古いブラウザをサポートするためのJavaScriptポリフィルの使い方

JavaScriptの進化に伴い、最新のWeb機能を活用することで、ユーザー体験や開発効率を向上させることが可能になりました。しかし、これらの新機能はすべてのブラウザでサポートされているわけではなく、特に古いブラウザでは多くの機能が利用できません。企業や開発者にとって、広範なユーザー層を対象とする場合、古いブラウザを無視することはビジネスチャンスの損失につながる可能性があります。そこで登場するのが「ポリフィル」と呼ばれる技術です。ポリフィルを使用することで、最新のJavaScript機能を古いブラウザでも動作させることができ、ユーザーに一貫した体験を提供することができます。本記事では、ポリフィルの基本概念から導入方法、そして実際の使用例までを詳しく解説します。これにより、古いブラウザをサポートしながら最新技術を活用する方法について理解を深めることができます。

目次

ポリフィルとは何か

ポリフィルとは、JavaScriptの新しい機能をサポートしていない古いブラウザで、その機能をエミュレートするために使用されるコードのことを指します。具体的には、ブラウザが標準仕様に従っていない場合や、最新のWeb技術に対応していない場合に、これらの機能を実装するための補助コードです。ポリフィルは、主に開発者が一貫したユーザー体験を提供するために使用され、特定のJavaScript APIやCSSの機能が欠如しているブラウザ環境でも、アプリケーションが適切に動作するようにします。ポリフィルを利用することで、異なるブラウザ間での互換性問題を解消し、より多くのユーザーにリーチできるようになるのです。

なぜ古いブラウザをサポートする必要があるのか

古いブラウザをサポートする理由は、多岐にわたります。まず第一に、全てのユーザーが最新のブラウザを使用しているわけではありません。企業の内部システムや教育機関、発展途上国のユーザーなど、さまざまな理由で古いブラウザを使い続けているケースが多々あります。これらのユーザーを無視すると、ビジネスの機会を逃すだけでなく、ユーザーエクスペリエンスが低下し、ブランドイメージに悪影響を与える可能性があります。

また、古いブラウザをサポートすることは、アクセシビリティの観点からも重要です。特に政府機関や公共サービスを提供するウェブサイトでは、すべての国民がアクセスできることが求められます。さらに、一部の企業では、内部システムの制約により、最新のブラウザを導入するのが困難な場合もあります。このような環境でWebサービスを提供する場合、古いブラウザのサポートは不可欠です。

以上のように、古いブラウザをサポートすることは、ビジネスの成長を促進し、幅広いユーザー層に対応するための重要な戦略です。ポリフィルを活用することで、最新技術の恩恵を享受しながら、互換性のあるユーザー体験を提供できます。

よく使用されるポリフィルの例

JavaScriptのポリフィルは、多くのWeb開発者によって使用されており、さまざまな新しい機能を古いブラウザで利用可能にするためのツールとして広く普及しています。ここでは、よく使用される代表的なポリフィルの例をいくつか紹介します。

ES5およびES6機能のポリフィル

ES5およびES6で導入された新しいメソッドや機能は、すべてのブラウザでサポートされているわけではありません。たとえば、Array.prototype.forEachObject.keysといったメソッドは、古いブラウザでは利用できない場合があります。これらの機能をサポートするために、core-jses5-shimといったポリフィルライブラリが広く使用されています。

Promiseのポリフィル

非同期処理を簡単に扱うためのPromiseは、モダンなJavaScript開発で頻繁に使用されますが、古いブラウザではサポートされていません。promise-polyfillES6-Promiseといったポリフィルを使用することで、Promiseをサポートしていない環境でも同様の非同期処理が可能になります。

Fetch APIのポリフィル

Fetch APIは、HTTPリクエストを行うための新しい標準的な方法ですが、古いブラウザではサポートされていません。これを補うために、whatwg-fetchといったポリフィルが使用され、XMLHttpRequestと同様の機能を提供します。

IntersectionObserverのポリフィル

IntersectionObserverは、要素がビューポート内に入ったり出たりすることを監視するためのAPIですが、古いブラウザでは対応していません。intersection-observerポリフィルを使うことで、この機能をすべてのブラウザで利用可能にできます。

