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Apacheで負荷分散を設定する手順｜初心者でも簡単にできるガイド

Apache

Apacheでの負荷分散は、Webサイトのパフォーマンス向上と安定性の確保に不可欠です。多くのアクセスが集中するWebサイトでは、単一のサーバーだけではリクエストを処理しきれず、応答速度の低下やサーバーダウンのリスクが高まります。

負荷分散を導入することで、複数のサーバーにリクエストを分散させ、効率的に処理できるようになります。Apacheには「mod_proxy_balancer」という強力なモジュールが用意されており、これを使用することで容易に負荷分散環境を構築可能です。

本記事では、Apacheで負荷分散を設定する具体的な手順を初心者でも理解できるように解説します。負荷分散の仕組みやメリットをはじめ、必要な環境構築からバーチャルホストの設定、バランサーメンバーの管理、スティッキーセッションの活用法まで網羅します。

この記事を通して、Webサイトのパフォーマンスを向上させ、より安定した運用環境を実現しましょう。

目次

負荷分散の仕組みとメリット


Apacheでの負荷分散は、Webサーバーへのリクエストを複数のサーバーに分散することで、処理速度を向上させ、システムの耐障害性を高める仕組みです。特にアクセスが集中するWebサイトでは、負荷分散は欠かせない技術の一つとなります。

負荷分散の仕組み


Apacheでは「mod_proxy」と「mod_proxy_balancer」というモジュールを使用して負荷分散を実現します。クライアントからのリクエストは、まずApacheのリバースプロキシに送られ、そこから複数のバックエンドサーバー（バランサーメンバー）に振り分けられます。
負荷分散の方法には、以下のようなものがあります。

  • ラウンドロビン方式：リクエストを順番に各サーバーへ送る方式
  • 最小接続方式：最も接続数が少ないサーバーにリクエストを送る方式
  • IPハッシュ方式：クライアントのIPアドレスに基づいて特定のサーバーに振り分ける方式

負荷分散のメリット


負荷分散を導入することで、以下のようなメリットが得られます。

1. パフォーマンスの向上


複数のサーバーにリクエストを分散するため、1台のサーバーで処理する場合よりも高速に応答できます。結果として、ユーザーエクスペリエンスが向上します。

2. 可用性の向上


あるサーバーがダウンしても、他のサーバーがリクエストを処理するため、サービスが継続されます。これにより、システム全体の耐障害性が高まります。

3. 拡張性の確保


負荷の増加に応じてサーバーを追加することで、スケールアウトが容易になります。これにより、Webサイトの規模拡大に柔軟に対応できます。

実際の適用例


負荷分散は、大規模なECサイトやニュースサイト、動画配信サービスなど、アクセス集中が頻繁に発生するWebサービスで幅広く活用されています。

次のセクションでは、負荷分散を導入するための具体的な環境構築と前提条件について詳しく解説します。

必要な環境と前提条件


Apacheで負荷分散を実現するには、事前にいくつかの環境を整え、必要な設定を行う必要があります。以下に、負荷分散環境を構築するための前提条件と準備するものを解説します。

前提条件


負荷分散の設定を行う前に、以下の条件が整っていることを確認してください。

1. 複数のバックエンドサーバーの準備


負荷を分散するためには、リクエストを振り分ける先となる複数のサーバーが必要です。最低でも2台以上のバックエンドサーバーを用意します。これらのサーバーにはWebアプリケーションやコンテンツが配置されている必要があります。

2. Apacheがインストールされたリバースプロキシサーバー


負荷分散の中心となるのは、Apacheが稼働しているプロキシサーバーです。このサーバーがクライアントからのリクエストを受け取り、適切に分散させます。

  • Apacheのインストールが完了していること
  • 必要なモジュール（mod_proxy, mod_proxy_http, mod_proxy_balancer）が有効化されていること

