VPN接続でインターネットが使えないときの原因と対処法を徹底解説

会社のVPNに接続した途端、普段使っているブラウザやチャットツールが使えなくなってしまう…。在宅ワークが広がった今、このトラブルに悩む方は少なくありません。私自身も以前、VPN接続中にネット閲覧が停止して混乱した経験がありましたが、実はちょっとした設定や確認で解決できるケースも多いのです。

VPN接続中にインターネットが使えなくなる現象とは

VPNに接続すると、通常は社内システムへのアクセスが可能になります。しかし、社内のルートを経由することで、インターネットへの接続がうまくいかない場合があります。特に、ブラウザでウェブ閲覧ができなくなる、SlackやTeamsなどのリアルタイムチャットや通話が切断されるなどの症状が報告されています。

特定のアプリだけ通信できない不思議なケース

興味深いのは、接続前から参加していたオンライン会議や音声通話だけは途切れず継続することがある点です。例えば、Google MeetやSlack Huddleを事前に起動しておくと、その通信は維持されるものの、新規に開くウェブページや他のアプリは接続できなくなることがあります。これは、VPN接続前に確立されていた通信がそのまま維持されている一方、新たに作るセッションがVPNのルーティング設定に阻まれてしまうからと考えられます。

在宅勤務やリモート作業で急増するVPN利用

コロナ禍以降、リモートワークの普及によってVPNの利用者が大幅に増加しました。それまでVPNを使ったことがない社員も急ぎ導入するケースが多く、設定方法やトラブルシューティングに詳しくないまま使い始めた結果、このような問題に直面しやすくなっています。

私も初めて社内VPNを使った頃、ネットが急に見られずにあたふたしていました。会社のファイルサーバにアクセスできるのに、なぜかブラウザだけ読み込まない…。結局、設定を少し変えるだけであっさり直り、「もっと早く知りたかった」と感じた記憶があります。

主な原因と解決策

VPN接続中にインターネットが使えなくなる大きな原因としては、以下のような要素が挙げられます。

1. デフォルトゲートウェイ設定の影響

VPN接続用のネットワークアダプタの設定で「リモートネットワークでデフォルトゲートウェイを使用する」にチェックが入っている場合、インターネット通信がすべてVPN経由になります。これがいわゆる「フルトンネル」です。会社のネットワークを通して外部サイトへアクセスするため、VPN側の設定や速度制限、ルーティング不備などでインターネットが使えなくなることがあります。

設定を見直す手順

Windowsの場合の一般的な設定箇所は次のとおりです。
1. コントロールパネルの「ネットワークとインターネット」から「ネットワークと共有センター」を開きます。
2. 「アダプターの設定の変更」を選択し、VPNアダプタのプロパティを開きます。
3. 「インターネット プロトコル バージョン4(TCP/IPv4)」のプロパティへ進み、「詳細設定」を選択します。
4. 「IP設定」タブにある「リモート ネットワークでデフォルト ゲートウェイを使用する」のチェックを外します。
5. 設定を保存します。

これでスプリットトンネルとなり、インターネットは自宅やオフィスの回線を直接利用し、社内システムだけVPN経由にする形になります。ただし、会社によってはセキュリティポリシーでスプリットトンネルを禁止している場合もあるので、必ず許可を取る必要があります。

2. 企業ポリシーでのフルトンネル運用

セキュリティ強化の目的で、社内システムやインターネットのすべての通信をVPNで集約するフルトンネル運用をする企業があります。その場合、VPNサーバの設定やルーティングが不適切だと、インターネット接続に支障をきたすことがあります。ユーザー側で設定を変えることが許可されていない場合、IT部門やネットワーク管理者へ相談してサーバ側の設定を見直してもらうのが最善です。

