Javaプログラムではメモリ管理が重要な役割を果たしており、その中心となるのがガベージコレクション(GC)です。ガベージコレクションは、不要になったオブジェクトを自動的に検出し、メモリから解放する仕組みで、これによりプログラマは手動でメモリ管理を行う必要がなくなります。しかし、ガベージコレクションの種類やその動作によってアプリケーションのパフォーマンスが大きく左右されることがあります。Javaでは、Serial、Parallel、CMS、G1、ZGCといった複数のガベージコレクションアルゴリズムが用意されており、それぞれの特徴を理解し、アプリケーションに応じて最適なものを選択することが重要です。本記事では、これらのガベージコレクションの種類と、それぞれの選び方について詳しく解説していきます。
ガベージコレクションとは何か
ガベージコレクション(GC)とは、プログラムの実行中に不要になったメモリ領域を自動的に解放し、効率的にメモリを管理する仕組みです。Javaなどのメモリ管理を自動化するプログラミング言語において、ガベージコレクションは不可欠な要素です。
ガベージコレクションの役割
Javaプログラムではオブジェクトを生成するたびにメモリが消費されますが、使用されなくなったオブジェクトも残り続けるとメモリが不足し、アプリケーションのパフォーマンスが低下します。ガベージコレクションは、使われなくなったオブジェクト(ガベージ)を自動的に検出し、それを解放することでメモリの効率的な利用を可能にします。
なぜガベージコレクションが必要か
手動でメモリを管理するプログラミング言語(CやC++など)では、開発者がオブジェクトの生成と解放を管理しなければならず、メモリリークや誤ったメモリ解放によるバグの原因となることがあります。Javaのような言語では、ガベージコレクションがこれらの作業を自動化するため、開発者はメモリ管理の細かい部分に気を配る必要がなく、より効率的にコードを記述できます。
Serialガベージコレクションの特徴と適用例
Serialガベージコレクションは、Javaで最もシンプルなガベージコレクション方式であり、シングルスレッドでメモリを管理します。これは、比較的小規模なアプリケーションや単一プロセッサ環境での利用を想定して設計されています。
Serialガベージコレクションの仕組み
Serial GCは、全ヒープを単一スレッドで処理し、メモリを圧縮することで空き領域を再利用可能にします。マークとスイープ(Mark-and-Sweep)方式で動作し、オブジェクトの生存可否を判断し、不要なものを削除します。ガベージコレクション中は他のアプリケーション処理が停止(Stop-the-World)し、これがアプリケーションのレスポンスタイムに影響を与えることがあります。
Serialガベージコレクションのメリット・デメリット
メリット
- シンプルなアルゴリズムであり、オーバーヘッドが少ないため、メモリの使用量が少ない環境で有効。
- 単一スレッドで動作するため、スレッド間の同期が不要で処理が直線的で理解しやすい。
デメリット
- Stop-the-Worldによるアプリケーション停止が発生し、特にマルチコア環境ではパフォーマンスが低下しやすい。
- 大規模なアプリケーションやマルチプロセッサ環境では、効率が悪くなる可能性がある。
適用例
Serialガベージコレクションは、小規模なデスクトップアプリケーションや開発段階のアプリケーションでのテスト環境で有効です。また、リソースが限られたシステムや短時間で完結するタスクには適しており、大規模なアプリケーションには不向きです。
Parallelガベージコレクションの特徴と適用例
Parallelガベージコレクションは、複数のスレッドを使用して同時にメモリを管理する方式で、特にスループット(全体の処理量)を重視する場面で有効です。Serial GCの拡張版ともいえるこの方式は、マルチプロセッサ環境において優れたパフォーマンスを発揮します。
Parallelガベージコレクションの仕組み
Parallel GCは、複数のスレッドを利用してヒープ全体のガベージコレクションを並列処理します。ヒープ内のオブジェクトの使用状況を複数のスレッドでマークし、不要なメモリを解放します。Parallel GCもStop-the-Worldを伴うため、ガベージコレクション中は一時的にアプリケーションが停止しますが、複数のスレッドを使用することでその時間を短縮することができます。
Parallelガベージコレクションのメリット・デメリット
メリット
- マルチスレッドによる並列処理のため、ヒープサイズが大きくても比較的短時間でガベージコレクションを完了できる。
