Apacheでバックエンドサーバーをローテーションさせる負荷分散設定方法

Apacheを用いた負荷分散設定は、ウェブサービスのパフォーマンス向上や可用性の確保に欠かせません。特にアクセスが集中するサイトでは、一台のサーバーだけでは処理が追いつかなくなることがあります。

Apacheのロードバランサー機能を活用することで、複数のバックエンドサーバーにリクエストを分散させ、効率的にトラフィックを処理できます。これにより、単一障害点を減らし、システム全体の安定性を高めることが可能です。

本記事では、Apacheのmod_proxymod_proxy_balancerを使って、バックエンドサーバーをローテーションさせる負荷分散設定の具体的な手順を解説します。セッションの維持方法やトラブルシューティングについても触れ、実践的な知識が身に付く内容となっています。

これから、負荷分散の基本概念から実際の設定例まで順を追って説明していきます。Apacheを活用した強固なシステム構築に役立ててください。

目次

負荷分散とは?基本的な仕組みとメリット


負荷分散(ロードバランシング)は、複数のサーバーにリクエストを分散させて処理負荷を軽減する技術です。単一のサーバーに全てのトラフィックが集中することを防ぎ、システムの安定性やパフォーマンスを向上させます。

負荷分散の基本的な仕組み


負荷分散は、クライアントからのリクエストを受け取り、それを複数のバックエンドサーバーに振り分けることで実現します。Apacheではmod_proxymod_proxy_balancerを使ってこの仕組みを構築できます。主な流れは以下の通りです。

  1. クライアントがApacheにリクエストを送信する。
  2. Apacheがリクエストを受け取り、設定に基づいてバックエンドサーバーのいずれかにリクエストを転送する。
  3. バックエンドサーバーが処理を行い、結果をApacheを通じてクライアントに返す。

負荷分散のメリット


負荷分散を導入することで、以下のような利点があります。

  • システムの耐障害性向上:バックエンドサーバーの一部が障害を起こしても、残りのサーバーがリクエストを処理します。
  • パフォーマンスの向上:複数のサーバーでリクエストを処理するため、応答速度が改善されます。
  • 拡張性:トラフィックが増加した際に、新しいサーバーを追加することで容易に対応できます。
  • メンテナンスの容易さ:一部のサーバーを停止しても、他のサーバーが稼働していればサービスを継続できます。

負荷分散の種類


負荷分散の方法にはいくつかの種類があります。

  • ラウンドロビン方式:リクエストを順番に各サーバーに振り分けます。設定がシンプルで、均等に負荷が分散されます。
  • 最小コネクション方式:接続数が最も少ないサーバーにリクエストを振り分けます。負荷が集中しているサーバーを避けるため効率的です。
  • IPハッシュ方式:クライアントのIPアドレスを元にサーバーを選択します。同じクライアントからのリクエストは同じサーバーに送られ、セッション維持に役立ちます。

これらの方法を理解し、システムの特性に合わせた負荷分散方式を選択することが重要です。次章では、Apacheで負荷分散を実現するための具体的なモジュールについて解説します。

Apacheで負荷分散を実現するモジュールの紹介


Apacheで負荷分散を構築するためには、主に以下のモジュールを活用します。それぞれのモジュールは役割が異なり、適切に組み合わせることで効率的なロードバランサーを構築できます。

1. mod_proxy


mod_proxyはApacheでリバースプロキシを構築するためのモジュールです。クライアントからのリクエストを受け取り、バックエンドサーバーに転送する役割を担います。

  • 主な機能:HTTP、HTTPS、FTPなどさまざまなプロトコルのリクエストを転送可能。
  • 役割:基本的なプロキシ機能を提供し、負荷分散のベースとなるモジュールです。
  • 設定例
ProxyPass / http://backend-server/  
ProxyPassReverse / http://backend-server/  


この設定により、Apacheは/へのリクエストをhttp://backend-serverに転送します。

2. mod_proxy_balancer


mod_proxy_balancerは、複数のバックエンドサーバーにリクエストを分散するためのモジュールです。ラウンドロビンや最小接続方式など、様々な負荷分散アルゴリズムをサポートしています。

