Apacheのメモリ使用量を簡単にモニタリングする方法とツールを徹底解説

Apacheサーバーは、WebサイトやWebアプリケーションの運用において非常に広く使用されているオープンソースのWebサーバーです。しかし、トラフィックの増加や大量のリクエスト処理により、メモリ使用量が増大し、サーバーのパフォーマンスに影響を与えることがあります。メモリが過剰に使用されると、サーバーが応答しなくなったり、処理が遅延したりする可能性があります。

そのため、Apacheのメモリ使用量を定期的にモニタリングすることは、安定したサーバー運用に不可欠です。適切なメモリ監視を行うことで、パフォーマンス低下を未然に防ぎ、トラブルシューティングの効率も向上します。

本記事では、Apacheのメモリ使用量を監視する基本的な方法をはじめ、実際に役立つツールや設定方法について詳しく解説します。サーバーの安定性を維持するためのチューニング方法や、メモリリークを防ぐポイントも紹介します。Apacheを運用している方はぜひ参考にしてください。

目次

Apacheのメモリ使用量をモニタリングする重要性


Apacheサーバーは、複数のクライアントリクエストを同時に処理するため、サーバーの負荷が高まるとメモリ使用量が増加します。メモリ管理が不十分な場合、以下のような問題が発生する可能性があります。

サーバーパフォーマンスの低下


メモリが過剰に使用されると、スワップが発生し、ディスクI/Oが増加します。これにより、応答時間が長くなり、ユーザー体験が悪化します。特に、高トラフィック時にはリクエスト処理が遅延し、タイムアウトやエラーが頻発することがあります。

サーバーダウンのリスク


メモリが枯渇すると、Apacheプロセスがクラッシュし、サービスが停止するリスクが高まります。これにより、Webサイト全体がダウンする可能性があり、復旧には時間がかかることがあります。

効率的なリソース管理


適切にメモリをモニタリングすることで、不要なプロセスやリソースの消費を抑えることができます。これにより、限られたサーバーリソースを最大限に活用し、運用コストを削減することが可能です。

障害の早期検出と対応


メモリ使用量の異常な増加を早期に検出することで、障害が発生する前に対応できます。これにより、ダウンタイムを最小限に抑え、安定したサーバー運用を維持することができます。

Apacheのメモリ監視は、単なる監視作業ではなく、サーバーの安定性とパフォーマンスを確保するための重要な運用タスクです。次のセクションでは、具体的なメモリ使用量の確認方法について詳しく説明します。

メモリ使用量の確認方法:手動編


Apacheのメモリ使用量を確認する最も基本的な方法は、コマンドラインを使用して直接サーバーの状態を確認することです。特別なツールを導入する必要がなく、手軽に実施できる点が特徴です。

psコマンドを使ったメモリ確認


psコマンドは、Apacheプロセスの状態やメモリ使用量を確認する際に役立ちます。以下のコマンドを使うことで、Apacheのプロセス一覧とそれぞれのメモリ消費状況を確認できます。

ps aux | grep apache

または、httpdが動作している環境では以下のように実行します。

ps aux | grep httpd


このコマンドにより、各プロセスのメモリ使用量(RSS)や仮想メモリサイズ(VSZ)が表示されます。

topコマンドでのリアルタイム監視


topコマンドは、Apacheのプロセスを含め、サーバー全体のプロセスとメモリ使用状況をリアルタイムで確認できます。

top


topを起動後、Shift + Mを押すことで、メモリ使用量の多いプロセス順に並び替えることができます。Apacheプロセスがどの程度メモリを消費しているか簡単に確認できます。

pmapでプロセスごとの詳細メモリ情報を取得


pmapコマンドを使用することで、特定のApacheプロセスのメモリマッピングを詳細に確認できます。

pmap <プロセスID>


プロセスID(PID)はps auxtopで確認できます。これにより、どのセグメントがどれだけのメモリを使用しているかを把握できます。

freeコマンドでシステム全体のメモリ状態を把握


Apacheだけでなく、サーバー全体のメモリ使用状況を確認するにはfreeコマンドが便利です。

free -m


メモリの総量や使用量、スワップの状態を簡単に確認できます。

これらの手動コマンドを活用することで、Apacheのメモリ使用量を細かく監視し、問題が発生した際に迅速に対応することが可能です。次のセクションでは、プロセスごとのメモリ使用量をさらに詳しく解析する方法について解説します。

