ビデオ会議が当たり前になった今、Microsoft Teamsでのオンラインミーティングが社内外問わず利用されるようになりました。しかし、録画したミーティングをそのまま共有すると、不要な会話や無駄な箇所まで含まれてしまうことがあるものです。特定部分のみを抜き出してわかりやすく共有したい場合には、動画編集が必要になります。この記事では、Teamsに備わる機能だけでは賄えない編集ニーズを満たすための実用的な手順と、カットに適したツールの選び方を詳しく紹介していきます。
Teams録画をカットするメリットとは
オンライン会議の録画を一部カットすることには、いくつかの大きなメリットがあります。たとえば、長いミーティング動画を要点のみ抜粋して共有することで、視聴者は効率よく情報を得られます。また、公開する範囲に応じて機密情報を除外するなど、セキュリティ上の配慮も行いやすくなります。
不要部分を削除するメリット
不要部分が含まれていると、視聴者が知りたい箇所を探すのに時間がかかります。たとえば会議前後の雑談や技術的なトラブルの時間などをあらかじめ取り除いておくことで、動画の内容を簡潔にまとめられます。長い動画を視聴するのは手間がかかるため、短くすることで内容を伝えやすくし、相手の負担を軽減できます。
情報漏えいリスクの低減
録画には機密情報や個人情報が含まれている場合があります。共有前にそうしたデリケートな会話や情報が出ている部分をカットしておけば、うっかり公開してしまうリスクを抑えられます。社内外でやり取りする場合に、非常に重要な対策になります。
Teamsに標準搭載されている編集機能の実態
Microsoft Teams自体には、録画したミーティングを直接編集して不要部分だけを取り除く機能はありません。録画データは主にMicrosoft Streamに保管されることが多いですが、Teamsの画面から直接カット・トリミングなどを行うことはできません。そのため、一度別のツールに取り込み作業をする必要があります。
Microsoft Streamでできる編集
Teamsで録画したファイルは、自動的にMicrosoft Streamに保存される仕組みが用意されている場合があります。Microsoft Streamには簡易的な編集機能があり、録画の始まりや終わりを切り詰める「トリミング」が可能です。ただし、以下のような制限があり、本格的な編集には向いていません。
- 動画全体の先頭と末尾を短くする程度の簡易トリミング
- 動画の途中をピンポイントでカットする機能はなし
- タイムライン上で複数箇所を切り取ってつなげるといった操作は難しい
本格的なカットに適した編集ツールの選択
本当に必要な部分だけを動画にまとめたい場合、専用の動画編集ツールを使うのが一番効率的です。Microsoft Streamの簡易トリミングを補完する形で、複雑なカットや音声調整、テキスト挿入なども可能になります。ここでは、無料かつブラウザベースで使用できる「Clipchamp」を中心に紹介します。
Clipchampとは
ClipchampはMicrosoft傘下となったオンライン動画編集サービスです。ブラウザ上で動作するため、パソコンへのインストールを最小限に抑えながらも、直感的に動画の編集が可能です。たとえば、以下のような編集をサポートしています。
- タイムライン上での不要部分のカット・削除
- テキストオーバーレイやBGM、ナレーションの追加
- 動画の明るさや彩度の調整などの基本的なエフェクト適用
- トランジション効果の挿入
Clipchampのメリット
- 操作がシンプル
Webブラウザ上でドラッグ&ドロップ中心の操作が可能。動画編集に慣れていなくても直感的に操作できる点が魅力です。 - 無料プランが使える
無料版でも基本的な機能は利用可能で、短い動画の編集であれば十分に対応できます。 - Microsoftアカウントとの統合
Microsoftアカウントでログインできるため、TeamsやOneDriveとの連携がしやすく、ファイルの読み込みや保存がスムーズに行えます。
Clipchampのデメリット
- インターネット接続が必要
基本的にはオンラインサービスのため、安定したインターネット環境がないと編集作業が滞る可能性があります。ただし、Windows版のClipchampアプリを利用することで、一部オフライン編集のサポートが進んでいます。 - 高度な編集にはやや物足りない場合も
たとえば、細かな色補正や特殊効果の追加が必要なレベルの映像制作には、Adobe Premiere ProやDaVinci Resolveなどのプロ向けツールのほうが向いています。
実際のカット手順と共有の流れ
ここでは、Teams録画ファイルをダウンロードして、Clipchampを使ってカットし、最終的に共有するまでの流れを具体的に見ていきましょう。
Step1: Teamsから録画ファイルを取得
- Teamsのチャットやチャンネルで、録画が完了したミーティングの動画リンクを探します。
