JavaScriptプロキシを用いた演算のカスタマイズ方法

JavaScriptのプロキシを使って演算をカスタマイズする方法を紹介します。プロキシは、オブジェクトの基本操作(プロパティの取得、設定、関数の呼び出しなど)に対するカスタム動作を定義するための強力なツールです。これにより、通常のJavaScriptオブジェクトの動作を拡張したり、変更したりすることができます。

本記事では、プロキシの基本概念から始め、具体的なカスタマイズ方法をステップバイステップで解説します。プロキシを使うことで、演算のログ機能を追加したり、エラーハンドリングを強化したり、さらには独自の演算ライブラリを作成することが可能になります。

JavaScriptのプロキシを活用することで、コードの柔軟性と可読性を高め、より洗練されたプログラミングを実現する方法を学びましょう。

目次

プロキシの基本概念

JavaScriptのプロキシ(Proxy)は、オブジェクトに対する基本操作をカスタマイズするための機能です。プロキシは、ターゲットオブジェクトとその操作をインターセプトするハンドラオブジェクトの二つの要素から構成されます。プロキシを使用することで、オブジェクトのプロパティ取得や設定、関数呼び出しなどの操作を制御することができます。

プロキシの構成要素

プロキシは以下の二つの要素で構成されます:

  • ターゲットオブジェクト:プロキシによって操作がインターセプトされるオブジェクト。
  • ハンドラオブジェクト:ターゲットオブジェクトへの操作をカスタマイズするためのトラップ関数を含むオブジェクト。

プロキシの基本的な使い方

以下にプロキシの基本的な使用例を示します:

const target = {
  message: "Hello, world!"
};

const handler = {
  get: function(target, property) {
    return property in target ? target[property] : `Property ${property} does not exist.`;
  }
};

const proxy = new Proxy(target, handler);

console.log(proxy.message);  // "Hello, world!"
console.log(proxy.nonExistentProperty);  // "Property nonExistentProperty does not exist."

この例では、getトラップを使用して、プロパティが存在しない場合にカスタムメッセージを返すようにしています。

プロキシの利点

プロキシを使用することで、以下のような利点があります:

  • 柔軟なオブジェクト操作:オブジェクトの動作を細かく制御できるため、特定の条件に基づいた動作のカスタマイズが容易。
  • デバッグとロギング:オブジェクト操作をインターセプトしてログを記録することで、デバッグが容易になります。
  • セキュリティの向上:アクセス制御を実装することで、オブジェクトの不正な操作を防止できます。

プロキシは、JavaScriptのオブジェクト操作に対する制御とカスタマイズを強化する強力なツールです。次のセクションでは、ハンドラとトラップの詳細について解説します。

ハンドラとトラップの概要

プロキシを効果的に利用するためには、ハンドラとトラップの概念を理解することが重要です。これらはプロキシを通じてオブジェクトの動作をカスタマイズするための主要な要素です。

ハンドラの役割

ハンドラは、ターゲットオブジェクトに対する操作をカスタマイズするためのオブジェクトです。ハンドラには、特定の操作(トラップ)を捕捉するための関数を定義します。これにより、プロパティの取得や設定、関数の呼び出しなどの基本操作をインターセプトし、独自の処理を挟むことができます。

トラップの種類

トラップは、ターゲットオブジェクトに対する特定の操作をインターセプトするための関数です。以下は主要なトラップの一覧です:

getトラップ

プロパティの取得時に呼び出されます。例:

const handler = {
  get: function(target, property) {
    return property in target ? target[property] : `Property ${property} does not exist.`;
  }
};

setトラップ

プロパティの設定時に呼び出されます。例:

const handler = {
  set: function(target, property, value) {
    if (property === 'age' && value < 0) {
      throw new Error('Age cannot be negative');
    }
    target[property] = value;
    return true;
  }
};

applyトラップ

関数が呼び出されたときに実行されます。例:

const handler = {
  apply: function(target, thisArg, argumentsList) {
    console.log(`Called with arguments: ${argumentsList}`);
    return target.apply(thisArg, argumentsList);
  }
};

プロキシの構築方法

プロキシは、ターゲットオブジェクトとハンドラを引数にして構築されます。以下にその基本構文を示します:

const target = { /* ターゲットオブジェクト */ };
const handler = { /* ハンドラオブジェクト */ };
const proxy = new Proxy(target, handler);

この構造により、プロキシはターゲットオブジェクトに対する操作をインターセプトし、ハンドラ内のトラップ関数を通じてカスタム動作を実行します。

ハンドラとトラップを理解することで、JavaScriptのプロキシを効果的に活用し、オブジェクト操作のカスタマイズを柔軟に行うことができます。次のセクションでは、実際の演算カスタマイズ方法について具体例を交えて解説します。