Apacheのプロセスごとのメモリ使用量を把握する


Apacheは、マルチプロセスアーキテクチャを採用しており、複数のプロセスが同時にリクエストを処理します。そのため、各プロセスがどれだけのメモリを使用しているかを把握することが重要です。これにより、リソースの無駄遣いを防ぎ、サーバーのパフォーマンスを最適化できます。

psコマンドでプロセスごとのメモリ使用量を確認


Apacheの各プロセスのメモリ使用量を確認するには、以下のようにpsコマンドを使用します。

ps -ylC httpd --sort:rss


このコマンドは、Apache(httpd)のプロセスをメモリ使用量順(RSS:常駐セットサイズ)に並べて表示します。

出力例

F S   UID     PID   PPID  C PRI  NI     RSS    SZ WCHAN  TTY          TIME CMD
0 S     33  14567      1  0  80   0   10432  7980 -      ?        00:00:15 httpd
0 S     33  14568  14567  0  80   0   15284  8004 -      ?        00:00:10 httpd
0 S     33  14569  14567  0  80   0   12100  7992 -      ?        00:00:08 httpd


RSSの列が実際に使用されているメモリ量を示します。この値をチェックすることで、メモリを多く消費しているプロセスを特定できます。

smemコマンドで詳細なメモリ使用量を確認


smemは、プロセスごとのメモリ使用量を詳細に確認できるツールです。

smem -c "pid user command rss pss vss"


pss(Proportional Set Size)は、共有メモリのプロセス間の割合を考慮した指標で、実際にプロセスがどれだけメモリを消費しているかを示します。

出力例

PID   USER     COMMAND           RSS     PSS     VSS
14567 apache   /usr/sbin/httpd  10432    5000   45000
14568 apache   /usr/sbin/httpd  15284    8000   48000
14569 apache   /usr/sbin/httpd  12100    7000   47000


PSSを確認することで、複数のプロセスが共有しているメモリの実際の負担を把握できます。

Apacheのプロセスを特定する方法


特定のApacheプロセスを調べたい場合は、pgrepコマンドを使うと便利です。

pgrep httpd


これにより、ApacheのすべてのプロセスIDが表示されます。個別のプロセスをpmapで解析することも可能です。

pmap <PID>

メモリ使用量が多いプロセスへの対処


メモリを過剰に消費しているプロセスを特定したら、killコマンドで該当プロセスを終了させることができます。

kill -9 <PID>


ただし、プロセスを停止させる際は、サービスに影響を与えないよう注意が必要です。プロセスの再起動などを計画的に行うことが望ましいです。

次のセクションでは、Apacheのログを解析して、メモリ関連のエラーを特定する方法について解説します。

Apacheログからメモリ関連のエラーを検出する


Apacheのメモリ問題を特定する際、サーバーログは重要な手がかりとなります。エラーログには、メモリ不足やプロセスのクラッシュに関する情報が記録されており、これを分析することで問題の原因を迅速に特定できます。

Apacheエラーログの基本的な確認方法


Apacheのエラーログは通常、以下の場所に保存されています。

/var/log/apache2/error.log  (Debian系)
/var/log/httpd/error_log    (RHEL/CentOS系)


エラーログをリアルタイムで確認するには、以下のコマンドを使用します。

tail -f /var/log/apache2/error.log


これにより、新しいエラーが発生するたびにログが自動的に表示されます。

メモリ関連のエラー例とその解釈


エラーログには、メモリ不足やプロセスの異常終了に関連する以下のようなメッセージが記録されることがあります。

例1: メモリ不足のエラー

[pid 12345] AH00159: fork: Cannot allocate memory


このエラーは、新しいプロセスを生成しようとした際にメモリが不足していることを示しています。Apacheが大量のリクエストを処理している場合に発生しやすいエラーです。