- Microsoft Streamにアップロードされている場合は、「・・・」メニューなどからダウンロードオプションを選択してPCにファイルを保存します。
- ファイルの保存先を確認し、わかりやすいフォルダに保管しておきましょう。
Step2: Clipchampに動画を取り込む
- ウェブブラウザでClipchampにアクセスし、Microsoftアカウントでログインします。
- 「メディアのインポート」あるいはドラッグ&ドロップなどの方法を使い、ダウンロードしたTeams録画ファイルをClipchampに読み込みます。
- 読み込んだ動画がメディアライブラリに表示されるので、タイムラインにドラッグして配置します。
Step3: 不要部分をカット or トリミング
- タイムライン上で再生ヘッドを移動させながら、不要部分の始まりと終わりを見つけます。
- 範囲を決めて「分割」または「切り取り」などの機能を使い、不要部分を削除します。
- 必要に応じてテキストを挿入したり、背景音楽を追加したり、音量を調整するといった作業を行います。
- 動画の冒頭や最後のいらない部分だけを切り落とす場合は、トリミング機能を使って時間軸を短縮できます。
Step4: 編集後の動画をエクスポート
- 編集が完了したら、「エクスポート」ボタンをクリックし、画質やファイル形式を選択してダウンロードします。
- 画質は一般的にはHD(720p)またはフルHD(1080p)を選ぶのがおすすめです。高画質すぎるとファイルサイズが大きくなり、アップロード・ダウンロードに時間がかかる場合があります。
- ダウンロード完了後は、社内サーバーやSharePoint、OneDriveなどに保存して関係者に共有しましょう。
Step5: 共有時の注意点
- 共有リンクのアクセス権限を十分に確認し、社内や外部共有の範囲を適切に設定します。
- 外部共有の場合、共有期限を設定できると安全性を高められます。
- ミーティング参加者以外の方と共有する際に、個人情報や機密情報を含む部分を確実にカットしたことを再度チェックしましょう。
Clipchamp以外の選択肢
Clipchamp以外にも、さまざまな無料・有料の動画編集ツールがあります。編集ニーズや使い慣れた環境に合わせて選ぶことで、作業効率が大きく変わります。
無料ツールの代表例
- Windowsフォト(旧ムービーメーカーの代替機能)
Windows 10/11に標準で含まれる「フォト」アプリには簡単な動画編集機能が備わっています。カットやBGM追加など基本的な機能を利用できますが、本格的なタイムライン編集にはやや制限があります。 - iMovie(Mac/iOS向け)
Apple製品では標準の動画編集ツールとしてiMovieが利用可能。直感的なUIと無料で使える点が特徴ですが、Windowsユーザーには対応していません。
有料ツールの代表例
- Adobe Premiere Pro
動画編集ソフトの定番。プロレベルのエフェクトや複数トラック編集、高度なカラーグレーディングも可能。サブスクリプション制のため、初心者や短期利用の場合はコスト面でハードルがあるかもしれません。 - DaVinci Resolve
無料版と有料版が存在し、無料版でもかなり多機能な編集が可能。カラー補正に強みがある一方、操作画面がプロ向けのため、慣れるまで時間を要するケースがあります。
Teams録画の編集に役立つ表
以下の表は、Teams録画をカット編集する際に使用する主なツールと特徴をまとめたものです。目的や使い方によって最適なツールを選んでみてください。
ツール名 | コスト | 特徴 | 対象ユーザー |
---|---|---|---|
Microsoft Stream | Microsoft 365 | Teamsとの連携が強く、簡易トリミングのみ可能。複雑な編集は苦手 | 短い部分カットのみで十分な人 |
Clipchamp | 無料プラン有 | ブラウザベース。分割、結合、テキスト追加など柔軟な編集に対応。Microsoftアカウント連携も便利 | とにかく簡単に動画編集をしたい人 |
Windowsフォト | 無料 | Windows標準のフォトアプリでカットやBGM追加が可能。ただし複数トラック編集などは難しい | Windows環境で軽微な編集をしたい人 |
iMovie | 無料 | MacやiPhone、iPadで標準インストール。簡単操作だがWindows環境では使用不可 | Apple製品を使うユーザー |
Adobe Premiere Pro | 有料 | プロ仕様。高度なカラーグレーディングやトラッキング、合成など幅広い機能をカバー | 本格的に映像を制作するクリエイター向け |
DaVinci Resolve | 無料/有料版有 | 無料版でも多機能。特にカラー補正に強み。ただしUIがややプロ向け | プロフェッショナル志向の中上級者 |
編集後の動画の共有方法と注意点
動画を編集した後は、実際に周囲に共有する段階でいくつかの注意点があります。どのような方法で共有するかによって、閲覧権限や操作性、容量の問題などが変わってきます。
