近年はリモートワークやクラウド活用が進む一方で、セキュリティやネットワーク環境の事情から、どうしてもオフラインでOfficeを使いたいと考える方もいます。私自身も実家にOfficeを入れる際、古い電話認証のイメージが残っており「本当にネット無しで使えるのかな?」と疑問に思った経験があります。今回はそんなOfficeのオフライン運用や認証の仕組みを、体験談を交えてわかりやすくご紹介します。
Officeのオフライン認証はできるのか
Office 2019以降はデジタルライセンス方式へ
Office 2016までの個人向けパッケージやPCメーカーからプリインストールされていたOfficeは、プロダクトキーを手動で入力して電話認証を行う手段が用意されていました。しかしOffice 2019以降は、大幅にライセンス認証のシステムが変わり、いわゆるデジタルライセンス方式に移行しています。
ここでの大きなポイントは、Office 2019やOffice 2021、そして今後リリースされるOffice 2024などは、インターネット経由でMicrosoftアカウントにライセンスが紐づく形式になっているという点です。
完全オフライン運用は不可能なのか
Officeの利用を続けるうえで「一定期間ごと」にライセンスを確認する仕組みが必要になるように設計されています。特にOffice 2021やOffice 2024の場合、初回認証の段階でインターネットに接続してアカウントに紐づける必要があるだけでなく、定期的にライセンスの状態を確認する場面が生じることがあります。そのためインターネットに一切接続できない環境では、まず利用が難しいといえます。
Office 2021と電話認証の誤解
Office 2016以前までの認識を引きずる方が多い
私自身もそうでしたが、かつてOffice 2013やOffice 2016を電話認証で使っていた頃のイメージを残している方は多いようです。ネットにまったく繋げられない現場でも「電話認証すれば大丈夫」と思い込んでしまいがちですよね。
しかしOffice 2019以降はデジタルライセンス方式へ移行してから、電話認証の仕組みは一般向けには用意されなくなっています。昔のように電話で数字を入力する画面が出ることはないため、「オフラインでつなげればOK」という期待は残念ながら外れてしまうわけです。
公式アナウンス
マイクロソフトの公式サイトにも「Office 2019以降のパッケージ製品は電話認証が利用できない」といった記述が散見されます。サポートに問い合わせても、同様の回答が得られるでしょう。実際に私が問い合わせた際も「一般向けパッケージ版はすべてデジタルライセンスで、電話によるオフライン認証は利用できない」と言われました。
昔は長い数字を入力してひたすら電話のガイダンスに従う…という作業が面倒でしたが、それでもオフライン環境では便利だったので、無くなったのは少々不便に感じます。
Office LTSCという法人向けオプション
なぜOffice LTSCならオフラインが可能なのか
一般向けOfficeがデジタルライセンス方式へ移行した一方、企業や特殊な事情(セキュリティ上インターネットに接続不可)を抱える環境向けに「Office LTSC」という形態が用意されています。これは“Long Term Servicing Channel”の略称で、定期的な機能更新を不要とする代わりに、オフライン環境でも認証ができる仕組みを備えたライセンス形態です。
Office LTSCの場合、クラウド連携機能や常に最新バージョンを保持するMicrosoft 365 Appsのような特長は含まれません。しかし「どうしてもネット接続ができない」という現場であっても、ボリュームライセンスを通じて適切な認証を行い、安定して利用し続けられるのが大きな魅力となります。
導入にはハードルがある
ただしOffice LTSCは基本的にボリュームライセンス(企業がまとめて購入するライセンス形態)で提供されるため、個人単位で気軽に入手するものではありません。どうしても完全オフラインが必要な個人ユーザーの場合は、マイクロソフト認定パートナーやリセラーを通して相談してみる必要があります。
必ずしも個人に対してライセンスが販売されるとは限らない点が、導入のハードルを高める要因でもあります。
私の知り合いが勤める企業では、機密データを扱うPCが完全に閉じたネットワークで運用されており、Office LTSCを採用していました。インターネットに全く繋げられないので、通常のOfficeでは認証が維持できないとのことでした。
電話認証があったOfficeはどう違うのか
Office 2016やOffice 2013、さらに昔のバージョン
Office 2016やOffice 2013では、ライセンスキーを入力後に電話番号へ発信し、音声ガイダンスに沿ってインストールIDを入力すると、確認IDが返ってきて認証できる仕組みがありました。これがいわゆる電話認証です。昔はオフィスにネット環境がなかったり、社内ルールで外部接続が制限されている場所でも、この方法でOfficeを使っていた企業は少なくありません。
しかしこうした仕組みは、Office 2019から一気に廃止され、ネット接続が前提のデジタルライセンスへ移行しました。
古いバージョンを使い続けるのはリスクあり
「ならば古いOfficeをそのまま使えばいい」と考える方もいるかもしれませんが、すでに延長サポートが終了しているOfficeを継続利用するのはセキュリティリスクが高く推奨できません。また、Windows OS側のサポート要件との兼ね合いで、使い続けるのが難しくなる可能性もあるので注意が必要です。
各Officeバージョンの認証方式表
以下は代表的なOfficeバージョンの認証方式とオフライン対応の可否をまとめた表になります。これを見ると、デジタルライセンス移行後のバージョンではオフライン運用が事実上不可能であることがわかりやすいかと思います。
Office バージョン | 認証方式 | 電話認証 | 完全オフライン運用 |
---|---|---|---|
Office 2013 | プロダクトキー入力 + 電話認証可 | 可 | 可 (ただしサポート切れリスク) |
Office 2016 | プロダクトキー入力 + 電話認証可 | 可 | 可 (ただしサポート終了に注意) |
