最近、Microsoft EdgeがmacOS 10.15 Catalinaで近い将来使えなくなるかもしれないという話題が注目を集めています。Chromiumベースで動作するEdgeは、その土台となるChromiumのアップデート方針に強く左右されるため、Catalinaからの段階的な移行が避けられない可能性があります。とはいえ、まだ公式には確定的なアナウンスが出ていないこともあり、多くのユーザーが「自分のMacはEdgeを使い続けられるのか」「サポートが終了した場合はどうしたらいいのか」などの疑問を抱えているのではないでしょうか。ここでは、Catalinaのサポート終了をめぐる背景や具体的な対処法、そしてセキュリティ対策の観点から見た注意点などを、できるだけわかりやすく解説していきます。
Microsoft EdgeのCatalinaサポート終了が取り沙汰される背景
macOS 10.15 Catalinaユーザーにとって、ブラウザのサポートは日々のオンライン活動を支える重要な基盤です。特にMicrosoft EdgeはWindows環境との親和性が高く、Microsoftアカウントとの連携や拡張機能の豊富さなどが評価され、Macユーザーにも選ばれるブラウザの一つとなっています。しかし、Catalina向けのサポート終了が懸念されるようになった背景には、主に以下の要素が挙げられます。
Chromiumベースの宿命
Microsoft Edgeは、Chromiumエンジン(Blinkなどのコンポーネントを含む)をベースに再構築されて以来、Googleが主導しているChromiumプロジェクトのサポート方針に大きく依存するようになりました。
Chromiumの開発コミュニティが、あるOSのサポートを終了する方針を定めた場合、そこから派生したブラウザも同様にサポートを終了する可能性が高いという構図です。具体的には、Chromium 128がCatalinaをサポートする最後のバージョンとなる見込みが取り沙汰されており、その後のChromium 129以降ではmacOS 11(Big Sur)以上が必要となる可能性があります。Edgeの場合、Chromiumのバージョンアップサイクルに追随しているため、Catalinaのサポート打ち切りが実施されるのではないかと懸念されています。
Apple側のOSサポート終了と影響
macOS 10.15 Catalinaに対するApple公式のセキュリティアップデートは、すでに終了しています。OS自体がサポートを終了している環境で、最新のブラウザが動作することはセキュリティ面や技術面で難しくなるのが一般的です。特に、開発者側としても新しいセキュリティ機能やAPIを活用するためには、最新またはそれに近いOSバージョンを利用するユーザーを対象とするのが合理的とされます。結果として、Catalina上での動作は徐々に後回しにされがちになり、サポート終了の流れにつながりやすいのです。
現状:正式アナウンスの有無とユーザーへの影響
多くのユーザーは「Microsoft公式のアナウンスはいつ出るのか」「どのバージョンから使えなくなるのか」を気にしています。現時点(2024年9月頃)において、確定的な告知はないとされていますが、Chromiumプロジェクトの動向を考慮すると、近い将来のサポート終了を見越して行動する方がリスク回避の面で賢明でしょう。
これまでの事例から見るサポート終了の流れ
ブラウザやソフトウェア開発では、正式発表の前にコミットや開発者フォーラムなどを通じて情報が出回ることがよくあります。今回のCatalinaサポート終了の件も、Chromiumコミュニティ内での議論から「macOS 10.15はバージョン128までのサポートになる」という情報が先行的に伝わった形です。Microsoft EdgeはChromiumのバージョンアップにほぼ追随しているため、最終的には同様の判断が下されるだろうと推測されます。
一方で、Microsoftが自社の顧客基盤を考慮して独自の延命措置をとる可能性も完全には否定できません。しかし、Google Chromeやその他のChromium派生ブラウザがすべてCatalinaを切り捨てる状況において、Edgeだけが継続してCatalinaをサポートするのは現実的には難しいと言えます。
ユーザーが受ける具体的な影響
- セキュリティリスクの増大
Catalina自体がセキュリティ更新を受け取れない状態にあるうえ、ブラウザも更新されなくなるとなれば、ウイルスやマルウェアへの耐性が著しく低下します。特にフィッシングサイトへの対策や最新の暗号化技術が更新されない可能性が高いので、ビジネスにもプライベートにも深刻な影響を及ぼし得ます。 - 新機能の利用不可