フルトンネルはすべての通信を社内ネットワークでコントロールできるため、情報漏洩リスクを減らせる利点があります。

フルトンネル環境ではVPNサーバに大きな負荷がかかりやすく、ネット速度が低下してしまうデメリットがあります。

フルトンネル環境の対処法

フルトンネルを維持しながらインターネットを快適に使うためには、VPNサーバ側でルーティングやDNSサーバの設定を適切に行う必要があります。企業によっては、インターネットトラフィックを処理する専用ゲートウェイを用意し、社内へのアクセスをスムーズに保つケースもあります。いずれにせよ、ユーザーの手元だけで解決できないことが多いので、管理者と連携しながら対応しましょう。

3. VPNサーバーまたは接続拠点の問題

利用しているVPNサーバーの拠点が混雑していたり、設定に不具合があったりすると、インターネット通信に影響が出ることもあります。複数のVPN拠点を選択できる場合は、別の拠点に切り替えてみて解消するか確認してみましょう。海外拠点より国内拠点のほうが速度面で安定する場合も多いです。

別拠点へ切り替える際の留意点

1. 社内VPNが複数あるかどうかを確認する
2. 拠点切り替えが許可されているかIT部門に確認する
3. 切り替え先の拠点が混雑していないか様子をみる
4. 別のVPNサーバーに接続後、ネット速度やアクセス可否をテストする

ただし、質問者の環境のように接続先が固定されていて自由に選べないケースでは、この方法を試すのが難しいこともあります。

私が以前勤めていた会社では、国内3拠点・海外2拠点のVPNサーバがありました。海外拠点へつなぐとどうしても遅延が大きかったので、国内拠点をローテーションしながら自分に合う接続先を探した結果、比較的安定した環境が得られました。

4. OSバージョンやクライアントソフトの制限

Windows 10のバージョンやMacのOSバージョンによっては、VPNの詳細設定画面に「リモート ネットワークでデフォルト ゲートウェイを使用する」というオプションが表示されないことがあります。また、標準のVPNクライアントではなく、企業専用のVPNソフトウェアを使う場合も、設定項目や表記が異なるケースがあります。

対応策

1. OSのアップデートを実施する
2. 企業VPNソフトのマニュアルを確認し、同等の設定オプションが存在するか調べる
3. 見つからない場合はサポート窓口へ問い合わせる

企業独自のVPNソフトウェアは、一般のWindows設定とは別の場所でルーティング設定を制御していることがあります。ユーザーが自由に触れないようになっている場合も多いため、困ったときには開発元や管理者に問い合わせるのが手っ取り早いです。

スプリットトンネルとフルトンネルの比較表

以下の表は、VPNの通信方式であるスプリットトンネルとフルトンネルを比較したものです。インターネット接続不可の問題を解決する際、どちらを採用するかを検討する参考になります。

項目 スプリットトンネル フルトンネル
通信経路 社内システムはVPN経由、インターネットは通常回線 すべての通信をVPN経由
メリット ネット速度が比較的速い、VPNサーバへの負荷を抑えられる 社内ポリシーでインターネット通信を一括管理しやすい
デメリット 社外通信のセキュリティや監視が手薄になる可能性 VPNサーバが混雑しやすく、速度低下や不具合が起きる可能性がある
適用例 在宅勤務で作業効率を優先したい場合 厳格なセキュリティが求められるシステムを扱う場合

私の知人の会社では、スプリットトンネルを採用したことで在宅勤務が劇的に快適になったそうです。もちろんセキュリティリスクを伴うので、しっかり管理者と相談してから実施したと聞きました。

スプリットトンネルを使わずに解決する方法

企業のセキュリティポリシーが厳しく、スプリットトンネルが許可されない場合には、フルトンネルのまま不具合を改善する方向で調整する必要があります。

VPNサーバ側のDNS設定やルーティングを最適化する

フルトンネル環境でもネットアクセスを快適にするためには、VPNゲートウェイのルート設定やDNS設定を見直すことが効果的です。例えば、インターネットへのクエリを迅速に処理できるよう、社内DNSサーバが外部向けのリゾルバを適切に設定しておくなどの工夫があります。
一般ユーザーには手が届かない領域なので、ネットワーク管理者との連携が重要です。

