M365アプリで旧フォントを一括適用!IntuneとOCPSでラクラク管理

M365の既定フォントがAptosに切り替わったことで、「使い慣れたCalibriに戻したい」「組織全体で簡単に一括適用したい」という声が増えています。本記事では、Intune(Microsoft Endpoint Manager)やOffice Cloud Policyを活用して、旧フォントへの変更を集中的に管理する方法を詳しく解説します。

なぜM365アプリの既定フォントを切り替える必要があるのか

M365アプリで長年標準フォントとして利用されていたCalibriがAptosに置き換えられました。新フォントを歓迎する声がある一方で、各種文書テンプレートがCalibriを前提としていた企業などでは「レイアウトが崩れる」「社内規定の文書フォーマットに合わない」といった問題が生じる場合があります。こうした理由から、組織全体で使い慣れたフォントに統一したいケースや、別のフォントにまとめて切り替えたいケースが存在します。

組織内でのフォント統一によるメリット

  • ドキュメントの互換性確保
    過去に作成された文書が多い場合、フォントが変わると自動的に段落や改行位置にずれが生じる可能性があります。既定フォントを従来と同じCalibriや社内標準に合わせることで、不要なレイアウト崩れを防ぎます。
  • ユーザーの混乱を減らす
    新しいフォントに移行すると、初見で違和感を覚えるユーザーやマニュアルに記載されていない混乱が発生しやすくなります。既定フォントを安定した環境へ戻すことで、サポートの問い合わせを低減する効果も期待できます。
  • 企業ブランド・ガイドラインとの整合性
    企業ロゴや資料デザインに合わせてフォントを指定している組織では、勝手に既定フォントが切り替わってしまうとブランドイメージを損なう恐れがあります。一括で所定のフォントへ戻すことで企業ブランディングを守れます。

個別設定だけでは運用が難しい理由

Microsoft 365アプリ(Word、Excel、PowerPoint、Outlookなど)で手動設定を行う方法もありますが、ユーザーごとに設定手順の案内が必要となり、操作ミスやサポートコストが大きな負担になります。部門規模が大きい、あるいはリモートワーク主体の企業では、すべての端末・ユーザーに同じ手順を繰り返し案内することは実質的に不可能に近いケースがあります。
こうした背景から、クラウドベースの管理ツールであるMicrosoft Intune(Endpoint Manager)やOffice Cloud Policy Serviceを使い、集中管理・一括適用する方法が非常に有効となります。

Intuneを活用したM365アプリの既定フォント一括変更

Microsoft Intune(旧称:Microsoft Endpoint Manager)は、Azure ADに接続されたデバイスやユーザーに対して、各種ポリシーやアプリの設定をクラウド経由で配布・管理する仕組みを提供します。従来のオンプレミス環境で利用されてきたグループポリシー(GPO)のクラウド版のようなイメージです。
Intuneでフォントを一括変更するためには、「管理用テンプレート(Administrative Templates)」を使います。WordやExcel、PowerPoint、Outlookなどのアプリごとに「既定フォントを指定する」ポリシーを設定し、ユーザー単位またはデバイス単位で適用することが可能です。

Intune管理用テンプレートの基本的な使い方

  1. Microsoft Intune管理センターへアクセス
    Microsoft 365管理ポータルからIntune管理センターにアクセスします。
  2. 「デバイス」もしくは「エンドポイントのセキュリティ」等のメニューからポリシーを作成
    管理テンプレートを利用するために、構成プロファイルを新規作成します。
  3. 「管理用テンプレート(Administrative Templates)」を選択
    Windows 10/11やOfficeを対象にしたテンプレート項目を選ぶと、Word、Excel、PowerPoint、OneNote、OutlookなどのOfficeアプリに関する設定項目が一覧で表示されます。
  4. フォント関連の設定項目を探す
    「Microsoft Word」や「Microsoft Excel」など、アプリごとに既定フォントの設定項目が用意されている場合があります。
  5. ポリシーを有効化し、指定フォントを入力して保存
    Calibriやその他のフォント名を指定し、変更内容を保存。適用の範囲やターゲットとなるユーザーグループ、デバイスグループを設定します。
  6. クライアント端末に対してポリシーが配布されるまで待機
    ユーザーがアプリを起動するタイミングや同期スケジュールに応じて、フォント設定が自動的に反映されます。

Word向け既定フォント変更ポリシーの設定例

下記はイメージとして、Intuneの管理用テンプレートでWordの既定フォントをCalibriに戻す際の設定例の流れを表にまとめたものです。

手順操作内容ポイント
1管理センターで「構成プロファイル」作成デバイス構成 > プロファイル > 作成
2テンプレートの種類で「管理用テンプレート」を選択Windows 10/11とMicrosoft 365 Appsを対象に
3Wordの設定セクションを選択「Microsoft Word 2016」などの名称になる場合も
4「既定フォント」等の関連項目を探す詳細にフォント名やサイズの設定が可能
5設定値を「有効」にし、フォント名を入力例:Calibri, Times New Romanなど
6ポリシー保存と適用範囲を指定ユーザーまたはデバイスグループを選択
7クライアント端末との同期・適用数分〜数十分後に設定が反映される