OneDriveやSharePointでの共有
- アクセス権限の設定
社内のSharePointやOneDriveにアップロードする場合、リンクを取得して共有する前に、アクセス権限を「閲覧のみ」にするか「編集権限も付与するか」を設定します。 - 外部ユーザーへの公開
外部ユーザーに動画を見せたい場合、外部共有が許可されているテナント設定になっている必要があります。動画単体の共有リンクを発行して、期限付きで公開すると安全性が高まります。
ストレージサービスや動画配信プラットフォーム
- YouTube(限定公開)
極めて広い互換性があるため、ファイル形式を気にせずアップロードできますが、企業や組織での非公開として利用する際は「限定公開」や「リンクを知っている人のみ閲覧可」の設定が必要です。 - Vimeo
有料プランでは高度なプライバシー設定が可能で、パスワード保護なども行いやすいサービスです。ビジネスでの利用にも向いています。
動画サイズとネットワーク
- ファイルサイズの圧縮
フルHDや4K画質を扱う場合、ファイルサイズが数百MBから数GBになることも珍しくありません。圧縮率が高いコーデック(H.264/H.265など)を選んで、無理のないサイズに抑えましょう。 - ネットワーク環境の確認
大容量の動画をアップロードまたはダウンロードする際、ネットワーク速度によっては作業が大幅に遅れる場合があります。特に外出先や自宅のWi-Fi環境に注意してください。
セキュリティとコンプライアンスを考慮する
ミーティング内容に機密情報が含まれている場合、動画を保管・共有する際には、セキュリティやコンプライアンス面もチェックする必要があります。特に以下の点は注意が必要です。
社内規定の確認
企業によっては、録画データの取り扱いに関して情報セキュリティ規程が存在する場合があります。たとえば外部のクラウドサービスを利用せず、社内専用のストレージにのみアップロードが許可されているケースもあります。必ず自社の規定を確認しましょう。
機密情報のマスキング
画面共有をしていた場合、映り込んでいる内容に個人情報や未公開のプロジェクト情報などが含まれていないかを確認します。不要な部分だけでなく、画面上の情報を一部モザイクやぼかし処理を入れることが必要な場合は、より高度な動画編集ツールを検討します。
Microsoft Teams録画カットのまとめ
Microsoft Teamsには直接的な動画編集機能がなく、どうしても別ツールを使う必要があります。ただ、Microsoft Streamを利用すれば冒頭や末尾の簡単なトリミングは可能です。また、Clipchampといったオンラインツールを使えば、動画の途中をカットするなど柔軟な編集が手軽に行えます。最終的に、エクスポートした動画をOneDriveやSharePointにアップロードすることで、スムーズに安全な共有が可能です。機密情報を含む場合は、必ず社内のルールやセキュリティ対策を確認してから共有範囲を限定しましょう。
より便利に使うための追加アドバイス
カット編集だけでなく、ちょっとした字幕の挿入やハイライト表示を加えることで、単なるミーティング録画がより伝わりやすい教材やプレゼン資料として活用できます。重要ポイントに字幕を入れることで、動画を見返す際に視聴者がすぐに目的の情報を理解できるようになります。以下のアドバイスを参考にしてみてください。
字幕やテロップを活用する
- 重要な議題や結論部分に強調表示を入れる
- 話者の名前や役職を表示することで、誰が発言しているかをわかりやすくする
- 視聴者に一番届けたいキーワードを大きく表示する
カット時に話の繋がりを整理する
会議の途中部分をカットすると、前後の文脈が伝わりづらくなる場合があります。編集した部分の冒頭や末尾にナレーションやテロップを挿入し、「この先は◯◯の議題です」「先ほどのやりとりで合意した点は省略しています」など、簡単な補足説明を入れておくと、動画だけで状況を把握しやすくなります。
プロジェクトの進捗管理に動画を活用する
カット編集した短い動画を社内Wikiやプロジェクト管理ツールに添付することにより、共有資料として再利用しやすくなります。重要会議のサマリーを動画として残しておけば、後から新しく参加するメンバーが一通りの背景を把握するのにも役立ちます。
まとめと次のアクション
- Teams自体には動画カット機能がないので、外部ツールの活用は必須。
- Microsoft Streamで冒頭や末尾のトリミングは簡単にできるが、細かいカットや結合には限界がある。
- Clipchampなどの無料編集ツールを使えば、不要部分の削除だけでなく、字幕やBGMなどの演出も可能。
- 共有時のセキュリティや権限管理を忘れずに行い、不要な人に見られないように注意する。
以上のポイントを踏まえて、実際に動画を編集し、共有フローを試してみましょう。録画のメリットを最大限に活かしつつ、視聴者にとって分かりやすい形で提供することが大切です。
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