これらのポリフィルを使用することで、モダンなWeb機能を古いブラウザでも活用でき、幅広いユーザーに対応したWebアプリケーションの構築が可能になります。

ポリフィルの導入方法

ポリフィルを導入することで、古いブラウザでも最新のJavaScript機能を利用できるようになります。ここでは、具体的な導入方法をステップバイステップで説明します。

CDNを利用したポリフィルの導入

最も簡単な方法は、CDN(Content Delivery Network)を利用してポリフィルを読み込むことです。例えば、core-jsを使ってES6機能をサポートする場合、以下のコードをHTMLファイルの<head>セクションに追加します。

<script src="https://cdn.jsdelivr.net/npm/core-js-bundle@3.0.0/minified.js"></script>

これにより、古いブラウザでもES6の機能が利用可能になります。

ローカルファイルとしてポリフィルを導入する方法

ポリフィルのファイルをダウンロードして、プロジェクトに含めることも可能です。例えば、promise-polyfillをローカルに導入するには、まずnpmでインストールします。

npm install promise-polyfill

その後、必要なJavaScriptファイルを読み込みます。

<script src="node_modules/promise-polyfill/dist/polyfill.min.js"></script>

これにより、PromiseがサポートされていないブラウザでもPromiseを使用できるようになります。

条件付きでポリフィルを読み込む

すべてのユーザーが最新のブラウザを使用しているわけではないため、条件付きでポリフィルを読み込むことが効率的です。たとえば、Promiseがサポートされていない場合にのみ、promise-polyfillを読み込むコードは以下のようになります。

<script>
  if (!window.Promise) {
    document.write('<script src="node_modules/promise-polyfill/dist/polyfill.min.js"><\/script>');
  }
</script>

これにより、無駄なポリフィルの読み込みを避け、パフォーマンスの向上が期待できます。

ビルドツールを使ったポリフィルの導入

現代のJavaScript開発では、WebpackやBabelなどのビルドツールを使ってポリフィルを自動的に追加する方法も一般的です。Babelを使用する場合、@babel/preset-envを設定し、ターゲットブラウザに応じて必要なポリフィルだけをインクルードすることが可能です。

{
  "presets": [
    ["@babel/preset-env", {
      "useBuiltIns": "entry",
      "corejs": 3
    }]
  ]
}

この設定により、ターゲットブラウザの互換性に応じたポリフィルが自動的に追加されます。

これらの方法を活用して、プロジェクトに適したポリフィルを導入し、古いブラウザでも安定した動作を確保することができます。

ポリフィルのテストと検証

ポリフィルを導入した後は、実際にそれが意図した通りに動作しているかをテスト・検証することが重要です。適切なテストを行うことで、古いブラウザでも新しい機能が確実に動作し、ユーザーが快適にWebアプリケーションを利用できることを確認できます。

ブラウザテストの実施

まず、ポリフィルが正しく機能しているかを確認するために、複数のブラウザでテストを行います。特に、ターゲットとしている古いバージョンのブラウザで動作確認をすることが重要です。例えば、Internet Explorer 11や古いバージョンのSafariなどが対象になることが多いです。テストには、実機や仮想環境を使用することが推奨されますが、難しい場合はBrowserStackやSauce Labsなどのクラウドベースのテストツールを利用すると便利です。

機能テストの実装

導入したポリフィルが特定の機能を正しく提供しているかを確認するために、機能テストを行います。たとえば、Promiseポリフィルを導入した場合、以下のように簡単なテストコードを実装します。

if (typeof Promise !== "undefined") {
  console.log("Promise is supported!");
} else {
  console.error("Promise is not supported!");
}

このようなテストを複数実施し、すべての機能が期待通りに動作することを確認します。

ユニットテストによる検証

ユニットテストを用いて、ポリフィルが正確に機能しているかをさらに詳しく検証します。JestやMocha、Chaiなどのテスティングフレームワークを使用して、ポリフィルが実装した機能をカバーするテストケースを作成します。以下は、Array.prototype.includesポリフィルのテスト例です。

describe('Array.prototype.includes Polyfill', function() {
  it('should return true if array contains element', function() {
    expect([1, 2, 3].includes(2)).toBe(true);
  });

  it('should return false if array does not contain element', function() {
    expect([1, 2, 3].includes(4)).toBe(false);
  });
});

