Exchange OnlineのOWAでOut of Office設定時に発生するエラーの原因と対策

Out of Office(OOO)の設定は、Exchange OnlineやOutlook Web App(OWA)で不在時の自動返信を管理するうえで欠かせない機能だ。しかし、設定画面で“Exception has been thrown by the target of an invocation.”などのエラーが発生する事例も多い。本記事で原因と対策を詳しく解説する。

エラー発生の背景と症状

Exchange Onlineの管理者やユーザーがOutlook Web App(OWA)を使ってOut of Office(OOO)を設定する際、稀にエラーが表示され、自動返信を有効にできない状況が報告されている。特にClassic Exchange Admin Center(以下、Classic EAC)の画面から操作しようとすると、

「Exception has been thrown by the target of an invocation.」

といったエラーが出現するケースが多い。ブラウザを変えたり、異なるPCからアクセスしても改善せず、操作が進まないという悩みが広がっている。

よくある事例

  • Classic EAC(ECP)経由で新規にOOOを設定しようとしてエラーが出る
  • すでにOOOが設定されているユーザーに対して再度変更しようとするとエラーが出る
  • 一部テナントだけでなく、複数テナントで同様の不具合が発生
  • ユーザー自身でOWAから設定しても失敗、管理者権限で行っても同じ

非推奨になったClassic EACが絡む場合

Classic EACは徐々に機能が新しいExchange Admin Center(以下、新EAC)に移行されており、一部の機能が非推奨(Deprecated)となっている。Microsoftの方針としては新EACやMicrosoft 365管理センターへの切り替えを推奨しているが、依然としてClassic EACで設定作業を行う環境も多い。そのため、Classic EAC由来の不具合が発生してもサポートが難しいとされる場合がある。

考えられる主な原因

エラーの表面上の文言こそ「Exception has been thrown…」と抽象的だが、いくつかの要因が背景にあると考えられている。

1. Microsoft側のサービス デグレード

Exchange Onlineはクラウドサービスであるため、Microsoft側で一時的なサービス デグレードが発生している可能性がある。特定の期間中に複数のテナントで同様の現象が確認されることもあり、Microsoft 365のサービスステータスページや管理センターの「サービス正常性ダッシュボード」を確認すると、サービス低下やメンテナンス情報が掲載されている場合がある。

2. Classic EAC(ECP)の非推奨化による影響

前述の通り、Classic EACは新EACへの移行を促されている。Microsoftの公式ドキュメントでも、Classic EAC(ECP)の利用は将来的に完全にサポート対象外になる可能性が示唆されており、既存機能で問題が起きても「非推奨ツールでの発生」という理由で対応が限定的になる場合がある。

3. 既に設定されているOOOの重複・競合

ユーザーによっては既にOOOが有効化されているケースがある。そこに新たに変更や更新を加えようとすると、内部的に競合が発生してエラーとして表出する可能性がある。OWAやClassic EACのフロントエンドでは適切にハンドリングできず「Exception…」という汎用的なエラーになるケースがある。

4. ブラウザのキャッシュやセッション周りの問題

OWAやEACの操作で発生するエラーの一部には、ブラウザのキャッシュやセッション管理が原因になるものもある。特に長時間同じブラウザセッションでログインしていると、認証トークンが不安定になったりキャッシュが破損したりしてエラーを引き起こす場合がある。ただし、ブラウザを変更しても直らないケースが報告されているため、根本的な解決とは言い切れない部分もある。

エラーへの対処法と回避策

「Exception has been thrown by the target of an invocation.」のエラーを回避して、Out of Officeの設定を正しく行うための実践的な方法を紹介する。

1. Microsoft 365管理センターからの設定

OWAやClassic EACではなく、Microsoft 365管理センター( https://admin.microsoft.com )を用いる方法。管理者権限でサインインした後、以下の手順を実行する。

  1. 左側メニューの「ユーザー」を選択し、「アクティブなユーザー」をクリック
  2. 対象ユーザーを選択し、「メール」や「その他の設定」など、表示される設定一覧を開く
  3. 「自動返信を管理(Manage automatic replies)」の項目でOOOの内容を入力し有効化

場合によっては、すでに設定されているOOOのメッセージや期間を再編集した際に、同様のエラーが発生するとの報告もある。しかし、Classic EACほど頻度は高くないため、まずは管理センターで試してみる価値がある。

2. 新しいExchange Admin Centerでの操作

Microsoft 365管理センターに慣れていない場合やより詳細なExchange関連の設定が必要な場合は、新EACを利用するのも一つの手段。URLやMicrosoft 365ポータルから新EACに移動し、以下の手順で進める。

  1. 左メニューから「受信者 > メールボックス」を選択
  2. エラー回避を図りたいユーザーを選択
  3. メニュー上部の「その他 > 自動返信を管理(Manage automatic replies)」をクリック
  4. OOOの本文や外部向け返信の有無などを設定

