サーバーの運用において、リモートデスクトップによるアクセスは非常に便利ですが、ライセンスの再インストールや再アクティベーションが必要になるケースは意外と多く発生します。特に、Windows Server 2022環境でブルースクリーンエラー(BSOD)が起きてしまい、新規にサーバーを構築し直す際にはライセンス関連の手順が複雑化しがちです。本記事では、リモートデスクトップライセンス(RDSライセンス)の再設定手順や注意すべきポイントを詳しく解説していきます。
Windows Server 2022におけるRDSライセンスの再導入が必要になる背景
Windows Server 2022でリモートデスクトップサービス(RDS)を利用していると、ライセンス管理は避けて通れない重要課題です。特に、以下のような状況で「ライセンスの再導入」を迫られる可能性があります。
- サーバーのBSOD(ブルースクリーン)発生によりOSが起動不能になった
- ハードウェアの交換や検証目的でサーバーを初期化したい
- ライセンスサーバーの設定が誤っており、一度すべてをリセットして再構築したい
- ドメイン構成やネットワーク構成の大幅な変更によりRDS関連ロールを再インストールする必要がある
こうしたケースでは、すでに発行済みのRDSライセンスをどう扱うかが鍵になります。ライセンスマネージャーで「ライセンスが有効化済み」と表示されていても、実際にクライアント側では使えていない、あるいはライセンスが余っているのに活用できていないなどの現象が起きることがあります。以下では、再導入時の手順と注意点を詳しく見ていきましょう。
BSODによる再セットアップ時のライセンス取り扱い
Windows Serverで何らかのシステム障害が起こり、OSを再インストールせざるを得なくなった場合は、ライセンスサーバーも新規構築するか、もしくは既存のライセンスサーバーを無効化してから再度アクティベーションし直す手順が必要になります。特にBSODなどの深刻なシステムエラーの場合、OSレベルでの復旧は困難であり、RDSライセンスの情報も破損している可能性があります。
ライセンスサーバーの無効化と再アクティベーション
RDSライセンスサーバーを再構築するうえで重要なのが、「既存ライセンスサーバーを無効化する」か「直接ロールを削除して新規セットアップに移行する」の判断です。Microsoft公式ドキュメントによると、再アクティベーションが必要になるシチュエーションは以下のように示されています。
- ライセンスサーバーのハードウェア構成を変更した
- サーバーが不安定な動作を繰り返し、ライセンス情報が破損している可能性がある
- OSやライセンスに関するレジストリ情報が初期化または破損した
これらの理由に該当する場合、まずはライセンスサーバーを「無効化(Deactivate)」したうえで再アクティベーション(Reactivate)を行います。Microsoftの公式手順としては、以下のプロセスが推奨されます。
- Remote Desktop Licensing Managerを起動
- 対象ライセンスサーバーを右クリック → “Manage” → “Deactivate Server”
- ウィザードに従ってライセンスサーバーの情報を解除
- 必要に応じて再起動を行い、新しいサーバーやロールを設定
- 再びライセンスサーバーを“Activate Server”でアクティベーション
なお、BSOD後にOSを再構築した場合は、旧ライセンスサーバーにアクセスできない場合もあります。その場合は、直接新しいRDSライセンスサーバーを立ててライセンスを再アクティブ化し、既存のライセンスが重複発行されないように手続きを進めるとスムーズです。企業のボリュームライセンスを利用しているなら、Microsoftのライセンスセンターに問い合わせてライセンス移行の手続きを確認する方法もあります。
ライセンスサーバーのロール再インストール
ライセンスサーバー自体を「アンインストール」という形で取り除きたい場合は、サーバーマネージャーからRDSの役割と機能を削除します。具体的な操作手順は以下のとおりです。
- サーバーマネージャーを起動し、[管理] → [役割と機能の削除] を選択
- リモートデスクトップサービスに関連するロールを一覧から選択し、チェックを外す
- ウィザードに従いアンインストールを実行
- 必要に応じてサーバーを再起動
- アンインストール後に改めて[役割と機能の追加]からリモートデスクトップライセンスやリモートデスクトップセッションホストなど必要なサービスを再インストール
この手順を踏むことで、ライセンスサーバーに関する古い設定情報がクリアされ、再インストール後にクリーンな状態でライセンスを導入できるようになります。ただし、必要最小限のダウンタイムで済ませたい場合は、ライセンスサーバーのみを無効化する方法も検討してください。
PowerShellを用いたロールの削除とインストールの例
Windows Serverでは、サーバーマネージャーのUI操作だけでなく、PowerShellでロールを追加・削除することが可能です。たとえば、リモートデスクトップライセンスサーバー(RDS-Licensing)のロールを削除する場合は以下のコマンドを利用できます。