- スループットを最大化する設計になっており、Stop-the-World時間を短縮することでアプリケーション全体のパフォーマンスが向上する。
デメリット
- レイテンシー(応答時間)に関してはあまり最適化されておらず、リアルタイム性を重視するアプリケーションには不向き。
- Stop-the-Worldが発生するため、ユーザー向けのインタラクティブなアプリケーションではレスポンスに悪影響を及ぼすことがある。
適用例
Parallelガベージコレクションは、バッチ処理やバックグラウンドタスクを中心とした大規模なサーバーアプリケーションに適しています。スループットを優先するシステム、例えばデータ処理パイプラインやログ収集、解析システムなどでその効果を最大限に発揮します。一方で、ユーザーインターフェースがあるアプリケーションや応答時間が重要なシステムでは他のGC方式の方が適しています。
CMSガベージコレクションの特徴と適用例
CMS(Concurrent Mark-Sweep)ガベージコレクションは、アプリケーションの停止時間を最小化することを目的としたアルゴリズムです。並行してガベージコレクションを行うため、レスポンスタイムの低下を最小限に抑え、リアルタイム性が求められるアプリケーションに向いています。
CMSガベージコレクションの仕組み
CMSは主に以下のステップで動作します:
- 初期マーク: アプリケーションスレッドを一時的に停止し、ルートオブジェクト(参照が追跡できるオブジェクト)をマークします。
- 並行マーク: アプリケーションの動作を続けながら、参照されているオブジェクトをマークしていきます。このプロセスは、ガベージコレクションとアプリケーションの処理が同時に行われるため、停止時間を抑えます。
- 再マーク: 再度、アプリケーションを一時的に停止して、並行マーク中に変更されたオブジェクトを追跡します。
- 並行スイープ: 使用されていないオブジェクトをメモリから解放します。このフェーズも並行して行われるため、停止時間を避けられます。
CMSガベージコレクションのメリット・デメリット
メリット
- アプリケーションの停止時間が非常に短いため、応答速度が重要なシステムに適している。
- 並行してメモリ管理を行うため、全体的なレスポンスタイムを最小化できる。
デメリット
- メモリフラグメンテーション(断片化)が発生しやすく、メモリ使用効率が低下する可能性がある。
- 時折「Concurrent Mode Failure」が発生し、大規模なStop-the-Worldが必要になる場合がある。
- 若干のオーバーヘッドが生じるため、非常に高いスループットが要求されるアプリケーションには向かない。
適用例
CMSガベージコレクションは、レスポンスタイムが重要なウェブアプリケーションやインタラクティブなサービスに最適です。ユーザーインターフェースの操作性やリアルタイム性が重要な場面では、その並行処理能力が大きなメリットとなります。一方で、CMSはヒープが大きくなるとパフォーマンスに影響が出やすいため、大規模なメモリを扱うシステムには注意が必要です。
G1ガベージコレクションの特徴と適用例
G1(Garbage First)ガベージコレクションは、大規模なアプリケーション向けに設計され、ヒープのパーティション化と並行処理を組み合わせた先進的なガベージコレクション方式です。主にStop-the-World時間の予測可能性と全体的なパフォーマンス向上を目的としています。
G1ガベージコレクションの仕組み
G1 GCは、ヒープを固定サイズのリージョンに分割し、それぞれのリージョンに対してガベージコレクションを行います。重要な特徴は、全ヒープを一度に処理するのではなく、ガベージ量の多いリージョンを優先的に収集する「ガベージファースト」なアプローチを取る点です。これにより、Stop-the-World時間を短縮し、ヒープ内の断片化を軽減します。
G1 GCは次のフェーズで動作します:
- 初期マーク: CMSと同様に、ルートオブジェクトをマークし、Stop-the-Worldで短期間の停止が発生します。
- ルートリージョンスキャン: アプリケーションの動作を続けながら、参照オブジェクトが多いリージョンをスキャンします。
- 並行マーク: リージョン内のオブジェクトを並行してマークし、不要なオブジェクトを特定します。
- 再マーク: Stop-the-Worldで再度短期間の停止があり、並行マーク中に変更されたオブジェクトを確認します。
- 並行クリーニング: 最もガベージ量が多いリージョンから順に不要なオブジェクトを解放します。
G1ガベージコレクションのメリット・デメリット
メリット
