たとえば会社で使っている古いRTFファイルが急にPDFに変換できなくなり、対処法を探しているうちに時間がどんどん過ぎてしまったことはありませんか。私自身、慌てて色々な方法を試すうちに、Microsoft Information Protection(MIP)の設定が絡んでいることに気づき、ようやく解決へたどりついた経験があります。ここでは、RTFファイルをPDF化できなくなる理由や対処法、さらに会社のルールや運用方法をスムーズにするヒントなどを、実際の事例を交えながらお伝えしていきます。
RTFファイルがPDFに保存できない理由
MIPを導入すると、対応していないファイル形式では暗号化や保護が適切に行えない場合があります。そこで、RTF形式がその影響を受けた結果、PDFに直接保存できなくなる現象が起こります。単純に「保護が強化されたから保存できない」と片付けるのではなく、なぜRTFが該当外なのかを知ることで、スムーズに別の形式へ移行する意義が見えてきます。
RTFファイルとMicrosoft Information Protection
RTFは古くから利用されている文書フォーマットで、手軽に文字や簡易的な書式を扱える反面、近年のセキュリティや権限管理の観点から見ると脆弱性が指摘されるケースがあります。MIPは主にOfficeの新しい形式(DOCX, XLSX, PPTXなど)を中心に保護機能を提供するため、RTFのような旧式ファイルでは十分な暗号化やラベル管理が行えない可能性が高いです。
MIPがRTFをサポートしない背景
RTF形式は仕様が公開されていることもあって、非常に広範囲の書式をカバーできます。しかし、そうした自由度の高さが逆にセキュリティ管理やコンテンツ保護を複雑にすることにもつながっています。MIPでは、多くの企業が標準化して使っているOpen XMLファイル形式(いわゆるDOCXなど)に注力しているため、RTFまでサポート範囲を広げるメリットが少ないと判断されているのではないかと推測できます。

私の知人の会社では、MIP導入直後に大量のRTFマニュアルが「なぜかPDF保存できない」という状況に陥り、管理部門に問合せが殺到したそうです。その後、全社的にファイル形式見直しが始まり、結果として新規資料はDOCXに統一する動きが加速したとのことでした。
具体的な対処方法
MIP環境下でRTFファイルがそのままPDFに保存できない場合でも、実は工夫次第で解決できます。ここでは、最も一般的で再現性の高い方法を中心に紹介します。
DOCX形式へ変換してからPDF化する
いったんRTFからDOCXへ変換すれば、MIPの保護対象として扱いやすくなるため、問題なくPDFに書き出せる可能性が高いです。Microsoft Wordを使う場合は、ファイルを開いて「名前を付けて保存」でDOCX形式を選ぶだけで変換が完了します。その後、同じくWordの機能でPDFとして保存すればOKです。
変換作業の注意点
RTFからDOCXへの変換には、レイアウト崩れが起こる場合もあります。特にテキストボックスや独自のフォント設定が複雑な文書では注意が必要です。大事な文書の場合は、変換後のファイルを開いて問題なく表示・印刷できるかを確認することをおすすめします。下記のような表にまとめると、注意点がわかりやすくなります。
ファイル要素 | 変換時のリスク | 対策 |
---|---|---|
テキストボックス | 位置ズレや文字化け | 標準スタイルに置き換える |
複雑なフォント | 未インストールフォント使用時に崩れる | システム標準フォントに変更 |
独自のマクロ | マクロが失効する恐れ | DOCMなどマクロ対応形式に切り替える |
PDF変換の手順とワークフロー構築
RTFを直接PDFに変換していた従来のフローを改め、DOCXを経由するフローに切り替える場合のポイントを紹介します。単純に「変換→保存」の手順を覚えるだけでなく、社内規定やセキュリティポリシーに合った運用にするのが肝心です。
従来フローからの変更点
変換作業が一手間増えることで、担当者の負担も大きくなります。そのため、部門ごとにガイドラインを作り、「どのタイミングでDOCXに統一するか」を明確にしておくと混乱を防げます。たとえば新規作成文書はすべてDOCXにし、過去のRTFは必要時にのみ順次変換する、といったルールが考えられます。
変換を自動化するアイデア
RTFのまま保管されているファイル数が膨大な場合、変換作業を一括自動化できるシステム導入を検討する企業もあります。例えば以下のような疑似コードで一括変換する仕組みを組み込めば、担当者の作業負荷を大きく抑えられます。
foreach( file in rtfFolder ) {
wordApp.Open(file);
wordApp.SaveAs(docx);
wordApp.ExportAsPDF(pdf);
wordApp.Close();
}
ポリシー変更ができない場合の工夫
会社のセキュリティポリシーによっては、MIPの設定自体を変更できないケースもあります。そんなときは、業務フロー全体を見直す発想が大切です。
あえてRTFを廃止するアプローチ
古いマニュアルやテンプレートがRTFでしか存在しない場合でも、新規で資料を作る際に積極的にDOCXを使うよう促すことで、徐々にRTFを減らす方法があります。数年前に「一括で全部変換して混乱した」という企業の話も聞きますが、私の経験では段階的に移行を進めた方が現場の混乱が少ないように感じます。
社内周知のポイント
運用上のルール変更に伴う説明資料やQ&Aリストなど、従業員がすぐに確認できるドキュメントを用意すると安心です。「なぜRTFだとダメなのか」「どうやって変換すればいいのか」など、疑問点を最初にまとめておくと対応がスムーズに進む傾向があります。
実際のトラブル事例
ここでは、私自身や周囲で体験したトラブルを例に挙げて、RTFからの乗り換えがどのように行われたかを具体的に紹介します。
インターンがRTFで資料を作成してしまったケース
IT部門に在籍していた頃、新入のインターンが自分のパソコンに入っていた古いテンプレートを使い、社内マニュアルをRTFで作り始めたことがありました。完成後にPDF配布しようとしたら保存がブロックされ、結局DOCXに変換し直してから再度PDF化するという二度手間が発生しました。
教訓と対策
このケースでは、インターンに限らず新入社員向けの研修資料に「社内で使用を推奨するファイル形式」をきちんと明記しておくことが大切だと学びました。同時に、古いテンプレートを削除またはアップデートしておく管理体制も必要です。
部門間共有がスムーズにいかなくなったケース
総務部ではRTFで回覧していた文書を、IT部門はDOCXで受け付けるルールになっていたため、MIP導入後に総務部が「なんでPDFに保存できないの」と混乱した事例がありました。お互いの部門で使うファイル形式が異なると、ちょっとした作業にも手間が増えてしまいます。
部門ごとの合意形成
この事例から、文書管理ポリシーは部署単位ではなく、全社的に統一したルールが必要だと感じました。仮にどうしても部門独自形式を使いたい場合は、なぜその形式が必要かをIT部門と話し合い、互換性や変換フローを決めておくとトラブルを最小限に抑えられます。