演算のカスタマイズ方法

JavaScriptのプロキシを使用することで、オブジェクトに対する演算をカスタマイズすることができます。ここでは、具体的な例を通じて、プロキシを使った演算のカスタマイズ方法を説明します。

プロパティの取得と設定のカスタマイズ

まずは、プロパティの取得(get)と設定(set)をカスタマイズする方法を見てみましょう。以下の例では、プロパティを取得する際にメッセージを表示し、プロパティを設定する際に特定の条件をチェックしています。

const target = {
  x: 10,
  y: 20
};

const handler = {
  get: function(target, property) {
    console.log(`Getting value of ${property}`);
    return property in target ? target[property] : `Property ${property} does not exist.`;
  },
  set: function(target, property, value) {
    if (typeof value === 'number' && value >= 0) {
      console.log(`Setting value of ${property} to ${value}`);
      target[property] = value;
      return true;
    } else {
      console.log(`Invalid value for ${property}`);
      return false;
    }
  }
};

const proxy = new Proxy(target, handler);

console.log(proxy.x);  // Getting value of x -> 10
proxy.y = 30;          // Setting value of y to 30
proxy.z = -10;         // Invalid value for z

この例では、プロパティの取得と設定がカスタマイズされています。getトラップではプロパティの存在チェックを行い、存在しない場合はカスタムメッセージを返します。setトラップでは、値が正の数であることを確認し、条件を満たさない場合は設定を拒否します。

関数呼び出しのカスタマイズ

次に、関数呼び出し(apply)をカスタマイズする方法を見てみましょう。以下の例では、関数が呼び出された際に引数をチェックし、ログを記録します。

const sum = function(a, b) {
  return a + b;
};

const handler = {
  apply: function(target, thisArg, argumentsList) {
    if (argumentsList.length !== 2) {
      throw new Error('Function requires exactly two arguments');
    }
    console.log(`Called with arguments: ${argumentsList}`);
    return target.apply(thisArg, argumentsList);
  }
};

const proxy = new Proxy(sum, handler);

console.log(proxy(10, 20));  // Called with arguments: 10,20 -> 30
proxy(10);                  // Error: Function requires exactly two arguments

この例では、関数呼び出し時に引数の数をチェックし、適切なログを記録しています。applyトラップを使うことで、関数の呼び出し動作を柔軟にカスタマイズできます。

プロキシの応用例

プロキシを使った演算カスタマイズは、単なるログ記録やバリデーションだけでなく、複雑な演算処理にも応用できます。例えば、次の例では、二次方程式の解を求める関数に対してプロキシを適用し、計算結果をキャッシュする仕組みを追加しています。

const quadraticSolver = function(a, b, c) {
  const discriminant = b * b - 4 * a * c;
  if (discriminant < 0) {
    return 'No real roots';
  }
  const root1 = (-b + Math.sqrt(discriminant)) / (2 * a);
  const root2 = (-b - Math.sqrt(discriminant)) / (2 * a);
  return [root1, root2];
};

const handler = {
  apply: function(target, thisArg, argumentsList) {
    const cacheKey = argumentsList.join(',');
    if (!handler.cache) {
      handler.cache = {};
    }
    if (cacheKey in handler.cache) {
      console.log(`Fetching result from cache for arguments: ${cacheKey}`);
      return handler.cache[cacheKey];
    }
    const result = target.apply(thisArg, argumentsList);
    handler.cache[cacheKey] = result;
    console.log(`Storing result in cache for arguments: ${cacheKey}`);
    return result;
  }
};

const proxy = new Proxy(quadraticSolver, handler);

console.log(proxy(1, -3, 2));  // Storing result in cache for arguments: 1,-3,2 -> [2, 1]
console.log(proxy(1, -3, 2));  // Fetching result from cache for arguments: 1,-3,2 -> [2, 1]

この例では、applyトラップを利用して計算結果をキャッシュし、同じ引数で呼び出された場合に計算をスキップしてキャッシュから結果を取得する仕組みを実装しています。

プロキシを活用することで、JavaScriptオブジェクトの操作を細かく制御し、複雑なカスタマイズを実現できます。次のセクションでは、getトラップを用いたプロパティアクセスのカスタマイズについてさらに詳しく見ていきます。

getトラップを用いたカスタマイズ

プロキシのgetトラップを使用すると、オブジェクトのプロパティがアクセスされる際の動作をカスタマイズすることができます。これにより、プロパティアクセス時に追加の処理を行ったり、特定の条件に基づいて動作を変更したりすることが可能になります。

基本的なgetトラップの使用例

以下に、getトラップの基本的な使用例を示します。この例では、プロパティがアクセスされた際にそのプロパティ名をコンソールに出力します。

const target = {
  x: 10,
  y: 20
};

const handler = {
  get: function(target, property) {
    console.log(`Accessing property ${property}`);
    return property in target ? target[property] : `Property ${property} does not exist.`;
  }
};

const proxy = new Proxy(target, handler);

console.log(proxy.x);  // Accessing property x -> 10
console.log(proxy.y);  // Accessing property y -> 20
console.log(proxy.z);  // Accessing property z -> Property z does not exist.