上記のような手順をExcelやPowerPoint、Outlookに対しても行うことで、組織全体で従来のフォントや任意のフォントに統一が可能になります。ただし、各アプリの設定項目は微妙に異なる場合がありますので、ポリシーを適用する前にテスト環境で検証すると安全です。

管理テンプレートを使う際の注意点

  • 利用できるポリシーのバージョン依存
    Intuneの管理テンプレートは、OfficeのバージョンやWindows OSのバージョンによって設定可能な項目が異なります。古いバージョンのOfficeだと新しいテンプレートが適用できない場合があるため、事前に環境を把握しましょう。
  • フォントをデバイスにインストールする必要があるケース
    特定のカスタムフォントを利用したい場合、あらかじめデバイスにそのフォントファイルがインストールされていないと機能しません。標準搭載フォント以外を組織標準とする場合は、IntuneやSCCM、スクリプトなどでフォントの配布も検討する必要があります。
  • ユーザー設定との競合
    すでにユーザーが手動で既定フォントを変えている場合、管理テンプレートのポリシーが強制的に上書きする動作をするかどうかはポリシーごとに挙動が違う場合があります。競合時の挙動を事前に確認しておきましょう。

Office Cloud Policy Serviceによるフォント一括変更

組織内のデバイスがAzure ADにハイブリッド参加していない、あるいは完全なクラウド環境でユーザーがログインしているといったケースでは、Office Cloud Policy Service(OCPS)を使う方法も非常に有力です。Office Cloud Policy Serviceは主にユーザー単位でポリシーを適用し、ユーザーがサインインした端末へ「クラウド経由で」Officeアプリの設定を同期させる仕組みです。

Office Cloud Policy Serviceの特徴

  • ポータルでの操作が簡単
    Microsoft 365の管理ポータルにアクセスし、「Officeアプリのポリシー管理」画面からGUIベースで設定できます。
  • ライセンス要件
    一般的にはMicrosoft 365 Business PremiumやEnterpriseライセンスなどが必要です。プランによってはOffice Cloud Policy Serviceを利用できない場合があるため、事前にライセンス対応状況を確認しましょう。
  • ユーザーのログインベースで自動適用
    端末がWindowsかMacかを問わず、対象ユーザーがOfficeアプリにサインインするだけでポリシーがダウンロードされて適用されます。Bring Your Own Device(BYOD)環境など、社給PC以外でもポリシーが効力を発揮するのが特徴です。

Office Cloud Policy Serviceでフォントを設定する手順

  1. Microsoft 365管理ポータルへサインイン
    「https://config.office.com/」にアクセスするなど、Office Cloud Policyの設定画面へ進みます。
  2. 「ポリシー管理」のメニューを開く
    組織に対して適用するポリシーを新規作成するか、既存のポリシーを編集します。
  3. 対象ユーザーまたはグループを指定
    Azure AD上のグループを対象にまとめてポリシーを適用できます。
  4. アプリごとにポリシー項目を設定
    Word、Excel、PowerPoint、Outlookなどの各アプリの既定フォントを管理できる項目を探します。
  5. フォント名を指定
    「Calibriを既定フォントとする」などの設定を有効化します。
  6. ポリシーを保存して展開
    ユーザーがOfficeアプリを起動し、サインインしたタイミングでクラウドからポリシーがダウンロード・反映されます。

具体的な設定項目例:Wordの既定フォント

以下はOffice Cloud Policy Service内で、Wordに対して既定フォントを「Calibri」に指定するための設定例となります。

1. Office Cloud Policy Serviceにアクセス
2. 新規ポリシーを作成し、適用するユーザーグループを選択
3. 「Word」タブを選び、「Set the default font in Word」などの項目を検索
4. ポリシーを「Enabled」にし、フォント名: Calibri
5. ポリシーを保存して適用

この設定をExcelやPowerPointにも同様に行えば、Aptosから旧フォントへ戻したい場合に活用できます。もちろん、組織独自の指定フォントに変更することも可能です。

フォント一括管理時の留意点とベストプラクティス

フォントの一括変更を成功させるには、以下の点を押さえておくとスムーズです。

1. テスト環境での動作確認

管理ポリシー適用は組織全体に影響を及ぼすため、必ずパイロットグループやテスト用のデバイスで事前検証を行いましょう。フォントが適用されない、逆に既定フォント以外の設定が上書きされてしまうなど、想定外の挙動があれば事前に潰しておく必要があります。

2. フォントファイルの配布が必要な場合の対応

標準フォントではなくカスタムフォントを使う場合、そのフォントファイルをデバイス側にインストールしないとアプリは正しいフォントを認識しません。Intuneのスクリプト機能やWin32アプリのパッケージ化機能を利用して、フォントインストールの自動化を行うケースがあります。

3. ユーザー教育とサポート

一括管理で設定を変更しても、ユーザーに「なぜフォントが変わったのか」を周知しないと混乱を招く場合があります。組織内ポータルやメールなどで、「今回のフォント変更の背景」「使い方」「もし個別に変更したい場合の手順」などを案内すると、サポート窓口への問い合わせを減らせるでしょう。