  • 主な機能:バックエンドサーバー間でリクエストを分散。特定のサーバーがダウンした場合、自動的に他のサーバーに切り替える機能を提供します。
  • 役割:複数のサーバー間で負荷を均等に分配し、システムの耐障害性を向上させます。
  • 設定例
<Proxy balancer://mycluster>  
  BalancerMember http://backend1  
  BalancerMember http://backend2  
</Proxy>  
ProxyPass / balancer://mycluster/  


これにより、backend1backend2の間でリクエストが分散されます。

3. mod_lbmethod_byrequests


mod_lbmethod_byrequestsは、負荷分散アルゴリズムの一つで「ラウンドロビン方式」を提供します。各サーバーに順番にリクエストを割り振るため、シンプルで設定が容易です。

  • 主な機能:順番にリクエストを各サーバーに分配。
  • 役割:均等に負荷を分散させ、バックエンドサーバーの使用率を平準化します。

4. mod_proxy_ajp


mod_proxy_ajpは、Apache JServ Protocol(AJP)を利用してTomcatなどのアプリケーションサーバーと連携する際に使います。

  • 主な機能:Apacheがフロントエンドとして機能し、Tomcatへのリクエストを効率的に転送します。
  • 設定例
ProxyPass / ajp://localhost:8009/  

各モジュールの連携


これらのモジュールは単独で使用することもできますが、組み合わせて使用することで柔軟な負荷分散構成が可能になります。
次のセクションでは、具体的な設定ファイルの作成方法や環境準備について詳しく説明します。

環境準備と必要な設定ファイル


Apacheで負荷分散を設定するには、事前に環境を整え、必要なモジュールをインストールしておく必要があります。本セクションでは、Apacheのインストールからモジュールの有効化、設定ファイルの準備までの手順を解説します。

1. Apacheのインストール


負荷分散の構築にはApache HTTP Serverが必要です。以下のコマンドでApacheをインストールします。

  • Ubuntu/Debian系
    “`bash
    sudo apt update
    sudo apt install apache2
- **CentOS/RHEL系**  

bash
sudo yum install httpd

インストール後、Apacheを起動し、自動起動を有効にします。  

bash
sudo systemctl start apache2 # Ubuntu/Debian
sudo systemctl start httpd # CentOS/RHEL
sudo systemctl enable apache2 # 自動起動有効化(Ubuntu)
sudo systemctl enable httpd # 自動起動有効化(CentOS)

<h3>2. 必要なモジュールのインストールと有効化</h3>  
負荷分散を実現するために、以下のモジュールをインストールし、有効化します。  

- **mod_proxy**:リバースプロキシを実現するモジュール  
- **mod_proxy_balancer**:負荷分散機能を提供するモジュール  
- **mod_lbmethod_byrequests**:ラウンドロビン方式を実現するモジュール  

- **Ubuntu/Debian系**  

bash
sudo a2enmod proxy
sudo a2enmod proxy_balancer
sudo a2enmod lbmethod_byrequests
sudo systemctl restart apache2

- **CentOS/RHEL系**  

bash
sudo yum install mod_proxy mod_proxy_balancer
sudo systemctl restart httpd

<h3>3. 設定ファイルの作成</h3>  
Apacheの設定ファイルは`/etc/apache2/sites-available/`(Ubuntu)または`/etc/httpd/conf.d/`(CentOS)に配置します。  

以下は基本的な負荷分散設定ファイルの例です。  

- **設定例:/etc/apache2/sites-available/loadbalancer.conf**(Ubuntu)  

apache

ServerAdmin admin@example.com
DocumentRoot /var/www/html

<Proxy balancer://mycluster>  
    BalancerMember http://192.168.1.10:8080  
    BalancerMember http://192.168.1.11:8080  
    BalancerMember http://192.168.1.12:8080  
    ProxySet lbmethod=byrequests  
</Proxy>  