- リージョンベースの管理により、Stop-the-World時間が予測可能かつ短縮され、リアルタイム性に優れたアプリケーションで効果を発揮。
- ヒープ全体の断片化を減らすため、メモリ使用効率が高い。
- 大規模なヒープや複雑なアプリケーションにも対応できる設計。
デメリット
- 他のGC方式に比べて、初期のチューニングが必要になることがあり、最適なパフォーマンスを得るには設定を調整する必要がある。
- スループットはParallel GCほどではないため、スループットが最優先のアプリケーションには不向き。
適用例
G1ガベージコレクションは、大規模なエンタープライズアプリケーションや、リアルタイムに近いレスポンスが求められるウェブサービスでの利用に向いています。特に、ヒープサイズが非常に大きいアプリケーションや、レスポンスタイムを予測可能にしたい場合に効果的です。また、長時間にわたるStop-the-Worldが許容できないシステムにも最適です。
ZGCガベージコレクションの特徴と適用例
ZGC(Z Garbage Collector)は、Javaの最新世代のガベージコレクション方式で、非常に短い停止時間を実現するために設計されています。ZGCは、ヒープのサイズが数TBに及ぶ大規模システムにおいても、最大10ミリ秒以下のStop-the-World時間を維持することを目標としています。
ZGCガベージコレクションの仕組み
ZGCは、並行処理と非同期処理を活用することで、ガベージコレクションによるアプリケーションの停止時間をほぼゼロに近づけます。ZGCの最大の特徴は、ヒープのほとんどを並行して処理するため、ヒープが大きくなってもStop-the-Worldの時間が一定に保たれることです。
ZGCは以下のように動作します:
- マーク: ヒープ内のオブジェクトを並行してマークし、不要なオブジェクトを特定します。このプロセスはアプリケーションの処理と同時に行われるため、停止時間が発生しません。
- リロケーション: 必要に応じて、オブジェクトを別のリージョンに移動してヒープの断片化を防ぎます。リロケーションも並行して行われるため、長時間の停止はありません。
- 参照のリメップ: ZGCでは、メモリ参照を特殊なポインタで管理しており、オブジェクト移動後の参照を効率的にリマップします。
ZGCガベージコレクションのメリット・デメリット
メリット
- 最大の特徴は、ヒープサイズに関係なく、停止時間を常に数ミリ秒以下に抑えることができる点です。
- 非常に大きなヒープサイズ(数TB規模)でもスムーズに動作し、メモリ断片化の問題が少ない。
- 並行ガベージコレクションにより、アプリケーションのパフォーマンスに対する影響が最小限に抑えられる。
デメリット
- 他のGC方式に比べて初期設定が複雑で、メモリ消費量がやや多くなる傾向があります。
- スループットを最優先するシステムには、Parallel GCやG1の方が適している場合もあります。
適用例
ZGCは、非常に大規模なヒープを持つアプリケーションや、Stop-the-World時間が数ミリ秒でも許容できないリアルタイム性の高いアプリケーションに最適です。たとえば、金融取引システム、ビッグデータ解析、大規模なクラウドサービスでZGCは優れた選択肢です。また、メモリの断片化を最小化する必要がある長時間動作するサーバーアプリケーションでも効果的です。
ガベージコレクションの選択基準
Javaのガベージコレクションを選択する際には、アプリケーションの特性や要件に基づいて最適なGC方式を選ぶことが重要です。各ガベージコレクションには得意とする分野や、適したシステム環境があります。
アプリケーションの規模とヒープサイズ
- 小規模アプリケーション:ヒープサイズが小さく、シングルプロセッサ環境で動作するアプリケーションには、シンプルなSerial GCが適しています。これは、低リソースで動作でき、複雑なチューニングが不要です。
- 大規模アプリケーション:ヒープサイズが大きく、多くのメモリを使用するアプリケーションには、G1 GCやZGCが最適です。これらは大規模なヒープでも効率的にメモリ管理を行い、断片化を防ぐことができます。
スループット重視かレスポンスタイム重視か
- スループット重視:バッチ処理や大量のデータを処理するバックグラウンドアプリケーションでは、Stop-the-Worldの時間が多少長くてもスループットが優先されます。このような場合は、Parallel GCが適しています。複数スレッドを利用してヒープ全体を素早く処理するため、総合的な処理量が増加します。
