Javaのポリモーフィズム(多態性)は、オブジェクト指向プログラミングにおいて非常に重要な概念の一つです。ポリモーフィズムを活用することで、同じ操作を異なるクラスのオブジェクトに対して実行することが可能になります。これにより、コードの再利用性や拡張性が向上し、プログラムの柔軟性が大幅に増します。本記事では、ポリモーフィズムの基本的な概念から、Javaにおける具体的な実装方法、さらに応用例に至るまで、詳細に解説していきます。この記事を通じて、Javaのポリモーフィズムの理解を深め、効果的なプログラム設計ができるようになることを目指します。
ポリモーフィズムとは何か
ポリモーフィズムとは、オブジェクト指向プログラミングにおける重要な概念で、異なるクラスのオブジェクトが同じメソッド名を持つが、それぞれ異なる実装を持つことを指します。これにより、プログラムは動的に適切なメソッドを選択して実行することができ、コードの柔軟性と再利用性が高まります。Javaでは、ポリモーフィズムは主に継承とインターフェースを通じて実現され、コードの設計と構造を大幅に改善することが可能です。
ポリモーフィズムの種類
ポリモーフィズムには大きく分けて二つの種類があります:コンパイル時ポリモーフィズムと実行時ポリモーフィズムです。
コンパイル時ポリモーフィズム
コンパイル時ポリモーフィズムは、プログラムがコンパイルされる時点でメソッドが決定されるものを指します。Javaでは、メソッドのオーバーロード(同名のメソッドを複数定義すること)やオペレーターのオーバーロードがこれに該当します。メソッドのシグネチャ(引数の型や数)によって、適切なメソッドがコンパイル時に決定されます。
実行時ポリモーフィズム
実行時ポリモーフィズムは、プログラムの実行時にどのメソッドが呼び出されるかが決定されるものです。Javaでは、継承やインターフェースを通じたメソッドのオーバーライドがこれに該当します。実行時にオブジェクトの実際の型に基づいて、適切なメソッドが選ばれて実行されます。これにより、柔軟で拡張性のあるコードを書くことが可能になります。
Javaでのポリモーフィズムの実装方法
Javaにおけるポリモーフィズムは、主に継承とインターフェースの活用によって実現されます。これにより、異なるクラスで共通のメソッドを定義しながら、それぞれのクラスで独自の実装を提供することができます。
継承を利用したポリモーフィズム
継承は、あるクラスが別のクラスからプロパティやメソッドを引き継ぐ仕組みです。ポリモーフィズムを実現するために、親クラス(スーパークラス)に共通のメソッドを定義し、子クラス(サブクラス)でそのメソッドをオーバーライドします。これにより、同じメソッド呼び出しでも、実際に呼び出されるメソッドの実装はオブジェクトの型に依存します。
class Animal {
void makeSound() {
System.out.println("Some sound");
}
}
class Dog extends Animal {
@Override
void makeSound() {
System.out.println("Bark");
}
}
class Cat extends Animal {
@Override
void makeSound() {
System.out.println("Meow");
}
}
上記の例では、Animal
クラスのmakeSound
メソッドがDog
やCat
クラスでオーバーライドされています。Animal
型の変数にどのクラスのオブジェクトを割り当てるかによって、実行時に適切なメソッドが呼び出されます。
インターフェースを利用したポリモーフィズム
インターフェースは、クラスが実装すべきメソッドを定義する契約のようなものです。異なるクラスが同じインターフェースを実装することで、それらのクラスが共通のメソッドを持ちつつ、それぞれ異なる実装を提供することができます。
interface Soundable {
void makeSound();
}
class Dog implements Soundable {
@Override
public void makeSound() {
System.out.println("Bark");
}
}
class Cat implements Soundable {
@Override
public void makeSound() {
System.out.println("Meow");
}
}
インターフェースSoundable
を実装することで、Dog
やCat
はそれぞれ独自のmakeSound
メソッドを提供しています。このように、インターフェースを使用することで、複数のクラスが共通のメソッドを持ち、実行時ポリモーフィズムを実現することができます。
Javaでは、これらの方法を駆使してポリモーフィズムを効果的に実装し、柔軟で再利用可能なコードを作成することが可能です。
抽象クラスとポリモーフィズム
