C#における依存性注入(Dependency Injection, DI)は、ソフトウェア開発においてコードの可読性や保守性を大幅に向上させる重要な技術です。DIを活用することで、依存関係の管理が容易になり、テスト可能なコードの構築も可能となります。本記事では、DIの基本概念から具体的な実装方法、さらには応用例やパフォーマンス最適化の手法までを詳細に解説し、C#開発者が直面する課題の解決に役立つ情報を提供します。
依存性注入の基本概念
依存性注入(DI)は、ソフトウェア開発における設計パターンの一つで、オブジェクトの依存関係を外部から注入する手法です。これにより、コードの柔軟性やテスト容易性が向上します。
依存性注入のメリット
DIを使用する主な利点には以下があります。
- 疎結合の実現: オブジェクト同士の結合度が低くなり、変更に強い設計が可能。
- 可読性の向上: コードがシンプルになり、読みやすくなる。
- テストの簡便化: 依存関係を外部から注入することで、モックオブジェクトを使用したテストが容易になる。
依存性注入の種類
DIには主に以下の3種類があります。
- コンストラクタインジェクション: コンストラクタを通じて依存関係を注入する。
- プロパティインジェクション: プロパティを通じて依存関係を注入する。
- メソッドインジェクション: メソッドを通じて依存関係を注入する。
依存性注入の基本例
以下は、コンストラクタインジェクションの基本的な例です。
public interface IService
{
void Serve();
}
public class Service : IService
{
public void Serve()
{
Console.WriteLine("Service Called");
}
}
public class Client
{
private readonly IService _service;
// Constructor Injection
public Client(IService service)
{
_service = service;
}
public void Start()
{
_service.Serve();
}
}
public class Program
{
static void Main(string[] args)
{
// Injecting the dependency
IService service = new Service();
Client client = new Client(service);
client.Start();
}
}
この例では、Client
クラスはIService
インターフェースを依存関係として持ち、コンストラクタを通じて注入されています。これにより、Client
クラスは具体的なService
クラスに依存せず、柔軟に変更やテストが可能です。
DIコンテナの導入
依存性注入(DI)を効率的に管理するために、DIコンテナを使用します。DIコンテナは、オブジェクトのライフサイクルや依存関係を自動的に管理してくれるツールです。
DIコンテナとは
DIコンテナは、オブジェクトの生成、ライフサイクル管理、および依存関係の解決を行うフレームワークです。これにより、コードの保守性が向上し、依存関係の管理が簡素化されます。
DIコンテナの選定
C#では、以下のような主要なDIコンテナがあります。
- Microsoft.Extensions.DependencyInjection: .NET Coreの標準DIコンテナ。
- Autofac: 機能が豊富で柔軟性が高い。
- Ninject: シンプルで使いやすい。
Microsoft.Extensions.DependencyInjectionの導入手順
以下に、Microsoft.Extensions.DependencyInjection
を使用してDIコンテナを導入する方法を示します。
- パッケージのインストール:
最初に、NuGetパッケージをインストールします。
dotnet add package Microsoft.Extensions.DependencyInjection
- サービスの登録:
サービスとその実装をDIコンテナに登録します。
using Microsoft.Extensions.DependencyInjection;
var serviceCollection = new ServiceCollection();
serviceCollection.AddTransient<IService, Service>();
var serviceProvider = serviceCollection.BuildServiceProvider();
- 依存関係の解決:
DIコンテナからサービスを取得し、使用します。
var service = serviceProvider.GetService<IService>();
var client = new Client(service);
client.Start();
サービスの登録方法
DIコンテナでは、以下の3つのライフタイムスコープでサービスを登録できます。
- Transient: リクエストごとに新しいインスタンスを生成。
- Scoped: 同じスコープ内で同じインスタンスを使用。
- Singleton: アプリケーション全体で同じインスタンスを使用。
serviceCollection.AddTransient<IService, Service>(); // Transient
serviceCollection.AddScoped<IService, Service>(); // Scoped
serviceCollection.AddSingleton<IService, Service>(); // Singleton
DIコンテナを導入することで、依存関係の管理が効率化され、コードの可読性と保守性が向上します。
コンストラクタインジェクションの利用方法
コンストラクタインジェクションは、依存性注入の中で最も一般的で広く使用される手法です。この手法では、依存オブジェクトがクラスのコンストラクタを通じて渡されます。
コンストラクタインジェクションの基本例
以下に、基本的なコンストラクタインジェクションの例を示します。
public interface IRepository
{
void GetData();
}
public class Repository : IRepository
{
public void GetData()
{
Console.WriteLine("Data Retrieved");
}
}
public class Service
{
private readonly IRepository _repository;
// Constructor Injection
public Service(IRepository repository)
{
_repository = repository;
}
public void Serve()
{
_repository.GetData();
}
}
public class Program
{
static void Main(string[] args)
{
// Set up DI container
