最近、Microsoft Edgeを最新バージョンにアップデートした後から、社内システムや個人で作成したHTMLページ上のローカルリンク(file://)が正常に開けなくなるトラブルが報告されています。特に Windows Explorer などのフォルダ表示が期待される場面で「about:blank#blocked」というタブが開いてしまい、業務効率を大きく損ねているとの声も少なくありません。この記事では、具体的な原因や対処法、さらに将来的なアップデートへの備えなどをわかりやすく解説します。
Microsoft Edgeのアップデートによるローカルリンク問題の概要
Microsoft Edgeをバージョン 121.0.2277.83 に更新した直後から「file://」形式のリンクが開けなくなり、ブラウザ上では「about:blank#blocked」というタブが立ち上がるだけで、目的のフォルダやファイルにアクセスできないケースが多発しています。以前のバージョン(120.x系)まではポリシーである「IntranetFileLinksEnabled」を有効化することで回避できていたものの、今回のアップデート以降、それが効かなくなったといわれています。
「IntranetFileLinksEnabled」の無効化問題とは
本来、社内ネットワーク上のファイルやフォルダに直接アクセスする必要がある企業環境などでは、グループポリシー(GPO)を利用して「IntranetFileLinksEnabled」や関連ポリシーを設定することが一般的でした。これらのポリシーが正常に機能している間は、「file://」リンクをクリックすれば自動的にWindows Explorerでフォルダが開いたり、対象ファイルがプログラムで開かれたりしていました。しかし、バージョン 121.0.2277.83 へのアップデート後、当該ポリシー設定が効かなくなる不具合が一部環境で確認されています。
不具合の影響範囲
- 社内ポータルサイト上での資料管理:
会議資料やExcelファイル、PDF文書などを社内ファイルサーバ上に配置し、URLリンクから直接開いていた場合、リンクが機能しなくなるため業務に支障が出る。 - 社内専用アプリケーションからのファイルアクセス:
Webベースの業務アプリケーションでローカルフォルダにアクセスする機能がある場合、通常のワークフローが止まる可能性。 - 個人のHTMLページ活用:
開発者やIT担当者が個人用の管理ページを作成し、「file://」によるローカルアクセスを多用している場合に大きな障害となる。
原因の考察と修正バージョン情報
多くのユーザーから報告が寄せられ、Microsoftが公式に不具合を認めたかどうかについては、現時点で情報が錯綜しています。しかし、ユーザーコミュニティやMicrosoft公式フォーラムの投稿から、バージョン 121.0.2277.106 で問題が解決されたとの報告がいくつか上がっています。
不具合の根本原因
Edgeのセキュリティポリシーが強化された結果、イントラネットやローカルファイルへのアクセス方法が変わり、従来の「IntranetFileLinksEnabled」だけでは十分にカバーできなくなった可能性があります。具体的には、HSTS (HTTP Strict Transport Security) の設定や、ブラウザ側のローカルへのアクセス制限機能が影響しているとの見解もあります。
バージョン 121.0.2277.106 での改善点
- ローカルファイルリンクに対する許可の再調整
- 特定ポリシー設定の再有効化
- ネットワーク関連のバグフィックス
ユーザー報告によれば、このバージョンに更新することで以前通りローカルリンクが開けるようになった事例が複数確認されています。
解決策1:修正バージョンへのアップデート
最も推奨される対処方法は、Edgeのバージョンを 121.0.2277.106 以降へアップデートすることです。今後、より新しいバージョンがリリースされると、公式に適用されるパッチや修正版が組み込まれ、ローカルリンクの問題が恒久的に解消される可能性が高まります。
最新版への更新手順
- Microsoft Updateからの自動更新
企業環境ではWSUSやMicrosoft Intuneなどで配信することがありますが、通常はWindowsの自動更新でEdgeのアップデートを取得可能です。 - Edgeのヘルプとフィードバックから更新
メニュー > [ヘルプとフィードバック] > [Microsoft Edge について] にアクセスすると、自動で最新版のチェック・インストールが行われます。 - オフラインインストーラの利用
ネットワークが制限されている場合は、Microsoft公式サイトからオフラインインストーラをダウンロードし、対象マシンに手動で導入可能です。
アップデート後の注意点
アップデートした後も、キャッシュが残っている環境ではまれに問題が続く可能性があります。キャッシュのクリアやブラウザの再起動を行うことで、挙動が改善することがあるので、一度試してみると良いでしょう。
解決策2:Edgeの以前のバージョンへ一時的にロールバック
業務の継続性やシステム連携の都合上、すぐに新しいバージョンに移行できない場合や、最新バージョンでも問題が解決しない場合は、Edgeをバージョン 120.x へロールバックする方法があります。ただし、これはあくまで一時的な回避策としての位置づけであり、最新のセキュリティ修正が適用されないリスクも伴う点に留意が必要です。
ロールバックの具体的手順
- GPOで自動アップデートをブロック
まず、ロールバックした後に自動更新で再びバージョンが上がらないように、グループポリシーでの設定を行います。具体的には「Update policy override」を使用してターゲットバージョンを指定し、安定した特定バージョンで固定する方法が代表的です。 - MSIインストーラとALLOWDOWNGRADEオプション
Microsoft公式ドキュメント「Roll back to a previous version of Microsoft Edge」に詳しく記載されていますが、EdgeのMSIインストーラを使い、コマンドラインにALLOWDOWNGRADE=1
のオプションを付与してインストールすることで、バージョンを下げることができます。 - インストール完了後の確認