# RDS-Licensingロールを削除
Remove-WindowsFeature RDS-Licensing
# サーバー再起動が必要な場合、以下のコマンドで再起動
Restart-Computer -Force
再インストールは次のように行います。
# RDS-Licensingロールをインストール
Install-WindowsFeature RDS-Licensing
# インストール後、ライセンスサーバーを有効化
# ライセンスの有効化はGUI操作か、RD Licensing Managerから行うのが一般的
このように、GUI操作とPowerShellを組み合わせることで管理者の工数を削減することも可能です。
ライセンスの再設定とライセンスモード
ライセンスサーバーの再インストールや再アクティベーションを終えたら、次に設定すべきなのがライセンスモードの確認です。RDSライセンスには主に以下の2種類のモードがあります。
- Per Device モード
クライアント端末ごとにライセンスを割り当てる方式。端末単位で利用が多い環境(コールセンターなど特定のマシンのみがRDSを利用するケース)で適している。 - Per User モード
ユーザーアカウント単位でライセンスを割り当てる方式。同一ユーザーが複数端末から接続する場合でもライセンス消費は1つにカウントされるため、テレワークや社内外を問わずに同じユーザーが接続するケースで有利。
以下のような簡単な比較表を参考に、自身の運用形態に合ったライセンスモードを選んでください。
項目 | Per Device モード | Per User モード |
---|---|---|
ライセンス割り当て | クライアント端末に対して割り当て | ユーザーアカウントに対して割り当て |
適用例 | 特定の端末数がほぼ固定されている場合 | 社員が複数端末を使い分ける場合 |
メリット | 端末管理が容易 | ユーザーごとの自由度が高い |
デメリット | 端末を増やすとライセンス管理コスト増加 | 運用ルールの明確化が必要 |
サーバー側の設定方法は、[サーバーマネージャー] → [リモートデスクトップサービス] → [コレクション] → [タスク] → [編集プロパティ] などの画面から「ライセンス」タブで変更が可能です。またはグループポリシーやPowerShellコマンドで設定することもできます。
ライセンスの認証手順とライセンスキーの入力
ライセンスサーバーを新規に立てた後、ライセンスマネージャー(Remote Desktop Licensing Manager)から有効化ウィザードを使ってライセンスキーを入力するステップがあります。以下は一般的な手順です。
- [サーバーマネージャー] → [ツール] → [リモートデスクトップライセンスマネージャー] を開く
- 画面左ペインでライセンスサーバー名を選択し、右クリック → [アクティブ化]
- ウィザードに従い、ライセンス認証方式(オンライン/電話/ウェブなど)を選択
- 入力が求められたら、プロダクトIDまたはボリュームライセンスキーを入力
- アクティベーションが成功すると、ライセンスの種別や数が表示される
認証後、使用可能なライセンス数が正しく表示されているか確認し、ライセンス供与モード(Per UserまたはPer Device)が一致しているかをチェックしましょう。ライセンス数が正しく表示されない場合や、余分にライセンスが残ったままの状態である場合は、登録情報に重複がある可能性があります。Microsoftサポートへ連絡し、ライセンス移行やリセットを行ってもらう必要が出てくることもあります。
ライセンス使用状況の確認とトラブルシューティング
ライセンス設定後は、クライアントが実際にライセンスを取得しているかどうか、また余計なライセンス消費が発生していないかを管理者として定期的にモニタリングするのがおすすめです。以下のようなポイントに注目しましょう。
ライセンスマネージャーでの使用状況チェック
リモートデスクトップライセンスマネージャーの画面で、現在発行されているライセンス数や、最後にライセンスが発行された日時などを確認できます。特に「Per Deviceモード」を利用している場合、クライアント名とライセンス発行日が一覧で表示されます。不要になったデバイスがライセンスを抱え込んでいることもあるので、定期的に見直すことが重要です。
ライセンスの取り消し(リリース)
Per Deviceモードでライセンスを再割り当てしたい場合、RDSライセンスマネージャーから“Revoke License”機能を利用できる場合があります。ただし、Windows Serverのバージョンによっては細かな操作が制限されていることもあり、その場合は自動的にライセンスが期限切れになってリリースされるのを待つ必要があります。運用でカバーできない場合は、サーバーリセットやレジストリ調整を行わなければならないケースもあるため、慎重に運用しましょう。
イベントビューアによるエラー確認
BSODだけでなく、ライセンス周りの問題やサービス起動エラーが発生している場合、イベントビューア(Event Viewer)を確認することで手がかりを得られます。特に以下のログを重点的にチェックするとよいでしょう。