このようなユニットテストを実施することで、コードの変更やアップデートによる不具合を未然に防ぐことができます。

継続的インテグレーション(CI)を活用する

ポリフィルを含むコードの品質を継続的に確認するため、JenkinsやGitHub ActionsなどのCIツールを使用して自動テストを行います。これにより、コードがリリースされる前にポリフィルの動作が常に確認され、品質を保つことができます。

これらのテストと検証のステップを踏むことで、ポリフィルが適切に動作し、ユーザーに一貫した体験を提供できることを確認できます。

ポリフィルとブラウザ性能への影響

ポリフィルを導入することで、古いブラウザでも最新の機能を使用できるようになりますが、その反面、ブラウザの性能に与える影響についても考慮する必要があります。特に、複数のポリフィルを導入する場合や、リソースが限られている環境では、パフォーマンスに注意を払うことが重要です。

ポリフィルのファイルサイズとロード時間

ポリフィルを導入すると、追加のJavaScriptコードが必要になるため、ページの総ファイルサイズが増加します。特に大規模なポリフィルを複数使用すると、ページのロード時間が長くなる可能性があります。たとえば、core-jsのような包括的なポリフィルライブラリを導入すると、数十キロバイトから数百キロバイトの追加コードが読み込まれることがあります。

この影響を最小限に抑えるためには、ポリフィルの導入を必要最低限にすることが重要です。特定の機能だけを補完する軽量のポリフィルを選択したり、条件付きでポリフィルを読み込む手法を採用することで、パフォーマンスへの影響を減らすことができます。

実行速度への影響

ポリフィルは、ブラウザがサポートしていない機能をエミュレートするため、ネイティブ実装よりも実行速度が遅くなる場合があります。特に、パフォーマンスに敏感なアプリケーションや大量のデータ処理を行う場合、ポリフィルによるオーバーヘッドが顕著になることがあります。

例えば、Array.prototype.includesのポリフィルは、ネイティブな実装よりも若干遅くなることが一般的です。これは、ポリフィルがJavaScriptで機能を模倣しているため、ブラウザの内部最適化を完全には利用できないからです。このため、パフォーマンスが重要な部分では、ポリフィルの使用を慎重に検討する必要があります。

メモリ使用量への影響

ポリフィルは追加のコードやデータ構造を導入するため、ブラウザのメモリ使用量が増加する可能性があります。特に、リソースが限られているモバイルデバイスや、メモリが少ない古いコンピュータでは、この影響が大きくなることがあります。メモリ使用量を最適化するためには、ポリフィルの導入を最小限に抑えるとともに、効率的なメモリ管理を行うことが必要です。

ブラウザごとの最適化とポリフィルの選択

ブラウザごとにパフォーマンス特性が異なるため、ポリフィルを選択する際には、対象ブラウザでの性能も考慮する必要があります。たとえば、core-jsのような包括的なライブラリは、多くの機能をサポートしますが、その分、パフォーマンスへの影響も大きくなる可能性があります。特定のブラウザでのみ問題が発生する場合は、必要な機能だけを補完する軽量ポリフィルを選択するのが良いでしょう。

ポリフィルの導入による性能への影響は、しっかりとしたテストと検証によって把握し、最適なバランスを見つけることが重要です。これにより、ユーザーに快適な体験を提供しつつ、互換性のあるアプリケーションを構築することができます。

モダンブラウザと古いブラウザの共存戦略

Web開発において、モダンブラウザの新機能を活用しながら、古いブラウザでも適切に動作させることは、しばしば困難な課題となります。このセクションでは、モダンブラウザと古いブラウザを共存させるためのベストプラクティスを紹介し、互換性を維持しつつ、パフォーマンスを最大化する方法を探ります。

プログレッシブエンハンスメントとグレースフルデグラデーション

モダンブラウザと古いブラウザを共存させるための基本的なアプローチとして、「プログレッシブエンハンスメント」と「グレースフルデグラデーション」があります。

プログレッシブエンハンスメントは、基本機能を全てのブラウザで提供し、モダンブラウザではさらに高度な機能を追加する方法です。これにより、古いブラウザでも最低限の機能が保証され、モダンブラウザではリッチなユーザー体験を提供できます。

一方、グレースフルデグラデーションは、モダンブラウザ向けに設計されたリッチな機能を実装し、古いブラウザでは可能な限りの代替手段を提供するアプローチです。この方法では、最新技術を優先しつつ、古いブラウザでも破綻なく機能することを目指します。