var serviceCollection = new ServiceCollection();
serviceCollection.AddTransient<IRepository, Repository>();
serviceCollection.AddTransient<Service>();
var serviceProvider = serviceCollection.BuildServiceProvider();
// Resolve dependencies
var service = serviceProvider.GetService<Service>();
service.Serve();
}
}
この例では、Service
クラスがIRepository
の依存関係を持ち、コンストラクタを通じて注入されています。
コンストラクタインジェクションの利点
- 明確な依存関係: 依存関係がコンストラクタで明示されるため、クラスの設計が明確になります。
- テストの容易性: テスト時にモックオブジェクトを簡単に注入できます。
- コンパイル時の安全性: コンストラクタで依存関係が強制されるため、依存関係の不足がコンパイル時に検出されます。
実際のプロジェクトでの利用
実際のプロジェクトでは、複数の依存関係を持つクラスも多くあります。以下に、複数の依存関係を持つクラスの例を示します。
public class AdvancedService
{
private readonly IRepository _repository;
private readonly ILogger _logger;
public AdvancedService(IRepository repository, ILogger logger)
{
_repository = repository;
_logger = logger;
}
public void Serve()
{
_logger.Log("Service started");
_repository.GetData();
_logger.Log("Service finished");
}
}
public class Program
{
static void Main(string[] args)
{
// Set up DI container
var serviceCollection = new ServiceCollection();
serviceCollection.AddTransient<IRepository, Repository>();
serviceCollection.AddTransient<ILogger, ConsoleLogger>();
serviceCollection.AddTransient<AdvancedService>();
var serviceProvider = serviceCollection.BuildServiceProvider();
// Resolve dependencies
var service = serviceProvider.GetService<AdvancedService>();
service.Serve();
}
}
この例では、AdvancedService
クラスがIRepository
とILogger
の2つの依存関係を持ち、コンストラクタを通じて注入されています。
コンストラクタインジェクションは、その明確さと利便性から、依存性注入の基本的な手法として広く採用されています。
プロパティインジェクションの利用方法
プロパティインジェクションは、依存関係をクラスのプロパティを通じて注入する手法です。この方法は、依存関係がオプションである場合や、後から設定したい場合に有用です。
プロパティインジェクションの基本例
以下に、プロパティインジェクションの基本的な例を示します。
public interface IService
{
void Serve();
}
public class Service : IService
{
public void Serve()
{
Console.WriteLine("Service Called");
}
}
public class Client
{
public IService Service { get; set; }
public void Start()
{
Service?.Serve();
}
}
public class Program
{
static void Main(string[] args)
{
// Set up DI container
var serviceCollection = new ServiceCollection();
serviceCollection.AddTransient<IService, Service>();
var serviceProvider = serviceCollection.BuildServiceProvider();
// Resolve dependencies
var client = new Client
{
Service = serviceProvider.GetService<IService>()
};
client.Start();
}
}
この例では、Client
クラスのService
プロパティに依存関係が注入されています。
プロパティインジェクションの利点
- オプションの依存関係: 必須ではない依存関係を持つクラスに適しています。
- 遅延注入: 必要なときに依存関係を設定することができます。
プロパティインジェクションの欠点
- 強制力の欠如: コンストラクタインジェクションと比べて、依存関係が必ずしも設定されるとは限りません。
- テストの困難: プロパティが設定されない場合、テストが失敗するリスクがあります。
実際のプロジェクトでの利用
プロパティインジェクションは、依存関係が可変である場合や、後から設定したい場合に特に有用です。以下に、より複雑なプロパティインジェクションの例を示します。
public class AdvancedClient
{
public IService Service { get; set; }
public ILogger Logger { get; set; }
public void Start()
{
Logger?.Log("Starting service");
Service?.Serve();
Logger?.Log("Service finished");
}
}
public class Program
{
static void Main(string[] args)
{
// Set up DI container
var serviceCollection = new ServiceCollection();
serviceCollection.AddTransient<IService, Service>();
serviceCollection.AddTransient<ILogger, ConsoleLogger>();
var serviceProvider = serviceCollection.BuildServiceProvider();
// Resolve dependencies
var client = new AdvancedClient
{