この例では、getトラップがプロパティの存在をチェックし、存在しない場合はカスタムメッセージを返します。

プロパティのアクセス制御

getトラップを使用して、特定のプロパティへのアクセスを制御することも可能です。以下の例では、特定のプロパティに対するアクセスを禁止します。

const target = {
  secret: "hidden value",
  public: "visible value"
};

const handler = {
  get: function(target, property) {
    if (property === 'secret') {
      throw new Error(`Access to property ${property} is not allowed`);
    }
    return target[property];
  }
};

const proxy = new Proxy(target, handler);

console.log(proxy.public);  // visible value
console.log(proxy.secret);  // Error: Access to property secret is not allowed

この例では、secretプロパティへのアクセスが禁止されています。

動的プロパティの生成

getトラップを利用して、動的にプロパティを生成することもできます。以下の例では、アクセスされたプロパティが存在しない場合に動的に値を生成します。

const target = {
  base: 2
};

const handler = {
  get: function(target, property) {
    if (!(property in target)) {
      return `Dynamic value for ${property}`;
    }
    return target[property];
  }
};

const proxy = new Proxy(target, handler);

console.log(proxy.base);   // 2
console.log(proxy.dynamic); // Dynamic value for dynamic

この例では、baseプロパティは静的に定義されており、その他のプロパティは動的に生成されます。

ログ機能の実装

getトラップを使用して、プロパティアクセス時にログを記録する機能を実装することも可能です。以下の例では、すべてのプロパティアクセスをログに記録します。

const target = {
  x: 10,
  y: 20
};

const handler = {
  get: function(target, property) {
    const value = target[property];
    console.log(`Property ${property} was accessed, value: ${value}`);
    return value;
  }
};

const proxy = new Proxy(target, handler);

console.log(proxy.x);  // Property x was accessed, value: 10 -> 10
console.log(proxy.y);  // Property y was accessed, value: 20 -> 20

この例では、すべてのプロパティアクセス時にそのプロパティ名と値がコンソールに出力されます。

getトラップを活用することで、JavaScriptオブジェクトのプロパティアクセス時の動作を細かく制御し、さまざまなカスタマイズを実現することができます。次のセクションでは、setトラップを用いたプロパティ設定のカスタマイズについて詳しく解説します。

setトラップを用いたカスタマイズ

プロキシのsetトラップを使用すると、オブジェクトのプロパティが設定される際の動作をカスタマイズすることができます。これにより、プロパティ設定時に追加の処理を行ったり、特定の条件に基づいて動作を変更したりすることが可能になります。

基本的なsetトラップの使用例

以下に、setトラップの基本的な使用例を示します。この例では、プロパティが設定される際にそのプロパティ名と値をコンソールに出力します。

const target = {
  x: 10,
  y: 20
};

const handler = {
  set: function(target, property, value) {
    console.log(`Setting property ${property} to ${value}`);
    target[property] = value;
    return true;
  }
};

const proxy = new Proxy(target, handler);

proxy.x = 30;  // Setting property x to 30
console.log(proxy.x);  // 30
proxy.y = 50;  // Setting property y to 50
console.log(proxy.y);  // 50

この例では、setトラップがプロパティの設定をインターセプトし、設定されたプロパティ名と値をコンソールに出力します。

プロパティ設定のバリデーション

setトラップを使用して、プロパティの値を設定する際にバリデーションを行うことも可能です。以下の例では、ageプロパティに負の値を設定できないようにしています。

const target = {
  age: 25
};

const handler = {
  set: function(target, property, value) {
    if (property === 'age' && value < 0) {
      throw new Error('Age cannot be negative');
    }
    target[property] = value;
    return true;
  }
};

const proxy = new Proxy(target, handler);

proxy.age = 30;  // 30
console.log(proxy.age);  // 30
proxy.age = -5;  // Error: Age cannot be negative

この例では、ageプロパティに対して負の値が設定されるのを防いでいます。

特定のプロパティ設定の禁止

setトラップを使用して、特定のプロパティに値を設定することを禁止することもできます。以下の例では、readonlyプロパティに値を設定することを禁止しています。

const target = {
  readonly: 'This is read-only',
  writable: 'This is writable'
};

const handler = {
  set: function(target, property, value) {
    if (property === 'readonly') {
      throw new Error(`Cannot set value to property ${property}`);
    }
    target[property] = value;
    return true;
  }
};

const proxy = new Proxy(target, handler);

proxy.writable = 'New value';  // New value
console.log(proxy.writable);  // New value
proxy.readonly = 'New value';  // Error: Cannot set value to property readonly