ProxyPass / balancer://mycluster/  
ProxyPassReverse / balancer://mycluster/  

ErrorLog ${APACHE_LOG_DIR}/error.log  
CustomLog ${APACHE_LOG_DIR}/access.log combined  
作成した設定ファイルを有効化します。  

bash
sudo a2ensite loadbalancer.conf
sudo systemctl restart apache2

<h3>4. 動作確認</h3>  
Apacheが正しくロードバランサーとして動作しているか確認します。ブラウザでサーバーのIPアドレスにアクセスし、ロードバランスが機能しているかチェックします。  

次のセクションでは、具体的にバックエンドサーバーをローテーションする方法について解説します。
<h2>ProxyPassを用いた基本的な設定例</h2>  
Apacheで負荷分散を行う基本的な方法として、**ProxyPass**ディレクティブを利用します。ProxyPassを使うことで、クライアントからのリクエストを複数のバックエンドサーバーに転送し、リクエストを効率的に分散できます。  

<h3>1. ProxyPassとは?</h3>  
**ProxyPass**はApacheの`mod_proxy`モジュールを活用し、指定したURLパスに対してリクエストを別のサーバーに転送する設定です。  
例えば、クライアントがApacheにアクセスした際に、そのリクエストをバックエンドのWebアプリケーションサーバーに転送することで、負荷分散やサーバーの分離が実現します。  

<h3>2. 基本的なProxyPassの設定例</h3>  
以下は、単純なリバースプロキシとしてのProxyPassの設定例です。バックエンドサーバーが1台の場合の例を示します。  

- **設定例:/etc/apache2/sites-available/000-default.conf**(Ubuntu)  

apache

ServerAdmin admin@example.com
DocumentRoot /var/www/html

# ProxyPassでバックエンドサーバーにリクエストを転送  
ProxyPass / http://192.168.1.10:8080/  
ProxyPassReverse / http://192.168.1.10:8080/  

ErrorLog ${APACHE_LOG_DIR}/error.log  
CustomLog ${APACHE_LOG_DIR}/access.log combined  
<h4>ポイント解説</h4>  
- **ProxyPass**:クライアントからのリクエストを指定したサーバーに転送します。  
- **ProxyPassReverse**:バックエンドサーバーからの応答URLをクライアント向けに適切に書き換えます。これにより、クライアントが直接バックエンドサーバーのURLを認識することがなくなります。  

<h3>3. 複数のバックエンドサーバーへの転送例</h3>  
複数のバックエンドサーバーがある場合は、**mod_proxy_balancer**を使用し、負荷分散が可能です。  

apache

ServerAdmin admin@example.com
DocumentRoot /var/www/html

<Proxy balancer://mycluster>  
    BalancerMember http://192.168.1.10:8080  
    BalancerMember http://192.168.1.11:8080  
</Proxy>  

ProxyPass / balancer://mycluster/  
ProxyPassReverse / balancer://mycluster/  

ErrorLog ${APACHE_LOG_DIR}/error.log  
CustomLog ${APACHE_LOG_DIR}/access.log combined  
<h4>動作の流れ</h4>  
1. クライアントがApacheの80番ポートにアクセスします。  
2. Apacheは`mycluster`の定義に従い、バックエンドサーバー`192.168.1.10`と`192.168.1.11`にラウンドロビン方式でリクエストを転送します。  
3. 各サーバーが処理を行い、その結果をApache経由でクライアントに返します。  

<h3>4. 設定後の動作確認</h3>  
Apacheを再起動し、設定が正しく反映されているか確認します。  

bash
sudo systemctl restart apache2 # Ubuntu/Debian
sudo systemctl restart httpd # CentOS/RHEL

ブラウザでサーバーのIPアドレスを入力し、複数回リロードすることで、異なるバックエンドサーバーが応答していることを確認できます。  

次のセクションでは、バックエンドサーバーのローテーションを設定し、さらに柔軟な負荷分散環境を構築します。
<h2>バックエンドサーバーのローテーション設定</h2>  
Apacheで複数のバックエンドサーバーをローテーションさせることで、負荷を均等に分散し、各サーバーの負荷を軽減できます。`mod_proxy_balancer`を使用すると、リクエストを自動的にローテーションさせる設定が可能です。  