3. 基本的なネットワーク設定

  • リバースプロキシサーバーとバックエンドサーバーが通信可能であること
  • 適切なDNS設定、またはIPアドレスでの接続が可能であること

必要なソフトウェア


以下のソフトウェアを準備してください。

  • Apache HTTP Server（バージョン2.4以上を推奨）
  • mod_proxy および mod_proxy_balancer モジュール
# Apacheのインストール例（CentOS / RHEL系）
sudo yum install httpd
sudo systemctl start httpd
sudo systemctl enable httpd

# 必要なモジュールの有効化
sudo a2enmod proxy
sudo a2enmod proxy_http
sudo a2enmod proxy_balancer

負荷分散の設計に関する考慮事項

  • トラフィック量：どれだけのアクセスがあるのかを想定し、サーバーの台数を決定します。
  • セッション管理：ユーザーセッションを維持する必要がある場合は、スティッキーセッションの設定を行います。
  • フェイルオーバー：バックエンドサーバーがダウンした場合の挙動を事前に設計しておくことが重要です。

次のセクションでは、「mod_proxy_balancer」モジュールの概要について詳しく説明します。

Apacheモジュール「mod_proxy_balancer」の概要


「mod_proxy_balancer」は、Apacheで負荷分散を実現するための重要なモジュールです。このモジュールを使用することで、複数のバックエンドサーバーへのリクエスト分散を柔軟に管理でき、Webサイトのパフォーマンスと可用性を向上させることが可能になります。

mod_proxy_balancerの役割


「mod_proxy_balancer」は、Apacheの「mod_proxy」ファミリーの一部で、リバースプロキシとして動作します。具体的には、クライアントからのリクエストを受け取り、事前に設定された複数のバックエンドサーバー（バランサーメンバー）に振り分ける役割を担います。

主な機能

  • リクエストの分散：複数のサーバーにリクエストを振り分けて負荷を分散します。
  • フェイルオーバー：一部のサーバーがダウンした場合、正常に稼働している他のサーバーへ自動的にリクエストを転送します。
  • セッション管理：スティッキーセッション機能により、特定のクライアントのリクエストを同じサーバーに割り当てることが可能です。
  • 動的なサーバー追加・削除：稼働中でも新しいバランサーメンバーを追加したり、不要なサーバーを削除したりすることができます。

mod_proxy_balancerの基本構成


「mod_proxy_balancer」は以下の3つのモジュールと連携して動作します。

  • mod_proxy：プロキシ機能を提供する基本モジュール
  • mod_proxy_http：HTTPプロトコル経由でプロキシを行うモジュール
  • mod_proxy_balancer：負荷分散を管理するモジュール

これらのモジュールが適切に組み合わさることで、強力な負荷分散環境を構築できます。

mod_proxy_balancerの利点

  • 設定が容易：Apacheの設定ファイルに数行追加するだけで簡単に負荷分散環境を構築できます。
  • カスタマイズ性が高い：リクエストの振り分け方法やバランサーメンバーの設定を細かく調整可能です。
  • オープンソース：Apacheはオープンソースソフトウェアであるため、コストをかけずに高性能な負荷分散機能を導入できます。

動作イメージ


クライアントがWebサイトにアクセスすると、Apacheがそのリクエストを受け付けます。
リクエストは「mod_proxy_balancer」を通じて、事前に設定したバックエンドサーバー群に振り分けられ、応答がクライアントに返されます。

次のセクションでは、Apacheのインストール方法と基本的な設定手順について解説します。

Apacheのインストールと基本設定手順


Apacheを使用した負荷分散環境を構築するには、まずApacheのインストールと基本設定を行う必要があります。ここでは、Apacheのインストール方法から、必要なモジュールの有効化、基本的な設定手順について解説します。

Apacheのインストール


各LinuxディストリビューションでのApacheインストール方法を以下に示します。

CentOS / RHEL系

sudo yum install httpd
sudo systemctl start httpd
sudo systemctl enable httpd

Ubuntu / Debian系

sudo apt update
sudo apt install apache2
sudo systemctl start apache2
sudo systemctl enable apache2

