example.com/data', {
    method: 'GET',
    headers: {
        'Authorization': 'Bearer YOUR_TOKEN'
    }
})
.then(response => {
    if (!response.ok) {
        throw new Error('CORSエラーまたはネットワークエラー');
    }
    return response.json();
})
.then(data => console.log(data))
.catch(error => console.error(error));


このコードを使用して、CORSポリシーに違反している場合はコンソールにエラーが表示されます。

4. PostmanでAPIリクエストを送信


Postmanを使うことで、ブラウザの制限を受けずにリクエストを送信し、CORSヘッダーの確認が可能です。

手順:

  1. Postmanで新規リクエストを作成します。
  2. https://api.example.comを入力し、GETまたはPOSTリクエストを送信します。
  3. レスポンスヘッダーを確認し、Access-Control-Allow-Originが正しく表示されているか確認します。

5. Preflightリクエストの確認


CORSでOPTIONSメソッドを使用したPreflightリクエストが必要な場合、以下のコマンドで確認します。

curl -X OPTIONS https://api.example.com \
  -H "Origin: https://frontend.example.com" \
  -H "Access-Control-Request-Method: POST" \
  -H "Access-Control-Request-Headers: Authorization"

期待されるレスポンス例:

HTTP/1.1 204 No Content
Access-Control-Allow-Origin: https://frontend.example.com
Access-Control-Allow-Methods: GET, POST, OPTIONS
Access-Control-Allow-Headers: Authorization

6. エラーログの確認


Apacheのエラーログを確認して、CORS設定が適用されていない原因を特定します。

sudo tail -f /var/log/apache2/error.log

ログに「Header set directive not allowed here」などが記録されている場合は、仮想ホストの構文エラーが疑われます。

7. レスポンスが意図通りでない場合の対処

  • Access-Control-Allow-Originが返ってこない場合は、仮想ホスト設定が正しく反映されていない可能性があります。
  • sudo systemctl restart apache2 でApacheを再起動し、設定を再度読み込ませます。
  • a2ensite で仮想ホストが有効化されているか確認します。
sudo a2ensite api.example.com.conf
sudo systemctl reload apache2

これらのテスト方法を活用し、CORSが正しく機能していることを確認してください。次は、記事のまとめとしてポイントを振り返ります。

まとめ


本記事では、Apacheにおける仮想ホストごとのCORS(Cross-Origin Resource Sharing)ポリシーの設定方法について詳しく解説しました。

CORSは異なるオリジン間でのリソース共有を可能にする重要な仕組みであり、仮想ホストごとに適切に設定することで、セキュリティと利便性を両立させることができます。

主なポイントの振り返り:

  • CORSの基本概念とその重要性を理解し、Webアプリケーションの安全性を高めるための方法を学びました。
  • 仮想ホストの役割と種類について解説し、複数のドメインやサブドメインをApacheで管理する利点を確認しました。
  • 仮想ホストごとに異なるCORSポリシーを設定する具体的な手順を示し、mod_headersを利用した設定例を解説しました。
  • 設定ミスのトラブルシューティング方法を紹介し、ブラウザやCURLでの動作確認、Postmanを活用したテスト方法についても説明しました。

CORSの正しい設定は、Webアプリケーションの開発・運用において不可欠です。特に仮想ホスト環境では、ドメインごとにポリシーを分けて管理することで、セキュリティリスクを低減できます。

今回の手順を参考に、適切なCORSポリシーを構築し、安全で柔軟なWebサーバー運用を実現してください。

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