この例では、readonlyプロパティに対する設定が禁止されています。

プロパティ設定のログ記録

setトラップを使用して、プロパティが設定される際にその操作をログに記録することもできます。以下の例では、すべてのプロパティ設定をログに記録します。

const target = {
  a: 1,
  b: 2
};

const handler = {
  set: function(target, property, value) {
    console.log(`Property ${property} is being set to ${value}`);
    target[property] = value;
    return true;
  }
};

const proxy = new Proxy(target, handler);

proxy.a = 10;  // Property a is being set to 10
console.log(proxy.a);  // 10
proxy.b = 20;  // Property b is being set to 20
console.log(proxy.b);  // 20

この例では、すべてのプロパティ設定操作がログに記録されます。

setトラップを活用することで、JavaScriptオブジェクトのプロパティ設定時の動作を細かく制御し、さまざまなカスタマイズを実現することができます。次のセクションでは、applyトラップを用いた関数呼び出しのカスタマイズについて詳しく解説します。

applyトラップを用いた関数呼び出しのカスタマイズ

applyトラップを使用すると、関数が呼び出される際の動作をカスタマイズすることができます。これにより、関数呼び出し時に追加の処理を行ったり、特定の条件に基づいて動作を変更したりすることが可能になります。

基本的なapplyトラップの使用例

以下に、applyトラップの基本的な使用例を示します。この例では、関数が呼び出された際に引数をコンソールに出力します。

const sum = function(a, b) {
  return a + b;
};

const handler = {
  apply: function(target, thisArg, argumentsList) {
    console.log(`Called with arguments: ${argumentsList}`);
    return target.apply(thisArg, argumentsList);
  }
};

const proxy = new Proxy(sum, handler);

console.log(proxy(10, 20));  // Called with arguments: 10,20 -> 30

この例では、applyトラップが関数の呼び出しをインターセプトし、呼び出された際の引数をコンソールに出力します。

引数のバリデーション

applyトラップを使用して、関数の引数をバリデーションすることも可能です。以下の例では、関数が2つの引数を必要とし、それぞれが数値であることを確認しています。

const sum = function(a, b) {
  return a + b;
};

const handler = {
  apply: function(target, thisArg, argumentsList) {
    if (argumentsList.length !== 2) {
      throw new Error('Function requires exactly two arguments');
    }
    if (typeof argumentsList[0] !== 'number' || typeof argumentsList[1] !== 'number') {
      throw new Error('Both arguments must be numbers');
    }
    return target.apply(thisArg, argumentsList);
  }
};

const proxy = new Proxy(sum, handler);

console.log(proxy(10, 20));  // 30
proxy(10, '20');  // Error: Both arguments must be numbers

この例では、applyトラップが引数の数と型をチェックし、条件を満たさない場合はエラーをスローします。

関数呼び出しのログ記録

applyトラップを使用して、関数呼び出し時にその操作をログに記録することもできます。以下の例では、すべての関数呼び出しをログに記録します。

const multiply = function(a, b) {
  return a * b;
};

const handler = {
  apply: function(target, thisArg, argumentsList) {
    console.log(`Function called with arguments: ${argumentsList}`);
    const result = target.apply(thisArg, argumentsList);
    console.log(`Function result: ${result}`);
    return result;
  }
};

const proxy = new Proxy(multiply, handler);

console.log(proxy(5, 3));  // Function called with arguments: 5,3 -> Function result: 15 -> 15

この例では、関数呼び出し時にその引数と結果をログに記録します。

関数呼び出しのキャッシング

applyトラップを使用して、関数の結果をキャッシュすることも可能です。以下の例では、同じ引数で呼び出された場合に計算をスキップしてキャッシュから結果を取得する仕組みを実装しています。

const slowFunction = function(a, b) {
  console.log('Executing slow function...');
  return a + b;
};

const handler = {
  apply: function(target, thisArg, argumentsList) {
    const cacheKey = argumentsList.join(',');
    if (!handler.cache) {
      handler.cache = {};
    }
    if (cacheKey in handler.cache) {
      console.log(`Fetching result from cache for arguments: ${cacheKey}`);
      return handler.cache[cacheKey];
    }
    const result = target.apply(thisArg, argumentsList);
    handler.cache[cacheKey] = result;
    console.log(`Storing result in cache for arguments: ${cacheKey}`);
    return result;
  }
};

const proxy = new Proxy(slowFunction, handler);

console.log(proxy(1, 2));  // Executing slow function... -> Storing result in cache for arguments: 1,2 -> 3
console.log(proxy(1, 2));  // Fetching result from cache for arguments: 1,2 -> 3