条件付き読み込みと分岐ロジック

モダンブラウザと古いブラウザを効率的にサポートするためには、条件付き読み込みと分岐ロジックを活用することが効果的です。たとえば、モダンブラウザでのみ必要なJavaScriptコードやCSSを条件付きで読み込むことで、古いブラウザへの影響を最小限に抑えることができます。

<script>
  if ('fetch' in window) {
    // Fetch APIをサポートしている場合のみ、関連するスクリプトを読み込む
    loadScript('modern-fetch-implementation.js');
  } else {
    // Fetch APIをサポートしていない場合は、ポリフィルを読み込む
    loadScript('fetch-polyfill.js');
  }
</script>

このように、特定の機能がブラウザでサポートされているかどうかを判別し、適切なスクリプトを動的に読み込むことで、不要なポリフィルの読み込みを避け、パフォーマンスを向上させることができます。

リスポンシブデザインとメディアクエリの活用

リスポンシブデザインは、さまざまなデバイスやブラウザ環境に適応するために不可欠な手法です。CSSのメディアクエリを活用することで、モダンブラウザと古いブラウザに応じたスタイルを適用することができます。

/* モダンブラウザ向けのスタイル */
@media (min-width: 600px) {
  .container {
    display: flex;
  }
}

/* 古いブラウザ向けのスタイル */
@media (max-width: 599px) {
  .container {
    display: block;
  }
}

このように、異なる環境に対して最適なスタイルを提供することで、ユーザーが使用しているブラウザに応じて最適な体験を提供することができます。

ポリフィルとモダンビルドの組み合わせ

ポリフィルを導入することで古いブラウザのサポートを行いながら、モダンブラウザ向けには不要なポリフィルを避けるため、ビルドプロセスでモダンバンドルとレガシーバンドルを分ける手法が効果的です。たとえば、WebpackやRollupを使って、モダンブラウザ向けの軽量なビルドと、古いブラウザ向けのポリフィルを含んだビルドを作成することが可能です。

module.exports = {
  entry: {
    modern: './src/index-modern.js',
    legacy: './src/index-legacy.js'
  },
  output: {
    filename: '[name].bundle.js'
  },
  module: {
    rules: [
      {
        test: /\.js$/,
        use: 'babel-loader',
        exclude: /node_modules/
      }
    ]
  }
};

このアプローチにより、必要な場合にのみポリフィルを適用し、不要なコードの読み込みを回避することで、全体的なパフォーマンスを向上させることができます。

モダンブラウザと古いブラウザを共存させるための戦略は、ユーザーの多様なニーズに応えるために重要です。これらのベストプラクティスを活用することで、両方のブラウザ環境で優れたパフォーマンスとユーザー体験を提供することが可能です。

ポリフィルを用いた実際のプロジェクト事例

ポリフィルを活用した実際のプロジェクト事例を通して、古いブラウザをサポートしながらモダンなWeb機能を実装する方法を具体的に紹介します。これにより、ポリフィルの効果的な使用方法や実際のプロジェクトでの適用例を理解することができます。

事例1: 大規模なeコマースサイトでの利用

ある大手eコマースサイトでは、ユーザーの多くが最新のモバイルブラウザを使用していますが、一部の顧客は古いデスクトップブラウザを使用していました。特に、IE 11や旧バージョンのSafariが多く見られました。このため、Fetch APIPromiseといったモダンなJavaScript機能を活用しながらも、古いブラウザでもこれらの機能が適切に動作するようにポリフィルを導入しました。

サイトでは、whatwg-fetchを使用してFetch APIのポリフィルを提供し、promise-polyfillを導入して、非同期処理の互換性を確保しました。さらに、モダンブラウザ向けには軽量化したバンドルを提供し、古いブラウザ向けにはポリフィルを含むバンドルを配布することで、パフォーマンスを最適化しました。

結果として、全てのユーザーに一貫した体験を提供しつつ、パフォーマンスの低下を最小限に抑えることができ、ユーザーのリテンション率が向上しました。

事例2: 教育プラットフォームでのアプリケーション

教育機関向けのWebプラットフォームでは、学校のコンピュータが最新のブラウザにアップグレードされていないケースが多く見受けられました。このため、プラットフォームではArray.prototype.includesObject.entriesなどのES6機能を使用していましたが、これらの機能が古いブラウザで動作しない問題に直面しました。

