Kotlinにおけるインターフェースと抽象クラスは、オブジェクト指向プログラミングにおいて重要な役割を果たします。どちらもコードの再利用や設計の柔軟性を高めるための仕組みですが、それぞれ特有の特徴や使用シーンが存在します。
インターフェースは、複数のクラスに共通する振る舞いを定義するための手段として活用され、柔軟に機能を追加できます。一方、抽象クラスは共通の状態や振る舞いを持たせつつ、具体的な実装を子クラスに委ねるための強力な基盤となります。
本記事では、Kotlinにおけるインターフェースと抽象クラスの基本概念から、具体的な違い、使い分け方、実際の実装例までを解説します。Kotlinを使った開発で「インターフェースと抽象クラスのどちらを使えばいいのか?」と悩んだときに役立つ知識を提供します。
インターフェースと抽象クラスの基本概念
Kotlinにおいて、インターフェースと抽象クラスは、オブジェクト指向プログラミングの中で非常に重要な要素です。それぞれの役割と基本的な特徴について解説します。
インターフェースとは
インターフェースは、クラスが実装すべきメソッドやプロパティの契約を定義するものです。具体的な実装を含まない場合もありますが、Kotlinではデフォルト実装を提供することも可能です。
ポイント:
- 多重継承が可能:1つのクラスが複数のインターフェースを実装できます。
- 状態を持たない:フィールド(プロパティ)の初期値を保持しません。
- 抽象的な振る舞いの定義:メソッドシグネチャのみを定義しますが、デフォルト実装も追加可能です。
interface Animal {
fun sound() // 抽象メソッド
fun eat() { // デフォルト実装
println("Animal is eating")
}
}
抽象クラスとは
抽象クラスは、クラスの共通の状態(フィールド)や振る舞い(メソッド)を定義し、具体的な実装を派生クラス(サブクラス)に委ねるものです。
ポイント:
- 単一継承のみ:Kotlinでは、1つのクラスしか継承できません。
- 状態を持てる:プロパティやフィールドを含み、初期化が可能です。
- 部分的な実装:抽象メソッドと具象メソッドの両方を定義できます。
abstract class Animal {
abstract fun sound() // 抽象メソッド
open fun eat() { // 具象メソッド
println("Animal is eating")
}
}
基本概念のまとめ
特徴 | インターフェース | 抽象クラス |
---|---|---|
状態の保持 | 不可 | 可能 |
多重継承 | 可能 | 不可(単一継承のみ) |
デフォルト実装 | 可能 | 可能 |
使い方 | 振る舞いの契約 | 共通の状態や振る舞いの基盤 |
これらの基本概念を理解することで、適切なタイミングでインターフェースと抽象クラスを使い分ける基礎が身につきます。
インターフェースの特徴と使用場面
Kotlinのインターフェースは、複数のクラスに共通の振る舞いを定義し、柔軟に拡張できる仕組みです。以下でその特徴と具体的な使用場面について詳しく解説します。
インターフェースの主な特徴
- 多重継承が可能
インターフェースは複数実装が可能であり、異なる振る舞いをクラスに柔軟に追加できます。 - 状態を持たない
プロパティの宣言は可能ですが、フィールドとしての状態(値)を保持することはできません。ただし、get
やset
を使用することでプロパティの振る舞いを定義できます。 - デフォルト実装の提供
Kotlinでは、インターフェース内でメソッドのデフォルト実装が可能です。これによりコードの重複を避け、柔軟に実装を共有できます。
interface Animal {
val name: String
fun sound()
fun eat() {
println("$name is eating") // デフォルト実装
}
}
class Dog(override val name: String) : Animal {
override fun sound() {
println("$name says: Woof!")
}
}
fun main() {
val dog = Dog("Buddy")
dog.sound()
dog.eat()
}
出力結果
Buddy says: Woof!
Buddy is eating
インターフェースの使用場面
- 複数の型や振る舞いを実装する必要がある場合
異なるクラスに共通するメソッドを持たせつつ、それぞれ独自の振る舞いを追加したい場合に有効です。 - 多重継承を実現したい場合
Kotlinではクラスの多重継承はサポートされませんが、インターフェースを使えば複数の契約を一つのクラスに実装できます。 - デフォルト実装を共有し、コードの重複を回避する場合
インターフェースのデフォルト実装を利用することで、重複するコードを省略し、メンテナンス性を高めることができます。 - システム設計における柔軟な拡張性
インターフェースを利用することで、後から新しい実装を追加しやすくなります。
インターフェースの具体例: 複数の役割の実装
以下は、Animal
とRunnable
という2つのインターフェースを同時に実装した例です。
interface Animal {
fun sound()
}
interface Runnable {
fun run()
}
class Dog : Animal, Runnable {
override fun sound() {
println("Dog says: Woof!")