Microsoft Edgeは独自の新機能やChromium由来のアップデートを頻繁に提供しています。Catalinaでサポートが打ち切られると、最新の機能はもちろん、Web標準の進化にも対応できません。特定のWebサイトで正しく表示されなかったり、機能が制限されるなどの問題が生じる可能性があります。 - 運用コストの増加
企業などでMacを導入している場合、従業員のマシンがCatalina上に留まっていると、システム管理者としてはアプリケーションの安全性やライセンス管理が難しくなります。セキュリティパッチの当たらないOSで運用を続けることはコンプライアンス面でも課題を抱えるため、早急にOSアップグレードや端末リプレースを検討する必要が出てきます。
サポート終了が正式化した場合に取れる対策
CatalinaでのMicrosoft Edgeサポートが終了した際、ユーザーとしては大きく3つの選択肢が考えられます。アップグレード、代替ブラウザの利用、あるいはCatalinaでの利用を継続する(ただしリスクあり)というものです。それぞれのメリット・デメリットを理解しておきましょう。
1. macOSアップグレードを検討する
- 推奨度:高
- メリット
- OSのセキュリティアップデートを受け取れる
- Microsoft Edgeを含む最新のアプリケーションがフルに使える
- Appleシリコン(M1/M2など)への移行がしやすい(ハードウェアを買い換える場合)
- デメリット
- 古いマシンではアップデートできない場合がある
- アップデートに時間と手間がかかる
- ソフトウェアの互換性に注意が必要
Big Sur (macOS 11) やMonterey (macOS 12) 以降へアップグレードすれば、Microsoft Edgeの最新バージョンを引き続き利用できます。Apple公式の要件を満たすハードウェアであれば、アップデートは比較的スムーズに進むはずですが、古いMacではサポート対象外の場合もあるため、事前に対応状況を確認する必要があります。
2. 他のブラウザを検討する
- 推奨度:中
- メリット
- Catalinaを使い続けながら、一部のブラウザで暫定的にサポートを継続している例がある
- 特定用途に特化したブラウザがある場合、使い勝手が向上するかもしれない
- デメリット
- 大手ブラウザ(Chrome, Firefox, Safariなど)もCatalinaを切り捨てる可能性がある
- 最新機能や拡張機能が使用できなくなるリスクが高い
- セキュリティアップデートをいつまで受けられるか不透明
Microsoft Edgeが使えなくなった場合、FirefoxやSafariがしばらくCatalinaをサポートし続ける可能性はあります。ただし、AppleもCatalinaへのサポートは終了しているため、Safariのバージョンもいずれは最新機能が提供されなくなるでしょう。他方、Firefoxは比較的古いOSにも対応し続ける傾向がありますが、Mozilla側の方針次第であることに変わりはありません。
3. CatalinaでEdgeの最終バージョンを使い続ける
- 推奨度:低
- メリット
- 現在の環境や設定をそのまま使える
- 特殊な業務アプリケーションがCatalinaに依存している場合の維持が可能
- デメリット
- セキュリティリスクが格段に高まる
- 今後リリースされるWeb標準への対応ができない
- 重大な不具合が発生しても修正パッチが提供されない
最終的にどうしてもCatalina環境のままEdgeを維持する必要がある場合、オフラインでの限定利用や、セキュリティに厳重な配慮をしたうえでの一時的な利用にとどめるのが望ましいです。しかし一般ユーザーにとっては非常にリスクが高いため、個人情報や企業情報を扱う場合は特に注意が必要です。
セキュリティリスクとビジネスへの影響
OSやブラウザのサポート終了はセキュリティリスクの上昇を意味します。攻撃者はサポート終了がアナウンスされると、そのOSやブラウザの脆弱性を集中的に狙うことがよくあります。特に企業の場合は、機密情報や顧客データを扱うため、セキュリティホールが放置される環境を使用し続けることは大きなリスクとなるでしょう。
想定される被害
- 情報漏えい
パスワードやクレジットカード情報などの個人情報はもちろん、企業では重要な顧客データや契約情報などが流出する恐れがあります。 - ランサムウェア被害
OSやブラウザの脆弱性を突かれてシステムをロックされ、身代金を要求される事態に陥る危険性があります。 - システム停止
重要なアプリケーションやネットワークへの不正侵入が成功すると、業務全体が停止するなど、大規模な被害につながることがあります。
Macハードウェアの買い替えも視野に入れるべきか
