仕事や趣味でパソコンを使い込んでいると、ストレージ不足に悩まされる場面は少なくありません。特にPCゲームは容量を大きく消費しがちで、限られたディスクスペースに苦労する方も多いでしょう。そこで注目したいのが外付けSSDの活用です。Thunderbolt 3などの高速インターフェースを備えたSSDを使えば、ゲームのインストール先を簡単に拡張できるだけでなく、快適にプレイするための鍵にもなります。ここでは、外付けSSDからゲームをプレイする際の具体的な方法やメリット、トラブル回避のポイントなどを徹底解説します。
外付けSSDでゲームをプレイできる理由
外付けストレージを使ってゲームを遊ぶこと自体は珍しくありませんが、なかでもSSD(Solid State Drive)はHDDよりも大幅に高速なのが特徴です。ここでは、外付けSSDからゲームを起動するメリットや、どのような仕組みで遅延を抑えるのかを見ていきましょう。
SSDの高速アクセスがゲーム体験を向上
SSDはHDDと比較してデータの読み込み・書き込みが格段に速いため、ゲームのロード時間や起動時間を短縮しやすいメリットがあります。特に近年の大作ゲームでは、テクスチャや音声データなど、膨大なファイルを読み込むことになるため、ストレージの速度は体感的な快適度に直結します。
HDDとの速度比較
下記のように、HDDとSSDには大きな速度差があります。もちろん製品によって数値は異なりますが、一般的な目安としてご覧ください。
ストレージ種別 | 読み込み速度 (シーケンシャル) | 書き込み速度 (シーケンシャル) | ランダムアクセス性能 |
---|---|---|---|
HDD | 50〜150 MB/s | 50〜150 MB/s | 低い |
SSD (SATA) | 500〜550 MB/s | 500〜550 MB/s | 高い |
SSD (NVMe) | 2000〜3500 MB/s | 2000〜3500 MB/s | 非常に高い |
Thunderbolt 3対応SSD | 2000〜3000 MB/s程度 | 2000〜3000 MB/s程度 | 高い |
SSDはランダムアクセス性能も高く、ゲームの追加データやパッチを展開する際にも優れた速度を発揮するため、ゲーム全体の快適度が向上します。
Thunderbolt 3ならではの転送速度
Thunderbolt 3は理論値で最大40Gbps(約5000MB/s)もの帯域幅を誇ります。ただし、SSD自体の実効性能やケーブルの品質によって、実測値は変動します。USB 3.0だと最大5Gbps(約625MB/s)程度の帯域幅しかなく、NVMeのパフォーマンスを十分に活かせない場合があります。Thunderbolt 3対応SSDなら、より高速な転送速度に期待できるため、ゲームデータの読み込みに必要な時間を大幅に短縮できる可能性が高いのです。
外付けSSDへのゲームインストールと注意点
外付けSSDにゲームをインストールする方法はいたって簡単ですが、いくつかの注意点があります。特にNTFS形式へのフォーマットや、ゲームランチャーごとの対応状況などを把握しておくことが大切です。
NTFS形式でのフォーマット
Microsoft StoreやXboxアプリからゲームをインストールする場合、外付けドライブがNTFS形式でないとエラーが発生することがあります。FAT32やexFATでは、ファイルシステムの制限や互換性の問題でうまくインストールできない場合があるのです。Windows標準のディスク管理ツールや「diskpart」コマンドを用いて、事前にNTFS形式へフォーマットしておくとスムーズです。
diskpartコマンドの例
以下はコマンドプロンプトやPowerShellで実行できるNTFSフォーマットの一例です。誤操作に注意し、必ずフォーマット対象のディスク番号を正しく確認してから実行してください。
> diskpart
DISKPART> list disk
DISKPART> select disk [外付けSSDの番号]
DISKPART> clean
DISKPART> create partition primary
DISKPART> format fs=ntfs quick
DISKPART> assign letter=[ドライブ文字]
DISKPART> exit
各種ゲームランチャーとの相性
- Steam: インストール先フォルダを外付けSSDに設定可能。ゲームごとにインストール先を変更することも簡単です。
- Epic Games Launcher: ランチャーの設定から、ゲームのインストール先を外付けドライブに指定できます。
- Origin(EA App): ランチャー設定でゲームインストール先を変更可能。ただし、ゲームごとに設定を変更する必要がある場合があります。