4. バージョンとライセンスの整合性

Officeのバージョンやエディションによっては、IntuneやOffice Cloud Policy Serviceで設定できる項目に差があります。例えば、Microsoft 365 Apps for Enterpriseでは対応しているが、Office 2019などの買い切り型には対応しないといったケースもあり得ます。導入前に利用中のバージョンやライセンスを確認し、公式ドキュメントのサポート範囲と比較しておきましょう。

5. ポリシー適用の優先度と競合

Office Cloud Policy、Intune管理用テンプレート、GPOなど、複数の経路で設定を行うと競合が起きる可能性があります。クラウドファーストで運用する組織であれば、基本的にはGPOよりIntuneやOffice Cloud Policyを優先し、同時に設定しないよう整理するのが無難です。競合が発生した場合、先に適用されたポリシーを後から上書きしてしまうこともあるため、管理対象を明確に区分けするか、一本化することを検討しましょう。

トラブルシューティング:思うようにフォントが変更されない場合

設定を終えたにもかかわらず、実際にユーザーが確認するとフォントが変わっていない、もしくは別のフォントが適用されている場合があります。その原因として考えられる主な項目を列挙します。

1. ポリシーがターゲットユーザー・デバイスに適用されていない

  • グループの指定漏れ
    Azure ADグループを設定しているつもりでも、別の似た名前のグループを選択していたり、メンバーが追加されていなかったりするケースがあります。対象範囲を正確に再確認しましょう。
  • ライセンス付与忘れ
    そもそもIntuneやOffice Cloud Policyを適用できるライセンスがユーザーに割り当てられていないと、ポリシーが適用されません。

2. クライアントの同期タイミングやネットワーク障害

  • ポリシーが更新されるまで時間がかかる
    IntuneやOffice Cloud Policyの場合、通常の同期サイクルでは数時間かかる場合があります。即時反映を期待せず、しばらく待ってからアプリを再起動するなどして確認しましょう。
  • ネットワーク経路での障害
    リモートワークなどでVPNを利用するケースでは、セキュリティポリシーやネットワークトラブルにより同期が遅延することがあります。

3. ユーザーのローカル設定が優先されている

  • ユーザー個別にテンプレートファイル(Normal.dotmなど)を編集している
    WordなどではNormal.dotm(既定テンプレート)をユーザーが直接書き換えている場合、ポリシーより先にその設定を優先してしまうことがあります。組織としての運用ルールを決め、ローカルテンプレートの変更を制限するか、あるいはデプロイ時に置き換えるなどの対応が必要です。

4. アプリやOSのバージョンが古すぎる

  • 利用中のOfficeが最新ではない
    Officeの更新プログラムが適用されていない場合、クラウドポリシーや管理テンプレートに対応できない可能性があります。定期的に更新プログラムを適用する体制づくりが重要です。

活用例:フォント以外の設定もIntuneでクラウド管理

フォント変更をきっかけに、IntuneやOffice Cloud Policyによる運用の利便性を再認識する企業も多いです。実際、これらのツールを使えば以下のような設定もクラウド経由で一括管理できます。

  • Outlookのメール署名、既定メッセージ形式
    組織の署名テンプレートを標準化し、常に最新の署名が使われるようにすることで、ブランドイメージを統一できます。
  • テンプレートファイルの配布(Word、Excel)
    社内文書の標準レイアウトが更新された際、全ユーザーに新しいテンプレートを一斉に配布して置き換えが可能です。
  • PowerPointのデザインテンプレート
    プレゼン資料のデザインを統一することで、社外向けの資料でも一貫性を確保できます。
  • OneDriveやSharePointへの自動サインイン設定
    クラウドストレージに対するアクセス設定などもユーザーに自動適用できます。ユーザーが手動で設定する手間を省き、ログイントラブルを減らします。

これらの設定をまとめて管理することで、ヘルプデスクの問い合わせ対応が軽減され、ユーザーは手動で細かい設定を行う必要がなくなります。さらに、ポリシー変更が必要になった際も、管理コンソールから一度の操作で即座に展開できるため、運用負荷の大幅な削減が期待できるでしょう。

まとめ:フォント変更はクラウド管理でスマートに

M365の既定フォントをAptosから従来のCalibriなどへ戻す場合、手動対応ではユーザーやサポート担当者の負担が非常に大きくなりがちです。そこで、クラウド環境に最適化されたMicrosoft Intune(Endpoint Manager)の「管理用テンプレート」や、Office Cloud Policy Serviceを活用することで、一元管理と一括適用を実現できます。

これらのソリューションを活用すれば、フォント以外にもさまざまなOfficeアプリ設定を集中管理可能です。導入時には、ライセンスの適合性やバージョン整合性、ユーザー教育などのポイントを押さえつつ、パイロット運用で確実に検証することをおすすめします。クラウド時代において、組織規模が大きいほど自動化と標準化が効果を発揮します。フォント設定の統一にとどまらず、IntuneやOCPSを駆使して快適なOfficeアプリ環境を実現しましょう。

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