Service = serviceProvider.GetService<IService>(),
Logger = serviceProvider.GetService<ILogger>()
};
client.Start();
}
}
この例では、AdvancedClient
クラスがIService
とILogger
の依存関係をプロパティを通じて受け取ります。
プロパティインジェクションは、柔軟性が求められるシナリオにおいて有効な手法です。しかし、依存関係が設定されていない可能性があるため、使用には注意が必要です。
メソッドインジェクションの利用方法
メソッドインジェクションは、依存関係をメソッドのパラメータとして注入する手法です。特定のメソッド呼び出し時にのみ依存関係が必要な場合に有効です。
メソッドインジェクションの基本例
以下に、メソッドインジェクションの基本的な例を示します。
public interface INotifier
{
void Notify(string message);
}
public class Notifier : INotifier
{
public void Notify(string message)
{
Console.WriteLine("Notification: " + message);
}
}
public class NotificationService
{
public void SendNotification(INotifier notifier, string message)
{
notifier.Notify(message);
}
}
public class Program
{
static void Main(string[] args)
{
// Set up DI container
var serviceCollection = new ServiceCollection();
serviceCollection.AddTransient<INotifier, Notifier>();
var serviceProvider = serviceCollection.BuildServiceProvider();
// Resolve dependencies
var notifier = serviceProvider.GetService<INotifier>();
var notificationService = new NotificationService();
notificationService.SendNotification(notifier, "Hello World!");
}
}
この例では、NotificationService
クラスのSendNotification
メソッドに依存関係であるINotifier
が注入されています。
メソッドインジェクションの利点
- 柔軟な依存関係: 必要な時にだけ依存関係を注入できるため、柔軟性が高まります。
- 簡易なテスト: メソッド単位でテストが可能になり、テストのモック化が容易です。
メソッドインジェクションの欠点
- スコープの制限: メソッド内でのみ依存関係が有効であり、広範囲なスコープでは利用できません。
- コードの複雑化: 多くの依存関係が必要な場合、メソッドが複雑になる可能性があります。
実際のプロジェクトでの利用
メソッドインジェクションは、特定の機能や処理に依存関係が必要な場合に最適です。以下に、より複雑なメソッドインジェクションの例を示します。
public class AdvancedNotificationService
{
public void SendAdvancedNotification(INotifier notifier, string message, bool isUrgent)
{
if (isUrgent)
{
notifier.Notify("URGENT: " + message);
}
else
{
notifier.Notify(message);
}
}
}
public class Program
{
static void Main(string[] args)
{
// Set up DI container
var serviceCollection = new ServiceCollection();
serviceCollection.AddTransient<INotifier, Notifier>();
var serviceProvider = serviceCollection.BuildServiceProvider();
// Resolve dependencies
var notifier = serviceProvider.GetService<INotifier>();
var advancedNotificationService = new AdvancedNotificationService();
advancedNotificationService.SendAdvancedNotification(notifier, "Hello World!", true);
}
}
この例では、AdvancedNotificationService
クラスのSendAdvancedNotification
メソッドに依存関係が注入され、さらに条件によって異なる通知メッセージを送信するロジックが含まれています。
メソッドインジェクションは、柔軟性が求められるシナリオにおいて有効な手法ですが、使用する際には依存関係の管理に注意が必要です。
ライフタイム管理
DIコンテナを使用する際には、オブジェクトのライフタイム管理が重要です。ライフタイムは、オブジェクトが生成されてから破棄されるまでの期間を指します。
ライフタイムの種類
DIコンテナでは、以下の3つのライフタイムが一般的に使用されます。
Transient
- 概要: リクエストごとに新しいインスタンスが生成されます。
- 利用ケース: 短命なサービスやステートレスなサービスに適しています。
services.AddTransient<IService, Service>();
Scoped
- 概要: 同じスコープ内で同じインスタンスが使用されます。
- 利用ケース: Webアプリケーションのリクエストごとに新しいインスタンスが必要なサービスに適しています。
services.AddScoped<IService, Service>();
Singleton
- 概要: アプリケーション全体で同じインスタンスが使用されます。
- 利用ケース: 一度だけインスタンス化され、再利用が望ましいサービスに適しています。
services.AddSingleton<IService, Service>();
ライフタイム管理の実例
以下に、各ライフタイムを利用した例を示します。
public interface ITransientService { }
public interface IScopedService { }
public interface ISingletonService { }
public class TransientService : ITransientService { }
public class ScopedService : IScopedService { }
