Azure Stack HCI 23H2 を活用するうえで、拡張機能のトラブルはスムーズな運用を大きく左右するポイントです。中でもLCMコントローラー拡張機能のインストール失敗は多くの利用者から報告されており、効率的な対処が求められています。
Azure Stack HCI 23H2におけるLCMコントローラー拡張機能のインストール失敗の概要
Azure Stack HCI 23H2では、クラスター構成をより柔軟に管理するためにさまざまな拡張機能が提供されています。LCM(ライフサイクル管理: Lifecycle Management)コントローラー拡張機能は、その名の通りシステムやクラスター内リソースのライフサイクルを効率的に管理することを目的としています。しかし、一部の利用環境において、この拡張機能のアンインストールや再インストールが正常に行えず、エラーが発生する事例が報告されています。
問題の背景と原因
LCMコントローラー拡張機能のインストールが失敗する大きな要因としては、Azure Stack HCI 23H2に特有のアップデート手順やコンポーネント間の依存関係が挙げられます。クラスター内の各ノードで異なる状態が生じている場合や、拡張機能のバージョン管理に不整合があると、インストール手順の途中でトラブルが発生しやすくなります。
Azure Stack HCI 23H2のリリース状況
Azure Stack HCI 23H2は、機能面やパフォーマンス面で多くの改善が盛り込まれたバージョンですが、一方でリリース初期段階では不具合の報告も散見されます。今回のLCMコントローラー拡張機能のインストール失敗はそうした不具合の一つであり、今後の累積的なアップデートやパッチで順次修正される見込みです。
LCMコントローラー拡張機能の仕組み
LCMコントローラー拡張機能は、クラスターノードや仮想マシン、Azureリソースなどの状態をモニタリングし、アップデートや修正プログラムの適用、リソースの最適化などを担います。通常であれば、拡張機能をインストールすることでAzureポータルまたはPowerShell経由で集中管理が可能となりますが、今回の事例では拡張機能が正常にロードされず、その恩恵を受けられない状態に陥っているわけです。
失敗時に見られる症状
インストールが失敗する際には、以下のような具体的な症状が報告されています。
- Azureポータル上で拡張機能を適用しようとすると「インストールに失敗しました」と表示される
- PowerShellコマンドを実行しても「Extension not found」や「Load failed」といったエラーが表示される
- クラスターの一部のノードのみでインストールが成功し、残りのノードが失敗するといった不一致状態
アンインストール・再インストールができない
特に厄介なのは、一度アンインストールしてから再インストールを試みても、同じエラーが再現してしまう点です。本来、拡張機能が正常に削除されればクリーンな環境に戻り、再適用に支障が出ないはずですが、LCMコントローラー拡張機能ではシステムの一部コンポーネントが残留していることが原因とみられています。
ログのエラーコード
LCMコントローラー拡張機能が失敗するケースでは、Windows Event ViewerやAzureポータルのインストールログに以下のようなエラーコードやメッセージが記録される可能性があります。
エラーコード | 主な原因例 | 想定される対策 |
---|---|---|
0x80070643 | インストールパッケージの破損、またはセキュリティソフトウェアによる阻害 | セキュリティソフトの一時停止、インストーラーファイルの再取得 |
0x80070032 | 拡張機能とOSバージョンの互換性不一致 | 互換性のある拡張機能バージョンへの更新 |
0x80040005 | ポータルとの通信エラーまたは構成ファイルの不整合 | ネットワーク設定の見直し、クラウドシェルからの再試行 |
上記は一例ですが、ログの詳細を把握することで、より正確な原因究明と対処法の検討が可能になります。
既知の問題とMicrosoftの対応状況
既知の問題として公表されている内容
Azure Stack HCI 23H2の中でも特にビルド番号2311.2近辺を利用しているユーザーからは、LCMコントローラー拡張機能がインストールに失敗する問題が相次いで報告されています。Microsoftのコミュニティフォーラムなどでも似た症状の問い合わせが多く、すでに「既知の問題」であると認識されています。
Microsoft側の修正計画
Microsoftはこの問題に関して修正パッチを準備中であり、近々リリースされる見込みです。リリース時期に関しては正式なアナウンスを待つ必要がありますが、問題再現率が高い場合は早急に適用することでインストール失敗のリスクを回避できる可能性が高いです。また、将来的にはWindows Update経由、あるいはAzureポータル側での自動アップデートに組み込まれる形で配信されることが予想されます。
ワークアラウンド(暫定対処)の手順
LCMコントローラー拡張機能のインストール失敗を回避するためには、以下のようなワークアラウンドが効果的であると報告されています。
Azureポータルからのアンインストール
まずは拡張機能が中途半端にインストールされている可能性があるため、該当ノード上でログインしているセッションを一度終了します。その上で、Azureポータルの拡張機能管理画面にアクセスし、LCMコントローラー拡張機能をアンインストールしてください。ノードのセッションが残っていると削除プロセスが正常に走らない場合があるため、事前にログアウトするのがポイントです。
クラウドシェルを用いたリモートインストール
アンインストール後、再び同じAzureポータル画面から拡張機能をインストールしようとしても、まれに失敗が継続することがあります。その場合は、クラウドシェルを利用してリモートから拡張機能を導入する手段が報告されています。クラウドシェルを用いると、ノード上で起きているセキュリティソフトの干渉やバージョン不整合をバイパスできるケースがあるため、有効です。
実行コマンド例