そこで、core-jsを利用して、これらのES6機能のポリフィルを導入しました。また、IntersectionObserverポリフィルを使用して、ページ内のインタラクティブな要素の表示タイミングを調整する機能もサポートしました。これにより、古いブラウザを使用する学校のコンピュータでも、最新のインタラクティブな機能が正常に動作するようになりました。

このアプローチにより、教育現場での導入がスムーズに進み、利用者から高い評価を得ることができました。

事例3: 金融サービスアプリケーションでの導入

金融業界では、セキュリティや互換性が特に重要視されます。ある金融サービスのWebアプリケーションでは、localStoragesessionStorageといったブラウザのストレージ機能が古いブラウザで正しく動作しない問題がありました。

この問題を解決するために、store.jsのポリフィルを導入し、古いブラウザでも安全にデータを保存できるようにしました。さらに、crypto.subtle APIのポリフィルを用いて、暗号化機能の互換性を確保しました。これにより、セキュリティ要件を満たしつつ、幅広いブラウザサポートを実現することができました。

これらの事例からわかるように、ポリフィルはプロジェクトの成功において重要な役割を果たします。適切なポリフィルを選択し、適用することで、古いブラウザを使用するユーザーにも最新のWeb技術を提供することが可能になります。

ポリフィルの限界と代替手段

ポリフィルは、古いブラウザでモダンなWeb機能を利用可能にするための強力なツールですが、すべての状況において万能ではありません。ここでは、ポリフィルの限界について理解し、必要に応じて他の技術や戦略を検討するための代替手段を紹介します。

パフォーマンスの限界

ポリフィルは、新しい機能を古いブラウザでエミュレートするために追加のJavaScriptコードを実行しますが、このプロセスはネイティブの実装と比較して遅くなる場合があります。特に、処理が重い操作や複雑なアルゴリズムをポリフィルで実装する場合、ユーザーが体感できるほどのパフォーマンス低下が生じることがあります。

このような場合、ポリフィルに頼るのではなく、代替手段を検討することが重要です。たとえば、重い処理をサーバーサイドで実行し、その結果をクライアントに返すことで、ブラウザでの負荷を軽減する方法が考えられます。

機能の制約

ポリフィルは、すべてのモダンな機能を完全に再現できるわけではありません。特に、ブラウザのネイティブAPIに依存する機能や、低レベルのハードウェアアクセスが必要な機能(例:WebRTCやGeolocation APIなど)は、ポリフィルで完全にエミュレートすることが難しい場合があります。

これらの機能をサポートする必要がある場合は、代替手段として、より広範なブラウザ互換性を持つAPIやサービスを利用することが推奨されます。たとえば、WebRTCの代替としてサードパーティのリアルタイム通信サービスを使用したり、Geolocation APIの代替としてIPアドレスベースの位置情報サービスを利用する方法があります。

保守性と技術的負債

ポリフィルを多用することで、コードベースが複雑になり、保守が困難になる場合があります。特に、複数のポリフィルを導入する場合、将来的なブラウザのアップデートや、ポリフィル自体の更新によって予期しない問題が発生するリスクが高まります。また、ポリフィルを過度に使用することで、技術的負債が積み重なり、新しい機能を導入しにくくなる可能性もあります。

このような問題を回避するためには、可能な限りポリフィルの使用を最小限に抑え、モダンブラウザ向けのコードベースと古いブラウザ向けのコードベースを明確に分けることが重要です。また、ポリフィルを適用する前に、その必要性を十分に検討し、代替手段がないかどうかを慎重に判断することが推奨されます。

代替手段の活用

ポリフィルの使用に代わる方法として、以下のような戦略が考えられます。

  1. 機能検出とフォールバックの実装: 特定の機能が利用できない場合に、別の方法で同様の機能を提供するフォールバックを実装する。たとえば、<canvas>要素が利用できない場合、代わりに静的な画像を表示するなど。
  2. プロトコルやフォーマットの使用: 標準化されたプロトコルやデータフォーマットを利用して、ブラウザの機能に依存せずに情報をやり取りする。たとえば、REST APIやJSONフォーマットを使用して、デバイス間の互換性を保つ。
  3. サーバーサイドレンダリング: クライアント側のブラウザが処理する前に、サーバー側でページをレンダリングし、完成されたHTMLをブラウザに送信することで、クライアントの負荷を軽減し、古いブラウザでも適切に表示されるようにする。