public class SingletonService : ISingletonService { }
public class MyController
{
private readonly ITransientService _transientService;
private readonly IScopedService _scopedService;
private readonly ISingletonService _singletonService;
public MyController(ITransientService transientService, IScopedService scopedService, ISingletonService singletonService)
{
_transientService = transientService;
_scopedService = scopedService;
_singletonService = singletonService;
}
public void DisplayServices()
{
Console.WriteLine(_transientService.GetHashCode());
Console.WriteLine(_scopedService.GetHashCode());
Console.WriteLine(_singletonService.GetHashCode());
}
}
public class Program
{
static void Main(string[] args)
{
var serviceCollection = new ServiceCollection();
serviceCollection.AddTransient<ITransientService, TransientService>();
serviceCollection.AddScoped<IScopedService, ScopedService>();
serviceCollection.AddSingleton<ISingletonService, SingletonService>();
var serviceProvider = serviceCollection.BuildServiceProvider();
using (var scope = serviceProvider.CreateScope())
{
var controller = scope.ServiceProvider.GetService<MyController>();
controller.DisplayServices();
}
}
}
この例では、MyController
クラスが異なるライフタイムのサービスを受け取ります。それぞれのライフタイムの違いが、DisplayServices
メソッドで出力されるハッシュコードによって確認できます。
ライフタイムの選定
適切なライフタイムを選定することが重要です。サービスの性質や使用状況に応じて、適切なライフタイムを設定することで、メモリ使用量やパフォーマンスを最適化できます。
DIを用いたテストの簡便化
依存性注入(DI)は、単体テストやモックの作成を容易にし、テスト駆動開発(TDD)を支援します。DIを利用することで、テスト可能なコードの設計が可能になります。
テストのための依存関係の注入
DIを活用すると、テスト対象のクラスに対して依存関係を簡単に注入できます。これにより、実際の依存関係ではなく、モックやスタブを使用してテストを実行することができます。
テストの基本例
以下に、依存関係を注入してテストを行う基本的な例を示します。
public interface IService
{
void Serve();
}
public class Service : IService
{
public void Serve()
{
Console.WriteLine("Service Called");
}
}
public class Client
{
private readonly IService _service;
public Client(IService service)
{
_service = service;
}
public void Start()
{
_service.Serve();
}
}
// モッククラス
public class MockService : IService
{
public void Serve()
{
Console.WriteLine("Mock Service Called");
}
}
public class ClientTests
{
[Fact]
public void Client_Start_CallsServe()
{
// Arrange
var mockService = new MockService();
var client = new Client(mockService);
// Act
client.Start();
// Assert
// ここではコンソール出力を確認するか、モックの呼び出しを検証します。
}
}
この例では、Client
クラスがIService
の依存関係を受け取ります。テストでは、実際のService
クラスではなく、MockService
クラスを注入してテストを実行します。
モックフレームワークの利用
モックフレームワークを使用すると、より効率的にモックオブジェクトを作成できます。以下に、Moqを使用した例を示します。
public class ClientTests
{
[Fact]
public void Client_Start_CallsServe()
{
// Arrange
var mockService = new Mock<IService>();
var client = new Client(mockService.Object);
// Act
client.Start();
// Assert
mockService.Verify(s => s.Serve(), Times.Once);
}
}
この例では、Moqを使用してIService
のモックオブジェクトを作成し、Serve
メソッドが一度だけ呼び出されたことを検証します。
依存関係の分離
DIを利用すると、クラスの依存関係が外部から注入されるため、クラス間の結合度が低くなります。これにより、各クラスが単独でテストしやすくなります。
依存関係の分離の利点
- テスト容易性: 各クラスが独立しているため、テストが容易になります。
- 再利用性: 依存関係が分離されているため、クラスの再利用性が向上します。
- メンテナンス性: 依存関係が明確になり、コードのメンテナンスが容易になります。
DIを用いることで、テストが容易になり、コードの品質が向上します。これにより、信頼性の高いソフトウェアの開発が可能となります。
DIコンテナのパフォーマンス最適化
DIコンテナを利用する際には、パフォーマンスの最適化が重要です。適切に設定しないと、アプリケーションのパフォーマンスが低下する可能性があります。
パフォーマンス最適化の基本戦略
パフォーマンスを最適化するための基本戦略を以下に示します。
ライフタイムの適切な選択