例2: プロセスの強制終了

[pid 67890] AH00052: child pid 67890 exit signal Segmentation fault (11)


このメッセージは、Apacheの子プロセスがセグメンテーションフォルト(メモリアクセス違反)により異常終了したことを示しています。メモリリークやバッファオーバーフローが原因である可能性があります。

例3: スレッドエラー

[mpm_worker:error] [pid 45678] (12)Cannot allocate memory: AH00481: fork: Unable to fork new process


MPM(マルチプロセッシングモジュール)でスレッドが新規に生成できない場合に発生します。スレッド数の上限やメモリの割り当てが原因であることが多いです。

エラーログを効率的に解析する方法


過去のエラーを一覧で確認したい場合は、grepを使用してメモリ関連のエラーログを抽出できます。

grep "Cannot allocate memory" /var/log/apache2/error.log
grep "Segmentation fault" /var/log/apache2/error.log


特定の期間に絞って解析する場合は、awksedと組み合わせると便利です。

awk '$0 ~ /Jan 05/ && /Cannot allocate memory/' /var/log/apache2/error.log

エラー発見後の対処法

  1. メモリリミットの引き上げ:
     Apacheの設定ファイル/etc/apache2/apache2.confまたはhttpd.confMaxRequestWorkersMaxConnectionsPerChildを調整し、リソース消費を抑えます。
MaxRequestWorkers 150
MaxConnectionsPerChild 1000
  1. モジュールの最適化:
     不要なモジュールを無効にし、メモリの消費を削減します。
a2dismod status
  1. キャッシュの有効化:
     キャッシュを利用してApacheの負荷を軽減し、プロセス生成を減らします。
mod_cache`や`mod_deflate`を有効化

次のセクションでは、Apacheのモジュールを利用してメモリ使用量を監視する具体的な方法について解説します。

Apacheのモジュールでメモリ使用量を確認する方法


Apacheには、サーバーの状態やプロセスの情報をリアルタイムで確認できるモジュールが用意されています。これらのモジュールを活用することで、メモリ使用量の監視やリソースの分析が容易になります。特に、mod_statusmod_infoはサーバーの状態を視覚的に把握するのに役立ちます。

mod_statusを使ったメモリ監視


mod_statusは、Apacheの現在の稼働状況をWebブラウザで確認できる便利なモジュールです。プロセスごとの状態やリクエスト数などがリアルタイムで表示されます。

mod_statusの設定

  1. mod_statusを有効にします。
a2enmod status  (Debian系)
/usr/sbin/httpd -M | grep status  (RHEL/CentOS系)
  1. Apacheの設定ファイルに以下を追記します。
<IfModule mod_status.c>
    ExtendedStatus On
    <Location /server-status>
        SetHandler server-status
        Require ip 192.168.1.0/24
    </Location>
</IfModule>
  1. 設定を反映させます。
systemctl restart apache2

mod_statusの使い方


ブラウザで以下のURLにアクセスします。

http://<サーバーのIPアドレス>/server-status


プロセスの状態、メモリ使用量、リクエストの処理状況が一覧で表示されます。特に「Workers」セクションでは、各プロセスの状態が詳細に確認できます。

mod_infoを使ったApache設定の確認


mod_infoは、Apacheの設定状況をWebブラウザで表示するモジュールです。どのモジュールがどのように設定されているかを把握でき、メモリ関連のパラメータも確認可能です。

mod_infoの設定

  1. mod_infoを有効化します。
a2enmod info
  1. 設定ファイルに以下を追記します。
<IfModule mod_info.c>
    <Location /server-info>
        SetHandler server-info
        Require ip 192.168.1.0/24
    </Location>
</IfModule>
  1. Apacheを再起動します。
systemctl restart apache2

mod_infoの使い方


ブラウザで以下にアクセスします。

http://<サーバーのIPアドレス>/server-info


Apacheの詳細な設定が一覧表示され、メモリ関連のモジュールやプロセスの設定値を確認できます。

mod_statusとmod_infoの活用ポイント

  • 定期的な状態監視: メモリ使用量やプロセスの状態を定期的に確認することで、異常の兆候を早期に発見できます。
  • プロセスの増加を検出: Apacheプロセスが増加している場合は、メモリが逼迫する可能性があるため、設定値(MaxRequestWorkersなど)を見直します。
  • 詳細なリソース分析: mod_infoを使って、メモリに影響を与えるモジュールや設定を特定し、不要なモジュールを無効化することでパフォーマンスを向上させます。