ロールバックが完了したら、バージョン情報を確認し、不具合が起きていないかをテストします。特に「file://」リンクの動作を重点的にチェックし、従来の通りフォルダが開けるかを確認しましょう。
ロールバックによるセキュリティリスク
以前のバージョンに戻すと、セキュリティパッチが適用されていない可能性が高くなります。また、マイクロソフトがサポート終了をアナウンスしているバージョンだと、今後新たな脆弱性が発見された場合もリスク回避が難しくなる点に注意が必要です。
解決策3:HSTS設定のリセット(edge://net-internals/#hsts)
状況によっては、HSTS (HTTP Strict Transport Security) の設定リセットが効果を発揮する可能性も報告されています。具体的な操作は以下の通りです。
HSTSリセット手順
- アドレスバーに「edge://net-internals/#hsts」と入力し、表示されたページの左メニューから「Domain Security Policy」を選択します。
- 「Delete domain security policies」という欄に「localhost」など対象ドメインを入力し、削除ボタンをクリックします。
- その後、Edgeを再起動してローカルリンクの挙動を確認します。
HSTSリセットのメリットとデメリット
項目 | メリット | デメリット |
---|---|---|
メリット | – ローカル環境やイントラネットでHSTSによる誤動作が解消される可能性がある。 – アプリやリンクを再度読み込む際に、不要なセキュリティルールを排除できる。 | – 環境によっては無関係なドメインの設定まで削除する恐れがある。 – 再起動後、再度必要なセキュリティ設定が読み込まれるまで挙動が不安定になる場合がある。 |
デメリット | – 既に安全に運用しているHTTPSサイトでのHSTS情報まで消去されるリスク。 | – 大企業のイントラネットなど環境依存度の高いシステムでは効果が限定的なことがある。 |
この方法は、あくまでHSTSが原因でブロックされているケースで有効となるため、あらゆる環境で必ずしも有効とは限りません。動作確認を行いながら慎重に適用することをおすすめします。
解決策4:その他のブラウザや代替手段の検討
Microsoft Edge以外のブラウザでも同様の問題が発生することがあります。特にセキュリティが強化されているブラウザほど、ローカルファイルへのアクセス制限が厳格に実装されています。もし業務上やむを得ない場合は、以下のような検討も視野に入れましょう。
代替ブラウザの一時利用
Google ChromeやMozilla Firefoxなどで同様のローカルリンクが開けるか確認し、短期的に乗り換える方法があります。ただし、いずれもセキュリティ面での制限が強まる傾向にあるため、中長期的にはEdgeの安定版へのアップデートが望ましいでしょう。
ローカルリンクをHTTPSサーバ経由に変更
もし可能であれば、file://で直接開くのではなく、イントラネット上の簡易Webサーバや共有サーバを経由してファイルにアクセスする仕組みを整備するのも一案です。セキュリティポリシーを遵守しながらローカルファイルを参照できるため、ブラウザ側での制限を回避できるケースがあります。
今後の展望:Microsoft Edgeのセキュリティと企業利用の両立
Microsoft EdgeはChromiumベースとなって以降、セキュリティ機能が大幅に強化され、企業や個人利用双方にメリットがもたらされました。しかしながら、ローカルファイルへのアクセス制限強化のように、セキュリティと利便性のバランスが難しい問題も依然として存在します。
企業ユーザーへのアドバイス
- ポリシー設定の定期的な見直し
Edgeのアップデート時には必ずポリシーやレジストリ設定、GPOの内容が最新環境に合わせて正しく反映されているかを確認する。 - テスト環境での事前検証
本番環境に適用する前にテスト環境で新バージョンを試し、ローカルリンクや業務アプリケーションの動作を入念にチェックする。 - セキュリティ対策の強化を前提とした運用ルール策定
将来的にさらに厳格なセキュリティ要件が導入されることを想定し、ファイル共有やイントラネット運用の仕組みを根本的に見直す機会と捉える。
個人ユーザーへのアドバイス
- ロールバックは最後の手段
個人でロールバックする場合、セキュリティリスクが伴うため、まずは最新バージョンやパッチ適用を待つほうが無難。 - ブラウザの設定を細かく調整
Edgeの設定メニューやフラグ(edge://flags)を活用することで、ローカルリンク挙動を微調整できる場合がある。ただし、非公式機能であるため自己責任となる。 - ローカルファイルの管理方法を再考
重要ファイルをクラウドストレージやオンラインサービスで管理することで、ブラウザからアクセスしやすくする方法も検討してみると良い。
まとめと最終的な推奨アクション
Microsoft Edge 121.0.2277.83 へのアップデート後に発生するローカルリンク(file://)が開けない問題は、企業や個人利用いずれにおいても業務効率を阻害する深刻なものです。原因としてはセキュリティポリシーの強化やポリシー設定が適切に反映されないバグなどが推測されます。下記の対策を総合的に検討し、最適な方法を選択することが重要です。
- バージョン 121.0.2277.106 以降へのアップデート
- 既に修正が含まれている可能性が高く、最も優先度の高い対策となる。
- 以前のバージョン(120.x)への一時的ロールバック
- 業務を止めないための回避策として有効だが、セキュリティリスクを十分に理解した上で実施。
- HSTS設定リセット
- 環境によっては有効だが、確実性は環境依存であるため事前検証が必要。
- ブラウザやアクセス方法の代替策
- 他のブラウザを試用したり、HTTPSサーバを経由する設計に変更することで問題を回避できる場合もある。
最終的には、Microsoftから公式にリリースされる修正版やパッチを適用しながら、Edgeの最新バージョンを安定的に運用する方向を目指すのが望ましいといえます。ブラウザのセキュリティポリシーは今後も強化され続けることが予想されるため、ローカルファイルへのアクセス手段や企業内システムの構成を含め、長期的に見直す良い機会にもなるでしょう。
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