抽象クラスは、オブジェクト指向プログラミングにおいて、クラスの共通の特性をまとめつつ、具体的な実装はサブクラスに任せる仕組みを提供します。抽象クラスを使用することで、ポリモーフィズムを活用した柔軟な設計が可能となります。
抽象クラスの基本概念
抽象クラスは、完全な実装を持たない、あるいは一部のメソッドが実装されていないクラスです。抽象クラス自体はインスタンス化できませんが、サブクラスでその抽象メソッドを具体的に実装することが求められます。これにより、共通のインターフェースを提供しながら、各サブクラスに特化した実装を許容する柔軟性が得られます。
abstract class Animal {
abstract void makeSound();
void sleep() {
System.out.println("The animal is sleeping");
}
}
class Dog extends Animal {
@Override
void makeSound() {
System.out.println("Bark");
}
}
class Cat extends Animal {
@Override
void makeSound() {
System.out.println("Meow");
}
}
この例では、Animal
クラスは抽象クラスであり、makeSound
メソッドが抽象メソッドとして定義されています。これを継承するDog
やCat
クラスは、それぞれの特性に応じてmakeSound
メソッドを実装しています。
抽象クラスを使用するメリット
抽象クラスを用いたポリモーフィズムには以下のようなメリットがあります:
- コードの再利用性:共通の機能(例:
sleep
メソッド)を親クラスで実装し、サブクラスで共有することでコードの重複を避けることができます。 - 設計の一貫性:すべてのサブクラスが共通のインターフェースを持つため、設計が一貫しており、他の開発者が理解しやすくなります。
- 柔軟な拡張性:新しいクラスを追加する際も、抽象クラスを継承することで、既存のコードとの互換性を保ちながら柔軟に拡張できます。
抽象クラスとインターフェースの使い分け
抽象クラスとインターフェースは、どちらもポリモーフィズムを実現する手段ですが、使い分けには注意が必要です。インターフェースは複数の実装を許す一方、抽象クラスは一つしか継承できないため、クラス階層の設計やコードの再利用性を考慮して選択することが重要です。
抽象クラスを利用したポリモーフィズムは、共通の動作を提供しつつ、サブクラスごとの特性を柔軟に反映する設計を可能にします。これにより、より洗練されたオブジェクト指向プログラムを構築することができます。
インターフェースによるポリモーフィズム
インターフェースは、Javaでポリモーフィズムを実現するもう一つの強力な手段です。インターフェースを使用することで、異なるクラスが同じメソッドを実装し、共通の操作を提供しながら、それぞれのクラスに固有の処理を行うことが可能になります。
インターフェースの基本概念
インターフェースは、クラスが実装すべきメソッドのプロトタイプ(シグネチャ)を定義するもので、実装の詳細はクラス側に委ねられます。インターフェースを実装するクラスは、インターフェースで定義されたすべてのメソッドを実装する義務があります。
interface Drawable {
void draw();
}
class Circle implements Drawable {
@Override
public void draw() {
System.out.println("Drawing a circle");
}
}
class Rectangle implements Drawable {
@Override
public void draw() {
System.out.println("Drawing a rectangle");
}
}
この例では、Drawable
インターフェースが定義され、それを実装するCircle
とRectangle
クラスがそれぞれdraw
メソッドを具体的に実装しています。Drawable
インターフェースを介して、どちらのクラスも同じdraw
メソッドを持つことが保証されているため、統一された操作が可能になります。
インターフェースを活用するメリット
インターフェースによるポリモーフィズムには次のような利点があります:
- 柔軟性の向上:クラスが他のクラス階層に依存することなく、共通の機能を提供できるため、より柔軟な設計が可能です。
- 複数のインターフェースの実装:Javaでは、クラスは複数のインターフェースを実装できるため、一つのクラスが異なる操作を提供する場合でも、共通のインターフェースを利用することができます。
- プラグイン可能な設計:インターフェースを利用することで、異なる実装を容易に交換できるプラグイン方式の設計が可能になります。
実践例:異なる描画オブジェクトの操作
Drawable