}
override fun run() {
println("Dog is running!")
}
}
fun main() {
val dog = Dog()
dog.sound()
dog.run()
}
出力結果
Dog says: Woof!
Dog is running!
まとめ: インターフェースを使うポイント
- 異なるクラスに共通の振る舞いを追加する場合
- デフォルト実装でコードの重複を回避する場合
- 複数の契約を実装し、柔軟な拡張性を求める場合
インターフェースを活用することで、コードの再利用性や柔軟性が高まり、効率的なシステム設計が可能になります。
抽象クラスの特徴と使用場面
Kotlinの抽象クラスは、共通の状態や振る舞いを持たせつつ、具体的な実装を子クラスに委ねる仕組みです。インターフェースと異なり、状態を持つことができるため、複雑なクラス設計に適しています。
抽象クラスの主な特徴
- 単一継承のみ可能
Kotlinでは1つの抽象クラスしか継承できません。多重継承はサポートされません。 - 状態(フィールド)を保持できる
抽象クラスでは、フィールドやプロパティに初期値を設定することが可能です。これにより、共通の状態を子クラスで共有できます。 - 部分的な実装が可能
抽象クラスは、抽象メソッド(実装なし)と具象メソッド(実装あり)を定義できます。 - コンストラクタを持つことができる
抽象クラスはコンストラクタを定義できるため、状態の初期化を行うことができます。
abstract class Animal(val name: String) {
abstract fun sound() // 抽象メソッド
open fun eat() { // 具象メソッド
println("$name is eating")
}
}
class Dog(name: String) : Animal(name) {
override fun sound() {
println("$name says: Woof!")
}
}
fun main() {
val dog = Dog("Buddy")
dog.sound()
dog.eat()
}
出力結果
Buddy says: Woof!
Buddy is eating
抽象クラスの使用場面
- 共通の状態や振る舞いを持つクラスを定義する場合
同じフィールドやメソッドを複数の子クラスで共有する必要がある場合に使用します。 - 部分的に実装を提供しつつ、特定の振る舞いを子クラスに強制する場合
抽象クラスでは、抽象メソッドを定義して、子クラスに具体的な実装を強制できます。 - コンストラクタを使って初期化が必要な場合
抽象クラスは状態の初期化が可能なため、データを共通して管理する場面で役立ちます。 - 1つの親クラスだけ継承するシンプルな継承構造の場合
Kotlinでは単一継承が基本であり、抽象クラスは明確な親クラスを定義する場合に適しています。
具体例: 共通の振る舞いと状態の継承
以下は、Animal
抽象クラスを利用し、異なる動物クラスに共通の状態や振る舞いを提供する例です。
abstract class Animal(val name: String) {
abstract fun sound()
open fun info() {
println("$name is an animal")
}
}
class Cat(name: String) : Animal(name) {
override fun sound() {
println("$name says: Meow!")
}
}
class Bird(name: String) : Animal(name) {
override fun sound() {
println("$name says: Tweet!")
}
}
fun main() {
val cat = Cat("Whiskers")
val bird = Bird("Tweety")
cat.sound()
cat.info()
bird.sound()
bird.info()
}
出力結果
Whiskers says: Meow!
Whiskers is an animal
Tweety says: Tweet!