インストール後、ブラウザで「http://サーバーIPアドレス」にアクセスし、Apacheのデフォルトページが表示されることを確認します。

必要なモジュールの有効化


負荷分散を実現するには、「mod_proxy」、「mod_proxy_http」、「mod_proxy_balancer」などのモジュールを有効化する必要があります。

モジュールの有効化方法（Ubuntu / Debian系）

sudo a2enmod proxy
sudo a2enmod proxy_http
sudo a2enmod proxy_balancer
sudo systemctl restart apache2

モジュールの有効化方法（CentOS / RHEL系）

sudo vi /etc/httpd/conf/httpd.conf

以下を追加または確認します。

LoadModule proxy_module modules/mod_proxy.so
LoadModule proxy_http_module modules/mod_proxy_http.so
LoadModule proxy_balancer_module modules/mod_proxy_balancer.so


変更を加えた後、Apacheを再起動します。

sudo systemctl restart httpd

基本的なプロキシ設定


「mod_proxy_balancer」を利用するための基本的なプロキシ設定を行います。

<VirtualHost *:80>
    ServerAdmin admin@example.com
    ServerName example.com

    ProxyRequests Off
    <Proxy balancer://mycluster>
        BalancerMember http://192.168.1.101:80
        BalancerMember http://192.168.1.102:80
    </Proxy>

    ProxyPass / balancer://mycluster/
    ProxyPassReverse / balancer://mycluster/
</VirtualHost>

設定内容の説明

  • BalancerMember：振り分けるバックエンドサーバーを指定します。
  • ProxyPass：クライアントからのリクエストをバランサークラスターに転送します。
  • ProxyPassReverse：バックエンドからの応答をクライアントに返す際にURLを修正します。

設定完了後、Apacheを再起動して設定を反映させます。

sudo systemctl restart httpd

次のセクションでは、負荷分散用のバーチャルホスト設定について詳しく解説します。

負荷分散用のバーチャルホスト設定


Apacheで負荷分散を行う際は、バーチャルホストを利用してリクエストを特定のクラスタに振り分ける設定を行います。ここでは、複数のバックエンドサーバーにリクエストを分散するためのバーチャルホストの設定方法を解説します。

バーチャルホストの基本構成


バーチャルホストは、Apacheが受け取るリクエストをドメインやIPアドレスごとに振り分ける仕組みです。負荷分散では、特定のバーチャルホストにアクセスがあった場合に、複数のバックエンドサーバーへリクエストを振り分けます。

設定ファイルの作成


Apacheのバーチャルホスト設定ファイルを作成または編集します。

CentOS / RHEL系

sudo vi /etc/httpd/conf.d/loadbalancer.conf

Ubuntu / Debian系

sudo vi /etc/apache2/sites-available/loadbalancer.conf

バーチャルホストの設定例


以下の設定例は、2台のバックエンドサーバーにリクエストを振り分ける構成です。

<VirtualHost *:80>
    ServerAdmin admin@example.com
    ServerName example.com

    ErrorLog ${APACHE_LOG_DIR}/error.log
    CustomLog ${APACHE_LOG_DIR}/access.log combined

    ProxyRequests Off
    <Proxy balancer://mycluster>
        BalancerMember http://192.168.1.101:80
        BalancerMember http://192.168.1.102:80
        ProxySet lbmethod=byrequests
    </Proxy>

    ProxyPass / balancer://mycluster/
    ProxyPassReverse / balancer://mycluster/

    <Location "/balancer-manager">
        SetHandler balancer-manager
        Require ip 192.168.1.0/24
    </Location>
</VirtualHost>

