GPT-4.1とGPT-4.1 mini徹底比較でわかる最新LLMの選び方

2025年4月にOpenAIからAPI向けに公開された最新モデル「GPT-4.1」と、その小型版「GPT-4.1 mini」。高性能かつ多機能なGPT-4.1と、軽量ながら優れた知能を持つGPT-4.1 miniは、どちらも魅力的な選択肢です。本記事では、それぞれの特徴を多角的に徹底比較します。

GPT-4.1とGPT-4.1 miniの徹底比較

最新のGPT-4.1ファミリーは、OpenAIが2025年4月にAPI向けモデルとして公開したシリーズで、大きく「GPT-4.1(フルモデル)」と「GPT-4.1 mini(小型モデル)」に分かれます。以下の比較表では、それぞれを10の観点から整理し、両者の特徴を分かりやすくまとめました。

比較観点GPT-4.1 (フルモデル)GPT-4.1 mini (小型モデル)
1. モデル性能OpenAIの現行最高性能モデル。多くの評価指標でGPT-4.0 (GPT-4o)を上回り、複雑なタスクで強力 (OpenAI’s New GPT 4.1 Models Excel at Coding | WIRED)。論理的推論・創造性もトップクラスで、GPT-4.5に匹敵する性能を示す面もある (GPT-4.1 開発エージェントの利用を意識したモデル)。小型ながら高い知能性能を実現。多くのベンチマークでGPT-4oを凌駕し、知能評価ではGPT-4oに匹敵または上回る (Introducing GPT-4.1 in the API | OpenAI)。ただし多言語や高度な推論ではフルモデルに一歩譲る場面もあり。
2. レスポンス速度以前のGPT-4oより約40%高速化 (OpenAI’s New GPT 4.1 Models Excel at Coding | WIRED)。ただしモデル規模が大きいためminiよりやや遅め。超長文入力時は初動に十数秒かかるケースも。高速応答を実現するよう最適化。GPT-4o比でレイテンシを半減 (Introducing GPT-4.1 in the API | OpenAI)し、フルモデルよりさらに軽量で応答が速い。超長文(128K~)でも初期応答を短時間で返しやすい。
3. コスト (API利用料)高コスト:入力1Mトークンあたり約\$2.00、出力1Mトークンあたり約\$8.00。ChatGPT Plus(月額約20ドル)で利用可能なGPT-4相当 (Introducing GPT-4.1 in the API | OpenAI)。低コスト:入力1Mトークンあたり約\$0.40、出力1Mトークンあたり約\$1.60とフルモデルの1/5 (Introducing GPT-4.1 in the API | OpenAI)。大量リクエスト処理でも費用を抑えられる。
4. 使用用途高度なタスク向け:コーディング支援、複雑な指示への応答、長文コンテキスト理解などに最適。創造的な文章生成や高度な推論が求められるシナリオで威力を発揮 (GPT-4.1 開発エージェントの利用を意識したモデル)。シンプルなタスクや高速処理重視の用途に適する。日常的なQ&A、大量データ分類、比較的単純な生成タスクなどでコスパの高い選択肢 (GPT-4.1 開発エージェントの利用を意識したモデル)。頻度の高いAPI呼び出しが必要な場合に有利。
5. APIの制限・仕様API限定提供(ChatGPT UIでは直接利用不可)。最大トークン長1Mに対応。モデルが大きい分、同時リクエスト数や応答速度でminiより制約がある可能性も。Function callingや画像入力などAPIの主要機能にフル対応。API限定提供。コンテキスト1Mトークン対応は同じ。軽量なため高スループットが期待でき、リアルタイム処理が重要なアプリにも向く。機能面はGPT-4.1と同等でマルチモーダル(画像入力)やフォーマット指定にも対応。
6. コンテキスト長最大100万トークンまで対応し、旧GPT-4o(128K)から大幅拡大 (GPT-4.1 is here, but not for everyone. Here’s who can try the new models | ZDNET)。長い会話や巨大ドキュメントの一括解析が可能。同じく100万トークン対応。長文脈内での関連情報の検索・保持能力もフルモデル同等レベルに向上。大規模コードベース解析などの実用シーンでも問題なく活用できるとされる。
7. モデルサイズ・技術大規模モデル(パラメータ数非公開)。GPT-4.5に匹敵する性能から莫大なパラメータ数が推定される。マルチモーダル対応や関数呼び出しなど最新機能を統合し、知識カットオフは2024年6月 (OpenAI: GPT-4.1 シリーズ – Qiita)。小~中規模モデル(非公開だが数十億パラメータ級と推定 (OpenAI unveils GPT-4o mini, a smaller and cheaper AI model | TechCrunch))。軽量Transformerを高度に訓練したモデルで、高い知的応答が可能。GPT-4o mini (~8B規模)の後継。
8. 学習・更新能力静的学習済みモデル。RLHFで指示追従精度を高めているが、ユーザによるファインチューニングは未対応。知識は2024年6月までで固定されており、定期的なモデル再学習のスケジュールは未公表。同様にRLHFで調整済み。サイズが小さい分、将来的にファインチューニングサポートされる可能性はあるが現時点では未発表。知識カットオフもGPT-4.1と同じく2024年6月。
9. 消費リソース高メモリ・高負荷:推論に大量のGPUメモリと計算資源を要する。応答速度向上の最適化はなされているが、1Mトークンフル利用時などは初手の応答に数十秒を要することも (Introducing GPT-4.1 in the API | OpenAI)。軽量・省資源:パラメータ数が小さいため計算量・メモリ消費が少なく、同一ハードウェアでのスループットが高い (Introducing GPT-4.1 in the API | OpenAI)。大量並列リクエスト時にも有利。
10. その他の利点・欠点利点: 多言語対応が強力(MMLU90.2%、多言語MMLU87.3%)。創造性・文章の一貫性もGPT-4.5譲りの高品質を誇る。
欠点: 応答速度やコスト面がネック。一般ユーザはChatGPT UIで直接選択できない。
利点: 低コスト・高速でありながら、多言語対応や画像理解など総合性能が高い。比較的短い会話・多頻度呼び出し場面に最適。
欠点: 非常に高度な推論や専門的な多言語処理でフルモデルに劣るケースがある。応答が簡潔になりがちな傾向も。