Tweety is an animal
抽象クラスのポイント
- 共通の状態(フィールド)や振る舞いを継承させたい場合に使用
- 抽象メソッドを通じて子クラスに具体的な実装を強制
- 初期化処理や一部の具体的な実装を提供できる
抽象クラスは、クラス間の共通要素を定義し、効率的なコードの再利用を可能にします。特に状態や振る舞いを明確に共有する場合にはインターフェースよりも適しており、柔軟で強力な設計が実現できます。
インターフェースと抽象クラスの違い
Kotlinにおけるインターフェースと抽象クラスは似た役割を果たしますが、その設計思想や使い方には明確な違いがあります。以下では、両者の違いを構文や具体的な特徴を比較しながら解説します。
違い1: 多重継承の可否
- インターフェース: 複数のインターフェースを一つのクラスで実装することができます(多重継承が可能)。
- 抽象クラス: 単一継承のみ可能であり、1つの抽象クラスしか継承できません。
interface Flyable {
fun fly()
}
interface Runnable {
fun run()
}
abstract class Animal {
abstract fun sound()
}
class Bird : Animal(), Flyable, Runnable {
override fun sound() {
println("Bird chirps")
}
override fun fly() {
println("Bird is flying")
}
override fun run() {
println("Bird is running")
}
}
違い2: 状態(フィールド)の保持
- インターフェース: フィールドや状態を保持することはできません。プロパティを宣言できますが、初期化することはできません。
- 抽象クラス: 状態やフィールドを持つことが可能であり、初期化も行えます。
// 抽象クラスは状態を保持可能
abstract class Animal(val name: String) {
abstract fun sound()
}
class Dog(name: String) : Animal(name) {
override fun sound() {
println("$name says: Woof!")
}
}
違い3: デフォルト実装
- インターフェース: Kotlinではデフォルト実装が可能です。
- 抽象クラス: 具象メソッド(具体的な実装)を含むことが可能です。
interface Animal {
fun sound()
fun eat() {
println("Animal is eating")
}
}
abstract class AnimalBase {
abstract fun sound()
open fun sleep() {
println("Animal is sleeping")
}
}
違い4: コンストラクタの有無
- インターフェース: コンストラクタを持つことができません。
- 抽象クラス: コンストラクタを定義できるため、状態の初期化が可能です。
abstract class Animal(val name: String) {
abstract fun sound()
}
class Cat(name: String) : Animal(name) {
override fun sound() {
println("$name says: Meow!")
}
}
違い5: 使用目的
- インターフェース: クラス間で共通の振る舞い(契約)を提供し、柔軟な多重継承を実現する場合に使用します。
- 抽象クラス: クラス間で共通の状態や振る舞いをまとめ、部分的に実装しつつ、継承する場合に使用します。
インターフェースと抽象クラスの比較表
特徴 | インターフェース | 抽象クラス |
---|---|---|
多重継承 | 可能 | 不可 |
フィールドの保持 | 不可 | 可能 |
デフォルト実装 | 可能 | 可能 |
コンストラクタ | 定義不可 | 定義可能 |
使用目的 | 共通の振る舞い(契約)の定義 | 共通の状態や部分的な実装の提供 |
まとめ: どちらを使うべきか
- インターフェース: 柔軟に複数の役割や振る舞いを実装したい場合。特に多重継承が必要な場合に選択します。
- 抽象クラス: 状態や振る舞いを共有しつつ、共通のロジックを提供し、継承関係を明確にしたい場合に使用します。
この違いを理解することで、Kotlinの設計においてインターフェースと抽象クラスを適切に使い分けることができるようになります。
インターフェースと抽象クラスの使い分け方
Kotlinでインターフェースと抽象クラスを使い分ける際には、それぞれの特徴と使用目的を理解し、状況に応じて選択することが重要です。以下では、判断基準と具体的なシチュエーションを解説します。
判断基準: インターフェースを選ぶ場合
- 複数の役割や契約を実装したい場合
インターフェースは多重継承が可能なため、クラスに複数の振る舞いを柔軟に追加できます。
interface Flyable {
fun fly()
}
interface Runnable {
fun run()
}
class Bird : Flyable, Runnable {
override fun fly() {
println("Bird is flying")
}
override fun run() {
println("Bird is running")
}
}
- 状態(フィールド)を持つ必要がない場合
インターフェースはプロパティを宣言できますが、状態を保持することはできません。そのため、データ管理が不要な場面で有効です。 - 拡張性と柔軟性を重視する場合
インターフェースを使うことで、複数の機能を追加しやすく、後から振る舞いを変更する場合にも柔軟に対応できます。
判断基準: 抽象クラスを選ぶ場合
- 共通の状態やフィールドを持たせたい場合
抽象クラスはプロパティやフィールドを保持できるため、クラス間で共通の状態を共有する場合に適しています。
abstract class Animal(val name: String) {
abstract fun sound()
fun info() {
println("This is a $name")
}
}
class Dog(name: String) : Animal(name) {
override fun sound() {
println("$name says: Woof!")
