多くの企業や組織で利用されているMicrosoft 365のExchange管理センター(EAC)は、メールのフローを詳細に確認できるメッセージトレース機能が大変便利です。しかし、レポートをダウンロードしようとした際に突然404エラーに直面すると、原因の切り分けに時間を要する方も多いのではないでしょうか。そこで本記事では、実際に発生したインシデント情報や考えられる原因、そして具体的な対処方法や再発時の確認ポイントなどを詳しく解説します。
Exchange管理センター(EAC)のメッセージトレースで404エラーが発生する背景
EACのメッセージトレースは、送受信されたメールの情報やその経路を記録し、セキュリティやトラブルシューティングに役立てられる重要な機能です。しかし、レポートを取得しようとした際にリンクをクリックしても、404エラーが表示されてしまい、ダウンロードが全くできないという事例が報告されています。
よくある初期対応の落とし穴
多くの管理者が最初に疑うのは、ネットワーク環境やブラウザの問題、あるいは管理権限の不足ではないでしょうか。実際、アクセス権を見直したり、ブラウザのキャッシュをクリアしたりすることで解決する場合もあります。しかし、今回の事象ではこうした一般的な対処策では改善が見られず、他の管理者アカウントやまったく別のテナントでも同様の症状が起きていたことが特徴です。
ネットワーク設定の確認
ネットワーク由来の問題を疑う場合、VPNやプロキシの設定が影響しているかを確認しましょう。たとえば一時的に別のネットワーク(モバイル回線など)からアクセスしてみる、プロキシを外してみるなどの検証は基本的なステップです。ただし本件では、こうしたアプローチでも改善しなかった事例が多く、ネットワーク設定自体が根本原因ではない可能性が高いと言えます。
ブラウザ互換性と拡張機能の影響
ブラウザの拡張機能(アドブロッカーやスクリプトブロッカーなど)がEACの正常動作を阻害する場合も考えられます。拡張機能をすべてオフにした状態で再度アクセスしてみると、予期せぬ不具合を切り分けられることがあります。しかし、本事象の404エラーは多くのテナントで同時に発生したため、個別のブラウザ依存の問題というよりはサービス側の障害である可能性が高いと言えるでしょう。
サービスインシデント「EX957990」が原因だった可能性
今回の404エラーの原因として、Microsoft 365側のサービス インシデントが報告されています。具体的には「EX957990」と呼ばれるインシデントが発生し、広範囲のテナントに影響を及ぼしていたようです。Microsoft 365管理センターの「Service Health」ダッシュボードでは、当該インシデントの状況をリアルタイムで確認できるので、不具合が起きたときにはまずここを確認することが推奨されます。
インシデント情報のチェック手順
以下に、Microsoft 365管理センターでインシデント情報を確認する手順を示します。管理者権限を持っているアカウントでログインする必要があります。
1. Microsoft 365管理センターにサインイン
2. 左側のメニューから「ヘルス」を選択
3. 「サービス正常性」をクリック
4. 発生中または解決済みのインシデント情報が一覧表示されるので、該当のインシデント番号(EX957990)を探す
5. 詳細をクリックして、Microsoft側の最新状況や推定解決時期を確認
このように、管理センター上で状況をフォローすることで、ユーザー側で対処可能か、あるいはMicrosoft側の修正を待つしかない事象なのかを素早く判断できます。
インシデント解消までの流れ
一般的にMicrosoft 365の障害が発生した場合、Microsoft側で根本原因を調査し、順次修正プログラムの適用や設定変更を行います。管理センターのステータスは段階的に更新されるため、いち早く最新情報を得るためにも定期的なチェックが欠かせません。今回のケースでも、問題の深刻度によっては段階的に復旧が進められ、一部のテナントでは早期に回復し、他のテナントでは予定より遅れる可能性があります。
最終的な対応状況と解消時期
Microsoftからは、「2024年12月23日ごろに全テナントで問題が解消される予定」とのアナウンスがありました。実際に12月23日以降、メッセージトレースのレポートをダウンロードできるようになったと報告するユーザーが増えています。インシデント番号「EX957990」に紐づく問題が根本的に修正され、サービスが安定稼働に戻ったと考えられます。
問題解消後の確認ポイント
実際に問題が解消されたかどうかを確認するためには、以下のステップがおすすめです。
- EACに管理者としてサインイン
- メッセージトレースの対象期間やフィルター条件を設定
- 「検索」を実行し、結果を一覧表示
- 「エクスポート」や「CSVダウンロード」のリンクをクリック
- 正常にダウンロード可能であれば改善を確認
もし依然として404エラーや別のエラーメッセージが表示される場合は、Microsoft 365管理センターの「Service Health」で改めて障害情報をチェックするのがおすすめです。
PowerShellを使った回避策
万一、EACのGUIからのダウンロードがうまくいかない場合、PowerShellを利用してメッセージトレース情報を取得する方法もあります。Exchange Online PowerShellを使えば、以下のようなスクリプトで詳細を確認できます。
