気になるSQL Serverのパスワードポリシーは、セキュリティを守るための重要な仕組みですが、バージョンアップや環境移行などによって思わぬエラーが発生することがあります。本記事では、SQL Server 2022とSQL Server 2019でのパスワードポリシーに注目し、設定の違いやエラーの原因、具体的な対処策についてわかりやすくご説明します。読み進めることで、パスワードポリシーの本質を理解し、より安全で快適な運用を実現するヒントを得られるでしょう。
SQL Serverのパスワードポリシー概要
SQL Serverでは、ログイン時に設定するパスワードの安全性を確保するため、Windowsのセキュリティポリシーやグループポリシーと連動して、パスワードの最小文字数や複雑性などをチェックする仕組みが備わっています。
多くの場合、SQL Serverそのものが直接「最小文字数」や「最大文字数」を定義しているというよりも、Windows OSのパスワードポリシーを参照しているケースが一般的です。そのため、サーバー環境においてどのようなポリシーが設定されているかによって、SQL Serverで使用できるパスワードの長さや種類が変化します。
パスワードポリシーの背景
サイバー攻撃が高度化・巧妙化する中、データベースの認証情報は非常に狙われやすくなっています。特に、短いパスワードや推測しやすい文字列を使っていると、不正アクセスのリスクが高まります。
このような脅威に対処するために、WindowsやSQL Serverを含む多くのシステムでは、パスワードの長さや複雑性に関するポリシーを強化する動きが進んでいます。具体的には、大文字・小文字・数字・記号を組み合わせることを要求したり、一定文字数以上でないと受け付けない設定が一般化しています。
パスワードポリシーが適用されるタイミング
SQL Serverでのパスワードポリシーは、以下のようなタイミングで適用されます。
- 新規ログインの作成時(CREATE LOGIN)
- 既存ログインのパスワード変更時(ALTER LOGIN)
これらのタイミングで、Windowsのローカルセキュリティポリシーまたはドメインのグループポリシーに定義された要件を満たしているかがチェックされます。もし要件を満たさないパスワードを指定した場合、SQL Server上でエラーが発生し、設定が拒否されることになります。
SQL Server 2022で変わったこと
SQL Server 2022で、パスワードに関する大きな仕様変更があったのではないか、と疑問を持つ方は少なくありません。しかし、Microsoftの公開情報を確認する限り、SQL Server 2019と2022の間でパスワードの最小文字数自体に明確な変更が加わったという公式のアナウンスは存在しないのが現状です。
ただし、セキュリティの重要性が年々高まっている背景から、OSやSQL Serverのインストール時に適用される初期設定が強化されている可能性はあります。特に、セキュリティ更新プログラムやサーバー環境の設定変更などによって、以前は許容されていた短いパスワードが拒否される設定に変化していることが考えられます。
SQL Server 2019との比較
バージョン2019から2022への移行において、「数文字しかないパスワードでログインを作成しようとするとエラーが出る」事例が報告されています。これは、多くの場合、SQL Serverの本体仕様ではなくWindowsセキュリティポリシー側の影響である可能性が高いです。
具体的には、Windowsサーバーを新調したり、ドメインのポリシーを変更した際に、最小文字数や複雑性ルールがより厳しく設定されていることがあります。SQL Serverがこの強化されたルールを参照するようになり、3~5文字程度のパスワードが拒否される結果を引き起こしていると考えられます。
想定されるエラーの原因
SQL Server 2022とSQL Server 2019を比較したときに、「以前は通っていた短いパスワードが現在は使えない」という状況が起きる主な原因は以下の2点です。
環境要因
新規インストールやサーバー移行の過程で、OSのセキュリティポリシー自体が強化されている可能性があります。具体的には以下のような設定です。
- Minimum Password Length:パスワードの最小文字数
- Password Complexity Requirements:大小英数字・記号などを組み合わせる必要
- Maximum Password Age:パスワードの有効期限
これらの設定が以前より厳しくなっている環境下では、短いパスワードはエラーとなり利用できなくなるでしょう。
セキュリティ更新プログラム
Microsoftがリリースするセキュリティ更新プログラムやサービスパックを適用することで、標準のパスワードポリシーが上書きされるケースもあります。そのため、過去には通用していたパスワードの長さや複雑性が、最新の環境では「不適合」と判断されることが十分に考えられます。
具体的な対処方法
では、実際に「短いパスワードや従来の単純なパスワードがエラーで拒否される」際に、どのように対処すればよいのでしょうか。ここでは、WindowsのセキュリティポリシーとSQL Server固有の設定を見直す方法をご紹介します。