以下はAzure CLIのクラウドシェルでインストールを実行する場合の一例です。実際には環境に合わせたコマンドパラメーターの調整が必要となりますが、参考としてご覧ください。
# リソースグループ名とクラスター名を指定
RESOURCE_GROUP="YourResourceGroup"
CLUSTER_NAME="YourCluster"
# LCMコントローラー拡張機能をインストール
az stack-hci extension create \
--resource-group $RESOURCE_GROUP \
--cluster-name $CLUSTER_NAME \
--extension-name "LCMControllerExtension" \
--extension-type "Microsoft.AzureStackHCI.LCMController" \
--publisher "Microsoft.AzureStackHCI" \
--type-handler-version "1.0"
上記のように、クラウドシェルから直接指定することで、ポータル上でのインストール時に生じる環境依存のトラブルを回避できる可能性があります。
成功事例から見るポイント
このワークアラウンド手順を行ったユーザーからは、問題が解消し正常に拡張機能が動作したという報告があります。特に注目すべきポイントは以下の点です。
- Azureポータルからはアンインストールが完了しているように見えても、ローカルノードでのセッションをログアウトしないと残骸が残る場合がある
- クラウドシェルを介することで、ポータルとは異なるルートで拡張機能を追加できる
その他の対処例と注意点
4ノードクラスター構成での事例
一部のユーザーからは4ノードクラスターのうち2ノードでのみLCMコントローラー拡張機能のインストールが失敗するケースが報告されています。ノード間の構成やOSバージョンが完全に一致していない場合や、一部ノードだけ先行して拡張機能を導入したことが原因と考えられています。
このような場合には、まず全ノードで拡張機能をアンインストールし、クラスターステータスを整合性のある状態に戻した上で、あらためて同時期に拡張機能を適用することが望ましいです。
今後のアップデートへの期待
既知の不具合としてMicrosoftが認識しているため、近い将来リリースされる更新プログラムで修正が含まれる可能性が高いです。アップデートが公開された際は、必ずリリースノートを確認し、LCMコントローラー拡張機能に関する更新が含まれているかチェックしましょう。
トラブルシューティングの具体的な進め方
イベントビューワーの活用
Windows Event Viewer(イベントビューワー)は、失敗の根本原因を突き止めるうえで非常に重要な手掛かりを提供してくれます。LCMコントローラー拡張機能に関するエラーは、主にApplicationログまたはSystemログに記録されることが多いです。
Applicationログの確認方法
- Windowsキー + R を押して「eventvwr」と入力し、イベントビューアーを起動
- 左ペインから「Windows ログ」→「アプリケーション」を選択
- エラーや警告の項目を中心に、LCM関連のイベントIDやエラーメッセージを確認する
ここで得られるイベントIDやメッセージを手掛かりに、拡張機能のインストールプロセスでどの段階で不具合が起きているのかを特定できます。
Systemログの確認方法
- イベントビューアーで「Windows ログ」→「システム」を選択
- サービスの起動失敗や依存関係のエラーがないかを確認
- 特に拡張機能のインストール時にドライバやサービスの読み込みがエラーを起こしていないかチェック
システムログには、クラスターノードやOSレベルで発生している問題が記録されているため、拡張機能インストール失敗の根本原因がOSレイヤにある場合には有用な情報を得られます。
Azureポータル インストールログの確認
Azure Stack HCI環境では、Azureポータル上の拡張機能ページからインストールログを閲覧することが可能です。具体的には、拡張機能のインストールが失敗した際のスタックトレースや詳細なエラーコードなどが表示される場合があります。ここで得られる情報がイベントビューワーと合致すれば、より明確な解決策を導き出すことができます。
今後のサポートと問い合わせ先
Microsoft Q&Aフォーラムの活用
問題が再現性をもって続く場合、またはログから解決策が導き出せない場合は、Microsoft Q&Aフォーラムを活用するのも手段の一つです。フォーラムでは同じ現象を経験したエンジニアやユーザーコミュニティが回答してくれる可能性が高く、実際の運用環境に即したアドバイスを得られることがあります。
サポートへの連絡準備
Microsoftの正式サポート窓口に問い合わせる場合、以下の情報をまとめておくとスムーズです。
- クラスター構成(ノード数、OSバージョン、アップデート状況など)
- イベントビューアーのエラーログ(重要なイベントIDとメッセージ)
- Azureポータルでの拡張機能インストール失敗ログ
- 試したワークアラウンドの具体的手順と結果
これらを整理して伝えることで、サポートエンジニアからより的確な指示や追加調査のリクエストを受け取りやすくなります。
まとめ
Azure Stack HCI 23H2でLCMコントローラー拡張機能のインストールが失敗する問題は、既知の不具合としてMicrosoftが認識しており、修正パッチのリリースが見込まれています。暫定的な対処策として、Azureポータル経由のアンインストールとクラウドシェルからのインストールを組み合わせる方法が推奨されており、多くの成功事例が報告されています。万一、ワークアラウンドを試しても問題が解決しない場合には、イベントビューアーやポータルのログから詳細情報を把握し、Microsoft Q&Aフォーラムやサポート窓口へ問い合わせることで早期に根本解決へ導くことができます。
今後の更新によって改善される可能性が高いため、最新情報をこまめにチェックしながら対処を進めていきましょう。
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