- レスポンスタイム重視:ユーザーインターフェースが存在し、短い応答時間が求められるアプリケーションには、Stop-the-World時間を最小化できるCMS GCやZGCが推奨されます。これらのGCは、アプリケーションを中断することなくガベージコレクションを行い、快適なユーザーエクスペリエンスを提供します。
リアルタイム性が求められるか
リアルタイム性が重要なシステム、例えば金融取引やゲームサーバーのように、一瞬の停止でも問題が生じるアプリケーションでは、ZGCやG1 GCが適しています。特にZGCは、非常に短い停止時間を維持し、大規模なヒープにも対応可能です。
リソースの制約
サーバーのリソースが限られている場合、ガベージコレクション自体がパフォーマンスに悪影響を与えないよう、リソース効率の高いGC方式を選択する必要があります。たとえば、シングルスレッド処理でリソース消費が少ないSerial GCやCMS GCは、リソースが制限された環境でも適しています。
運用の柔軟性と安定性
安定性と柔軟性を求めるアプリケーションでは、最新の技術を積極的に取り入れたG1 GCやZGCが良い選択です。これらはチューニングがしやすく、最新のJavaバージョンでも積極的にサポートされており、長期的な運用にも耐えうる設計です。
ガベージコレクションのチューニング方法
ガベージコレクションは、デフォルト設定でも十分に機能しますが、アプリケーションのパフォーマンスを最大化するためには、チューニングが不可欠です。チューニングによって、停止時間やメモリ使用量、スループットなどを最適化できます。
ヒープサイズの調整
ヒープサイズの設定は、ガベージコレクションのパフォーマンスに大きな影響を与えます。ヒープサイズが小さすぎると頻繁にガベージコレクションが発生し、Stop-the-Worldの時間が増加します。一方、ヒープサイズが大きすぎると、ガベージコレクション自体にかかる時間が長くなるため、最適なヒープサイズを選択することが重要です。Javaでは、以下のようにヒープサイズを設定できます:
-Xms<size> # 初期ヒープサイズ
-Xmx<size> # 最大ヒープサイズ
適切なサイズは、アプリケーションの使用メモリ量に応じて調整する必要があります。
GC方式の選択と切り替え
Javaでは、複数のGC方式が提供されており、それらを明示的に選択することが可能です。以下は、代表的なGC方式の選択方法です:
-XX:+UseSerialGC # Serial GC
-XX:+UseParallelGC # Parallel GC
-XX:+UseConcMarkSweepGC # CMS GC
-XX:+UseG1GC # G1 GC
-XX:+UseZGC # ZGC
アプリケーションの特性に合わせて、最も適したGC方式を選択することで、停止時間やスループットを調整できます。
ガベージコレクションのログ設定
ガベージコレクションのパフォーマンスを把握し、チューニングするためには、GCのログを活用することが重要です。GCの実行時間、ヒープの使用状況、停止時間などを分析し、どこにボトルネックがあるのかを特定します。GCログを有効にするには、以下のように設定します:
-Xlog:gc* # GCログの出力
これにより、GCの挙動を詳細に記録し、最適化の参考にできます。
世代分けの調整
JavaのGCでは、オブジェクトを世代に分けて管理します。オブジェクトが生成されて間もないものは「若い世代」、長期間存在しているものは「古い世代」に分類され、それぞれに異なるGCが適用されます。世代ごとのメモリサイズや、若い世代のガベージコレクション頻度を調整することで、パフォーマンスを改善できます。以下のように、世代ごとのサイズを設定できます:
-XX:NewSize=<size> # 若い世代の初期サイズ
-XX:MaxNewSize=<size> # 若い世代の最大サイズ
若い世代のサイズを適切に設定することで、GCの頻度を減らし、アプリケーションの安定性を向上させられます。
Pause Timeの目標設定
特にG1 GCやZGCのような最新のGC方式では、停止時間(Pause Time)の目標を設定することで、停止時間をコントロールできます。例えば、G1 GCでは、以下の設定で目標となる停止時間を指定できます:
-XX:MaxGCPauseMillis=<time-in-ms> # 停止時間の最大目標
これにより、アプリケーションが求めるレスポンスタイムに合わせてGCを最適化することが可能です。
スレッド数の調整
Parallel GCやG1 GCでは、ガベージコレクションを行うスレッド数を調整することができます。以下のオプションで、スレッド数を指定します:
-XX:ParallelGCThreads=<number-of-threads> # GCに使用するスレッド数