# Exchange Online PowerShell モジュールをインポート
Import-Module ExchangeOnlineManagement
# 管理者アカウントでサインイン
Connect-ExchangeOnline -UserPrincipalName <管理者アカウント>
# 期間や送信者アドレス、受信者アドレスなどを指定してメッセージトレースを取得
$startDate = (Get-Date).AddDays(-7)
$endDate = Get-Date
$result = Get-MessageTrace -StartDate $startDate -EndDate $endDate -SenderAddress "sender@example.com"
# 結果をCSVに出力
$result | Export-Csv -Path "C:\temp\MessageTraceResults.csv" -NoTypeInformation
# セッションを切断
Disconnect-ExchangeOnline
このように、GUIが使えない状況であってもPowerShellでデータを取り出して解析できるため、一時的な代替手段として検討してみるのもおすすめです。
注意点と補足:再発時のリスク管理
サービス障害はいつ発生するか分からないため、再発リスクに備えることも大切です。もし同様の404エラーが再度発生した場合には、まずは下記ポイントをチェックすると効率的に切り分けできます。
Microsoft公式ステータスページの活用
Microsoft 365管理センターに加え、Microsoft公式のステータスページやTwitterアカウントなどでも障害発生に関する情報が公開されることがあります。大規模障害の場合、比較的早い段階でSNS上でも話題になるケースが多いため、複数経路で情報を収集し、問題の影響範囲を把握することが重要です。
組織内の報告・連絡体制の整備
同じ管理者の中で「誰がいつ、どのようなエラーを確認したか」を正確に共有できるようにしておくと、複数の担当者が同じ作業を繰り返して無駄な時間を費やすリスクを減らせます。特に大規模な組織では、システム障害時の初動対応の遅れが大きな損失につながるため、報告・連絡・相談(いわゆるホウレンソウ)の体制を強化することが望ましいです。
まとめ:根本原因を特定して再発に備えよう
EACでのメッセージトレースダウンロード時の404エラーは、単なる設定ミスやネットワークの問題だけでなく、Microsoft 365側のサービス障害が根本原因となっている可能性があります。今回の事例では、「EX957990」というインシデントが2024年12月23日ごろまで続き、その後に改善が確認されました。もし同様のエラーに遭遇した場合は、まずはサービスインシデント情報を確認し、Microsoft側の復旧作業を待つ必要があるかどうかを的確に見極めることが重要です。
最終的には、問題解消後に改めてダウンロードの動作確認を行い、成功を確認したうえで再度運用を継続していく流れとなります。また、再発を防ぐという意味では、定期的にMicrosoft 365管理センターをチェックして最新のサービス状況を把握することや、障害発生時にPowerShellなどの代替手段を用いて業務影響を最小限に抑える対策を行うことも検討してみてください。
トラブルシューティング手順の一覧表
最後に、トラブルシューティング手順を一覧表にまとめます。状況に応じて必要な項目を実施することで、問題の早期解決と被害の最小化が期待できます。
手順 | 具体的な内容 | 備考 |
---|---|---|
1. サービスヘルス確認 | Microsoft 365管理センターの「サービス正常性」をチェック | インシデント(EX957990など)の存在を把握 |
2. ブラウザ設定確認 | キャッシュクリア・拡張機能オフの状態で再度アクセス | 404エラーが継続する場合は次の手順へ |
3. ネットワーク環境切り替え | VPNを外す、モバイル回線に切り替えるなど | 一般的なネットワーク障害を切り分け |
4. PowerShellで代替取得 | Get-MessageTraceコマンドを使用してレポートを取得 | GUIが不安定なときの暫定対処策 |
5. インシデント解消待ち | Microsoft公式のアナウンスやサポート情報を定期的に確認 | 解消目安日(2024/12/23など)に注意 |
6. 再度ダウンロードテスト | EACからのダウンロードが正常復旧しているか検証 | 成功したら本格復旧 |
この一覧表をリファレンスとして活用することで、状況に応じた最適な対処方法をスムーズに見つけることができるでしょう。
結論
EACのメッセージトレースで404エラーが発生する場合、まずはサービス正常性の確認が欠かせません。今回のケースでは大規模なサービスインシデント「EX957990」が原因となり、多くのテナントでダウンロードができなくなっていましたが、2024年12月23日ごろの解消予定日以降、問題が解消されたとの報告が相次いでいます。再度同様の現象が起きた場合でも、まずはMicrosoft 365管理センターのサービスヘルスやMicrosoft公式ステータスページをチェックし、必要に応じてPowerShellなどの代替策を試すことで、業務に与える影響を最小限に抑えてください。
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