次のセクションでは、Apacheのメモリ監視に役立つ外部ツールを紹介し、さらに効率的な監視環境の構築方法を解説します。

メモリ監視ツールの紹介と設定方法


Apacheのメモリ使用量をリアルタイムで監視するためには、専用の監視ツールを導入するのが効果的です。これらのツールは、Apacheのプロセス単位でのメモリ使用量やCPU負荷を視覚的に把握でき、異常があれば即座に対応できます。ここでは、代表的なツールとして「htop」「Glances」「Monit」を紹介し、それぞれのインストール方法と基本的な使い方を解説します。

1. htopでApacheプロセスをリアルタイム監視


htopは、プロセスのメモリ使用量を色分けで視覚的に表示するツールで、Apacheのプロセスを簡単に特定し、監視できます。

インストール

sudo apt update
sudo apt install htop  (Debian系)
sudo yum install htop  (RHEL系)

使い方

htop


起動後に「F4」キーを押して「httpd」または「apache」を入力すると、Apacheプロセスだけを絞り込めます。
「M」キーを押せば、メモリ使用量の多いプロセス順に並び替えられます。

2. GlancesでApacheとサーバー全体の状態を把握


Glancesは、システム全体の状態を監視できる高度なツールで、Apacheのプロセスだけでなく、CPU、メモリ、ディスク使用量などを一元的に監視できます。

インストール

sudo apt update
sudo apt install glances  (Debian系)
sudo yum install glances  (RHEL系)

使い方

glances


Apacheプロセスを絞り込む場合は、「f」キーを押して「FILTER」モードを有効にし、「apache」または「httpd」と入力します。

3. MonitでApacheの自動監視とプロセス再起動


Monitは、Apacheプロセスがメモリを大量に消費したりクラッシュした場合に自動で再起動を行う監視ツールです。障害対応の自動化に役立ちます。

インストール

sudo apt update
sudo apt install monit  (Debian系)
sudo yum install monit  (RHEL系)

設定方法

  1. 設定ファイルを編集して、Apacheの監視ルールを追加します。
sudo nano /etc/monit/conf-enabled/apache


以下の設定例を記述します。

check process apache with pidfile /var/run/apache2/apache2.pid
   start program = "/usr/sbin/service apache2 start"
   stop program = "/usr/sbin/service apache2 stop"
   if totalmem > 500 MB for 5 cycles then restart
   if 5 restarts within 5 cycles then unmonitor
  1. 設定を反映します。
sudo monit reload
sudo monit start apache

ツールの選び方と活用法

  • リアルタイム監視が必要ならhtopやGlancesがおすすめです。特に、メモリ使用量が急激に増加する場合に効果的です。
  • 自動再起動が必要ならMonitが適しています。Apacheがメモリ不足で停止する場合、自動で再起動し、ダウンタイムを最小限に抑えることができます。

次のセクションでは、Apacheの設定を最適化してメモリ使用量を抑える方法について解説します。

メモリ使用量を抑えるApacheのチューニング方法


Apacheのメモリ使用量を最適化することで、サーバーのパフォーマンス向上やリソースの有効活用が可能になります。特に高負荷時には、適切なチューニングがメモリ消費を抑え、安定した運用に貢献します。ここでは、Apacheの設定ファイルを調整してメモリ使用量を減らす具体的な方法を解説します。

1. 不要なモジュールの無効化


Apacheには多くのモジュールがデフォルトで有効になっていますが、使用していないモジュールがメモリを消費します。不要なモジュールを無効にすることでメモリ負荷を軽減できます。