各サービスのライフタイムを適切に設定することが重要です。例えば、頻繁に使用されるサービスにはSingleton
を、リクエストごとに異なるデータを扱うサービスにはScoped
を使用します。
services.AddSingleton<ISingletonService, SingletonService>();
services.AddScoped<IScopedService, ScopedService>();
services.AddTransient<ITransientService, TransientService>();
サービスの分離とシングルトンの利用
シングルトンサービスは一度だけインスタンス化されるため、パフォーマンスの向上に寄与します。ただし、ステートレスなサービスやスレッドセーフなサービスに限ります。
サービスの初期化遅延
必要になるまでサービスのインスタンスを生成しないようにすることで、起動時のパフォーマンスを向上させることができます。
services.AddSingleton<ISingletonService>(provider =>
{
return new SingletonService();
});
パフォーマンスモニタリング
DIコンテナのパフォーマンスをモニタリングし、ボトルネックを特定することが重要です。以下のツールを使用すると、パフォーマンスの問題を特定できます。
- Application Insights: Azureの監視ツールで、アプリケーションのパフォーマンスを詳細に監視できます。
- PerfView: .NETアプリケーションのパフォーマンスを分析するためのツールです。
具体例:サービス初期化の最適化
以下に、サービスの初期化を遅延させる例を示します。
public interface IDatabaseService
{
void Connect();
}
public class DatabaseService : IDatabaseService
{
public DatabaseService()
{
// Heavy initialization
Console.WriteLine("DatabaseService Initialized");
}
public void Connect()
{
Console.WriteLine("Connected to Database");
}
}
public class Program
{
static void Main(string[] args)
{
var serviceCollection = new ServiceCollection();
serviceCollection.AddSingleton<IDatabaseService, DatabaseService>();
var serviceProvider = serviceCollection.BuildServiceProvider();
Console.WriteLine("Application Started");
// DatabaseService is initialized only when needed
var dbService = serviceProvider.GetService<IDatabaseService>();
dbService.Connect();
}
}
この例では、DatabaseService
のインスタンス化を遅延させることで、起動時のパフォーマンスを向上させています。
依存関係の分析と最適化
依存関係の複雑さがパフォーマンスに影響を与えることがあります。依存関係を分析し、必要なサービスだけが注入されるように設計することが重要です。
依存関係の簡素化
以下に、依存関係を簡素化する例を示します。
public class ComplexService
{
private readonly ISimpleService1 _service1;
private readonly ISimpleService2 _service2;
public ComplexService(ISimpleService1 service1, ISimpleService2 service2)
{
_service1 = service1;
_service2 = service2;
}
public void PerformOperation()
{
_service1.Operation();
_service2.Operation();
}
}
public class Program
{
static void Main(string[] args)
{
var serviceCollection = new ServiceCollection();
serviceCollection.AddTransient<ISimpleService1, SimpleService1>();
serviceCollection.AddTransient<ISimpleService2, SimpleService2>();
serviceCollection.AddTransient<ComplexService>();
var serviceProvider = serviceCollection.BuildServiceProvider();
var complexService = serviceProvider.GetService<ComplexService>();
complexService.PerformOperation();
}
}
この例では、ComplexService
が必要とする依存関係が明確に分離されています。
DIコンテナのパフォーマンス最適化は、適切なライフタイムの選択、サービスの分離、初期化の遅延、および依存関係の簡素化を通じて達成されます。これにより、アプリケーションの効率性と応答性が向上します。
DIの応用例
依存性注入(DI)は、複雑なアプリケーションのサービス管理において特に有効です。ここでは、DIを活用した具体的な応用例を紹介します。
WebアプリケーションにおけるDIの利用
DIは、ASP.NET CoreなどのWebアプリケーションで広く利用されています。以下に、ASP.NET CoreアプリケーションでのDIの具体例を示します。
サービスの登録
まず、必要なサービスをDIコンテナに登録します。
public void ConfigureServices(IServiceCollection services)
{
services.AddControllers();
services.AddTransient<IEmailService, EmailService>();
services.AddScoped<IOrderService, OrderService>();
services.AddSingleton<ILoggingService, LoggingService>();
}
サービスの使用
次に、コントローラーでこれらのサービスを使用します。
public class OrderController : ControllerBase
{
private readonly IOrderService _orderService;
private readonly IEmailService _emailService;