この例では、applyトラップが関数の結果をキャッシュし、同じ引数で呼び出された場合にキャッシュから結果を取得します。

applyトラップを活用することで、JavaScriptの関数呼び出し時の動作を細かく制御し、さまざまなカスタマイズを実現することができます。次のセクションでは、演算のログ機能の実装について詳しく解説します。

演算のログ機能の実装

プロキシを利用することで、演算のログ機能を簡単に実装することができます。これにより、オブジェクトに対する操作を記録し、デバッグや解析に役立てることが可能です。ここでは、getトラップやsetトラップ、applyトラップを組み合わせて、包括的なログ機能を実装する方法を紹介します。

基本的なログ機能の実装

まずは、基本的なプロパティアクセスと設定のログ機能を実装してみます。

const target = {
  x: 10,
  y: 20,
  sum(a, b) {
    return a + b;
  }
};

const handler = {
  get: function(target, property) {
    const value = target[property];
    console.log(`Accessing property ${property}, value: ${value}`);
    return value;
  },
  set: function(target, property, value) {
    console.log(`Setting property ${property} to ${value}`);
    target[property] = value;
    return true;
  },
  apply: function(target, thisArg, argumentsList) {
    console.log(`Calling function ${target.name} with arguments: ${argumentsList}`);
    const result = target.apply(thisArg, argumentsList);
    console.log(`Function ${target.name} returned: ${result}`);
    return result;
  }
};

const proxy = new Proxy(target, handler);

console.log(proxy.x);  // Accessing property x, value: 10 -> 10
proxy.y = 30;          // Setting property y to 30
console.log(proxy.sum(5, 3));  // Calling function sum with arguments: 5,3 -> Function sum returned: 8 -> 8

この例では、getトラップ、setトラップ、およびapplyトラップを使用してプロパティアクセス、設定、関数呼び出しのすべてをログに記録します。

詳細なログ情報の追加

さらに詳細なログ情報を追加することも可能です。例えば、プロパティのアクセス元や関数呼び出し元の情報を記録することができます。

const target = {
  x: 10,
  y: 20,
  sum(a, b) {
    return a + b;
  }
};

const handler = {
  get: function(target, property, receiver) {
    const value = Reflect.get(target, property, receiver);
    console.log(`Accessing property ${property}, value: ${value}, receiver: ${receiver}`);
    return value;
  },
  set: function(target, property, value, receiver) {
    console.log(`Setting property ${property} to ${value}, receiver: ${receiver}`);
    return Reflect.set(target, property, value, receiver);
  },
  apply: function(target, thisArg, argumentsList) {
    console.log(`Calling function ${target.name || 'anonymous'} with arguments: ${argumentsList}, thisArg: ${thisArg}`);
    const result = Reflect.apply(target, thisArg, argumentsList);
    console.log(`Function ${target.name || 'anonymous'} returned: ${result}`);
    return result;
  }
};

const proxy = new Proxy(target, handler);

console.log(proxy.x);  // Accessing property x, value: 10, receiver: [object Object] -> 10
proxy.y = 30;          // Setting property y to 30, receiver: [object Object]
console.log(proxy.sum(5, 3));  // Calling function sum with arguments: 5,3, thisArg: [object Object] -> Function sum returned: 8 -> 8

この例では、Reflectオブジェクトを使用してプロパティや関数のデフォルト動作を呼び出し、その際に詳細なログ情報を記録しています。

複数のオブジェクトに対するログ機能の実装

複数のオブジェクトに対して同じログ機能を適用する場合、共通のハンドラを使用することができます。

const handler = {
  get: function(target, property, receiver) {
    const value = Reflect.get(target, property, receiver);
    console.log(`Accessing property ${property}, value: ${value}`);
    return value;
  },
  set: function(target, property, value, receiver) {
    console.log(`Setting property ${property} to ${value}`);
    return Reflect.set(target, property, value, receiver);
  },
  apply: function(target, thisArg, argumentsList) {
    console.log(`Calling function ${target.name || 'anonymous'} with arguments: ${argumentsList}`);
    const result = Reflect.apply(target, thisArg, argumentsList);
    console.log(`Function ${target.name || 'anonymous'} returned: ${result}`);
    return result;
  }
};

const obj1 = { a: 1, b: 2 };
const obj2 = { x: 10, y: 20, multiply(a, b) { return a * b; } };

const proxy1 = new Proxy(obj1, handler);
const proxy2 = new Proxy(obj2, handler);

console.log(proxy1.a);  // Accessing property a, value: 1 -> 1
proxy1.b = 3;           // Setting property b to 3
console.log(proxy2.x);  // Accessing property x, value: 10 -> 10
console.log(proxy2.multiply(2, 3));  // Calling function multiply with arguments: 2,3 -> Function multiply returned: 6 -> 6