<h3>1. ローテーションとは?</h3>  
ローテーションとは、リクエストを複数のバックエンドサーバーに順番に振り分ける方式です。Apacheではラウンドロビン(順番に振り分け)方式が基本ですが、他にも最小接続方式やIPハッシュ方式が選択できます。  

<h3>2. 基本的なローテーション設定</h3>  
以下の設定例では、3台のバックエンドサーバーをラウンドロビン方式でローテーションさせます。  

- **設定例:/etc/apache2/sites-available/loadbalancer.conf**  

apache

ServerAdmin admin@example.com
DocumentRoot /var/www/html

<Proxy balancer://mycluster>  
    # バックエンドサーバーの定義  
    BalancerMember http://192.168.1.10:8080  
    BalancerMember http://192.168.1.11:8080  
    BalancerMember http://192.168.1.12:8080  
    ProxySet lbmethod=byrequests  # リクエストごとのローテーション  
</Proxy>  

ProxyPass / balancer://mycluster/  
ProxyPassReverse / balancer://mycluster/  

ErrorLog ${APACHE_LOG_DIR}/error.log  
CustomLog ${APACHE_LOG_DIR}/access.log combined  
<h4>設定のポイント</h4>  
- **BalancerMember**:負荷分散の対象となるバックエンドサーバーを指定します。必要に応じてサーバーを追加・削除できます。  
- **ProxySet lbmethod=byrequests**:ローテーション方式を指定します。`byrequests`はラウンドロビン方式を示します。  
  - `byrequests`:順番にリクエストを各サーバーに振り分けます。  
  - `bytraffic`:転送データ量に基づいて振り分けます。  
  - `bybusyness`:最もアイドル状態のサーバーに振り分けます。  

<h3>3. 特定サーバーの重み付け</h3>  
特定のサーバーに優先的にリクエストを振り分けたい場合は、**loadfactor**を使用します。  

apache
BalancerMember http://192.168.1.10:8080 loadfactor=2 BalancerMember http://192.168.1.11:8080 loadfactor=1 BalancerMember http://192.168.1.12:8080 loadfactor=1

この設定では、`192.168.1.10`に他のサーバーの2倍のリクエストが送られます。  

<h3>4. メンテナンス中のサーバーを除外</h3>  
メンテナンス中のサーバーを一時的に除外することも可能です。  

apache
BalancerMember http://192.168.1.12:8080 status=+H

`+H`(Hot Standby)は、サーバーが稼働していてもリクエストを受け付けない状態です。必要に応じて復旧させることで即座にサービスを再開できます。  

<h3>5. 動作確認</h3>  
設定を反映させた後、Apacheを再起動します。  

bash
sudo systemctl restart apache2 # Ubuntu/Debian
sudo systemctl restart httpd # CentOS/RHEL

ブラウザで複数回リロードし、各バックエンドサーバーが順番に応答していることを確認します。  

次のセクションでは、セッション維持のためのスティッキーセッション設定について解説します。
<h2>セッション維持とスティッキーセッションの設定方法</h2>  
バックエンドサーバーが複数存在する場合、ユーザーのリクエストが毎回異なるサーバーに振り分けられると、セッションが途切れる可能性があります。これを防ぐために、**スティッキーセッション(Sticky Session)**を設定し、特定のユーザーのリクエストを同じバックエンドサーバーに固定する方法を解説します。  

<h3>1. スティッキーセッションとは?</h3>  
スティッキーセッションは、ユーザーのセッションが開始されたサーバーに、その後のリクエストも引き続き送信される仕組みです。これにより、セッション情報やキャッシュが保持され、ユーザーエクスペリエンスが向上します。  

<h3>2. スティッキーセッションの必要性</h3>  
通常の負荷分散では、ラウンドロビンなどでリクエストが順番に振り分けられますが、ログイン情報やカートの状態が保持されず、ユーザーが不便を感じる可能性があります。  
スティッキーセッションを導入することで以下のメリットがあります。  
- **セッションの一貫性が保たれる**  
- **アプリケーションの安定動作が確保される**  

<h3>3. Apacheでのスティッキーセッション設定</h3>  
Apacheでは、`mod_proxy_balancer`の`stickysession`オプションを使用してスティッキーセッションを実装できます。  