Office 2019 | デジタルライセンス | 不可 | 不可 (定期オンライン必要) |
Office 2021 | デジタルライセンス | 不可 | 不可 |
Office 2024 | デジタルライセンス (予定) | 不可 (予想) | 不可 (予想) |
Office LTSC | ボリュームライセンス (認証形態特殊) | 不明 (ケースにより異なる) | 可 (ネット接続無でも運用可) |
もしオフラインで使いたい場合は
最初から「ネット接続なしでOfficeを使うこと」が確実に求められるなら、Office LTSCライセンスの導入を検討するのがベストです。個人利用にはハードルがありますが、企業であれば導入実績も多数存在します。
また、どうしても個人でネット無しの環境を作りたい場合は、メーカーやリセラーに相談して、Office LTSCを扱っているかどうかを確認してみてください。
中途半端にオフライン環境がある場合
オフライン環境といっても、月に一度だけネットに繋ぐなど、状況によっては通常のOffice 2021でも運用できるケースもあります。定期的にライセンス確認が行われるため、全くネットに繋がらなくても一時的には動くものの、ある程度期間が経過すると利用できなくなることがあります。
「どうしても月に一度も接続できない」という場合は、通常のOfficeでは難しいという結論に至るでしょう。
Office 365 (Microsoft 365)との比較
サブスクリプション版はさらにオンライン前提
個人向けのMicrosoft 365 (旧Office 365)は、定額課金制で常に最新機能が使えるのが魅力ですが、こちらも基本的にオンラインライセンス認証が必須です。オフラインで使うという発想はほぼ想定されておらず、一度もインターネット接続ができないと使用継続は難しいです。
頻繁に外出が多く、ネット環境をとりづらいケースでも、最終的にはある程度の期間でライセンスをチェックする仕組みがあるため、やはり完全に遮断された状態ではNGとなります。
筆者の体験談とまとめ
過去の電話認証時代とのギャップ
私の父母は昔ながらの環境でネット回線が不安定だったので、Office 2010や2013を電話認証で使い続けていました。ある日、父親から「Officeを新調したい」という相談を受けたのですが、手元にあったOffice 2019パッケージをインストールしたところ、電話認証の項目がなくなっていることに大変驚きました。結局、そのPCを定期的にインターネットに繋いでやれば使えるので、月に一回だけ私がUSBルータを持ち込んで接続して認証を更新する方式に落ち着きましたが、「昔と随分変わったな…」と正直感じました。
完全にオフラインというわけではありませんが、ネットに常時つなげるのは父のポリシー上NGだったので、最低限の接続でしのいでいます。正直これは妥協案です。
最終結論
今のところ、オフライン運用を徹底したいならOffice LTSCしか現実的な選択肢がありません。一般向けOffice(パッケージ版、ダウンロード版、プリインストール版など)はすべてMicrosoftアカウントと紐づいてライセンスをアクティブにし、インターネット経由で認証する仕組みが要請されます。電話認証によるオフライン維持を期待している方には残念ながら不可能となっています。
セキュアな現場や特殊な業務でどうしてもネットを繋げないのであれば、導入コストや企業規模の要件などをクリアしてOffice LTSCを導入する他はない、と考えておくとよいでしょう。
執筆者のコメント
電話認証が当たり前だった時代と比べると、便利になった部分もあれば不便になった部分もありますね。インターネットが当たり前にある生活と切り離せなくなりつつある現代を象徴しているように思えます。私自身は「何とかネット環境を用意してやる」派ですが、どうしても無理なときは、Office LTSCなど他の道を考える必要があります。
Officeをオフラインで利用したい方へのアドバイス
認証要件を必ず確認する
Officeを購入する前に、現在のバージョンやライセンス認証方式がどうなっているか、必ず公式情報をチェックするようにしてください。古い情報を参考にすると「電話認証があるはずだ」と思い込んでしまい、インストールしてから困る可能性があります。
オフラインでも一時的にネット接続できるなら問題解決する場合も
実家や事務所などで「定期的にどうしてもネットが繋がらない…」という場合でも、まったくゼロではなく、たまに接続を用意できるなら認証更新ができる可能性があります。毎日はネットに接続しないまでも、一定期間おきにライセンスチェックさえクリアすればOKです。
しかし、本当に完全遮断という状態なら通常のOfficeは使い続けられませんので要注意です。
Office LTSCを導入できるかどうか検討する
一般個人ユーザーがOffice LTSCを入手するのは簡単ではありませんが、いくつかの専門店や企業向けルートで取り扱っている場合があります。どうしても完全オフラインでOfficeを動かしたいのなら、まずは正規販売店やリセラーに相談してみると、導入可能か案内してもらえます。
まとめ
Office 2019以降、個人向けパッケージのライセンス方式は電話認証からデジタルライセンスへと変化しました。これにより、従来のようなオフライン環境での完全運用は原則として不可能になり、最小限のインターネット接続が必要とされるようになっています。Office 2021や2024もこれに該当し、一度もインターネットに接続しないまま使い続けることはできません。
一方、企業などで「ネット接続が絶対にできない」という特殊な事例には、Office LTSCという選択肢があります。クラウド機能や常時アップデートといった便利さを捨てる代わりに、オフラインでライセンス認証を維持できる仕組みがあり、これが唯一の救済策といっても過言ではありません。
もし完全オフラインにこだわる必要がある場合は、リセラーや企業向けの販売ルートを検討し、Office LTSCを導入できるかどうかを検討してみてください。
これからOfficeを導入しようと検討している方は、ぜひ自分の利用環境やセキュリティ要件に合わせて、最適なライセンス形態を選びましょう。
コメント