モジュールの無効化方法

a2dismod <モジュール名>  (Debian系)
httpd -M | grep <モジュール名>  (RHEL系)

例:

a2dismod status
a2dismod cgi


必要最小限のモジュールのみを有効にし、パフォーマンスを向上させます。

2. MPM(マルチプロセッシングモジュール)の最適化


ApacheはMPM(Multi-Processing Module)を使用してリクエストを処理します。適切なMPMの選択と設定は、メモリ使用量の最適化に不可欠です。

使用するMPMの確認

apachectl -V | grep MPM


MPMには主に以下の3種類があります。

  • MPM prefork(プロセスベース):安定性重視だがメモリ消費が多い
  • MPM worker(スレッド+プロセス):メモリ効率が良いが互換性に注意
  • MPM event(スレッド+イベント):静的コンテンツ配信に最適

MPMの設定例(worker)


/etc/apache2/mods-available/mpm_worker.confに以下のように記述します。

<IfModule mpm_worker_module>
    StartServers             2
    MinSpareThreads          25
    MaxSpareThreads          75
    ThreadLimit              64
    ThreadsPerChild          25
    MaxRequestWorkers        150
    MaxConnectionsPerChild   1000
</IfModule>
  • MaxRequestWorkers:同時に処理できる最大接続数を制限し、メモリ消費を抑えます。
  • MaxConnectionsPerChild:一定の接続処理後に子プロセスを再起動し、メモリリークを防ぎます。

3. KeepAliveの調整


KeepAliveは、同一クライアントからの複数リクエストを維持しますが、過度に設定するとメモリ消費が増加します。

KeepAlive設定の最適化


/etc/apache2/apache2.confまたはhttpd.confで以下の設定を行います。

KeepAlive On
MaxKeepAliveRequests 100
KeepAliveTimeout 3
  • MaxKeepAliveRequests:1つの接続で処理するリクエスト数を制限します。
  • KeepAliveTimeout:アイドル状態での接続維持時間を短くして、リソースを解放します。

4. キャッシュの導入


キャッシュを有効にすることで、リクエスト処理の負荷を軽減し、メモリ消費を抑えることができます。

mod_cacheの設定例

a2enmod cache
a2enmod cache_disk


/etc/apache2/mods-available/cache.confに以下を追加します。

CacheEnable disk /
CacheRoot /var/cache/apache2
CacheDefaultExpire 3600


これにより、静的コンテンツがキャッシュされ、リクエストごとの負荷が軽減されます。

5. ログのローテーション設定


Apacheのアクセスログやエラーログが肥大化すると、メモリ消費が増大します。ログローテーションを設定し、ログサイズを管理します。

sudo nano /etc/logrotate.d/apache2


以下を追加または編集します。

/var/log/apache2/*.log {
    weekly
    rotate 4
    compress
    missingok
    notifempty
}

6. 不要なプロセスの自動終了


長時間アイドル状態のプロセスを自動終了させ、メモリを解放します。

MaxSpareThreads 50


プロセスの数を制御し、リソースの無駄遣いを防ぎます。

これらのチューニング方法を適切に行うことで、Apacheのメモリ使用量を抑え、サーバーの安定性とパフォーマンスを大幅に向上させることが可能です。次のセクションでは、メモリリークを防ぐための運用ノウハウについて解説します。

メモリリークを防ぐための運用ノウハウ


Apacheを長期間運用していると、徐々にメモリ使用量が増大し続ける「メモリリーク」が発生することがあります。メモリリークは、リソースが適切に解放されないことで起こり、放置するとサーバーの安定性が損なわれ、最終的にはサービス停止に至る可能性があります。ここでは、メモリリークを防ぐための運用上の工夫や設定を紹介します。