スレッド数を調整することで、複数のCPUコアを効果的に活用し、GCのパフォーマンスを向上させられます。
チューニングのベストプラクティス
- GCログの分析: GCログを解析して、Stop-the-World時間やメモリ使用量を確認し、問題点を特定します。
- ヒープサイズの調整: アプリケーションのメモリ使用状況に応じて、ヒープサイズと世代ごとのサイズを適切に設定します。
- スレッド数の調整: マルチコアシステムでは、GCスレッド数を最大限活用するために適切に調整します。
- Pause Timeの目標設定: アプリケーションのレスポンスタイム要件に応じて、停止時間を短縮する目標を設定します。
ガベージコレクションのチューニングは、アプリケーションのパフォーマンスを最適化し、ユーザーに快適なエクスペリエンスを提供するための重要なステップです。
ガベージコレクションに関連するJavaの設定項目
Javaでは、ガベージコレクションの挙動を制御するために、さまざまな設定項目を使用してGCのパフォーマンスを最適化できます。これらの設定は、アプリケーションの要求に応じて細かく調整でき、適切に設定することでメモリ使用量や処理速度に大きな影響を与えます。
ヒープサイズに関する設定
ヒープサイズは、Javaアプリケーションのメモリ使用量に直結する設定であり、GCの動作にも大きな影響を与えます。適切なヒープサイズを設定することで、GCの頻度を調整し、Stop-the-Worldの時間を抑えられます。
-Xms<size> # ヒープの初期サイズ
-Xmx<size> # ヒープの最大サイズ
例えば、ヒープサイズが小さい場合、頻繁にGCが発生し、アプリケーションの停止時間が長くなります。一方、ヒープサイズが大きすぎると、メモリ効率が低下し、不要なメモリ消費を招くことがあります。
世代ごとのメモリ設定
Javaでは、メモリを「若い世代」と「老齢世代」に分けて管理します。これにより、オブジェクトのライフサイクルに応じて効率的にメモリを解放でき、世代ごとのメモリサイズを調整することが重要です。
-XX:NewSize=<size> # 若い世代の初期サイズ
-XX:MaxNewSize=<size> # 若い世代の最大サイズ
-XX:OldSize=<size> # 老齢世代のサイズ
若い世代のメモリサイズが小さすぎると、GCが頻発し、アプリケーションのパフォーマンスが低下します。逆に大きすぎると、不要なメモリを占有し、老齢世代のメモリ管理が遅延する可能性があります。
GC方式の選択設定
Javaは、複数のGC方式をサポートしており、アプリケーションのニーズに応じてGCのアルゴリズムを切り替えることが可能です。特定のGC方式を選択するための設定は以下の通りです。
-XX:+UseSerialGC # Serial GCの使用
-XX:+UseParallelGC # Parallel GCの使用
-XX:+UseConcMarkSweepGC # CMS GCの使用
-XX:+UseG1GC # G1 GCの使用
-XX:+UseZGC # ZGCの使用
アプリケーションのパフォーマンスやメモリ使用量に応じて、適切なGC方式を選択することで、Stop-the-World時間を短縮し、処理効率を最適化できます。
GCの停止時間の制御
特にG1 GCやZGCでは、停止時間を最小化するための制御が可能です。以下の設定を使用して、GCの目標停止時間を指定し、アプリケーションの応答時間を確保します。
-XX:MaxGCPauseMillis=<time-in-ms> # 目標停止時間の設定
この設定により、ガベージコレクション中の停止時間を一定以下に抑え、リアルタイム性が要求されるアプリケーションでも安定したパフォーマンスを提供できます。
GCログの出力設定
ガベージコレクションの動作を分析するためには、GCログを有効にして、そのパフォーマンスをモニタリングすることが重要です。GCログは、GCがどのように動作しているかを記録し、チューニングの参考にするための有益な情報を提供します。
-Xlog:gc* # GCログの有効化
この設定により、GCの実行状況、ヒープサイズの変動、停止時間などがログに記録され、GCチューニングの手がかりを得ることができます。
コンカレントモードでのGC設定
CMSやG1 GC、ZGCのような並行処理を行うGCでは、アプリケーションが停止する時間を極力減らすためにコンカレントモードが利用されます。特に、大規模なヒープを扱う場合や、低レイテンシーが求められるアプリケーションでは、これらの設定が効果的です。
-XX:+CMSConcurrentMTEnabled # CMS GCの並行処理の有効化