<h4>設定例</h4>  

apache

ServerAdmin admin@example.com
DocumentRoot /var/www/html

<Proxy balancer://mycluster>  
    BalancerMember http://192.168.1.10:8080 route=server1  
    BalancerMember http://192.168.1.11:8080 route=server2  
    ProxySet stickysession=JSESSIONID|jsessionid  
</Proxy>  

ProxyPass / balancer://mycluster/  
ProxyPassReverse / balancer://mycluster/  

ErrorLog ${APACHE_LOG_DIR}/error.log  
CustomLog ${APACHE_LOG_DIR}/access.log combined  
<h4>ポイント解説</h4>  
- **BalancerMember**:`route`オプションで各サーバーに識別名を付与します。  
- **ProxySet stickysession=JSESSIONID**:セッションID(`JSESSIONID`)を使用して、ユーザーを特定のサーバーに固定します。  
- **JSESSIONID**はJavaアプリケーションでよく使われますが、他のセッションID(PHPSESSIDなど)にも対応可能です。  

<h3>4. セッションタイムアウトの設定</h3>  
スティッキーセッションは有効ですが、サーバー側のセッションタイムアウトが短いと、セッションが途切れる可能性があります。Apache側でタイムアウトを調整できます。  

apache
ProxyTimeout 600

この設定で、セッションが600秒(10分)維持されます。  

<h3>5. スタンバイサーバーの設定</h3>  
一部のサーバーをスタンバイモードに設定し、通常時は待機させることができます。万が一アクティブなサーバーがダウンした場合に自動で切り替わります。  

apache
BalancerMember http://192.168.1.12:8080 status=+H

`+H`はホットスタンバイ状態を意味します。  

<h3>6. 動作確認</h3>  
設定後、Apacheを再起動します。  

bash
sudo systemctl restart apache2 # Ubuntu/Debian
sudo systemctl restart httpd # CentOS/RHEL

ブラウザでリクエストを複数回実行し、同一サーバーにリクエストが送られていることを確認します。クッキーやセッションIDを確認し、同じサーバーへの振り分けが継続しているかを検証します。  

次のセクションでは、ログ取得とトラブルシューティングの方法について解説します。
<h2>ログの取得とトラブルシューティング</h2>  
Apacheで負荷分散を運用する際、適切なログ取得と迅速なトラブルシューティングが安定稼働のカギとなります。ログを活用することで、問題の特定やパフォーマンスの改善が可能になります。本セクションでは、ログの設定方法と、よくある問題への対処法を解説します。  

<h3>1. Apacheのログ設定</h3>  
Apacheは標準で**アクセスログ**と**エラーログ**を記録します。これらのログを適切に設定し、必要な情報を記録することが重要です。  

<h4>アクセスログの設定</h4>  
アクセスログは、クライアントからのリクエストを記録します。バックエンドサーバーへのリクエスト状況を確認する際に役立ちます。  

apache
CustomLog ${APACHE_LOG_DIR}/access.log combined

- **combined**フォーマットは、リクエスト元IP、リクエストメソッド、URL、応答コード、ユーザーエージェントなどを記録します。  
- ログファイルは`/var/log/apache2/access.log`(Ubuntu)または`/var/log/httpd/access_log`(CentOS)に保存されます。  

<h4>エラーログの設定</h4>  
エラーログは、サーバー内部の問題やバックエンドサーバーへの接続エラーなどを記録します。  

apache
ErrorLog ${APACHE_LOG_DIR}/error.log
LogLevel warn

- **LogLevel**は記録レベルを設定します。`warn`は警告レベル以上のエラーを記録します。必要に応じて`error`や`debug`に変更可能です。  
- 設定ファイル例:  

apache

ServerAdmin admin@example.com
DocumentRoot /var/www/html
ProxyPass / balancer://mycluster/
ProxyPassReverse / balancer://mycluster/

ErrorLog ${APACHE_LOG_DIR}/error.log  
CustomLog ${APACHE_LOG_DIR}/access.log combined  
<h3>2. ログの解析</h3>  
取得したログは、以下のコマンドでリアルタイムに確認できます。  

bash
tail -f /var/log/apache2/access.log # Ubuntu/Debian
tail -f /var/log/httpd/access_log # CentOS/RHEL