インターフェースを利用することで、異なる描画オブジェクトを同じ操作で扱うことができます。たとえば、描画オブジェクトのリストを作成し、すべてのオブジェクトに対してdraw
メソッドを呼び出すことで、個々のオブジェクトの種類に関係なく、一貫した操作が可能です。
public class DrawingApp {
public static void main(String[] args) {
List<Drawable> shapes = Arrays.asList(new Circle(), new Rectangle());
for (Drawable shape : shapes) {
shape.draw();
}
}
}
このコードでは、Circle
とRectangle
のどちらのオブジェクトもDrawable
インターフェースを実装しているため、draw
メソッドを一貫して呼び出すことができます。これにより、異なるオブジェクトを同一の方法で操作することが可能になります。
インターフェースと抽象クラスの使い分け
インターフェースは、クラス間の共通機能を提供しつつ、複数のインターフェースを実装できるため、柔軟な設計が可能です。一方、抽象クラスは、共有する実装を持たせたい場合に適しており、クラス階層全体にわたって共通の動作を定義できます。両者の使い分けは、設計の目的に応じて行うと良いでしょう。
インターフェースを活用することで、Javaプログラムにおいて高い柔軟性と拡張性を実現でき、異なるクラスでも共通の操作を一貫して提供することが可能になります。
実践例:動物クラスを使ったポリモーフィズム
ポリモーフィズムの理解を深めるために、具体的な例として「動物クラス」を使ったポリモーフィズムの実装を見ていきます。この例では、異なる動物クラスが共通のインターフェースを実装し、それぞれ独自の振る舞いを持つことで、ポリモーフィズムの力を活用します。
動物クラスの設計
まず、基本となるAnimal
クラスを定義し、それを継承する形でDog
とCat
クラスを作成します。Animal
クラスには、すべての動物が持つ共通のメソッドmakeSound
を定義しますが、このメソッドは具体的な動作を持たない抽象メソッドとします。
abstract class Animal {
abstract void makeSound();
}
次に、Animal
クラスを継承するDog
とCat
クラスを作成し、それぞれでmakeSound
メソッドをオーバーライドします。
class Dog extends Animal {
@Override
void makeSound() {
System.out.println("Bark");
}
}
class Cat extends Animal {
@Override
void makeSound() {
System.out.println("Meow");
}
}
これにより、Dog
とCat
クラスは、makeSound
メソッドを通じて、それぞれ独自のサウンドを発するように動作します。
ポリモーフィズムの実践
次に、これらのクラスを使って、ポリモーフィズムを実践します。以下のコードでは、Animal
型の変数を使って、Dog
やCat
のオブジェクトを操作します。
public class AnimalTest {
public static void main(String[] args) {
Animal myDog = new Dog();
Animal myCat = new Cat();
myDog.makeSound(); // 出力: Bark
myCat.makeSound(); // 出力: Meow
}
}
このコードでは、Animal
型の変数myDog
とmyCat
にそれぞれDog
とCat
のインスタンスを割り当てています。makeSound
メソッドを呼び出す際、実行時ポリモーフィズムにより、実際にどのメソッドが呼び出されるかはオブジェクトの型に依存します。これにより、Dog
の場合は「Bark」、Cat
の場合は「Meow」というそれぞれのサウンドが出力されます。
リストを使った動物オブジェクトの操作
さらに、ポリモーフィズムのもう一つの強力な使い方として、Animal
型のリストを使って複数の動物オブジェクトを一括で操作する方法があります。
import java.util.ArrayList;
import java.util.List;
public class Zoo {
public static void main(String[] args) {
List<Animal> animals = new ArrayList<>();
animals.add(new Dog());
animals.add(new Cat());
for (Animal animal : animals) {
animal.makeSound();
}
}
}
このコードでは、List<Animal>
を使ってDog
やCat
のオブジェクトを格納し、makeSound