-XX:+UseG1GC # G1 GCでの並行処理の有効化
アロケーションレートの管理
Javaアプリケーションがオブジェクトを生成するスピードに合わせて、GCの頻度や効率を調整することも可能です。アロケーションレートが高い場合には、若い世代のGCが頻発するため、それを調整することでパフォーマンスの向上が期待できます。
-XX:GCTimeRatio=<value> # GCに割り当てるCPU時間の割合
この設定により、アプリケーションの処理時間に対するGCの影響を制御し、バランスの取れたパフォーマンスを実現します。
まとめ
ガベージコレクションに関連するJavaの設定項目を適切に調整することで、アプリケーションのメモリ管理を効率化し、停止時間の短縮やスループットの向上が期待できます。アプリケーションの特性に応じたGC方式と設定を選択し、最適なパフォーマンスを引き出すことが重要です。
応用例:各ガベージコレクションの適用シーン
ガベージコレクションの最適な選択は、アプリケーションの特性や要件に大きく依存します。ここでは、具体的なシナリオに応じた各ガベージコレクションの適用例を紹介し、どのような環境や状況で最適な選択肢となるかを解説します。
Serial GCの適用例
シングルスレッド環境や小規模なアプリケーション
Serial GCはシングルスレッドで動作するため、複数のCPUコアを活用できない状況や、小規模なメモリ環境では有効です。例えば、次のような場面で活用できます:
- デスクトップアプリケーションや、開発中の小規模アプリケーション
- メモリリソースが限られた組み込みシステムやIoTデバイス
Parallel GCの適用例
大量のデータを処理するサーバーアプリケーション
Parallel GCは、複数のスレッドを活用してガベージコレクションを高速に処理します。スループットを重視するアプリケーションに適しており、次のようなシステムに向いています:
- データ処理やログ収集など、バックグラウンドで大量の処理を行うサーバー
- スループットを最優先する大規模なバッチ処理アプリケーション
CMS GCの適用例
ユーザーインタラクティブなウェブアプリケーション
CMS GCは、アプリケーションの停止時間を最小限に抑えるため、リアルタイム性が求められる環境に適しています。次のようなケースで効果を発揮します:
- リクエストに素早く応答することが求められるウェブアプリケーション
- ユーザーインターフェースがあるアプリケーションで、レスポンスタイムが重要視されるシステム
G1 GCの適用例
大規模なエンタープライズアプリケーション
G1 GCは、ヒープの断片化を最小化しつつ、Stop-the-World時間を短縮するため、大規模でメモリ消費が激しいアプリケーションに向いています。以下のような状況で使用されます:
- ヒープサイズが大きく、リアルタイムの応答が重要なサーバーアプリケーション
- メモリの断片化を防ぎたい、複雑なエンタープライズシステム
ZGCの適用例
ヒープサイズが非常に大きいシステムやリアルタイム性が重要なアプリケーション
ZGCは、停止時間を数ミリ秒以下に抑えることができるため、超大規模なヒープを扱うアプリケーションや、Stop-the-World時間が許されない環境で最適です。次のようなシーンで活用できます:
- 金融取引システムやビッグデータ解析など、数テラバイト規模のメモリを必要とするシステム
- ゲームサーバーやリアルタイム通信が必須のアプリケーション
アプリケーションごとのガベージコレクション選択のまとめ
適切なガベージコレクション方式を選ぶためには、まずアプリケーションの特徴(スループット重視かレスポンスタイム重視か、大規模か小規模かなど)を理解することが重要です。各GC方式には得意な領域があるため、最適な選択を行うことで、アプリケーションのパフォーマンスを大幅に向上させることができます。
まとめ
本記事では、Javaのガベージコレクションの種類とそれぞれの特徴、選択基準について解説しました。Serial、Parallel、CMS、G1、ZGCといった各GC方式は、それぞれ異なるアプリケーションのニーズに応じて最適化されています。小規模なシステムではシンプルなSerial GC、大規模でスループットが求められる環境ではParallel GCやG1 GC、そしてリアルタイム性が重視される場面ではZGCやCMS GCが有効です。アプリケーションに最適なGC方式を選択し、適切なチューニングを行うことで、システムのパフォーマンスと安定性を最大化できます。
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