プロジェクト管理に欠かせない“時間の可視化”ですが、Microsoft Plannerを使っている方なら「作業時間をしっかり記録できたらいいのに」と感じたことはありませんか? 今回はPlannerの時間記録機能の現状と対処法を徹底解説します。これまで導入を検討していた方や、既に利用しているものの工数管理に課題を感じている方は、ぜひ最後までご覧ください。
Microsoft Plannerにタイムトラッキング機能はある?
Microsoft Plannerは、Microsoft 365の一部として提供されているタスク管理ツールです。チームでのタスク分担を視覚的に把握しやすく、プロジェクト進行をスムーズに行えるのが大きな特徴といえます。しかし、残念ながら「標準の時間記録機能」は現時点で搭載されていません。
単純に「どのタスクを誰が担当しているか」や「タスクのステータスがどこまで進んでいるか」を管理するのは非常に簡単ですが、そのタスクごとにかかった正確な作業時間を記録・算出する仕組みは用意されていないのが実情です。
公式ロードマップの動向
Microsoft 365のサービスは頻繁にアップデートや新機能が追加されます。そこでチェックしたいのが「Microsoft 365ロードマップ」です。ここでは近い将来リリースされる機能や、開発が進められている機能が一覧で公開されています。
Plannerの機能に関しても定期的に情報が更新されますが、現段階では「時間記録機能の追加」について言及された項目は見当たりません。あくまで“現時点”の情報であり、今後開発が進むにつれてタイムトラッキング機能が検討される可能性は否定できません。ただし、直近の計画には含まれていないため、すぐに実装される見込みは薄いと考えられます。
要望を届ける方法
Plannerに新機能を追加してほしい場合は、Microsoftが用意している「Planner Feedback Community」やMicrosoft 365関連のフィードバックプラットフォームを活用しましょう。実際に多くのユーザーがアイデアや要望を投稿し、その反応をもとに機能追加や改善が検討される仕組みになっています。
- Microsoft Planner Feedback Community:
https://planner.uservoice.com/ (※URLは例示) - Microsoft 365関連の公式フィードバックサイト
こうしたコミュニティに自分の要望を投稿すると、他のユーザーが投票してくれる場合もあり、開発チームの目に留まる可能性が高まります。実際にユーザー数の多い要望ほど開発優先度が上がる傾向がありますので、同じ要望を持っているユーザーを探して情報共有するのも効果的です。
Plannerで時間を記録したいときの代替策
標準機能がないとはいえ、どうしてもPlannerで時間を管理したい場合は、いくつかの代替策が考えられます。以下では代表的な方法をいくつかご紹介します。
1. 外部のタイムトラッキングツールを連携させる
Microsoft Planner単体では不可能な機能を補完するために、サードパーティー製のツールや拡張機能と組み合わせるケースが増えています。たとえば、以下のようなツールが有名です。
- Toggl Track
シンプルな操作で時間を計測できるクラウドサービス。ブラウザ拡張機能を利用すれば、Plannerのタスク画面から直接タイマーを起動・停止できる連携が可能な場合があります。 - TimeCamp
グラフィカルに時間管理ができるツールで、タスクごとにかけた時間を詳細に記録できます。Microsoft Plannerとの連携をサポートしているプラグインもあり、タスク名をリンクさせて時間を集計するといった使い方が可能です。 - Harvest
請求やレポート作成など、ビジネス面での機能が充実しているタイムトラッキングツール。Plannerとは直接連携しないまでも、ブラウザの拡張機能を活用して手動または半自動的に作業時間を紐づけることができます。
いずれのツールも無料プランまたはトライアル期間を設けていることが多いので、まずは試験的に導入してみるのがおすすめです。
2. Microsoft Power Automateを使った独自カスタマイズ
Microsoft 365環境で独自のワークフローを組みたい場合、Microsoft Power Automateを使う手があります。Plannerでタスクが更新された際にPower Automateがトリガーとなり、特定のシートやデータベースに情報を書き込む、といった連携が可能です。