1. モデル性能のポイント

GPT-4.1は「最高峰の推論力」

GPT-4.1は、GPT-4.0(GPT-4o)から大幅な性能向上が図られたフラッグシップモデルです。複雑な指示への対応や論理的推論、創造性など多面的に評価されており、SWE-Benchなどのコード生成系ベンチマークでもGPT-4oを大きく上回る結果を示しています。またGPT-4.5に匹敵する性能を一部で示唆する報告もあり、複雑な問題解決にも対応できる“万能型”ともいえるモデルです。

GPT-4.1 miniは「小型でも侮れない」

GPT-4.1 miniは、小規模モデルながらベンチマーク評価でGPT-4oを上回る例があるなど、高い知能を発揮します。学術的知識テストでも好成績を収めており、小型モデルとは思えないほどの処理能力を持っています。ただし高度な多言語推論など、最先端レベルではフルモデルに及ばない場合もあり、そこは用途次第での選択となります。

2. レスポンス速度

フルモデルのGPT-4.1:最適化で高速化

GPT-4.1はサイズが大きいながらも、前世代GPT-4oより約40%もの高速化が実現されています。複雑な内容でも安定した出力品質を保ちつつ速度面を改善しているため、従来よりもストレスの少ない体験が得られます。ただし超長文を扱うと、初動の出力に数秒以上の待ち時間が出ることもあります。

小型GPT-4.1 mini:高速応答でストレスフリー

GPT-4.1 miniは、その軽量さを活かしてとにかく応答が速いのが特徴です。128Kトークン以上の大きな入力でも初期応答がすぐ返りやすく、リアルタイム性が重要なチャットBotや大量並列リクエストを捌くサービスに適しています。

3. コスト

GPT-4.1は「高性能だがコストが高め」

GPT-4.1のAPI利用料は入力1Mトークンあたり約\$2.00、出力1Mトークンあたり約\$8.00。大幅な値下げが進んだとはいえ、長文の入出力が多いとコストは増えやすいです。ChatGPT Plus会員であれば、UI上は従来のGPT-4に相当するモデルを定額で利用可能ですが、4.1の最新版はAPI専用です。

GPT-4.1 miniは「1/5の圧倒的低コスト」

GPT-4.1 miniは入力\$0.40/1Mトークン、出力\$1.60/1Mトークンで、フルモデルの1/5程度。大量アクセスが想定されるサービスでは圧倒的なコストメリットを得られます。処理の単価を抑えながら、必要十分な精度を得たいケースでは非常に魅力的です。