Catalinaで止まっているMacが、そもそもBig Sur (macOS 11)以降にアップデートできない場合、ハードウェアそのものを買い替える選択肢も検討すべきです。近年のAppleシリコン(M1, M2など)を搭載したMacは、パフォーマンスが大幅に向上しており、省電力性能や機械学習への最適化も進んでいます。旧型MacがCatalinaで止まっている状況は、セキュリティリスクだけでなく生産性の面でもデメリットが大きく、長期的にみれば買い替えコストの方が安く済む可能性もあります。
買い替え時に検討すべきポイント
- 目的に合ったモデル選び
デザインや映像制作を中心に使うならMacBook ProやiMacを、持ち運び重視ならMacBook Airを、など使用目的に合った選択が最終的な満足度に直結します。 - スペックのバランス
M1/M2チップの性能はどれも優秀ですが、メモリやストレージ容量は購入後に拡張できません。必要容量を見極めておくことが重要です。 - 予算とリセールバリュー
Apple製品は中古市場でも一定の価値を保ちます。予算が厳しい場合は、中古のM1搭載Macを検討するのも一つの手段です。Catalina世代のMacを下取りに出すことで、買い替えコストを抑えることができます。
ブラウザサポートとOSバージョンの関連性を整理する
下記は、ブラウザとmacOSバージョンのサポート状況をわかりやすくまとめた例です。OS側のサポートが切れると、ブラウザ開発側も対応を終了する流れになりやすいことが理解できるでしょう。
macOS バージョン | リリース年 | Apple公式サポート状況 | 代表的なブラウザのサポート状況 |
---|---|---|---|
10.15 Catalina | 2019年 | 終了 | Chrome/Chromium系: 128まで Safari: セキュリティ更新終了 Firefox: 未定だが将来終了の可能性 |
11 Big Sur | 2020年 | 継続中(ただし古い位置付け) | Chrome/Chromium系: 現在サポート Safari: サポート継続 Firefox: サポート継続 |
12 Monterey | 2021年 | 継続中 | Chrome/Chromium系: サポート Safari: 最新バージョン提供 Firefox: サポート |
13 Ventura | 2022年 | 継続中(最新に近い) | Chrome/Chromium系: サポート Safari: 最新バージョン提供 Firefox: サポート |
14 Sonoma | 2023年 | 最新 | Chrome/Chromium系: フルサポート Safari: フルサポート Firefox: フルサポート |
このように、Catalinaは既にサポートが終了しており、今後ChromiumやSafari、Firefoxなどの主要ブラウザが順次サポートを打ち切っていく流れになりそうです。
Edge利用者が今からできること
Microsoft Edgeを使い慣れているCatalinaユーザーにとっては、早めの準備が肝心です。ここでは具体的なアクションプランを紹介します。
1. システム要件を再確認する
お使いのMacがBig SurやMonterey、Venturaなどにアップグレード可能かを調べましょう。Appleの公式サイトや「このMacについて」からアクセスできる「ソフトウェアアップデート」画面で対応状況が確認できます。アップグレードが可能な場合は、なるべく早めに準備を進めると、ブラウザのサポート切れによるリスクを回避できます。
2. データバックアップと互換性テスト
OSアップグレードを行う際は、Time Machineなどを使って事前にフルバックアップを取っておきましょう。また、業務で使うアプリや外部デバイスのドライバが新OSに対応しているかも要チェックです。特に会計ソフトやDTPソフト、音楽制作ソフトなどはOSバージョンによって挙動が変わる場合があります。
3. 代替ブラウザの検証
今後のEdgeサポート終了に備えて、FirefoxやSafari、その他のブラウザをテスト運用してみるのも一案です。ブックマークやパスワードマネージャーの移行手順を確認しておけば、いざというときにスムーズに切り替えができます。
4. 新しいMacへの乗り換え準備
もしハードウェアが古く、Big Sur以上に対応していない場合は、買い替え時期に来ているとも言えます。古いMacを使い続けながらセキュリティ面で不安を抱えるよりも、最新Macへの投資でパフォーマンス向上と安全性を同時に手に入れられる点は大きなメリットです。また、Appleシリコン搭載MacはBoot CampによるWindowsとのデュアルブートができない代わりに、仮想化ソフト(Parallels Desktopなど)で快適にWindows環境が動くという事例も増えています。