メソッドを順に呼び出しています。これにより、リスト内のオブジェクトが何であれ、適切なmakeSound
メソッドが実行されます。
応用可能性と利便性
このような設計は、動物の種類が増えても柔軟に対応できます。例えば、新たにBird
クラスを追加する際も、Animal
クラスを継承し、makeSound
メソッドをオーバーライドするだけで、既存のコードに手を加えることなく新しい動物を扱うことができます。これにより、コードの拡張性と保守性が向上します。
動物クラスを使ったこの実践例を通じて、ポリモーフィズムがいかに強力であり、柔軟なコード設計を可能にするかを理解することができるでしょう。
メソッドのオーバーライドとポリモーフィズム
メソッドのオーバーライドは、ポリモーフィズムを実現するための重要な技術です。Javaでは、親クラスやインターフェースで定義されたメソッドを、サブクラスで再定義することで、それぞれのクラスに特化した動作を実装できます。これにより、オブジェクトがその実際の型に応じた適切なメソッドを実行できるようになります。
メソッドのオーバーライドとは
メソッドのオーバーライドとは、親クラスやインターフェースで定義されたメソッドを、サブクラスで同じ名前、引数リスト、戻り値型で再定義することを指します。オーバーライドされたメソッドは、サブクラスのインスタンスによって呼び出された場合に、そのサブクラス独自の実装が実行されます。
class Animal {
void makeSound() {
System.out.println("Some generic animal sound");
}
}
class Dog extends Animal {
@Override
void makeSound() {
System.out.println("Bark");
}
}
class Cat extends Animal {
@Override
void makeSound() {
System.out.println("Meow");
}
}
この例では、Animal
クラスのmakeSound
メソッドがDog
とCat
クラスでオーバーライドされています。それぞれのクラスは、自分の特性に合わせたメソッドの実装を提供しています。
オーバーライドによるポリモーフィズムの実現
オーバーライドを活用することで、同じメソッド呼び出しがオブジェクトの型に応じて異なる動作をするポリモーフィズムが実現されます。以下のコード例を見てみましょう。
public class AnimalTest {
public static void main(String[] args) {
Animal myDog = new Dog();
Animal myCat = new Cat();
myDog.makeSound(); // 出力: Bark
myCat.makeSound(); // 出力: Meow
}
}
このコードでは、myDog
とmyCat
という異なるオブジェクトが、それぞれDog
とCat
クラスに属しています。makeSound
メソッドを呼び出すと、実行時ポリモーフィズムにより、それぞれのクラスに対応したメソッドが実行されます。
オーバーライドのルール
メソッドのオーバーライドには、いくつかの重要なルールがあります:
- メソッド名、引数リスト、戻り値の型が親クラスと同一であること:オーバーライドするメソッドは、元のメソッドと完全に一致するシグネチャを持つ必要があります。
- アクセス修飾子は親クラスよりも厳しくしてはいけない:例えば、親クラスのメソッドが
public
である場合、サブクラスでprotected
やprivate
に変更することはできません。 - 例外は親クラスのメソッドで宣言されているものと同じか、そのサブクラスでなければならない:オーバーライドされたメソッドがスローする例外は、元のメソッドがスローする例外と互換性がなければなりません。
オーバーライドのメリット
メソッドのオーバーライドを使用すると、以下のようなメリットが得られます:
- 柔軟性の向上:親クラスで定義された機能をサブクラスで変更できるため、より柔軟な設計が可能です。
- コードの再利用:共通の機能を親クラスに持たせ、サブクラスでそれを拡張することで、コードの再利用が促進されます。
- 動的メソッドディスパッチ:実行時にオブジェクトの実際の型に応じたメソッドが呼び出されるため、動的に適切な動作を選択することができます。
メソッドのオーバーライドは、Javaにおけるポリモーフィズムの核となる機能であり、これを理解することで、より高度なオブジェクト指向プログラミングが可能になります。オーバーライドを活用することで、クラス設計の柔軟性と再利用性を高め、メンテナンス性の向上につなげることができます。
ポリモーフィズムを活用した設計パターン
ポリモーフィズムは、Javaの設計パターンにおいても非常に重要な役割を果たします。設計パターンとは、特定の問題を解決するための汎用的な解決策を提供する、再利用可能なコード設計のテンプレートです。ここでは、ポリモーフィズムを活用した代表的な設計パターンをいくつか紹介します。