これらの代替手段を活用することで、ポリフィルの限界を補完し、より堅牢でパフォーマンスの高いWebアプリケーションを開発することができます。ポリフィルは非常に有用なツールですが、全体的な設計と戦略を考慮し、最適なアプローチを選択することが成功の鍵となります。

今後のWeb技術の進化とポリフィルの役割

Web技術は急速に進化しており、新しい標準やAPIが次々と導入されています。この進化に伴い、ポリフィルの役割も変化し続けています。ここでは、今後のWeb技術の進化におけるポリフィルの役割とその重要性について考察します。

Web標準の急速な進化とポリフィルの必要性

Web標準は年々進化を遂げており、新しいAPIや機能が次々と導入されています。たとえば、WebAssembly、WebRTC、WebXRなど、Webの可能性を大きく広げる技術が登場しています。これらの新技術は、最新のブラウザでは迅速に採用される一方で、古いブラウザではサポートされないことが一般的です。

このような状況では、ポリフィルが依然として重要な役割を果たします。新しい標準が導入された際、それが広く採用されるまでの間に、ポリフィルは古いブラウザとの互換性を保ちながら、開発者が最新技術を活用できるようにします。これにより、ユーザーが最新の機能をすぐに利用できる一方で、古いブラウザを使用しているユーザーにも適切な体験を提供することが可能です。

ポリフィルの進化と自動化の可能性

近年では、ポリフィル自体も進化しています。ビルドツールやトランスパイラ(例えばBabel)の進化により、ポリフィルの導入が自動化され、より効率的に管理できるようになっています。例えば、@babel/preset-envを使用することで、ターゲットブラウザに応じたポリフィルを自動的に追加し、不要なポリフィルの読み込みを避けることが可能です。

今後、AIや機械学習の技術を活用して、さらに賢くポリフィルを適用する仕組みが開発される可能性もあります。たとえば、特定のプロジェクトに最適なポリフィルを自動で選択・適用し、パフォーマンスを最大化するようなツールが登場するかもしれません。

ポリフィルの未来: 互換性の過渡期からの脱却

長期的には、すべてのブラウザが最新のWeb標準に迅速に対応する未来が訪れるかもしれません。そうなれば、ポリフィルの役割は次第に縮小し、過渡期における一時的な解決策から、特定のレガシー環境でのみ使用される技術へと変化する可能性があります。

ただし、すべてのユーザーが最新のブラウザを使用するわけではないため、ポリフィルの重要性はしばらくの間続くでしょう。特に企業や公共機関では、長期間にわたってサポートされるレガシーシステムが存在し、これらの環境においてはポリフィルが不可欠です。

開発者コミュニティとポリフィルの共有

ポリフィルの開発と共有は、オープンソースコミュニティによって支えられています。今後も、開発者コミュニティがポリフィルの作成とメンテナンスを続けることで、新しい標準に迅速に対応できる環境が整うでしょう。また、開発者が互いにポリフィルを共有することで、ブラウザ互換性の問題に対する迅速な解決策を提供できるようになります。

ポリフィルは、Web技術の進化とともにその役割を変えつつも、引き続き重要な技術として存在し続けるでしょう。最新の技術を活用しつつ、幅広いユーザーに対応するために、ポリフィルは今後も不可欠なツールであり続けます。

まとめ

本記事では、JavaScriptポリフィルの基本概念から、古いブラウザのサポートにおける重要性、導入方法、そして実際のプロジェクトでの応用例までを詳しく解説しました。ポリフィルは、最新のWeb機能を古いブラウザでも利用可能にするための重要なツールであり、特に広範なユーザー層に対応するために不可欠です。

しかし、ポリフィルには限界もあり、適切なテストとパフォーマンスの考慮が必要です。また、Web技術が進化する中で、ポリフィルの役割も変化していくでしょう。それでも、古いブラウザをサポートしながら、モダンな機能を提供するための手段として、ポリフィルは今後も重要な存在であり続けます。適切なポリフィルの選択と実装により、全てのユーザーに快適なWeb体験を提供することが可能です。

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