組織向けのアドバイス:IT管理者やシステム担当者への提言
Catalina端末が組織内に多数ある場合、システム担当者は以下の点を特に意識する必要があります。
1. インベントリ管理とセキュリティポリシー見直し
社内で利用しているMacがどのバージョンのmacOSで動いているかを正確に把握しましょう。セキュリティリスク低減のために、OSバージョンのアップデートを義務づけるポリシーを策定するのも一案です。社内ポータルなどで「〇月末までにBig Sur以上にアップデートしてください」と明示するなど、周知徹底を図る必要があります。
2. ソフトウェアライセンスの整理
OSバージョンを変更すると、一部ソフトウェアのライセンスがそのままでは使えない場合があります。特にAdobe製品などはOSバージョン依存の要件がありますので、アップデート後に再インストールやバージョン管理が必要になるケースがあります。そうしたライセンス周りの準備を事前にしておくことで、業務の中断を最小限に抑えられます。
3. 仮想デスクトップやクラウドサービスへの移行
ハードウェアやOSのバージョン依存を下げるために、Windowsの仮想デスクトップ(Azure Virtual Desktopなど)やクラウドベースのSaaSアプリケーションへの移行を検討する企業が増えています。Catalinaのサポート終了を機に、システム全体をより柔軟性の高いクラウドベースに移行することで、OSバージョンに左右されにくいワークスタイルを実現できるかもしれません。
Catalinaサポート終了を前に心得ておくべきポイント
最後に、Catalinaサポート終了に備えるうえで理解しておくべきポイントを整理しておきましょう。
- OSアップデートはセキュリティを守る最善策
既にApple公式がCatalinaのサポートを終了している時点で、脆弱性が放置されるリスクが高まっています。ブラウザを最新に保つだけでなく、OS自体を更新することで多層的なセキュリティを確保できます。 - Microsoft EdgeはChromium準拠
Edge単独でCatalinaを延命サポートすることは考えにくく、Chromiumの方針にほぼ追随するため、いつかは確実に利用できなくなると想定されます。 - 代替ブラウザの寿命も限られる
たとえ一時的に別のブラウザがCatalina対応を続けても、OSのサポート終了が全体的に影響するため、長期的にはリスクが残ります。 - ハードウェアとソフトウェアの総合的な見直し
Catalinaでしか動かない古いソフトウェアを使っている場合など、企業環境では早急にアップデート計画や移行計画を策定する必要があります。
まとめ:早めの行動がトラブルを未然に防ぐ
Microsoft EdgeがmacOS 10.15 Catalinaでサポートを終了する可能性は高く、それに伴うセキュリティリスクや機能面の制限は無視できないものとなるでしょう。現時点ではMicrosoftからの正式発表がないものの、Chromiumベースである以上、Chromiumプロジェクトの方針に沿ったタイミングでCatalina切り捨てが行われる可能性はきわめて高いと考えられます。
最善策は、やはりmacOSそのものを最新に近いバージョンへアップグレードすることです。それが難しい場合には、他のブラウザを検証したり、クラウド環境を整備するなど複数の対策を講じる必要があります。特に機密情報を扱う場合や企業での利用シーンでは、サポートの切れたOSを使い続けるリスクを軽視してはいけません。
日常のWebブラウジングでも、サポート終了後の環境は様々なトラブルの温床となります。カメラやマイク、プッシュ通知など最新のWeb APIが動作しなくなることもあり得ますし、脆弱性が悪用されれば、思わぬ形で個人情報を盗まれる恐れもあります。
CatalinaからBig Sur以降へのアップグレードは多くのケースで大きなメリットをもたらします。パフォーマンスやセキュリティ、ソフトウェアの互換性など、あらゆる面でユーザー体験が向上するでしょう。もしもハードウェア的にアップグレードできない場合は、新たなMacへの買い替えも一つの解決策です。特にM1/M2チップ以降の製品は性能や省電力性能が飛躍的に向上しており、将来的にも長く使える投資となります。
時間的・予算的制約はあるかもしれませんが、支障が出る前に計画的なアップグレードや移行を検討することが、快適で安全なMacライフを送る鍵になるはずです。
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