Windowsのパスワードポリシー変更
まずは、SQL Serverが参照している可能性の高いWindowsセキュリティポリシーを確認・変更する方法です。
Windows サーバー(あるいはクライアント)でsecpol.msc
を開くと、「アカウントポリシー」→「パスワードポリシー」の項目が表示されます。ここで、以下の設定を確認できます。
設定項目 | 説明 |
---|---|
パスワードの最小文字数 | パスワードが最低限必要とされる文字数を定義 |
パスワードの複雑さを満たす必要がある | 大文字・小文字・数字・記号を含む必要があるかどうか |
パスワードの最大有効期間 | 何日間までパスワードを使い続けられるか |
パスワードの最小有効期間 | パスワード変更と再変更の間に必要な日数を定義 |
もし、業務上どうしても短いパスワードを設定しなければならない理由がある場合は、「パスワードの最小文字数」を一時的に下げることで回避できます。ただし、セキュリティリスクが高まる可能性があるため、十分に注意して運用する必要があります。
SQL Serverインスタンスレベルの設定
Windows側でどうしてもポリシーを変更できない場合や、最低限のパスワード要件は守りながら特定アカウントのみ柔軟に運用したい場合には、SQL Server側の設定で回避する方法があります。
CHECK_POLICYオプション
SQL Serverでログインを作成、または変更する際に使用できるオプションとして、CHECK_POLICY
とCHECK_EXPIRATION
があります。
- CHECK_POLICY = OFF
パスワードに対してWindowsのポリシー(最小文字数や複雑性要件)を適用しない - CHECK_EXPIRATION = OFF
パスワードの有効期限切れチェックをオフにする
以下は例として、既存ログイン「TestUser」のパスワードポリシーチェックをオフにしてパスワードを変更するT-SQLコードです。
ALTER LOGIN [TestUser]
WITH PASSWORD = 'Abc01'
CHECK_POLICY = OFF,
CHECK_EXPIRATION = OFF;
GO
このように設定すると、Windows側でどのようなパスワードポリシーが適用されていても、SQL Server内では短いパスワードを使えるようになります。ただし、セキュリティ面では大幅にリスクが高まるため、業務要件や運用ポリシーとのバランスをよく考慮することが大切です。
パスワード複雑性を強化するメリット
短いパスワードを使いたい場合の回避策はありますが、やはりセキュリティを最優先に考えるなら、十分な長さと複雑性を持ったパスワードを設定するのが理想的です。ここでは、パスワードの複雑性を高めるメリットを整理します。
脆弱性の低減
ブルートフォース攻撃や辞書攻撃は、推測可能なパスワードを手当たり次第に試す手法です。パスワードが短く単純であればあるほど、早期に突破されるリスクが高まります。しかし、文字数を増やし、大文字・小文字・数字・記号を組み合わせるなど複雑性を上げると、攻撃者が突破に要する時間が飛躍的に増加します。結果的に、攻撃者をあきらめさせる可能性が高くなり、データベースの安全性を大幅に向上させることができます。
監査面での利点
企業や組織によっては、セキュリティ基準や監査要件で「パスワードは何文字以上であるべき」「何日で変更すべき」などが明文化されている場合があります。これを守らないと、監査の際に問題視されてしまう可能性が高いです。
強固なパスワードポリシーを運用していると、こうした監査要件を自然に満たすことができ、セキュリティ対策の整備状況を対外的にもアピールできる利点があります。
まとめと推奨事項
- SQL Server 2022と2019において、パスワードの最小文字数が公式に大きく変更された情報はない
- 短いパスワードがエラーとなるのは、多くの場合Windowsセキュリティポリシーやセキュリティ更新プログラムによる設定強化が原因
- 回避策として、Windowsのパスワードポリシーを変更するか、SQL Serverで
CHECK_POLICY
をオフにする方法がある - セキュリティを考慮するなら、パスワードは十分な長さと複雑性を保つのがおすすめ
総じて、短いパスワードをどうしても利用しなければならないケースは稀だと思われますが、やむを得ない事情がある場合を除き、運用ポリシーを見直しつつセキュリティを高める方向で検討することを強く推奨します。もし設定の変更だけでは問題が解決しない場合は、Microsoft Q&Aフォーラムや専門サポートなどで詳細な環境情報を提示のうえ相談するとよいでしょう。
セキュリティと利便性のバランスは難しいところですが、データベースにとって「安全をいかに確保するか」は最優先のテーマです。パスワードの長さや複雑性は、その第一歩となる重要な要素ですので、今一度運用方針を見直してみてはいかがでしょうか。
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