私が働いていた企業では、部門が独自ルールで文書形式を決めていたため、当初は混乱が相次ぎました。ですが、最終的に全社的にDOCXを標準とし、PDFで配布するときは専用手順を守る、というガイドラインを整備することで解決に至りました。
MIP導入によるリスクとメリット
MIPを導入することで、セキュリティ強化や情報漏洩のリスク低減など、多くのメリットが得られます。しかし、その一方で今回のようにRTFが使えなくなるなどの小さなトラブルが生じることも事実です。
メリット
デメリット
将来のRTFサポートに期待できるか
Microsoft側が今後のアップデートでRTFをサポートする可能性は、現時点ではあまり高くないと言われています。そのため、RTFへの回帰を待つのではなく、積極的にDOCXなど新しい形式へ移行していく方が現実的でしょう。もしRTFを使い続ける理由がある場合は、Microsoftのフィードバック窓口やコミュニティで要望を出すと、将来的にサポートされる可能性が少しだけ高まるかもしれません。
RTFをあえて残すケース
古いシステムや特殊なツールがRTFに依存しており、置き換えのコストが大きい場合、やむを得ずRTFを使い続ける企業もあります。ただし、そうした環境でもセキュリティ対策を強化したり、変換のワークフローを最適化することは可能です。現実的には、一部のレガシーシステムを除けば、ほとんどの資料はDOCXへと移行していく流れが一般的だと感じます。
最後の手段: ツールを使い分ける
極端な例ですが、MIPが有効化されたPCとは別に、限定的にRTFを編集できるスタンドアロンのPCを用意する企業もあるようです。しかし、これはあまり推奨できる方法ではありません。セキュリティ上の管理が複雑になり、人為的ミスを誘発しやすいためです。どうしても必要な場合は、セキュリティポリシーを念入りに設計することが必須となります。
まとめと今後の対策
今回取り上げたように、MIP導入後にRTFファイルをPDFとして保存できなくなる問題は、RTFがMIPの保護対象外であることに起因しています。回避策としては、いったんDOCXなどの対応フォーマットに変換してからPDF化する手順が一般的です。さらに、社内で扱う文書形式を統一することで、余計な混乱や作業の重複を減らすことができます。
全社的なファイル形式統一の利点
DOCXを標準とすれば、レイアウトのズレや文字化けのリスクを減らせるだけでなく、将来的なOfficeやクラウドサービスとの連携がスムーズになります。上の表でも触れたように、フォントやマクロなどの面で旧式フォーマットは何かとトラブルを呼びやすいため、新しい形式に慣れておく方が結果的に効率アップにつながります。



私自身、旧式のファイル形式の扱いで時間を取られ続けていたことがあり、「結局、早めに新形式に移行しておけばよかった」と後悔したものです。最初は面倒に感じても、長期的には運用コストが大きく変わります。
今後の運用設計と社内教育
セキュリティソリューションの導入によって作業効率が落ちるのは本末転倒です。よって、導入時点で「どのファイル形式なら問題なく保護できるか」「部門間でどのように連携するか」をしっかり確認し、組織全体に周知する必要があります。新入社員や異動者が多い環境では、定期的な研修会やマニュアル更新も欠かせません。
積極的な情報収集を続けること
Microsoft 365のアップデートやセキュリティ関連の新機能に関する情報は日々更新されています。MIP以外のRMS(Rights Management Services)系サービスでも似たような現象が起こる可能性があるため、定期的に最新動向をキャッチアップする習慣をつけるとよいでしょう。IT部門だけが詳しい知識を持つのではなく、社内全体が「情報を守るための基本」を理解している企業は、セキュリティと生産性の両立がしやすいと感じます。
まとめ
RTFファイルをPDFとして保存できない問題は、Microsoft Information Protection導入時によくあるトラブルです。直接的な原因は、RTFがMIPの保護対象外になっていることで、DOCXなどの対応ファイル形式を経由する必要がある点にあります。この手間を最小限に抑えるには、社内ルールや運用方法を整備し、可能な限り新しいファイル形式へ移行することが効果的です。最終的には、MIPによる強固なセキュリティと、クラウド連携や共同作業の利便性を享受しながら、ファイル形式の混在にともなうストレスを削減する方向へ舵を切るのがおすすめです。
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