- Microsoft Store / Xboxアプリ: 前述の通りNTFS形式でフォーマットされたドライブであればインストール先を選択可能。
これらのランチャーは、基本的にどのドライブでも起動が可能ですが、インストール途中で誤ってドライブを切断するとエラーが出やすい点に注意が必要です。
実際のプレイ時に気をつけるポイント
外付けSSDを使用していると、内部ストレージとは異なる点がいくつかあります。特に、ケーブルの抜き差しや接触不良、SSD自体の発熱や耐久性などを理解しておくことが大切です。
接続の安定性
Thunderbolt 3やUSB 3.2 Gen2などの高速規格であっても、ケーブルが緩んでいたり、ポートの形状が合っていなかったりすると速度低下や切断のリスクが高まります。とくにゲーム起動中にケーブルが抜けると、ゲームが強制終了してデータ破損を招く場合もあるので要注意です。
ケーブル選びのポイント
- Thunderbolt 3対応の認証済みケーブルを選ぶ
- 長さが長すぎると速度や安定性が低下する場合がある
- コネクタ部分の品質が良い製品を選ぶ
発熱と温度管理
高負荷のゲームを長時間プレイすると、SSDにかなりの熱がこもる場合があります。過度な熱はSSDの性能を低下させたり、寿命を縮める可能性も考えられます。廃熱構造がしっかりしているケースを使う、またはファン付きのドッキングステーションを利用するなどの対策を検討しましょう。
ゲームの更新とDLC
ゲーム本体のアップデートや追加コンテンツ(DLC)をダウンロードする際にも、外付けSSDは通常通り対応可能です。ただし、SSDの容量がギリギリだとアップデート時にエラーが出ることがあるので、ある程度余裕を持った容量を選択するのが望ましいです。
容量不足を解消するためのSSD選び
外付けSSDを導入する際は、どのような基準で製品を選べばよいのでしょうか。速度や容量に加え、耐久性やコストパフォーマンスも重要なポイントです。
転送速度を重視するならNVMeタイプ
SATA接続の外付けSSDよりもNVMeベースのSSDを採用した外付けドライブの方が理論上の性能が高いです。Thunderbolt 3やUSB 3.2 Gen2×2などの最新規格をサポートしている製品なら、実測でも1GB/sを超える速度を得ることも可能です。
おすすめ製品の一例
製品名 | インターフェース | 容量バリエーション | 最大転送速度(公称) | 特徴 |
---|---|---|---|---|
Samsung Portable SSD X5 | Thunderbolt 3 | 500GB / 1TB / 2TB | 2800MB/s | NVMe採用、高速かつ安定性に定評あり |
SanDisk Extreme Pro V2 | USB 3.2 Gen2×2 | 1TB / 2TB / 4TB | 2000MB/s | 耐衝撃・防滴性能が高く、持ち運びに向く |
Crucial X8 | USB 3.2 Gen2 | 500GB / 1TB / 2TB | 1050MB/s | コストパフォーマンスに優れたモデル |
Western Digital My Passport SSD | USB 3.2 Gen2 | 500GB / 1TB / 2TB | 1050MB/s | デザイン性が高く、ソフトウェアツールが充実 |
上記のように、メーカーごとにさまざまな特徴があります。転送速度を最優先にするのか、容量を重視するのか、持ち運び頻度が高いのかなど、ご自身の使用スタイルに合わせて選ぶとよいでしょう。
容量選択の目安
ゲーム1本あたりの容量は、タイトルやDLCの有無によっても異なります。Fortniteのように数十GB規模のものもあれば、Microsoft Flight Simulatorのように100GBを超える大作もあります。将来的なアップデートやDLCを考慮して、少なくとも1TB以上の容量を確保しておくと安心です。また、「複数のゲームを同時進行で遊ぶ」「高解像度のスクリーンショットや動画を保存する」などの使い方が想定されるなら、2TBや4TBといった大容量モデルを検討するのも選択肢です。
外付けSSDからのゲームプレイで想定されるQ&A
外付けSSDからゲームをプレイするにあたり、よくある疑問やトラブルをQ&A形式でまとめました。
Q1. 外付けSSDから起動した場合、内蔵SSDと比べて遅くならないの?
A. Thunderbolt 3やUSB 3.2 Gen2×2などの高速規格に対応しているSSDであれば、内蔵SSDと比べても大きな違いを感じないことが多いです。特にNVMeベースのモデルなら、実測で2,000MB/s前後の速度を出せるものもあり、ゲームに必要なロード時間は内蔵SSDとほぼ変わらないレベルになる場合が多いです。
Q2. 外付けSSDにインストールしたゲームを別のPCで遊べる?