- アクセスが正常に行われているかを確認します。  
- エラーが発生した場合は、`error.log`を確認します。  

<h3>3. トラブルシューティングの流れ</h3>  
負荷分散の設定で問題が発生した場合、以下の手順で原因を特定します。  

<h4>1. Apacheの起動状態を確認</h4>  

bash
sudo systemctl status apache2 # Ubuntu/Debian
sudo systemctl status httpd # CentOS/RHEL

- **active (running)**と表示されていれば正常です。エラーが表示される場合は、詳細を確認します。  

<h4>2. 設定ファイルの検証</h4>  
Apacheの設定ファイルにミスがあると起動に失敗します。  

bash
sudo apachectl configtest

- **Syntax OK**と表示されれば問題ありません。エラーがある場合は、該当箇所が表示されるので修正します。  

<h4>3. バックエンドサーバーの接続確認</h4>  
バックエンドサーバーに接続できているか確認します。  

bash
curl http://192.168.1.10:8080

- バックエンドサーバーが正常に応答するかを確認します。応答がない場合は、バックエンド側の状態をチェックします。  

<h4>4. ロードバランサーの動作確認</h4>  
Apacheが適切にリクエストを分散しているかを確認します。  
- アクセスログを確認し、複数のバックエンドサーバーへのリクエストが順番に記録されているかをチェックします。  

<h3>4. よくあるエラーと対処法</h3>  

<h4>1. 503 Service Unavailable</h4>  
- **原因**:バックエンドサーバーがダウンしている、または接続できない状態です。  
- **対処法**:  
  - バックエンドサーバーが稼働しているか確認します。  
  - `BalancerMember`の設定が正しいかを見直します。  

<h4>2. 502 Bad Gateway</h4>  
- **原因**:Apacheとバックエンドサーバー間の通信に失敗しています。  
- **対処法**:  
  - `ProxyPass`のURLが正しいか確認します。  
  - バックエンドサーバーのポートが開いているかを確認します。  

<h4>3. バックエンドサーバーへの転送が行われない</h4>  
- **原因**:`mod_proxy`や`mod_proxy_balancer`が有効になっていない可能性があります。  
- **対処法**:  

bash
sudo a2enmod proxy
sudo a2enmod proxy_balancer
sudo systemctl restart apache2

<h3>5. パフォーマンス監視のためのツール</h3>  
- **Apachetop**:リアルタイムでApacheのアクセス状況を確認できるツールです。  

bash
sudo apt install apachetop # Ubuntu
apachetop

- **htop**:サーバーのリソース使用率を監視できます。  

bash
sudo apt install htop # Ubuntu
htop

次のセクションでは、負荷分散環境のパフォーマンスチューニングについて解説します。
<h2>パフォーマンスチューニングと最適化</h2>  
Apacheの負荷分散環境では、適切なチューニングを行うことでパフォーマンスの向上が期待できます。特に高トラフィック環境では、設定の見直しや最適化が不可欠です。本セクションでは、Apacheのロードバランサーを効果的に動作させるためのチューニング方法を解説します。  

<h3>1. KeepAliveの有効化</h3>  
**KeepAlive**は、1回のTCP接続で複数のリクエストを処理する仕組みです。これにより、接続のオーバーヘッドを削減し、応答速度を向上させます。  

<h4>設定方法</h4>  
Apacheの設定ファイル(`/etc/apache2/apache2.conf`)でKeepAliveを有効にします。  

apache
KeepAlive On
MaxKeepAliveRequests 100
KeepAliveTimeout 5

- **KeepAlive On**:KeepAliveを有効にします。  
- **MaxKeepAliveRequests**:1回の接続で処理できるリクエスト数を指定します。100が推奨です。  
- **KeepAliveTimeout**:接続を保持する時間を指定します(秒単位)。  