}
}
- 単一の親クラスを継承する設計にしたい場合
抽象クラスは1つしか継承できないため、親クラスが1つで十分な場合に利用します。 - 部分的に実装を提供し、子クラスに強制したい場合
抽象クラスでは、抽象メソッド(未実装)と具象メソッド(実装済み)を共存させることができます。
インターフェースと抽象クラスの使い分け例
例1: 複数の振る舞いを追加する場合 → インターフェース
interface Flyable {
fun fly()
}
interface Swimmable {
fun swim()
}
class Duck : Flyable, Swimmable {
override fun fly() {
println("Duck is flying")
}
override fun swim() {
println("Duck is swimming")
}
}
例2: 共通の状態を共有し、部分的に実装する場合 → 抽象クラス
abstract class Vehicle(val name: String) {
open fun startEngine() {
println("$name engine started")
}
abstract fun move()
}
class Car(name: String) : Vehicle(name) {
override fun move() {
println("$name is moving on the road")
}
}
具体的な判断ポイント
シチュエーション | 選択するべきもの | 理由 |
---|---|---|
複数の役割や振る舞いを追加したい | インターフェース | 多重継承が可能であり、柔軟に拡張できるため |
共通の状態やフィールドを持たせたい | 抽象クラス | 状態(フィールド)を保持し、部分的に実装可能なため |
デフォルト実装が必要な場合 | インターフェース / 抽象クラス | 両者ともデフォルト実装が可能 |
1つの親クラスだけ継承する場合 | 抽象クラス | 単一継承をサポートしているため |
まとめ: インターフェースと抽象クラスの選び方
- インターフェース: 柔軟に複数の振る舞いを追加する必要がある場合や、状態を持たない場合。
- 抽象クラス: 共通の状態や振る舞いを定義し、単一継承で設計する場合。
この判断基準をもとに、Kotlinの設計において最適な選択を行うことで、シンプルで拡張性の高いシステムを構築することができます。
実践例: インターフェースの活用
Kotlinのインターフェースは、複数のクラスに共通の振る舞いを提供しつつ、柔軟な設計を可能にします。ここでは、インターフェースを活用した具体的な実装例を紹介します。
例1: 複数の役割を持つクラスの実装
インターフェースを使用することで、1つのクラスに複数の役割を持たせることができます。以下は、Flyable
(飛行可能)とRunnable
(走行可能)の2つのインターフェースを同時に実装した例です。
interface Flyable {
fun fly()
}
interface Runnable {
fun run()
}
class Bird : Flyable, Runnable {
override fun fly() {
println("Bird is flying in the sky")
}
override fun run() {
println("Bird is running on the ground")
}
}
fun main() {
val bird = Bird()
bird.fly()
bird.run()
}
出力結果:
Bird is flying in the sky
Bird is running on the ground
例2: デフォルト実装を利用したコードの再利用
Kotlinのインターフェースではデフォルト実装が可能です。これにより、コードの重複を避けて共通の振る舞いを定義できます。
interface Animal {
val name: String
fun sound()
// デフォルト実装
fun eat() {
println("$name is eating")
}
}
class Dog(override val name: String) : Animal {
override fun sound() {
println("$name says: Woof!")
}
}
class Cat(override val name: String) : Animal {
override fun sound() {
println("$name says: Meow!")
}
}
fun main() {
val dog = Dog("Buddy")
val cat = Cat("Whiskers")
dog.sound()
dog.eat()
cat.sound()
cat.eat()
}
出力結果:
Buddy says: Woof!
Buddy is eating
Whiskers says: Meow!