ストラテジーパターン
ストラテジーパターンは、アルゴリズムのファミリーを定義し、それぞれをカプセル化して相互に置き換え可能にする設計パターンです。このパターンを使用すると、アルゴリズムを実行時に選択することができます。
interface PaymentStrategy {
void pay(int amount);
}
class CreditCardPayment implements PaymentStrategy {
@Override
public void pay(int amount) {
System.out.println("Paid " + amount + " using Credit Card.");
}
}
class PayPalPayment implements PaymentStrategy {
@Override
public void pay(int amount) {
System.out.println("Paid " + amount + " using PayPal.");
}
}
class ShoppingCart {
private PaymentStrategy paymentStrategy;
public void setPaymentStrategy(PaymentStrategy paymentStrategy) {
this.paymentStrategy = paymentStrategy;
}
public void checkout(int amount) {
paymentStrategy.pay(amount);
}
}
この例では、PaymentStrategy
インターフェースを使用して、支払い方法をカプセル化しています。ShoppingCart
クラスでは、異なる支払い方法を動的に選択することができ、checkout
メソッドを通じてポリモーフィズムを利用した柔軟な決済処理が実現されています。
ファクトリーパターン
ファクトリーパターンは、オブジェクトの生成をファクトリーメソッドに委ねる設計パターンです。これにより、クラスのインスタンス生成をサブクラスに任せることができ、依存関係の低減と柔軟なオブジェクト生成が可能になります。
abstract class AnimalFactory {
abstract Animal createAnimal();
void makeSound() {
Animal animal = createAnimal();
animal.makeSound();
}
}
class DogFactory extends AnimalFactory {
@Override
Animal createAnimal() {
return new Dog();
}
}
class CatFactory extends AnimalFactory {
@Override
Animal createAnimal() {
return new Cat();
}
}
この例では、AnimalFactory
クラスがcreateAnimal
メソッドを使用してオブジェクトの生成を行います。具体的な生成は、DogFactory
やCatFactory
のようなサブクラスで行われ、ファクトリーパターンを通じてポリモーフィズムを活用した柔軟なオブジェクト生成が可能となっています。
デコレーターパターン
デコレーターパターンは、オブジェクトに動的に機能を追加する設計パターンです。ポリモーフィズムを使用して、オブジェクトの基底クラスを拡張し、追加機能を組み合わせて柔軟に提供することができます。
interface Coffee {
String getDescription();
double cost();
}
class SimpleCoffee implements Coffee {
@Override
public String getDescription() {
return "Simple coffee";
}
@Override
public double cost() {
return 5.00;
}
}
class MilkDecorator implements Coffee {
private Coffee coffee;
public MilkDecorator(Coffee coffee) {
this.coffee = coffee;
}
@Override
public String getDescription() {
return coffee.getDescription() + ", Milk";
}
@Override
public double cost() {
return coffee.cost() + 1.50;
}
}
class SugarDecorator implements Coffee {
private Coffee coffee;
public SugarDecorator(Coffee coffee) {