private readonly ILoggingService _loggingService;
public OrderController(IOrderService orderService, IEmailService emailService, ILoggingService loggingService)
{
_orderService = orderService;
_emailService = emailService;
_loggingService = loggingService;
}
[HttpPost]
public IActionResult CreateOrder(Order order)
{
_orderService.CreateOrder(order);
_emailService.SendOrderConfirmation(order);
_loggingService.Log("Order created");
return Ok();
}
}
この例では、OrderController
が3つのサービスを依存関係として持ち、DIコンテナを通じて注入されています。
コンソールアプリケーションにおけるDIの利用
DIは、コンソールアプリケーションでも有効です。以下に、コンソールアプリケーションでの具体例を示します。
サービスの登録
コンソールアプリケーションに必要なサービスを登録します。
var serviceCollection = new ServiceCollection();
serviceCollection.AddTransient<IProcessingService, ProcessingService>();
serviceCollection.AddSingleton<ILogger, ConsoleLogger>();
var serviceProvider = serviceCollection.BuildServiceProvider();
サービスの使用
登録したサービスを使用して、アプリケーションの主要な処理を実行します。
public class Application
{
private readonly IProcessingService _processingService;
private readonly ILogger _logger;
public Application(IProcessingService processingService, ILogger logger)
{
_processingService = processingService;
_logger = logger;
}
public void Run()
{
_logger.Log("Application started");
_processingService.Process();
_logger.Log("Application finished");
}
}
static void Main(string[] args)
{
var serviceCollection = new ServiceCollection();
serviceCollection.AddTransient<IProcessingService, ProcessingService>();
serviceCollection.AddSingleton<ILogger, ConsoleLogger>();
var serviceProvider = serviceCollection.BuildServiceProvider();
var app = serviceProvider.GetService<Application>();
app.Run();
}
この例では、Application
クラスがIProcessingService
とILogger
の依存関係を持ち、DIコンテナを通じて注入されています。
DIを活用したマイクロサービスアーキテクチャ
マイクロサービスアーキテクチャでは、各サービスが独立して動作するため、DIが特に有効です。以下に、マイクロサービスでのDIの利用例を示します。
サービスの定義
各マイクロサービスに必要なサービスを定義し、DIコンテナに登録します。
services.AddSingleton<IDatabaseService, DatabaseService>();
services.AddTransient<IMessageQueueService, RabbitMQService>();
サービスの使用
各マイクロサービスで、DIコンテナを通じてサービスを使用します。
public class OrderProcessor
{
private readonly IDatabaseService _databaseService;
private readonly IMessageQueueService _messageQueueService;
public OrderProcessor(IDatabaseService databaseService, IMessageQueueService messageQueueService)
{
_databaseService = databaseService;
_messageQueueService = messageQueueService;
}
public void ProcessOrder(Order order)
{
_databaseService.SaveOrder(order);
_messageQueueService.PublishOrder(order);
}
}
このように、DIを活用することで、マイクロサービス間の依存関係を効率的に管理できます。
DIの応用例を通じて、複雑なアプリケーションでも依存関係を効果的に管理し、コードの保守性と拡張性を向上させることができます。
演習問題
ここでは、読者がDIの理解を深めるための演習問題を提供します。これらの問題を通じて、実際にDIを利用したコードを書いてみましょう。
問題1: コンストラクタインジェクションの実装
以下のインターフェースとクラスを用意し、コンストラクタインジェクションを利用して依存関係を注入するCustomerService
クラスを実装してください。
public interface ICustomerRepository
{
void AddCustomer(string name);
}
public class CustomerRepository : ICustomerRepository
{
public void AddCustomer(string name)
{
Console.WriteLine($"Customer {name} added.");
}
}
public class CustomerService
{
// コンストラクタインジェクションを利用してICustomerRepositoryを注入してください。
}
問題2: プロパティインジェクションの実装
以下のコードを参考に、プロパティインジェクションを使用してOrderService
クラスにILogger
依存関係を注入してください。
public interface ILogger
{
void Log(string message);
}
public class ConsoleLogger : ILogger