この例では、handlerオブジェクトを複数のプロキシに適用し、共通のログ機能を提供しています。

プロキシを使用することで、演算やオブジェクト操作のログ機能を柔軟かつ簡単に実装することができます。次のセクションでは、演算エラーハンドリングのカスタマイズについて詳しく解説します。

演算エラーハンドリングのカスタマイズ

プロキシを使用することで、演算エラーを捕捉し、カスタマイズすることができます。これにより、エラーメッセージを変更したり、特定の条件に基づいてエラー処理を行うことが可能になります。ここでは、具体的な例を通じて、演算エラーハンドリングのカスタマイズ方法を紹介します。

基本的なエラーハンドリング

まずは、基本的なエラーハンドリングの例を見てみましょう。以下の例では、プロパティの設定時にエラーが発生した場合にカスタムエラーメッセージを表示します。

const target = {
  x: 10,
  y: 20
};

const handler = {
  set: function(target, property, value) {
    if (property === 'x' && typeof value !== 'number') {
      throw new Error('x must be a number');
    }
    target[property] = value;
    return true;
  }
};

const proxy = new Proxy(target, handler);

try {
  proxy.x = 'not a number';  // Error: x must be a number
} catch (e) {
  console.error(e.message);  // x must be a number
}

proxy.y = 30;  // No error
console.log(proxy.y);  // 30

この例では、setトラップを使用してxプロパティに数値以外の値を設定しようとした場合にエラーをスローします。

関数呼び出し時のエラーハンドリング

次に、関数呼び出し時にエラーハンドリングを行う例を見てみましょう。以下の例では、関数が負の数を受け取った場合にエラーをスローします。

const divide = function(a, b) {
  if (b === 0) {
    throw new Error('Division by zero');
  }
  return a / b;
};

const handler = {
  apply: function(target, thisArg, argumentsList) {
    if (argumentsList[1] === 0) {
      throw new Error('Cannot divide by zero');
    }
    return target.apply(thisArg, argumentsList);
  }
};

const proxy = new Proxy(divide, handler);

try {
  console.log(proxy(10, 0));  // Error: Cannot divide by zero
} catch (e) {
  console.error(e.message);  // Cannot divide by zero
}

console.log(proxy(10, 2));  // 5

この例では、applyトラップを使用して、関数呼び出し時に引数が適切かどうかをチェックし、条件に合わない場合にエラーをスローします。

プロパティアクセス時のエラーハンドリング

プロパティアクセス時にもエラーハンドリングを行うことができます。以下の例では、存在しないプロパティにアクセスしようとした場合にエラーメッセージを表示します。

const target = {
  a: 1,
  b: 2
};

const handler = {
  get: function(target, property) {
    if (!(property in target)) {
      throw new Error(`Property ${property} does not exist`);
    }
    return target[property];
  }
};

const proxy = new Proxy(target, handler);

try {
  console.log(proxy.c);  // Error: Property c does not exist
} catch (e) {
  console.error(e.message);  // Property c does not exist
}

console.log(proxy.a);  // 1

この例では、getトラップを使用して、存在しないプロパティにアクセスしようとした場合にエラーをスローします。

詳細なエラーログの記録

エラーが発生した際に詳細なログを記録することも可能です。以下の例では、エラー発生時にエラーの詳細情報をログに記録します。

const target = {
  x: 10,
  y: 20
};

const handler = {
  set: function(target, property, value) {
    try {
      if (property === 'x' && typeof value !== 'number') {
        throw new Error('x must be a number');
      }
      target[property] = value;
      return true;
    } catch (e) {
      console.error(`Error setting property ${property} to ${value}: ${e.message}`);
      return false;
    }
  }
};

const proxy = new Proxy(target, handler);

proxy.x = 'not a number';  // Error setting property x to not a number: x must be a number
proxy.y = 30;  // No error
console.log(proxy.y);  // 30

この例では、setトラップ内でエラーが発生した場合に詳細なエラーメッセージをログに記録します。

プロキシを使用することで、演算エラーを柔軟にハンドリングし、カスタマイズすることができます。次のセクションでは、カスタム演算ライブラリの作成について詳しく解説します。

応用例:カスタム演算ライブラリの作成

プロキシを使用してカスタム演算ライブラリを作成することで、特定のニーズに合わせた演算処理を実装できます。ここでは、簡単なカスタム演算ライブラリを例に、プロキシをどのように活用できるかを解説します。