<h3>2. バランサーメンバーの最大接続数を設定</h3>  
各バックエンドサーバーの処理能力に応じて最大接続数を制限することで、過負荷状態を回避します。  

apache
BalancerMember http://192.168.1.10:8080 max=100 BalancerMember http://192.168.1.11:8080 max=100

- **max=100**:各サーバーに最大100リクエストまで処理を許可します。  

<h3>3. タイムアウトの調整</h3>  
バックエンドサーバーが応答しない場合に備えて、適切なタイムアウトを設定します。これにより、応答が遅いサーバーへの依存を減らし、リクエストの詰まりを防ぎます。  

apache
Timeout 60
ProxyTimeout 30

- **Timeout 60**:クライアントのリクエスト処理が完了するまでの最大待機時間です。  
- **ProxyTimeout 30**:バックエンドサーバーが応答しない場合に切断するまでの時間です。  

<h3>4. 負荷分散アルゴリズムの選択</h3>  
負荷分散アルゴリズムはアプリケーションの特性に合わせて選択します。  

- **byrequests**(ラウンドロビン方式)  
リクエストを順番に振り分けます。リソースが均等に分散されるため、シンプルな環境に適しています。  

apache
ProxySet lbmethod=byrequests

- **bytraffic**(トラフィックベース)  
転送データ量に基づいて振り分ける方式で、大量データ処理が求められる環境に適しています。  

apache
ProxySet lbmethod=bytraffic

- **bybusyness**(最小接続方式)  
接続数が最も少ないサーバーを優先して選択する方式で、負荷の高いサーバーを避けられます。  

apache
ProxySet lbmethod=bybusyness

<h3>5. Gzip圧縮の有効化</h3>  
Apacheでデータを圧縮して転送することで、通信量を削減し、応答速度を向上させます。  

apache
AddOutputFilterByType DEFLATE text/html text/plain text/xml AddOutputFilterByType DEFLATE application/javascript AddOutputFilterByType DEFLATE application/x-javascript AddOutputFilterByType DEFLATE text/css

<h3>6. キャッシュの活用</h3>  
バックエンドサーバーへの負担を軽減するために、キャッシュを利用して同じリクエストに対して応答を再利用します。  

apache
CacheEnable disk / CacheRoot /var/cache/apache2/mod_cache_disk CacheDefaultExpire 3600

- **CacheEnable**:キャッシュをディスクに保存します。  
- **CacheRoot**:キャッシュファイルの保存先を指定します。  
- **CacheDefaultExpire**:デフォルトのキャッシュ有効期限を1時間(3600秒)に設定します。  

<h3>7. イベントMPMの利用</h3>  
ApacheのMPM(マルチプロセッシングモジュール)で**event MPM**を使用すると、同時接続数の処理能力が向上します。  

- **MPMをeventに切り替える方法**(Ubuntu)  

bash
sudo a2dismod mpm_prefork
sudo a2enmod mpm_event
sudo systemctl restart apache2

<h3>8. チューニング後の動作確認</h3>  
Apacheの再起動後、負荷試験ツール(`ab`コマンドなど)を使ってパフォーマンスの確認を行います。  

bash
ab -n 1000 -c 100 http://example.com/
“`

  • -n 1000:合計1000リクエストを送信します。
  • -c 100:同時に100接続でリクエストを送ります。

次のセクションでは、設定のまとめと負荷分散の利点について解説します。

まとめ


本記事では、Apacheを活用してバックエンドサーバーをローテーションさせる負荷分散設定方法について詳しく解説しました。負荷分散の基本概念から始まり、mod_proxymod_proxy_balancerを使用した具体的な設定例、スティッキーセッションの実装、トラブルシューティング、そしてパフォーマンスチューニングに至るまで、実践的な手順を網羅しました。

適切な負荷分散設定は、システムの安定性を向上させ、トラフィックの増加にも柔軟に対応可能です。特にスティッキーセッションの導入や、バックエンドサーバーのローテーション設定は、ユーザーエクスペリエンスの向上に直結します。

運用環境に応じたチューニングを施し、ログを活用して定期的に状態を監視することで、Apacheを用いたロードバランサーは高い可用性を維持できます。この記事が、負荷分散の導入や運用に役立つ指針となれば幸いです。

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