GPOで配布したプリンターが削除できない!Windows ServerとAD環境での対処法

Windows環境で一括管理できるグループポリシー(GPO)は、大規模なネットワークに欠かせない機能です。しかし、設定ミスによって不要なプリンターがクライアントに配布され、削除できない状況に陥るケースも少なくありません。そんなとき役立つ対処法をまとめました。

GPOで配布したプリンターが削除されない原因と背景

グループポリシーを利用してプリンターを配布すると、ドメイン環境下のクライアントPCへ一斉にプリンター接続を設定できます。これは非常に便利ですが、一度配布したプリンター設定を解除しようとしてもうまく削除されない事例が存在します。よくある背景としては、誤ったOUにリンクしたGPOを削除したはずなのにクライアント側でプリンターが残り続けたり、GPO自体のリンクを解除した後もプリンターが削除されないなどが挙げられます。

配布範囲の誤設定とGPOのリンク解除

GPOにプリンターのデプロイ設定を入れたものの、誤ってドメインの最上位などにリンクをしてしまうと全PCにプリンターが配られる可能性があります。その後リンクを解除したとしても、クライアントPC側ではポリシーが正しく再適用されないままプリンター設定が残ってしまうことがあります。

複数のGPOが同じプリンターを配布している

不要なプリンターが削除されない場合、実は別のGPOでも同じプリンターが配布設定されているケースがあります。片方を削除しただけでは、もう一方のGPOが依然としてプリンターを配布し続けるため、クライアントはプリンター設定を保持したままです。

クライアント側の反映タイミングのずれ

グループポリシーの適用は一定の間隔で行われます。サーバー側でGPOを変更しても、クライアント側がポリシー更新を受け取るまでに時間がかかり、その間プリンターが削除されない状況になることがあります。

プリンター削除を成功させるための主な対策

不要なプリンターを削除したいときに考慮すべきポイントを整理しておきましょう。ここでは代表的な対策やチェック項目を取り上げます。

1. ポリシーを強制再適用(gpupdate /force)

GPOでの変更がクライアントに反映されるタイミングを待つだけでは遅い場合、以下のコマンドで強制的にポリシーを更新します。管理者権限のコマンドプロンプト、もしくはPowerShellで実行してください。

gpupdate /force

実行後は数分待ってから、クライアント側のデバイスとプリンターの一覧を再度確認します。正常にポリシーが再適用されれば、不要なプリンターが自動的に削除されていることがあります。

2. 別のGPOが同じプリンターを配布していないか確認

GPMC(グループポリシー管理コンソール)を使い、該当のプリンターを配布している可能性のあるGPOを一通りチェックします。複数のGPOが同じプリンターを扱っている場合、片方だけ削除してもクライアント側の設定は残りがちです。重複があれば同時に削除、あるいは配布先を正しく設定し直すなどの調整が必要です。

3. 手動削除の実行

どうしても自動削除されない場合、ユーザー自身がプリンターを削除できる場合があります。具体的には、以下の操作を行います。

  • [コントロール パネル] → [デバイスとプリンター] に移動
  • 不要なプリンターを右クリックし、「デバイスを削除」を選択

ただし、グループポリシーで再度配布する設定が残っていると、手動で削除しても再起動や再ログオン時に復活する場合があります。そのため、GPO側の配布設定が完全に解除されていることが前提です。

4. レジストリを直接修正して削除

ポリシーによって配置されたプリンターは、レジストリに設定情報が残ることがあります。手動削除やポリシーの再適用をしてもうまくいかない場合、レジストリを直接編集してプリンター情報をクリアする方法があります。

以下は代表的なレジストリパスです。レジストリ編集前にバックアップを取り、作業は慎重に行ってください。

キーの場所内容
HKEY_USERS\<ユーザーSID>\SOFTWARE\Policies\Microsoft\Windows NT\Printers\PushedConnectionsGPOでプッシュされたプリンター情報が保存される可能性あり
HKEY_USERS\<ユーザーSID>\SOFTWARE\Policies\Microsoft\Windows NT\Printers\PushedPrinterConnectionStore同上、PushedConnectionsとは別形式で保存される場合も
HKEY_LOCAL_MACHINE\SOFTWARE\Microsoft\Windows NT\CurrentVersion\Print\Providers\Client Side Rendering Print Provider\Servers\<サーバー名>\Printersクライアント側で保持しているプリンター接続情報

レジストリキーを削除(もしくは該当プリンターのみのキーを削除)したら、Windowsの「Print Spooler(印刷スプーラー)」サービスを再起動します。再起動はサービス管理画面(services.msc)やPowerShellで行いましょう。