4. 使用用途

GPT-4.1:「高度かつ複雑なタスクに」

コード生成・大規模ドキュメント理解・長い会話ログを踏まえた推論など、難易度の高いシナリオで力を発揮するのがGPT-4.1です。プロの開発者が行うコーディング支援や複雑な指示を要するシステムなどには理想的といえます。

GPT-4.1 mini:「高速かつシンプルタスク重視」

一方でGPT-4.1 miniは、日常的なFAQ応答、SNS投稿分析、バッチ処理の自動生成など、よりシンプルなタスクを大量・高速にこなすのに適しています。高頻度でAPIを叩く場面や、応答時間を最小化したいリアルタイムシステムで真価を発揮します。

5. APIの制限・仕様

GPT-4.1シリーズはいずれもChatGPTのUIでは直接選べず、API限定のモデルです。テキスト入力だけでなくマルチモーダルで画像解析にも対応し、関数呼び出し(Function calling)などの高度な活用も可能になっています。コンテキスト最大1Mトークンという非常に大きなウィンドウを扱える点は両モデルとも同じですが、大規模入力時のスループットではminiのほうが優位とされています。

6. コンテキスト長

GPT-4oまでは128Kトークン前後でしたが、GPT-4.1およびGPT-4.1 miniでは最大100万トークンという超大容量コンテキストまで扱えます。これにより、膨大なドキュメントや長い会話履歴を一度にモデルへ投入して解析することが可能になりました。フルモデル・ミニモデルともに同じ制限なので、極端な長文を必要とするかどうかでモデル選びが分かれるわけではありません。

7. モデルサイズ・技術

GPT-4.1:「超大規模の新世代モデル」

GPT-4.1は、GPT-4.5にも匹敵するとされる最上位モデルです。訓練コストやモデルパラメータ数は非公開ですが、大規模Mixture-of-Expertsなどの先進技術を取り入れている可能性があるといわれています。2024年6月までの知識をカバーし、研究・実務の両面で汎用性が高いです。

GPT-4.1 mini:「数十億パラメータ級の軽量モデル」

GPT-4.1 miniは、GPT-4o mini (~8Bパラメータ)の後継と推定され、数十億規模のパラメータで高い知能を発揮する軽量Transformerです。より効果的なデータや訓練手法を駆使して性能を引き上げており、同クラスの小型LLMの中でもトップレベルの応答品質を保ちます。

8. 学習・更新能力

両モデルともRLHF(人間フィードバックによる強化学習)で指示追従性を高めていますが、ユーザーが独自にファインチューニングする機能は現時点で提供されていません。今後、小型モデルであるGPT-4.1 miniに対してパートナー企業向けに限定的な学習オプションが提供される可能性はあるものの、公式には何も発表されていません。知識カットオフはGPT-4.1、GPT-4.1 miniともに2024年6月時点までです。

9. 消費リソース

フルモデル:高リソース消費

GPT-4.1は巨大なモデルであるぶん、メモリ使用量や計算負荷が大きく、推論処理にかかるサーバーコストも高いです。OpenAI側のクラウドインフラ上で稼働するためユーザーが直接サーバーを管理するわけではありませんが、大量利用の際にはAPI料金にも反映されます。

小型モデル:省資源で運用しやすい

GPT-4.1 miniはパラメータ数が少ない分、同じ環境でより多くのリクエストを平行処理しやすい利点があります。スピードを求める大規模サービスや、負荷の高い処理を頻繁に行う環境でも比較的スムーズに運用可能です。将来的にローカル環境への展開が視野に入るとすれば、miniのほうがハードルが低くなるでしょう。

10. その他の利点・欠点

多言語対応力と安定性

GPT-4.1シリーズ全体で多言語対応が非常に優れており、MMLUや多言語MMLUで高得点を記録しています。日本語含む様々な言語で複雑な文章を読み解き、的確に回答を行う能力がさらに強化されています。また指示に忠実で安定性が高いため、フォーマット指定や長文脈の中でも比較的一貫性のある回答が得られやすい点が特徴です。

懸念点や今後の展望

最大の懸念は、GPT-4.1(フル)の応答速度やコストが依然として高いこと。さらに指示追従精度が上がる一方で、柔軟なクリエイティブ対応が抑制される傾向を指摘する声もあります。一方、GPT-4.1 miniでは高難度の専門タスクを処理する際にフルモデルとの差が出る場合があるため、重要度の高いユースケースでは慎重に選定が必要です。とはいえ全体的には非常に完成度が高く、より進んだファインチューニングや日本語能力向上のアップデートなど、今後の追加機能にも期待が寄せられます。

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