サーバ負荷の分散

多くの社員が同時にフルトンネルでVPN接続を行うと、VPNサーバの負荷が高まり通信遅延や接続不能が起きやすくなります。これを回避するには、複数のVPNゲートウェイを用意して負荷を分散するか、在宅勤務の時間帯をずらすなどの対策を考える必要があります。

特定の時間帯だけ極端にネットが遅くなったり、途切れたりする場合は、VPNサーバの混雑が原因の可能性が高いです。

接続先が固定されていて設定変更できないときの対処法

一部の企業や組織では、ユーザー側でVPNの詳細設定を変更することが禁止されている場合があります。さらに、接続先サーバも固定で、拠点を選べないケースも珍しくありません。

IT部門やネットワーク管理者へ問い合わせる

自力で設定ができない以上、頼れるのは管理部門のサポートです。ネットワーク管理者はVPNのルーティング情報やファイアウォール設定を確認し、問題箇所を特定できます。問い合わせを行う際には、以下の情報をできる限り提供するとスムーズです。

問い合わせ時に伝えるべき項目

1. OSのバージョン(Windows 10かWindows 11かなど)
2. 利用しているVPNソフトウェアの名称とバージョン
3. 問題が発生する具体的な現象(ブラウザが開けない、Slackが切断されるなど)
4. 試した対処法と、その結果

IT部門がこれらの情報をもとに、VPNサーバの設定やネットワーク状況を調べてくれるため、トラブルシューティングが効率的に進みます。

私がサポート担当だったとき、ユーザーから「ネットが使えない」とだけ言われると原因特定に時間がかかりました。OSやVPNソフトのバージョン、発生するエラー画面などを事前に伝えてもらえると、解決までがぐっと早まります。

まとめと対処法一覧

VPNに接続するとインターネットが使えなくなる原因には、デフォルトゲートウェイの設定やVPNサーバ側のルーティング、企業ポリシーなど多岐にわたる要因があります。ここでは主な対処法を一覧にまとめます。

対処法 概要 実行できる人
VPNアダプタ設定の変更 「リモート ネットワークでデフォルト ゲートウェイを使用する」を外す ユーザー(企業ポリシーに準じる)
VPN拠点の切り替え 混雑の少ないサーバへ接続する ユーザー(切り替えが許可されている場合)
フルトンネル環境の最適化 DNS設定やルーティングの見直し IT部門・ネットワーク管理者
VPNサーバの負荷分散 複数ゲートウェイを用意する IT部門・ネットワーク管理者
OSやソフトウェアのアップデート バージョンの違いによる設定項目不足を解消 ユーザーまたはIT部門
管理者へ相談 ユーザーで変更ができない設定をサーバ側で調整 IT部門・ネットワーク管理者

在宅勤務時にVPNが安定すると、業務効率が飛躍的にアップするだけでなく、精神的なストレスも軽減されます。

あきらめずに原因を切り分けよう

VPN接続でインターネットが使えないと「もうどうしようもない」と思いがちですが、原因を1つずつ切り分けていくことで、解決に近づくことが多いです。特に、OS設定やデフォルトゲートウェイ周りの見直しはユーザー側でもできる初歩的なポイントです。もし自力で解消しない場合は、早めにIT部門に相談し、企業のルールやセキュリティ方針を踏まえた対策を施しましょう。

さいごに

VPNはリモートワークや在宅勤務をスムーズにする便利な技術ですが、いざトラブルが起きると厄介な部分もあります。しかし、適切な設定と社内のルールをしっかり理解すれば、快適なネット環境を保ちながら安心して仕事を進められます。自身の作業スタイルや業務に合った方法を見つけて、トラブルレスなリモートライフを楽しんでいただければ幸いです。

VPN接続で思わぬ時間を取られている方を見ると、かつての自分を思い出します。最初は訳がわからなくても、一度仕組みを理解すれば今後のトラブルにも落ち着いて対処できるようになるので、ぜひ試してみてください。

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