5. Print Server役割を活用してサーバー側から削除

ドメインコントローラーや専用のファイルサーバーに「プリントサーバー」役割(Windows Serverの役割サービス)を導入して管理している場合、プリントサーバーマネージャーから直接プリンターを削除できることがあります。ただし、ドメインコントローラーにプリントサーバー機能を載せるのは、環境によってセキュリティ面の考慮が必要です。既存のネットワーク構成と照らし合わせながら運用するのが望ましいでしょう。

具体的なトラブルシューティングの手順

ここでは、不要なプリンターが残ってしまったときに順番に試すべき手順を例示します。

ステップ1:GPOの状況を徹底チェックする

  1. GPMCで全GPOを確認
    プリンター設定が含まれているGPOがないか再度洗い出します。意図しないOUにリンクされているGPOや、上位階層にあるGPOを見落としていないか注意しましょう。
  2. GPResultやGPReportの確認
    クライアントPC上で「gpresult /h report.html」などを用いて、適用されているGPOを確認します。そこで依然としてプリンターが配布設定されていないかを確かめます。

ステップ2:ポリシーを強制適用し、イベントログを確認

  1. gpupdate /forceの実行
    先述のコマンドを管理者権限で実行し、設定が強制的に適用されるのを待ちます。
  2. イベントビューアでエラー確認
    Windows ログ → システム や アプリケーション のイベントにエラーログがないか確認しましょう。プリンター関連の警告やエラーが発生している場合は、トラブルシューティングの手がかりになります。

ステップ3:手動削除の可否をテスト

  1. デバイスとプリンターからの削除
    通常の手順で削除できるかをまず試みます。複数のクライアントPCで挙動が同じか確認するのも重要です。
  2. 再起動後の復活確認
    削除した直後は消えていても、再起動やログオンし直したタイミングでプリンターが戻ってくる場合は、まだどこかのGPOで配布が続いています。

ステップ4:レジストリ編集での最終手段

  1. レジストリのバックアップ取得
    regeditを起動し、対象キーのエクスポートを行っておきます。
  2. 必要なキーの削除
    上記表を参考に、不要なプリンターのキーをピンポイントで削除します。
  3. Print Spoolerサービスの再起動
    変更を反映させるためにサービスの再起動を行います。

ステップ5:Print Serverマネージャーからの直接削除

  1. プリントサーバーの役割追加
    まだ導入していない場合は、「サーバーマネージャー」→「役割と機能の追加」から「プリントとドキュメント サービス」→「プリント サーバー」をインストールします。
  2. プリントサーバーの管理コンソールを開く
    [ツール] → [プリント管理] から「プリンター」を展開し、不要なプリンターを右クリックで削除します。
  3. 他PCへの影響確認
    削除後、クライアントPCで確認し、印刷キューが残っていないかや、新たに配布されることがないかを確かめます。

応用・トラブル対策

GPOとプリンターの組み合わせで想定されるトラブルは多岐にわたります。以下にいくつか応用的な対策・確認事項を挙げます。

GPOのフィルタリング設定を利用する

特定のユーザーやグループ、コンピューターのみを対象にプリンターを配布する場合、GPOのセキュリティフィルターを調整します。誤って全員に適用されていないか定期的に見直すと、不要なトラブルを防げます。

WMIフィルターの活用

より複雑な条件(OSバージョンやハードウェア特性など)でプリンターを配布・削除したい場合、WMIフィルターを使うと柔軟性が高まります。ただし設定が複雑になりがちなので、ドキュメントにしっかりと手順を書き残すことが大切です。

ログオンスクリプトやスタートアップスクリプトとの併用

GPO側でプリンターを配布しつつ、ログオンスクリプトでプリンターを制御する運用もあります。例えば、一定条件で自動削除したいケースなどでは、スクリプトを組むことで柔軟に対応できます。ただし、GPOのネイティブ機能との重複管理になるリスクもあるため注意が必要です。

まとめ

グループポリシーで配布したプリンターが削除されない場合は、単にGPOを削除したりリンクを外しただけでは不十分なケースがあります。ポリシーの反映タイミングの問題や、別のGPOで同一プリンターが配布されている状況など、複数の要因が絡み合っていることも珍しくありません。
したがって、以下のポイントを押さえて作業を進めるのが基本的な流れです。

  • GPMCやgpresultで適用状況を徹底的に確認
  • 不要になったGPOのリンク解除とプリンター設定の削除を確実に実施
  • クライアント側でgpupdate /forceを行い、ポリシーを再適用
  • 手動での削除と再起動後の挙動をテスト
  • 必要に応じてレジストリ編集やプリントサーバー役割で直接削除

これらを段階的にチェックすれば、不要なプリンターを確実に削除できます。万が一、削除後もプリンターが復活するようなら、再度GPOを洗い直し、別の設定が衝突していないか調べましょう。企業や組織で大規模に運用している場合、管理者が複数人いるケースも多いので、ドキュメント化と役割分担の明確化もあわせて行うと、長期的に安定したプリンター管理が可能になります。

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