新EACが正式なサポート対象となるため、Classic EACの問題に比べると不具合が起きる可能性は低いとされる。また、UIが刷新されているため操作に慣れるまで時間がかかるかもしれないが、今後も更新が続くため学習しておくメリットは大きい。

3. PowerShellによる設定

Out of Office(OOO)の設定に最も確実なのがPowerShellを使う方法。管理者権限を持つアカウントでExchange Onlineに接続し、コマンドを実行することでエラーを回避するケースが多い。具体的な手順は以下の通り。

Exchange Online PowerShellモジュールのインストール

Install-Module -Name ExchangeOnlineManagement -RequiredVersion 3.4.0

このモジュールを使うことで、クラウド上のExchange Onlineに対して管理操作が可能となる。

Exchange Onlineへ接続

Connect-ExchangeOnline -UserPrincipalName 管理者アカウント@ドメイン

上記コマンドで資格情報を入力すれば、オンライン環境にログインできる。

Out of Office(自動返信)を設定

Set-MailboxAutoReplyConfiguration -Identity ユーザーアドレス
  -AutoReplyState Enabled
  -InternalMessage "組織内向けの自動返信メッセージ"
  -ExternalMessage "組織外向けの自動返信メッセージ"
  -ExternalAudience All

このコマンドを実行することで、対象ユーザーのOOOを有効化し、組織内外に異なるメッセージを送る設定が行える。

4. Microsoftサポートへの問い合わせ

上記の対策を試しても改善しない場合や、どうしてもClassic EAC経由での設定が必要である場合には、Microsoft 365管理センターからサポートチケットを作成する手段が残されている。ただし、前述のとおりClassic EACは非推奨であるため、「新EACやPowerShellを使ってください」という回答がなされる可能性が高い。また、エラーの根本原因追及には有償サブスクリプションが必要なケースもあるので注意が必要。

具体的なトラブルシューティングの手順例

不具合が発生した際に試したいステップを順番にまとめる。複数回実施したり、テナントや環境によっては順序が前後する場合もあるが、基本的な流れとして役立つ。

ステップ内容備考
1. ブラウザのキャッシュクリアCookieやキャッシュを削除し、再ログイン効果が薄い場合もあるが最初に試す
2. 新EACや管理センターを確認Classic EACではなく新EACやMicrosoft 365管理センターを利用UIが刷新されており操作に注意
3. PowerShellでのOOO設定ExchangeOnlineManagementモジュール経由でSet-MailboxAutoReplyConfiguration最も確実な手段とされる
4. サービスステータスを確認Microsoft 365管理センターの「サービス正常性ダッシュボード」でデグレード情報をチェック一時的な不具合であれば時間経過で解決する可能性も
5. Microsoftサポートに問い合わせ上記の回避策がすべて失敗した場合非推奨機能に対する深い調査は別途費用がかかる場合あり

メリット・デメリット比較

Microsoft 365管理センターや新EACを利用

  • メリット: 追加のインストールやコマンド操作が不要。UI操作で完結しやすい。
  • デメリット: テナントや既に設定済みの環境によっては、やはりエラーが起きる可能性が残る。

PowerShellを利用

  • メリット: 柔軟かつ安定した設定変更が可能。スクリプト化で一括操作も簡単。
  • デメリット: 管理者権限やPowerShellの知識が求められる。小規模なら手動でも良いが、大規模ではスクリプト運用が前提になる。

Classic EAC(ECP)を利用

  • メリット: 以前から慣れているUIの場合、操作手順がわかりやすい。
  • デメリット: 非推奨(Deprecated)となっており、エラー時にサポート対象外。新機能や修正が適用されにくい。

運用面での注意点

1. スムーズな移行を視野に入れる

Classic EACの利用は今後さらに制限される可能性が高い。新EACや管理センターへの移行を社内ルールとして定め、管理者やユーザーに周知しておくことで、エラーが発生しづらい環境を築ける。

2. PowerShellスクリプトでの自動化

大規模な組織やリモートワークが普及した現代では、OOOの設定を一元管理したいシーンも増えている。PowerShellを使って複数ユーザーの自動返信設定をまとめて実行できれば、手動操作によるミスや手間を軽減しやすい。

3. 定期的なサービスステータスの確認

Microsoft 365はクラウドサービスのため、管理者は定期的にサービスステータスページを確認し、サービス デグレードの情報を把握しておくことが望ましい。問題がテナント固有ではなく全般的な障害である場合、Microsoftからのアナウンスを待つことで解決する可能性がある。

まとめ

「Exception has been thrown by the target of an invocation.」というエラーメッセージは、具体的な原因が見えにくく対処に時間がかかりやすい。一方で、Microsoft 365管理センターや新しいExchange Admin Center、そしてPowerShellを利用することで回避・解決できる可能性が高い。すでに非推奨となっているClassic EAC(ECP)での操作はサポート範囲外となる場合が多く、深い原因追及には有償サポートが必要になる場合がある。

今後は新EACやPowerShellを活用した運用に切り替え、Microsoftのクラウドサービスの最新動向をウォッチしながら運用を最適化していくことが大切である。

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