たとえば「タスクを‘進行中’に切り替えた時間を記録する」→「完了したタイミングで差分を計算して作業時間を算出」といった流れは、スクリプトや外部シートを組み合わせることで擬似的に時間管理が実現できます。
Power Automateでのフロー例
以下は簡単なサンプルフローを示す擬似的なJSONコード例です。実際の環境ではGUI操作でフローを組むためコードを直接書く必要はありませんが、イメージとしてご覧ください。
{
"name": "PlannerTimeTrackingFlow",
"trigger": {
"type": "When a task is updated in Planner"
},
"actions": [
{
"type": "Update row in Excel",
"parameters": {
"File": "SharePoint/ドキュメント/工数管理.xlsx",
"Table": "TimeRecords",
"Columns": {
"TaskID": "@{triggerBody()?['TaskID']}",
"StartTime": "@{triggerBody()?['StartTime']}",
"EndTime": "@{triggerBody()?['EndTime']}"
}
}
}
]
}
このように、Plannerでのタスク更新をトリガーに、ExcelやSharePointリストにタイムスタンプを書き込むフローを作ることが可能です。その後、差分を算出する仕組みを設ければ、実質的な作業時間の記録ができるようになります。
ただし、完全な精度を求めると、実働時間と「開始」「終了」のタイミングを厳密に連動させる必要があり、手作業での修正や運用ルールの徹底が大切です。
Microsoft Projectなど他のMicrosoft製品を活用する
Microsoft Plannerがシンプルなタスク管理ツールである一方、より高度なプロジェクト管理機能を提供しているのがMicrosoft Projectです。もちろん、ProjectにはPlannerとは異なるライセンス体系や操作性の違いがありますが、本格的なガントチャートや工数管理機能が使えるのは大きな魅力といえます。
Microsoft Projectの特徴
- 詳細なスケジュール管理
ガントチャートを使って、プロジェクト全体のスケジュールを細部まで可視化。タスクの開始・終了の関連性を直感的に把握できます。 - リソース管理とコスト管理
担当者ごとに割り当てできる作業時間やコストを設定可能。複数のプロジェクトをまたいでリソース管理する場合にも便利です。 - レポート機能
進捗レポートや工数集計など、プロジェクトの可視化や分析レポートを出力する機能が標準で備わっています。
ただし、Microsoft Projectを単独で導入する場合はライセンス費用が高額になることがありますし、操作もPlannerと比べるとやや専門的です。小規模なチームならPlanner+外部ツールのほうが運用しやすい場合もあるでしょう。
Plannerと他ツールの比較表
以下の表は、Microsoft Plannerと代表的なツールを比較したものです。タイムトラッキング機能が標準搭載されているかどうか、ユーザーインターフェースの簡易性などをまとめています。
ツール名 | 特徴 | タイムトラッキング機能 | UIのわかりやすさ | 運用コスト |
---|---|---|---|---|
Microsoft Planner | シンプルなタスク管理、MS 365との連携強力 | なし | 非常にわかりやすい | Microsoft 365契約 |
Microsoft Project | 本格的な工数管理やリソース管理が可能 | あり | やや専門知識が必要 | 個別ライセンス |
Toggl Track | 軽量で使いやすいクラウド型時間管理 | あり | 直感的なデザイン | 無料プランあり |
TimeCamp | チーム単位の時間集計や請求管理が得意 | あり | 比較的わかりやすい | 有料プラン主体 |
Harvest | 請求・経理機能が充実 | あり | シンプルだが英語UI | 有料プラン主体 |
このように、Plannerはタスク管理に特化しており、時間管理が必要な場合は他ツールと組み合わせるのが現実的なアプローチです。Microsoft Projectほど本格的なプロジェクト管理までは必要ないが、最低限の時間管理は欲しいというケースでは、Toggl TrackやTimeCampなどを利用するとよいでしょう。
タイムトラッキング機能がないとどう困る?