設定のポイント

  • BalancerMember：バックエンドサーバーのIPアドレスとポートを指定します。複数のサーバーを登録することで、負荷分散が行われます。
  • lbmethod=byrequests：負荷分散のアルゴリズムを指定します。ここでは「byrequests」を使用し、各サーバーに順番にリクエストを振り分けます。
  • ProxyPass / balancer://mycluster/：クライアントからのリクエストをクラスタに転送します。
  • Balancer-manager：管理用インターフェースで、リアルタイムで負荷分散の状況を確認し、サーバーの追加・削除が可能です。

設定の有効化


作成した設定ファイルを有効化します。

Ubuntu / Debian系

sudo a2ensite loadbalancer.conf
sudo systemctl restart apache2

CentOS / RHEL系

sudo systemctl restart httpd

動作確認


ブラウザで「http://example.com/balancer-manager」にアクセスすると、バランサーマネージャーが表示され、現在のバックエンドサーバーの稼働状況を確認できます。

次のセクションでは、バランサーメンバーの追加と管理方法について解説します。

バランサーメンバーの追加と管理方法


Apacheでの負荷分散設定では、複数のバックエンドサーバー（バランサーメンバー）を管理し、必要に応じて新しいサーバーを追加したり、稼働中のサーバーを削除したりすることが重要です。このセクションでは、バランサーメンバーの追加・削除方法、および管理のポイントを解説します。

バランサーメンバーの追加方法


Apacheの設定ファイルを編集し、新しいバックエンドサーバーを「BalancerMember」として追加します。

設定例


既存の「balancer://mycluster」に新しいサーバーを追加する例です。

<Proxy balancer://mycluster>
    BalancerMember http://192.168.1.101:80
    BalancerMember http://192.168.1.102:80
    BalancerMember http://192.168.1.103:80
    ProxySet lbmethod=byrequests
</Proxy>

追加手順

  1. 設定ファイルを編集します。
sudo vi /etc/httpd/conf.d/loadbalancer.conf  # CentOS/RHEL系
sudo vi /etc/apache2/sites-available/loadbalancer.conf  # Ubuntu/Debian系
  1. 新しいサーバーを「BalancerMember」として追加します。
  2. 設定を反映させるためにApacheを再起動します。
sudo systemctl restart httpd  # CentOS/RHEL系
sudo systemctl restart apache2  # Ubuntu/Debian系

バランサーメンバーの削除方法


特定のサーバーをメンバーから削除する場合は、該当する「BalancerMember」行を削除するかコメントアウトします。

例：サーバー192.168.1.102を削除

<Proxy balancer://mycluster>
    BalancerMember http://192.168.1.101:80
    # BalancerMember http://192.168.1.102:80  ← 削除またはコメントアウト
    BalancerMember http://192.168.1.103:80
</Proxy>

バランサーマネージャーからの動的管理


Apacheでは「balancer-manager」を使用して、Webブラウザからリアルタイムでバランサーメンバーの追加・削除・無効化を行うことができます。

balancer-managerの設定


既に設定済みの「balancer-manager」にアクセスします。

<Location "/balancer-manager">
    SetHandler balancer-manager
    Require ip 192.168.1.0/24
</Location>


ブラウザで以下のURLにアクセスします。

http://example.com/balancer-manager


ここから、以下の操作が可能です。

  • Enable/Disable：特定のメンバーを無効化または有効化
  • Drain：現在の接続を処理した後、メンバーを停止
  • Remove：メンバーをリストから削除

バランサーメンバーの状態確認


balancer-managerから確認できる情報：

  • Status：サーバーの状態（Running, Disabled, Stoppedなど）
  • Load：サーバーの負荷状態
  • Sessions：接続中のセッション数

フェイルオーバーの設定


特定のサーバーがダウンした際に、自動的に他のサーバーにリクエストを振り分けるフェイルオーバー設定も可能です。

<Proxy balancer://mycluster>
    BalancerMember http://192.168.1.101:80
    BalancerMember http://192.168.1.102:80 status=+H  # HはHot Standbyサーバー
</Proxy>