1. MaxConnectionsPerChildの設定でプロセスの再生成


Apacheのプロセスは長時間稼働するほどメモリを消費しやすくなります。これを防ぐには、一定回数の接続処理後にプロセスを再起動する設定を行います。

設定方法


/etc/apache2/mods-available/mpm_prefork.confまたはmpm_worker.confで以下を追加します。

MaxConnectionsPerChild 1000


この設定により、1つのプロセスが1000件の接続を処理した後に終了し、新しいプロセスが生成されます。これにより、メモリリークが蓄積する前にプロセスが入れ替わり、安定した状態を維持できます。

2. 定期的なApacheの再起動


メモリリークを完全に防ぐことは難しいため、サーバーの負荷が少ない時間帯にApacheを定期的に再起動する運用方法が有効です。

cronを使った自動再起動設定例

sudo crontab -e


以下を追加し、毎週月曜午前3時にApacheを再起動します。

0 3 * * 1 systemctl restart apache2


これにより、メモリの蓄積をリセットし、サーバーの安定性を保つことができます。

3. プロセスの監視と自動再起動


Monitなどの監視ツールを使用してApacheプロセスのメモリ使用量をチェックし、一定の閾値を超えた場合に自動で再起動させる方法も効果的です。

Monitの設定例

check process apache with pidfile /var/run/apache2/apache2.pid
   start program = "/usr/sbin/service apache2 start"
   stop program = "/usr/sbin/service apache2 stop"
   if totalmem > 500 MB for 5 cycles then restart


この設定では、Apacheのメモリ使用量が500MBを超えた状態が5回続いた場合、自動で再起動します。

4. Apacheモジュールの最適化


メモリリークは、特定のApacheモジュールが原因で発生することがあります。特にmod_phpmod_pythonなどはメモリ消費が大きく、リークの原因になることが知られています。これらを必要に応じてphp-fpmmod_fastcgiに置き換えることで、メモリリークを軽減できます。

例:mod_phpからphp-fpmへの移行

a2dismod php7.4
a2enmod proxy_fcgi setenvif
a2enconf php7.4-fpm
systemctl restart apache2


php-fpmはプロセスを管理しやすく、メモリ消費を抑える効果が期待できます。

5. ログの監視と分析


エラーログには、メモリリークの兆候が記録されていることがあります。特に「segmentation fault」や「Cannot allocate memory」のエラーは、メモリリークのサインである可能性が高いです。

ログ解析のコマンド例

grep "Cannot allocate memory" /var/log/apache2/error.log
grep "segmentation fault" /var/log/apache2/error.log


エラーが頻繁に発生している場合は、関連するモジュールや設定を見直す必要があります。

6. カーネルパラメータの調整


Linuxカーネルのovercommit_memory設定を調整することで、メモリ不足の際にプロセスがクラッシュするリスクを軽減できます。

sudo sysctl -w vm.overcommit_memory=2


この設定により、メモリが足りない場合は新しいプロセスが生成されなくなり、既存プロセスが安定して動作します。

7. メモリプロファイリングツールの導入


Valgrindgperftoolsなどのメモリプロファイリングツールを使用して、Apacheプロセスのメモリリークを特定できます。

Valgrindでのメモリリーク検出例

valgrind --leak-check=full /usr/sbin/apache2 -X


これにより、Apacheが起動する際にメモリリークをリアルタイムで検出できます。

メモリリークを防ぐためには、設定の見直しやプロセスの監視が不可欠です。次のセクションでは、Apacheの具体的な応用例とメモリ管理の実践的な事例を紹介します。

まとめ


本記事では、Apacheのメモリ使用量をモニタリングし、最適化するための方法について解説しました。メモリ管理の重要性から始まり、手動でのメモリ確認方法、Apacheモジュールの活用、監視ツールの導入、さらにメモリリークを防ぐ運用ノウハウまで幅広く取り上げました。

Apacheのメモリ監視と最適化は、サーバーの安定性や応答速度に直結する重要な運用タスクです。特に、高トラフィック環境では適切な設定や再起動の自動化が不可欠です。

これらの方法を活用し、定期的にApacheの状態を確認することで、メモリ消費を抑えつつ高パフォーマンスを維持することができます。安定したWebサービスの提供を目指し、今後の運用に役立ててください。

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