時間記録をしなくても、タスクのステータス管理だけで十分だと思う方もいるかもしれません。しかし、より効果的なプロジェクトマネジメントを目指すなら、実際に作業にかかった時間を把握することは極めて重要です。以下に、タイムトラッキング機能がない場合に起こりうる問題点をいくつか挙げてみましょう。
1. 正確な見積もりが難しい
タスクごとの作業時間がわからないと、次回以降のプロジェクト見積もりが曖昧になります。「1タスクあたりこれぐらいかな」といった曖昧な見積もりを続けていると、プロジェクト全体のスケジュールも精度が低くなり、予期せぬ遅延が生じる原因になりがちです。
2. リソースの最適配置ができない
時間管理ができないと、誰がどの程度の負荷でタスクを抱えているかが分かりづらくなります。結果として、特定のメンバーに負荷が集中していたり、逆に手が空いているメンバーがいたりする状況を見落とすリスクが高まります。
3. 顧客への報告やコスト管理が不十分になる
特に外部顧客向けの案件では、作業時間を根拠にコストを算出したり報告したりする場面が多いです。時間記録がないと、計上漏れや過剰な工数の計上といったトラブルを招きやすくなるでしょう。
外部ツール連携時の運用ポイント
Plannerに外部ツールを組み合わせてタイムトラッキングを行う場合、注意すべきポイントがあります。ここを押さえておくと、運用がスムーズに進むでしょう。
1. タスク命名規則を統一する
外部ツールはPlannerのタスク名やタスクIDなどをキーとして時間を紐づけることが多いです。そこで、チーム全体でタスクの命名規則をある程度統一しておかないと、後々レポートや集計時に「どれがどれ?」と混乱する原因になりがちです。
「プロジェクト名-タスク名-担当者」の形式を徹底するなど、運用ルールをあらかじめ決めておきましょう。
2. 担当者の認識統一
タスクの進行状況を正確に追跡するためには、担当者やステータスの更新がタイムリーに行われる必要があります。外部ツールがPlannerの情報を取得するタイミングには若干のラグが生じる場合もあるため、できるだけリアルタイムで情報を更新するルールを整備しましょう。
- タスク開始時に「開始」ステータスへ移行
- タスク終了時に完了へ移行
- 作業が長引く場合は適宜コメントや追記事項で時間を補足
このようにこまめな更新が行われれば、実際の作業時間との差を最小限に抑えられます。
3. レポート作成時のチェック体制
自動連携しているとはいえ、すべての作業時間が正しく記録されているとは限りません。特に導入初期は、レポート作成後に担当者同士で「この時間は本当に合っているか」を確認するプロセスを設けるとよいでしょう。
- 月次や週次で時間集計の共有
- 担当者が記録ミスを認めたら修正フロー
- 大きくズレる場合はシステム運用ルールの見直し
こうしたPDCAを回すことで、精度の高いタイムトラッキングが実現します。
Plannerでの時間管理、今後の展望
繰り返しになりますが、現時点でPlannerには時間記録機能は搭載されていません。そしてMicrosoft 365ロードマップ上でも、タイムトラッキング機能の実装予定は公表されていません。
しかし、Microsoftはユーザーフィードバックを活用しながらサービスを拡張していく企業文化を持っています。過去にはPlannerにも「ラベル機能の拡充」や「ガントチャート風ビューを求める声」が多く寄せられ、実際に改善された事例があります。
今後、ユーザーからの強い要望が集まれば、Plannerにも何らかの形で時間記録機能が検討される可能性は十分にあります。短期的には難しいかもしれませんが、中長期的にはアップデートを期待してもよいでしょう。
まとめ:現時点のベストプラクティス
最後に、Microsoft Plannerでタイムトラッキングを実現するための現時点でのベストプラクティスをまとめます。
- 外部ツールとの連携
Toggl TrackやTimeCamp、Harvestなどを利用することで、Plannerのタスクごとに時間を計測できる仕組みを作る。 - Power Automate等でカスタマイズ
自分たちの運用に合わせてPower Automateを活用し、タスク更新時にデータベースやExcelに時間情報を記録するワークフローを構築する。 - 運用ルールの徹底
時間管理はツールに依存するだけでなく、チーム内での情報更新のタイミング・フォーマット・責任分担を明確化しておく必要がある。 - 要望をフィードバックする
Plannerへの機能追加を望む場合は、Microsoftが公式に用意しているフィードバックサイトを活用し、他のユーザーの共感も得て開発チームにリクエストを伝える。 - 必要に応じてMicrosoft Projectを検討
本格的なプロジェクト管理や詳細な工数管理が必要な場合は、PlannerではなくMicrosoft Projectの導入を検討する。
現状では、Planner単体で完結する時間管理の仕組みは存在しません。そのため、外部ツールと組み合わせるか、Power Automateによるカスタムフロー構築が回避策として広く利用されています。また、要件によってはMicrosoft Projectをはじめとしたほかのプロジェクト管理ツールを導入するのも一つの選択肢です。
いずれにしても、運用ルールの整備とチーム内での協力が不可欠です。Plannerの強みを活かしながら、より効率的なプロジェクトマネジメントを実現していきましょう。
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