この設定により、192.168.1.102は通常使用されず、192.168.1.101がダウンした場合のみリクエストを処理します。

次のセクションでは、スティッキーセッションの設定方法について解説します。

スティッキーセッションの設定方法


スティッキーセッションは、特定のユーザーが同じバックエンドサーバーに継続して接続されるようにする仕組みです。これにより、セッション情報がサーバー間で一貫して維持され、ログイン状態やカート情報などのユーザーセッションデータが失われるリスクを防ぎます。

スティッキーセッションの仕組み


通常のラウンドロビン方式では、ユーザーのリクエストが毎回異なるバックエンドサーバーに振り分けられる可能性があります。スティッキーセッションでは、クライアントのクッキーやIPアドレスを利用し、同じサーバーにリクエストを送信します。

スティッキーセッションの設定方法


Apacheの「mod_proxy_balancer」モジュールを使用して、スティッキーセッションを有効にする方法を解説します。

設定例


以下は、スティッキーセッションをクッキーを利用して設定する例です。

<Proxy balancer://mycluster>
    BalancerMember http://192.168.1.101:80 route=web1
    BalancerMember http://192.168.1.102:80 route=web2
    ProxySet lbmethod=byrequests stickysession=BALANCEID
</Proxy>

<VirtualHost *:80>
    ServerAdmin admin@example.com
    ServerName example.com

    ProxyPass / balancer://mycluster/ stickysession=BALANCEID
    ProxyPassReverse / balancer://mycluster/

    <Location "/balancer-manager">
        SetHandler balancer-manager
        Require ip 192.168.1.0/24
    </Location>
</VirtualHost>

設定内容の解説

  • route：各「BalancerMember」に一意のルート名を付与します（例：web1, web2）。
  • stickysession=BALANCEID：クッキーに「BALANCEID」という名前でサーバーのルート情報が付与されます。クライアントが同じ「BALANCEID」を持っている限り、同じバックエンドサーバーに接続されます。

クッキーの動作確認


スティッキーセッションが正しく動作しているか確認するには、ブラウザの開発者ツール（F12）を開き、クッキーに「BALANCEID」が含まれているか確認します。

IPベースのスティッキーセッション


IPアドレスに基づいてセッションを固定する方法もあります。クライアントのIPアドレスをもとに、同じバックエンドサーバーに接続されるよう設定します。

<Proxy balancer://mycluster>
    BalancerMember http://192.168.1.101:80 route=web1
    BalancerMember http://192.168.1.102:80 route=web2
    ProxySet lbmethod=byrequests stickysession=byaddr
</Proxy>
  • stickysession=byaddr：クライアントのIPアドレスをもとにスティッキーセッションを実現します。

スティッキーセッションの利点

  • セッション切れの防止：ログイン状態やカートの内容が失われることなく維持されます。
  • パフォーマンス向上：セッションデータの再同期が不要になるため、処理速度が向上します。

トラブルシューティング

  • クッキーが生成されない：Apacheのキャッシュやブラウザ側でクッキーがブロックされていないか確認します。
  • 特定のサーバーにしか接続されない：設定ミスでrouteが重複している可能性があるため、各バランサーメンバーに異なるroute名を設定しているか確認します。

次のセクションでは、トラブルシューティングとデバッグ方法について解説します。

トラブルシューティングとデバッグ


Apacheで負荷分散を設定した際に発生する可能性のある問題やエラーを迅速に特定し、解決する方法を解説します。負荷分散環境は複数のサーバーが連携して動作するため、各サーバーの設定ミスや接続トラブルが原因で正常に機能しないことがあります。