{
public void Log(string message)
{
Console.WriteLine(message);
}
}
public class OrderService
{
// プロパティインジェクションを利用してILoggerを注入してください。
public void ProcessOrder()
{
Logger?.Log("Order processed.");
}
}
問題3: メソッドインジェクションの実装
以下のインターフェースとクラスを用意し、メソッドインジェクションを利用してNotificationService
クラスに依存関係を注入してください。
public interface IEmailSender
{
void SendEmail(string message);
}
public class EmailSender : IEmailSender
{
public void SendEmail(string message)
{
Console.WriteLine($"Email sent: {message}");
}
}
public class NotificationService
{
public void NotifyUser(IEmailSender emailSender, string message)
{
// メソッドインジェクションを利用してIEmailSenderを使用してください。
}
}
問題4: DIコンテナの設定
上記の全てのサービスをDIコンテナに登録し、CustomerService
、OrderService
、およびNotificationService
を正しく解決できるように設定してください。
public class Program
{
public static void Main(string[] args)
{
var serviceCollection = new ServiceCollection();
// DIコンテナにサービスを登録してください。
var serviceProvider = serviceCollection.BuildServiceProvider();
// 登録したサービスを解決し、実際に利用するコードを記述してください。
}
}
解答例
演習問題に対する解答例を以下に示します。実際にコードを書いてみて、自分の解答と比較してください。
問題1: コンストラクタインジェクションの実装
public class CustomerService
{
private readonly ICustomerRepository _customerRepository;
public CustomerService(ICustomerRepository customerRepository)
{
_customerRepository = customerRepository;
}
public void AddCustomer(string name)
{
_customerRepository.AddCustomer(name);
}
}
問題2: プロパティインジェクションの実装
public class OrderService
{
public ILogger Logger { get; set; }
public void ProcessOrder()
{
Logger?.Log("Order processed.");
}
}
問題3: メソッドインジェクションの実装
public class NotificationService
{
public void NotifyUser(IEmailSender emailSender, string message)
{
emailSender.SendEmail(message);
}
}
問題4: DIコンテナの設定
public class Program
{
public static void Main(string[] args)
{
var serviceCollection = new ServiceCollection();
serviceCollection.AddTransient<ICustomerRepository, CustomerRepository>();
serviceCollection.AddTransient<ICustomerService, CustomerService>();
serviceCollection.AddTransient<ILogger, ConsoleLogger>();
serviceCollection.AddTransient<IEmailSender, EmailSender>();
serviceCollection.AddTransient<OrderService>();
serviceCollection.AddTransient<NotificationService>();
var serviceProvider = serviceCollection.BuildServiceProvider();
var customerService = serviceProvider.GetService<CustomerService>();
customerService.AddCustomer("John Doe");
var orderService = serviceProvider.GetService<OrderService>();
orderService.Logger = serviceProvider.GetService<ILogger>();
orderService.ProcessOrder();
var notificationService = serviceProvider.GetService<NotificationService>();
var emailSender = serviceProvider.GetService<IEmailSender>();
notificationService.NotifyUser(emailSender, "Welcome to our service!");
}
}
演習問題を通じて、DIの理解が深まることを期待しています。
まとめ
本記事では、C#における依存性注入(DI)の基本概念から実装方法、さらに応用例やパフォーマンス最適化の手法までを詳しく解説しました。DIを活用することで、コードの保守性やテスト容易性が向上し、柔軟でスケーラブルなアプリケーションを構築することができます。
依存性注入の基本的な手法であるコンストラクタインジェクション、プロパティインジェクション、メソッドインジェクションのそれぞれの利点と欠点を理解し、適切に使い分けることが重要です。また、DIコンテナを利用して依存関係のライフタイム管理を適切に設定することで、アプリケーションのパフォーマンスを最適化することも可能です。
さらに、演習問題を通じて実際にコードを書き、DIの実装とその利点を実感していただけたと思います。依存性注入は、現代のソフトウェア開発において不可欠な技術ですので、ぜひプロジェクトに取り入れて、より良いコードを書けるようにしてください。
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