- Windows Logs → System: サービス起動エラーやシャットダウン時のエラーが記録される
- Windows Logs → Application: ライセンスマネージャーやRDSサービスに関するアプリケーションエラーが記録される
- Applications and Services Logs: RDS固有のログがある場合はこちらに記録
エラーコードや警告メッセージが特定できれば、Microsoftサポートやコミュニティフォーラムで検索して解決策を探すことができます。
ライセンスの維持管理とBSOD対策
新たにライセンスを再導入して正常稼働を確認した後も、ライセンスやサーバーの安定稼働を保つための注意点があります。BSODが再発してしまうと、また同じトラブルを繰り返す可能性があるため、以下の点を押さえておきましょう。
ハードウェアの定期メンテナンス
ハードウェア異常でBSODが起こることも多々あります。特に、以下の要素は定期的なチェックが必要です。
- メモリ(RAM)の検査: Windowsメモリ診断ツールなどを使ってエラーの有無を確認
- ストレージ(HDD/SSD)のヘルスチェック: S.M.A.R.T.情報を確認し、不良セクタや異常温度がないか
- CPU・ファンの冷却状態: 温度上昇が原因でBSODに陥るケースを防ぐため
ドライバやファームウェアのアップデート
Windows Updateをはじめ、マザーボードやネットワークアダプタ、RAIDカードなどのファームウェア更新も、BSOD防止には欠かせません。サーバー機器メーカーが提供する管理ソフトウェア(例: HP iLO、Dell iDRACなど)を活用し、最新のファームウェアとドライバを適用する習慣をつけましょう。
大規模ライセンス運用のポイント
企業規模が大きく、500ユーザーやそれ以上のライセンスを扱う場合には、ライセンス管理の自動化や監視がより重要です。以下のような手法を検討すると、運用負荷を下げることにつながります。
PowerShellによるライセンス状況のレポート化
PowerShellスクリプトを作成し、ライセンスマネージャーの情報を定期的に取得・CSV出力することで、大量のユーザーやデバイスの使用状況を自動で記録できます。例えば、毎日深夜にスクリプトを実行して、結果をメールやTeams通知で受け取る仕組みを作ると便利です。
例: ライセンス情報を取得するPowerShellスニペット
# RDSライセンスサーバーを指定
$serverName = "RDS-LIC-SERVER"
# WMI経由でライセンス情報を取得する
Get-WmiObject -Namespace "Root/CIMV2" -Class "Win32_TSLicenseKeyPack" -ComputerName $serverName |
Select-Object KeyPackId, ProductVersion, LicenseCount, IssuedCount, TypeAndModel, Description |
Export-Csv -Path "C:\Logs\RDS_License_$(Get-Date -Format 'yyyyMMdd').csv" -NoTypeInformation
このようにして日次や週次でログをとり、ライセンス使用量の傾向を把握しておけば、急激にライセンスが不足してしまうリスクにも早めに対処できます。
役割の分散と冗長化
大規模環境では、ライセンスサーバーの障害=大勢のユーザーがリモート接続できない事態につながる可能性が高いです。必要に応じてライセンスサーバーを複数用意し、HA(高可用性)構成を検討することも大切です。ただし、実際のライセンス運用では同時に2つ以上のライセンスサーバーがアクティブになるとトラブルになるケースもあるため、Microsoftのドキュメントを確認したうえで慎重に計画を立てましょう。
まとめ: 再インストール時の手順をしっかり把握して安定運用を
Windows Server 2022におけるリモートデスクトップライセンスの再インストールや再アクティベーションは、一見すると煩雑に思えますが、ポイントを押さえればスムーズに進められます。BSODなどの障害でサーバーを初期化せざるを得ない状況では、以下を意識してください。
- ライセンスサーバーの無効化またはロール削除: 古い設定をリセットしてから再構築する
- ライセンスモードの再設定: Per UserかPer Deviceか、自組織に合った形を選ぶ
- ライセンス認証手順の正確な実施: ライセンスキーの入力ミスや重複発行に注意
- イベントビューアやログ活用によるトラブルシュート: エラーの原因を突き止め、再発防止策を講じる
- ハードウェアとソフトウェアのメンテナンス: 定期的なアップデートと監視を怠らない
このようなステップを踏むことで、リモートデスクトップ環境を安定稼働させながら、ユーザーに快適なリモート接続を提供できます。ライセンスはMicrosoft製品を運用する上で不可欠な要素なので、問題が起きたらできるだけ早期に対処し、必要に応じてサポートの力を借りるとよいでしょう。
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