よくあるトラブルと解決方法

1. 負荷分散が機能しない


症状：すべてのリクエストが同じサーバーに送られる、または応答がない。
原因：

  • バランサーメンバーが正しく設定されていない
  • モジュールが有効化されていない
  • 設定ファイルの記述ミス

解決方法：

# 必要なモジュールが有効化されているか確認
sudo a2enmod proxy
sudo a2enmod proxy_http
sudo a2enmod proxy_balancer
sudo systemctl restart apache2  # Ubuntu/Debian系
sudo systemctl restart httpd    # CentOS/RHEL系


設定ファイルが正しいか確認します。

<Proxy balancer://mycluster>
    BalancerMember http://192.168.1.101:80
    BalancerMember http://192.168.1.102:80
</Proxy>


誤ったURLやポート番号が記述されていないか確認してください。

2. バックエンドサーバーが応答しない


症状：特定のバックエンドサーバーが応答しない、またはタイムアウトが発生する。
原因：

  • バックエンドサーバーが停止している
  • ファイアウォールの設定で通信がブロックされている

解決方法：

# バックエンドサーバーの稼働状況を確認
sudo systemctl status httpd  # CentOS/RHEL系
sudo systemctl status apache2  # Ubuntu/Debian系


ファイアウォールの設定を確認し、必要に応じてポートを開放します。

sudo ufw allow 80
sudo ufw reload

3. balancer-managerにアクセスできない


症状：balancer-managerが403エラーを返す、またはアクセスできない。
原因：

  • アクセス制限が厳しすぎる
  • Apacheの設定に記述漏れがある

解決方法：

<Location "/balancer-manager">
    SetHandler balancer-manager
    Require ip 192.168.1.0/24
</Location>


アクセス元のIPアドレスが範囲外でないか確認します。アクセス制限を一時的に緩和してテストする場合は、以下のように設定します。

Require all granted


テスト後は必ず元の設定に戻してください。

4. セッションが維持されない（スティッキーセッションの不具合）


症状：ログイン状態が切れる、セッションが維持されない。
原因：

  • stickysessionが正しく設定されていない
  • クッキーがブラウザでブロックされている

解決方法：
stickysessionの設定が正しいか確認します。

ProxyPass / balancer://mycluster/ stickysession=BALANCEID


ブラウザでクッキーを確認し、「BALANCEID」が付与されているか確認します。

デバッグ方法

1. Apacheのエラーログを確認


Apacheのエラーログには問題の詳細が記録されます。

sudo tail -f /var/log/apache2/error.log  # Ubuntu/Debian系
sudo tail -f /var/log/httpd/error_log    # CentOS/RHEL系

2. ログレベルの変更


トラブルシューティングを効率化するために、一時的にログレベルを詳細にします。

LogLevel debug


デバッグ完了後は「warn」などの通常レベルに戻します。

フェイルオーバーのテスト


特定のバックエンドサーバーを意図的に停止し、リクエストが他のサーバーに適切に振り分けられるかテストします。

sudo systemctl stop httpd  # バックエンドサーバーを停止
curl http://example.com  # リクエスト送信


リクエストが他のバランサーメンバーに振り分けられることを確認します。

次のセクションでは、この記事のまとめについて説明します。

まとめ


本記事では、Apacheを使用した負荷分散の基本手順について詳しく解説しました。負荷分散はWebサイトのパフォーマンス向上や可用性の確保に欠かせない技術です。

主なポイント

  • mod_proxy_balancerの導入により、複数のバックエンドサーバーにリクエストを分散可能。
  • バーチャルホストを使用したリクエストのルーティング設定方法。
  • スティッキーセッションを利用して、ユーザーセッションを維持する設定。
  • balancer-managerを使ったリアルタイムでのサーバー管理と動的変更。
  • トラブルシューティングの方法として、ログの確認やモジュールの有効化、ファイアウォール設定の調整を解説。

Apacheでの負荷分散は柔軟に構築でき、簡単な設定変更でシステムのスケールアウトや可用性向上が図れます。この記事を参考に、安定したWeb環境を構築し、アクセス集中時でも安定してサービスを提供できるシステムを目指してください。

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