Whiskers is eating
例3: インターフェースを使った多態性の実現
インターフェースを使うことで、複数のクラスに共通のインターフェースを適用し、同じメソッドを異なる振る舞いで実行できます。
interface Shape {
fun draw()
}
class Circle : Shape {
override fun draw() {
println("Drawing a Circle")
}
}
class Square : Shape {
override fun draw() {
println("Drawing a Square")
}
}
fun renderShape(shape: Shape) {
shape.draw()
}
fun main() {
val circle = Circle()
val square = Square()
renderShape(circle)
renderShape(square)
}
出力結果:
Drawing a Circle
Drawing a Square
インターフェース活用のポイント
- 複数の振る舞いを持たせる
異なるインターフェースを組み合わせて、柔軟に役割を追加できます。 - デフォルト実装でコードを再利用
共通の振る舞いはインターフェース内でデフォルト実装を提供し、コードの重複を削減します。 - 多態性の実現
インターフェースを用いて共通のメソッドを定義し、異なる振る舞いを簡潔に実装できます。
まとめ
インターフェースを活用することで、柔軟性のある設計が可能になります。複数の役割を一つのクラスに持たせる場合や、コードの再利用を行う場合に特に有効です。実践を通じて、Kotlinにおけるインターフェースの利便性と強力な機能を理解し、効率的なコード設計を目指しましょう。
実践例: 抽象クラスの活用
抽象クラスは、共通の状態や振る舞いを持たせつつ、部分的な実装を提供し、子クラスに具体的な実装を委ねる場合に役立ちます。以下では、抽象クラスを活用した具体的な実装例を紹介します。
例1: 共通の状態と振る舞いを持つクラス
抽象クラスを使用して、複数のクラスで共通の状態や振る舞いを定義しつつ、子クラスごとに異なる動作を実装します。
abstract class Animal(val name: String) {
// 抽象メソッド(未実装)
abstract fun sound()
// 共通の振る舞い(具象メソッド)
fun sleep() {
println("$name is sleeping")
}
}
class Dog(name: String) : Animal(name) {
override fun sound() {
println("$name says: Woof!")
}
}
class Cat(name: String) : Animal(name) {
override fun sound() {
println("$name says: Meow!")
}
}
fun main() {
val dog = Dog("Buddy")
val cat = Cat("Whiskers")
dog.sound()
dog.sleep()
cat.sound()
cat.sleep()
}
出力結果:
Buddy says: Woof!
Buddy is sleeping
Whiskers says: Meow!
Whiskers is sleeping
例2: コンストラクタを利用して共通の初期化処理を行う
抽象クラスではコンストラクタを利用できるため、共通のデータ初期化を行う場面で非常に便利です。
abstract class Vehicle(val name: String, val maxSpeed: Int) {
open fun displayInfo() {
println("Vehicle Name: $name, Max Speed: $maxSpeed km/h")
}
abstract fun move()
}
class Car(name: String, maxSpeed: Int) : Vehicle(name, maxSpeed) {
override fun move() {
println("$name is driving at a speed of $maxSpeed km/h")
}
}
class Bicycle(name: String, maxSpeed: Int) : Vehicle(name, maxSpeed) {
override fun move() {
println("$name is pedaling at a speed of $maxSpeed km/h")
}
}
fun main() {
val car = Car("Sports Car", 200)
val bicycle = Bicycle("Mountain Bike", 30)
car.displayInfo()
car.move()
bicycle.displayInfo()
bicycle.move()
}
出力結果:
Vehicle Name: Sports Car, Max Speed: 200 km/h
Sports Car is driving at a speed of 200 km/h
Vehicle Name: Mountain Bike, Max Speed: 30 km/h
Mountain Bike is pedaling at a speed of 30 km/h
例3: 抽象クラスと具象メソッドの組み合わせ
抽象クラスを使うと、共通の処理を具象メソッドで提供し、必要な部分のみ子クラスに実装させることができます。
abstract class Employee(val name: String) {
// 共通の振る舞い
open fun workHours() {
println("$name works 8 hours a day")
}
// 特定の処理を子クラスに委ねる
abstract fun role()
}
class Manager(name: String) : Employee(name) {
override fun role() {
println("$name is a Manager")
}
override fun workHours() {
println("$name works 10 hours a day to manage the team")
}
}
class Developer(name: String) : Employee(name) {
override fun role() {
println("$name is a Developer")
}
}
fun main() {
val manager = Manager("Alice")
val developer = Developer("Bob")