this.coffee = coffee;
}
@Override
public String getDescription() {
return coffee.getDescription() + ", Sugar";
}
@Override
public double cost() {
return coffee.cost() + 0.50;
}
}
この例では、Coffee
インターフェースとその実装であるSimpleCoffee
に対して、MilkDecorator
やSugarDecorator
を使用して機能を追加しています。デコレーターパターンにより、ポリモーフィズムを利用して柔軟に機能を拡張することができます。
テンプレートメソッドパターン
テンプレートメソッドパターンは、アルゴリズムの骨組みをスーパークラスで定義し、具体的な処理はサブクラスで実装するパターンです。このパターンを通じて、アルゴリズムの共通部分を再利用しつつ、ポリモーフィズムを利用して具体的な処理を柔軟にカスタマイズできます。
abstract class Game {
abstract void initialize();
abstract void startPlay();
abstract void endPlay();
public final void play() {
initialize();
startPlay();
endPlay();
}
}
class Cricket extends Game {
@Override
void initialize() {
System.out.println("Cricket Game Initialized!");
}
@Override
void startPlay() {
System.out.println("Cricket Game Started!");
}
@Override
void endPlay() {
System.out.println("Cricket Game Finished!");
}
}
class Football extends Game {
@Override
void initialize() {
System.out.println("Football Game Initialized!");
}
@Override
void startPlay() {
System.out.println("Football Game Started!");
}
@Override
void endPlay() {
System.out.println("Football Game Finished!");
}
}
この例では、Game
クラスがテンプレートメソッドplay
を提供し、具体的なゲームの初期化、開始、終了の処理はサブクラスのCricket
やFootball
で実装されています。テンプレートメソッドパターンを通じて、ポリモーフィズムを活用しつつ、共通の処理を再利用することができます。
これらの設計パターンを通じて、ポリモーフィズムがJavaプログラムにおいてどのように役立つかを理解し、実践的に活用することで、より柔軟で拡張性の高いコードを設計することができます。
ポリモーフィズムのメリットとデメリット
ポリモーフィズムは、オブジェクト指向プログラミングにおいて非常に強力な概念であり、多くのメリットを提供しますが、その反面、注意すべきデメリットも存在します。ここでは、ポリモーフィズムの主な利点と欠点について詳しく説明します。
ポリモーフィズムのメリット
1. コードの再利用性と保守性の向上
ポリモーフィズムを利用することで、同じコードを再利用できるため、プログラムの保守性が向上します。例えば、親クラスのメソッドをサブクラスでオーバーライドすることで、既存のコードを変更することなく、新しい動作を追加できます。
2. 拡張性の向上
新しいクラスや機能を追加する際、既存のコードに変更を加える必要がなく、プログラムの拡張が容易になります。新たなサブクラスを追加するだけで、新しい動作を取り入れることが可能です。
3. 動的結合による柔軟な設計
ポリモーフィズムは、実行時にオブジェクトの実際の型に応じてメソッドが呼び出される動的結合を可能にします。これにより、プログラムは柔軟に動作し、異なるオブジェクトを一貫して操作できるようになります。
ポリモーフィズムのデメリット
1. パフォーマンスの低下
ポリモーフィズムの動的結合にはオーバーヘッドが伴い、特に大量のオブジェクトを処理する場合、パフォーマンスが低下する可能性があります。実行時にメソッドが動的に解決されるため、静的結合よりも時間がかかる場合があります。
2. 複雑さの増加
ポリモーフィズムを多用すると、コードが複雑になり、理解やデバッグが難しくなることがあります。特に大規模なプロジェクトでは、どのメソッドが実際に呼び出されるのかを追跡するのが困難になることがあります。
3. 設計の過度な一般化