カスタム演算ライブラリの基本構造

カスタム演算ライブラリは、基本的な四則演算や他の特別な演算を含むオブジェクトとして定義できます。プロキシを使用して、各演算が呼び出されたときに追加の処理を実行するようにします。

const operations = {
  add: (a, b) => a + b,
  subtract: (a, b) => a - b,
  multiply: (a, b) => a * b,
  divide: (a, b) => {
    if (b === 0) throw new Error('Division by zero');
    return a / b;
  }
};

const handler = {
  get: function(target, property) {
    if (property in target) {
      console.log(`Accessing operation ${property}`);
      return target[property];
    } else {
      throw new Error(`Operation ${property} does not exist`);
    }
  },
  apply: function(target, thisArg, argumentsList) {
    console.log(`Performing operation with arguments: ${argumentsList}`);
    return target.apply(thisArg, argumentsList);
  }
};

const proxyOperations = new Proxy(operations, handler);

try {
  console.log(proxyOperations.add(5, 3));        // Accessing operation add -> Performing operation with arguments: 5,3 -> 8
  console.log(proxyOperations.subtract(10, 4));  // Accessing operation subtract -> Performing operation with arguments: 10,4 -> 6
  console.log(proxyOperations.multiply(6, 7));   // Accessing operation multiply -> Performing operation with arguments: 6,7 -> 42
  console.log(proxyOperations.divide(8, 2));     // Accessing operation divide -> Performing operation with arguments: 8,2 -> 4
  console.log(proxyOperations.divide(8, 0));     // Accessing operation divide -> Error: Division by zero
} catch (e) {
  console.error(e.message);
}

この例では、演算が呼び出されるたびにログを記録し、特定のエラー条件(ゼロによる除算など)をチェックしています。

高度なカスタム演算処理

さらに高度なカスタム演算処理を実装する例として、キャッシュ機能を追加します。これにより、同じ引数で呼び出された演算の結果をキャッシュし、次回の呼び出し時に再計算をスキップすることができます。

const advancedOperations = {
  add: (a, b) => a + b,
  subtract: (a, b) => a - b,
  multiply: (a, b) => a * b,
  divide: (a, b) => {
    if (b === 0) throw new Error('Division by zero');
    return a / b;
  }
};

const cacheHandler = {
  cache: {},
  get: function(target, property) {
    if (property in target) {
      console.log(`Accessing operation ${property}`);
      return function(...args) {
        const cacheKey = `${property}-${args.join(',')}`;
        if (cacheKey in this.cache) {
          console.log(`Fetching result from cache for ${cacheKey}`);
          return this.cache[cacheKey];
        } else {
          console.log(`Calculating result for ${cacheKey}`);
          const result = target[property](...args);
          this.cache[cacheKey] = result;
          return result;
        }
      }.bind(this);
    } else {
      throw new Error(`Operation ${property} does not exist`);
    }
  }
};

const proxyAdvancedOperations = new Proxy(advancedOperations, cacheHandler);

try {
  console.log(proxyAdvancedOperations.add(5, 3));        // Accessing operation add -> Calculating result for add-5,3 -> 8
  console.log(proxyAdvancedOperations.add(5, 3));        // Accessing operation add -> Fetching result from cache for add-5,3 -> 8
  console.log(proxyAdvancedOperations.subtract(10, 4));  // Accessing operation subtract -> Calculating result for subtract-10,4 -> 6
  console.log(proxyAdvancedOperations.subtract(10, 4));  // Accessing operation subtract -> Fetching result from cache for subtract-10,4 -> 6
} catch (e) {
  console.error(e.message);
}

この例では、cacheHandlerを使用して、演算の結果をキャッシュし、同じ引数での呼び出し時にキャッシュされた結果を返すようにしています。

カスタム演算ライブラリの拡張

カスタム演算ライブラリをさらに拡張し、複雑な演算や新しい機能を追加することも可能です。以下に、三角関数を追加した例を示します。

const extendedOperations = {
  add: (a, b) => a + b,
  subtract: (a, b) => a - b,
  multiply: (a, b) => a * b,
  divide: (a, b) => {
    if (b === 0) throw new Error('Division by zero');
    return a / b;
  },
  sin: (x) => Math.sin(x),
  cos: (x) => Math.cos(x)
};

const extendedHandler = {
  get: function(target, property) {
    if (property in target) {
      console.log(`Accessing operation ${property}`);
      return target[property];
    } else {
      throw new Error(`Operation ${property} does not exist`);
    }
  }
};

const proxyExtendedOperations = new Proxy(extendedOperations, extendedHandler);

try {
  console.log(proxyExtendedOperations.sin(Math.PI / 2));  // Accessing operation sin -> 1
  console.log(proxyExtendedOperations.cos(0));           // Accessing operation cos -> 1
} catch (e) {
  console.error(e.message);
}

この例では、sinおよびcos関数を追加し、それらの関数が呼び出された際にログを記録しています。

プロキシを活用することで、カスタム演算ライブラリを作成し、特定のニーズに合わせた演算処理を簡単に実装することができます。次のセクションでは、学んだ内容を確認するための演習問題を提供します。