manager.role()
manager.workHours()
developer.role()
developer.workHours()
}
出力結果:
Alice is a Manager
Alice works 10 hours a day to manage the team
Bob is a Developer
Bob works 8 hours a day
抽象クラス活用のポイント
- 共通の状態や振る舞いを提供する
抽象クラスを使用すると、親クラスで状態(フィールド)や具象メソッドを定義し、子クラスでそれを再利用できます。 - 一部の動作を強制する
抽象メソッドを定義することで、子クラスに具体的な実装を強制することができます。 - コンストラクタを活用する
初期化処理が必要な場合に、抽象クラスのコンストラクタを利用して効率的にデータを設定できます。
まとめ
抽象クラスは、共通の状態や振る舞いを持つクラスを設計しつつ、子クラスごとに異なる動作を実装する場面で非常に有効です。特に、初期化処理や具象メソッドを含む必要がある場合には、インターフェースよりも抽象クラスを選択することでシンプルで効率的なコードを実現できます。
インターフェースと抽象クラスを組み合わせる方法
Kotlinでは、インターフェースと抽象クラスを組み合わせて活用することで、柔軟かつ効率的な設計が可能になります。それぞれの強みを生かし、複雑なシステムでも適切な役割分担を実現できます。
組み合わせの基本設計
- インターフェース: 共通の振る舞い(契約)を定義し、複数の役割を持たせる。
- 抽象クラス: 共通の状態(フィールド)や具体的な実装を提供する。
これにより、インターフェースの柔軟性と抽象クラスの状態保持や部分的実装を組み合わせた設計が可能になります。
例: 状態を持つ抽象クラス + 複数のインターフェース
以下の例では、抽象クラスで共通の状態や処理を提供し、複数のインターフェースで異なる振る舞いを実装しています。
// インターフェースの定義
interface Flyable {
fun fly()
}
interface Runnable {
fun run()
}
// 抽象クラスの定義
abstract class Animal(val name: String) {
abstract fun sound()
open fun sleep() {
println("$name is sleeping")
}
}
// 状態を持つ抽象クラス + 複数のインターフェースを実装
class Bat(name: String) : Animal(name), Flyable, Runnable {
override fun sound() {
println("$name makes a screeching sound")
}
override fun fly() {
println("$name is flying at night")
}
override fun run() {
println("$name is crawling on the ground")
}
}
fun main() {
val bat = Bat("Batty")
bat.sound()
bat.fly()
bat.run()
bat.sleep()
}
出力結果:
Batty makes a screeching sound
Batty is flying at night
Batty is crawling on the ground
Batty is sleeping
設計のポイント
- 共通の状態を抽象クラスで定義
状態(name
)や共通の振る舞い(sleep
)は抽象クラスで定義し、子クラスが継承します。 - 複数の振る舞いをインターフェースで追加
インターフェースを利用することで、Flyable
やRunnable
のように複数の役割を柔軟に追加できます。 - 抽象クラスとインターフェースの組み合わせ
- 抽象クラスは「基盤」となる状態や振る舞いを提供します。
- インターフェースは追加機能や役割を提供します。
例: デフォルト実装を持つインターフェースと抽象クラス
インターフェースと抽象クラスのデフォルト実装を組み合わせることで、さらに柔軟な設計が可能です。
interface Swimmable {
fun swim() {
println("This object can swim")
}
}
abstract class Creature(val species: String) {
abstract fun live()
open fun eat() {
println("$species is eating")
}
}
class Fish(species: String) : Creature(species), Swimmable {
override fun live() {
println("$species lives in water")
}
// Swimmableのデフォルト実装も利用可能
}
fun main() {
val fish = Fish("Goldfish")
fish.live()
fish.eat()
fish.swim()
}
出力結果:
Goldfish lives in water
Goldfish is eating
This object can swim
組み合わせのメリット
- 柔軟な拡張性
インターフェースを使えば、複数の役割を追加しやすくなります。 - 状態と共通処理の再利用
抽象クラスで状態や共通の振る舞いを定義することで、コードの重複を避けられます。 - コードの整理と設計の明確化
インターフェースは「契約」として機能し、抽象クラスは「基盤」として機能するため、役割が明確になります。
まとめ
インターフェースと抽象クラスを組み合わせることで、柔軟かつ効率的な設計が可能になります。インターフェースで複数の振る舞いを定義し、抽象クラスで共通の状態や振る舞いを提供することで、シンプルで拡張性の高いコードを実現できます。
まとめ
本記事では、Kotlinにおけるインターフェースと抽象クラスの特徴、違い、使い分け方について詳しく解説しました。
- インターフェースは複数の役割や振る舞いを追加する柔軟性を持ち、デフォルト実装を提供することでコードの再利用を可能にします。
- 抽象クラスは共通の状態や振る舞いを提供し、単一継承の設計に適しており、コンストラクタを使って初期化処理も行えます。
- 両者を組み合わせることで、柔軟かつ効率的なシステム設計が可能になります。
設計の目的や要件に応じて、インターフェースと抽象クラスを適切に選び、Kotlinの特性を最大限に活用しましょう。これにより、拡張性が高く、シンプルでメンテナンスしやすいコードを構築することができます。
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