ポリモーフィズムを過度に利用すると、設計が一般化しすぎて、特定のケースに対する最適なソリューションが提供できなくなる可能性があります。これは、オーバーエンジニアリングの一因となることがあります。
まとめ
ポリモーフィズムは、コードの再利用性や拡張性を高める強力なツールですが、同時にパフォーマンスの低下やコードの複雑化などのデメリットも伴います。これらの利点と欠点を理解した上で、適切な場面でポリモーフィズムを活用することが重要です。ポリモーフィズムを効果的に利用することで、より柔軟でメンテナンスしやすいプログラム設計が可能になります。
演習問題:ポリモーフィズムの活用
ポリモーフィズムの理解を深め、実際のプログラムで活用できるようにするため、以下の演習問題を解いてみましょう。これらの問題は、ポリモーフィズムの基本概念から応用までを実践的に学ぶことができる内容になっています。
演習1: メソッドのオーバーライド
以下のコードに基づいて、Shape
クラスを親クラスとして、Circle
、Rectangle
、Triangle
の3つのサブクラスを作成し、それぞれdraw
メソッドをオーバーライドしてください。各クラスで異なる形を描画するメッセージを出力するようにしてください。
abstract class Shape {
abstract void draw();
}
ヒント: Circle
クラスでは「Drawing a Circle」、Rectangle
クラスでは「Drawing a Rectangle」、Triangle
クラスでは「Drawing a Triangle」と表示するようにします。
演習2: インターフェースの実装
次に、以下のPlayable
インターフェースを実装してみましょう。Playable
インターフェースにはplay
メソッドが定義されています。VideoPlayer
とAudioPlayer
の2つのクラスを作成し、それぞれplay
メソッドを実装してください。
interface Playable {
void play();
}
ヒント: VideoPlayer
クラスでは「Playing video」、AudioPlayer
クラスでは「Playing audio」と表示するようにします。
演習3: リストを使ったポリモーフィズムの活用
Shape
クラスを拡張し、いくつかの形状(例えば、円、長方形、三角形)をリストに格納してください。その後、リストをループして、各形状に対してdraw
メソッドを呼び出し、すべての形状を描画するプログラムを作成してください。
ヒント: 先に作成したShape
クラスとそのサブクラスを利用します。
演習4: ファクトリーパターンの実装
ShapeFactory
クラスを作成し、その中でShape
オブジェクトを生成するファクトリーメソッドを実装してください。このメソッドは、文字列(例えば “circle”, “rectangle”, “triangle”)に基づいて適切なShape
オブジェクトを返すようにします。
class ShapeFactory {
public Shape getShape(String shapeType) {
// ここにコードを追加してください
}
}
ヒント: ShapeFactory
クラスのgetShape
メソッド内で、条件分岐を使って正しいShape
オブジェクトを返すようにします。
演習5: デコレーターパターンの実装
前に作成したCoffee
インターフェースとその実装クラスに基づいて、新しいデコレータを追加してください。例えば、「チョコレート」デコレータを追加し、既存のコーヒーにチョコレートを追加できるようにしてみましょう。
ヒント: ChocolateDecorator
クラスを作成し、Coffee
インターフェースを実装します。既存のコーヒーにチョコレートの説明とコストを追加します。
演習問題のまとめ
これらの演習問題を解くことで、ポリモーフィズムの基本的な概念や実装方法について理解を深めることができます。また、ポリモーフィズムを活用した設計パターンの実践により、実際のプロジェクトでも応用可能な知識を得ることができるでしょう。各問題を通じて、自分の理解度を確認しながら、ポリモーフィズムの利点を最大限に活かす方法を習得してください。
まとめ
本記事では、Javaにおけるポリモーフィズムの概念とその実践について詳しく解説しました。ポリモーフィズムは、オブジェクト指向プログラミングにおいて、柔軟で拡張性のある設計を実現するための重要な手法です。メソッドのオーバーライドやインターフェースの実装、さらには設計パターンを通じて、ポリモーフィズムを効果的に活用する方法を学びました。メリットとデメリットを理解した上で、適切にポリモーフィズムを取り入れることで、より洗練された、保守しやすいコードを書けるようになるでしょう。これらの知識を活用し、実際のプロジェクトでもポリモーフィズムの力を発揮してください。
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