A. ランチャー側のライセンス管理やゲームのDRM(著作権保護)の仕組みによりますが、基本的にはインストール先のPCごとにログインしてゲームデータを再認証する必要があります。Steamの場合は「ライブラリフォルダを追加」という形で認識させればOKですが、OriginやEpicでは再ダウンロードが必要になるケースも。あくまでもゲーム会社の利用規約を優先してください。
Q3. 外付けSSDは消耗品?寿命はどのくらい?
A. 一般的にSSDは書き込み回数によって寿命が左右されますが、ゲームプレイによる読み込みがメインなら、極端に寿命が縮むことはあまりありません。ゲームパッチのダウンロードやインストールは書き込みに該当しますが、メーカー公称のTBW(総書き込み容量)を超えない限り、数年〜十数年単位で問題なく使えることが多いです。
Q4. どんなPCでもThunderbolt 3に対応している?
A. Thunderbolt 3ポートが搭載されているPCは増えてきていますが、全てのノートPCやデスクトップが対応しているわけではありません。購入時のスペック表や、PC本体のポート形状・アイコン表示を確認してください。USB-C端子とThunderbolt 3端子の外観は似ていますが、内部の規格が異なることも多いので要注意です。
外付けSSDを有効に使うための追加アドバイス
外付けSSDは容量確保やロード時間短縮に大きく役立つ一方、普段の使い方によってパフォーマンスを最大限に引き出せるかどうかが変わってきます。最後にいくつかの追加アドバイスをまとめます。
デフラグは不要、Trim機能に注意
SSDにはHDDのようなデフラグ作業は基本的に不要です。Windows 10やWindows 11では、SSDに対してはTrimコマンドが定期的に実行される設定になっているため、特別な設定をしなくても最適化が行われます。逆にデフラグを誤って実行すると寿命を縮める恐れがあるため注意しましょう。
ポータブル化のメリットを活かす
外付けSSDの最大の魅力のひとつが「取り外せる」という点です。ゲームデータを持ち歩いて、別の場所のPCに接続して遊ぶ、友人宅で遊ぶ、あるいはノートPCとデスクトップで使い分けるなど、柔軟性が広がります。ただし、ゲームのライセンスや認証問題はゲームタイトルによって対応が異なるため、事前に確認してください。
バックアップやクラウドサービスとの併用
ゲームデータはサイズが大きいだけでなく、セーブデータなど大事な情報が含まれることがあります。セーブデータがオンライン同期に対応しているタイトルもありますが、すべてのゲームがクラウドセーブに対応しているわけではありません。外付けSSDが故障した際のリスクを考慮して、重要なデータは定期的にバックアップをとるか、クラウドストレージと併用することをおすすめします。
総合的な快適性の追求
どんなにSSDが高速でも、CPUやGPUがゲームの推奨スペックに満たないとフレームレートが落ちたり、グラフィック品質を落とさざるを得ない場合があります。外付けSSDはロード時間や容量不足を解消するものであり、グラフィックス性能まで直接向上させるわけではありません。CPUやRAM、GPUとのバランスを考慮して、トータルのゲーミング環境を最適化しましょう。
まとめ:外付けSSDでゲーム環境を拡張しよう
限られたストレージ容量で苦労している方にとって、外付けSSDは非常に魅力的なソリューションです。Thunderbolt 3やUSB 3.2 Gen2などの高速規格を活用すれば、内蔵ストレージと遜色ないスピードで大容量のゲームをサクサクとプレイすることができます。NTFS形式でフォーマットするなど、いくつかの注意点を守れば、ゲームアップデートや追加DLCも問題なく行えます。
また、外付けSSDを活用することで、ゲームライブラリを自在に持ち運ぶことも可能です。ノートPCで遊びたいときは接続し、デスクトップに戻るときには簡単にデータを引き継げるのは外付けならではのメリットといえます。もちろん、ハードウェアの性能やケーブルの接触状態、発熱管理などは従来以上に気を配る必要がありますが、その手間を差し引いても得られる恩恵は大きいでしょう。
もし「512GBのノートPCじゃとても足りない…」と感じているならば、ぜひ外付けSSDを導入してみてください。ストレージへの不満が解消され、快適なゲーム生活が待っているはずです。
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