演習問題

ここでは、これまで学んだプロキシを使用したカスタム演算のカスタマイズに関する知識を確認するための演習問題を提供します。これらの問題を通じて、プロキシの使用方法を実践し、理解を深めてください。

問題1: 基本的なプロパティアクセスのカスタマイズ

以下のオブジェクトに対して、プロキシを使ってプロパティアクセス時にログを記録する機能を実装してください。

const user = {
  name: 'Alice',
  age: 30
};

// プロキシを使用して、プロパティアクセス時にログを記録する
const handler = {
  // ここにコードを追加
};

const proxyUser = new Proxy(user, handler);

console.log(proxyUser.name); // Accessing property name -> Alice
console.log(proxyUser.age);  // Accessing property age -> 30

問題2: プロパティ設定のバリデーション

以下のオブジェクトに対して、ageプロパティに負の値を設定できないようにプロキシをカスタマイズしてください。

const user = {
  name: 'Alice',
  age: 30
};

// プロキシを使用して、ageプロパティに負の値を設定できないようにする
const handler = {
  // ここにコードを追加
};

const proxyUser = new Proxy(user, handler);

try {
  proxyUser.age = -5;  // Error: Age cannot be negative
} catch (e) {
  console.error(e.message);
}

proxyUser.age = 25; // 25
console.log(proxyUser.age); // 25

問題3: 関数呼び出しのログ記録

以下の関数に対して、プロキシを使って関数呼び出し時に引数と結果をログに記録する機能を実装してください。

const multiply = function(a, b) {
  return a * b;
};

// プロキシを使用して、関数呼び出し時に引数と結果をログに記録する
const handler = {
  // ここにコードを追加
};

const proxyMultiply = new Proxy(multiply, handler);

console.log(proxyMultiply(3, 4)); // Called with arguments: 3,4 -> Result: 12

問題4: キャッシュ機能の追加

以下の関数に対して、プロキシを使ってキャッシュ機能を追加し、同じ引数で呼び出された場合に計算をスキップしてキャッシュから結果を返すようにしてください。

const expensiveFunction = function(a, b) {
  console.log('Executing expensive function...');
  return a + b;
};

// プロキシを使用して、キャッシュ機能を追加する
const handler = {
  cache: {},
  // ここにコードを追加
};

const proxyExpensiveFunction = new Proxy(expensiveFunction, handler);

console.log(proxyExpensiveFunction(5, 10)); // Executing expensive function... -> 15
console.log(proxyExpensiveFunction(5, 10)); // Fetching result from cache -> 15

問題5: 動的プロパティの生成

以下のオブジェクトに対して、存在しないプロパティにアクセスされた場合に動的にプロパティを生成して値を返す機能をプロキシで実装してください。

const dynamicObject = {
  base: 2
};

// プロキシを使用して、動的にプロパティを生成する
const handler = {
  // ここにコードを追加
};

const proxyDynamicObject = new Proxy(dynamicObject, handler);

console.log(proxyDynamicObject.base);   // 2
console.log(proxyDynamicObject.dynamic); // Dynamic value for dynamic

これらの演習問題を解くことで、プロキシを使用したカスタム演算のカスタマイズについての理解を深めることができます。問題の答えがわからない場合は、前のセクションを見直して復習してください。次のセクションでは、記事全体のまとめを行います。

まとめ

本記事では、JavaScriptのプロキシを使用して演算をカスタマイズする方法について詳しく解説しました。プロキシを利用することで、オブジェクトや関数に対する操作をインターセプトし、カスタム動作を実装することができます。

具体的には、以下の内容を学びました:

  1. プロキシの基本概念:プロキシの構造とその基本的な用途。
  2. ハンドラとトラップの概要:プロパティの取得や設定、関数呼び出しなど、さまざまな操作に対するトラップの利用方法。
  3. 演算のカスタマイズ方法:プロパティアクセスや関数呼び出しをカスタマイズする具体例。
  4. getトラップとsetトラップ:プロパティの取得と設定のカスタマイズ方法。
  5. applyトラップ:関数呼び出しのカスタマイズ方法。
  6. 演算のログ機能の実装:オブジェクト操作や関数呼び出し時のログ記録。
  7. 演算エラーハンドリングのカスタマイズ:エラーハンドリングの方法と詳細なエラーログの記録。
  8. カスタム演算ライブラリの作成:プロキシを利用した演算ライブラリの作成方法とその応用。
  9. 演習問題:プロキシの利用方法を実践するための演習問題。

プロキシを活用することで、オブジェクト操作や関数呼び出しを柔軟に制御し、特定のニーズに合わせたカスタム演算を実装できます。演習問題を通じて、プロキシの使用方法を実践し、理解を深めてください。プロキシを駆使して、より洗練されたJavaScriptプログラミングを実現しましょう。

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