インターネット利用が当たり前になった今、Microsoft Edgeの「Edge VPN(Microsoft Edge Secure Network)」は注目される機能のひとつです。無料でありながら通信を暗号化してくれるため、公共Wi-Fiや海外旅行時などの不安を少しでも軽減できるのは魅力的です。ここでは、その安全性から設定方法、さらには子供や一般ユーザーによる勝手な有効化を防ぎたい場合の対策まで、詳しく解説していきます。
Edge VPN(Microsoft Edge Secure Network)の特徴と安全性
Edge VPNの概要
Microsoft Edge Secure Network、通称「Edge VPN」は、Cloudflare社のセキュアネットワーク技術を活用することで、ブラウザ内の通信を暗号化し、データのやり取りを第三者に盗み見られにくくする機能です。たとえば、オンラインバンキングやクレジットカード決済など、個人情報の入力が必要なシーンで重宝します。公共のWi-Fiスポットなど、不特定多数が同じネットワークを利用する環境では特に有効で、通信の安全を確保しやすい点が大きな利点です。
とはいえ、OS全体の通信を守るわけではなく、あくまでMicrosoft Edgeのブラウザで行う通信だけが保護対象になります。Zoomやメールソフトなど、ブラウザ外のアプリケーション通信はVPN保護の対象外ですので注意が必要です。
Cloudflareとの連携によるメリット
Cloudflareは世界中の企業や個人ユーザーが利用するCDN(コンテンツデリバリネットワーク)やセキュリティサービスで実績を持つ企業です。Edge VPNはそのCloudflareのVPN技術をブラウザ内でシームレスに利用できるのが特徴で、以下のようなメリットがあります。
- 高速かつ安定した通信
Cloudflareの豊富なサーバーネットワークを介するため、VPN利用時によくある速度低下を最小限に抑えやすいとされています。 - プライバシー保護の強化
通信が暗号化されるため、通信経路上でのデータ盗聴リスクを軽減できます。公共Wi-Fiだけでなく、海外から国内サイトに安全にアクセスしたいケースなどでも利用価値があります。
Edge VPNの無料利用と通信制限
Edge VPNは無料で利用可能ですが、月あたり5GBまでという通信量制限があります。たとえば動画ストリーミングや大容量ファイルをダウンロードするような使い方をする場合、あっという間に制限に到達してしまう可能性があります。一方、たまの海外出張や、公共Wi-Fiでどうしても銀行サイトにアクセスしたいときなど、限定的な利用であれば十分使い勝手がよいでしょう。
下記はEdge VPNの概要をまとめた表です。参考にしてみてください。
項目 | 内容 |
---|---|
提供元 | Microsoft Edge + Cloudflare |
料金 | 無料(5GB/月の通信量制限あり) |
保護対象 | Microsoft Edgeブラウザ内での通信 |
特徴 | 通信暗号化、公共Wi-Fi利用時の安全性強化、海外アクセス時のプライバシー保護に有効 |
注意点 | ブラウザ以外の通信は保護対象外、5GB以上は利用不可 |
Edge VPNの設定方法
有効化の手順
Edge VPNを有効化するのは比較的簡単です。以下の手順で設定を行ってみましょう。
- Edgeの設定画面を開く
画面右上の「…(メニュー)」アイコンをクリックし、「設定」を選択します。 - 「プライバシー、検索、サービス」を選択
設定メニューの左側にある「プライバシー、検索、サービス」をクリックします。 - 「セキュリティ」セクションを探す
下にスクロールすると「セキュリティ」に関連する項目が表示されます。 - 「Microsoft Edgeセキュアネットワーク」をオンにする
「Microsoft Edgeセキュアネットワーク」のトグルスイッチをオンにするだけで完了です。 - 「ブラウザーエッセンシャル」からの操作
Edge最新版では、アドレスバー付近に「ブラウザーエッセンシャル」と呼ばれるハートの鼓動のようなアイコンが表示される場合があります。そこをクリックして「無料のVPNを入手」といった文言があれば、そこからもオンオフの切り替えが可能です。 - Microsoftアカウントへのログイン
場合によってはMicrosoftアカウントへのログインが必要です。制限の管理もアカウント紐付けで行われるため、利用状況を知りたい方はアカウントで確認してみましょう。
無効化の手順
不要になった場合は、先ほどの手順で「Microsoft Edgeセキュアネットワーク」をオフにするか、「ブラウザーエッセンシャル」から機能をオフに切り替えればOKです。常時オンにしていても5GBを超えなければ問題ありませんが、必要なときだけオンにするほうが通信容量を有効に使えます。
Edge VPNを使うときの注意点
ブラウザ限定のVPN機能
Edge VPNの最大の注意点として、OSレベルのVPN機能ではなく「ブラウザ限定」の保護であることが挙げられます。WebメールやWeb会議ツールなどがEdge上で動作する場合は保護されますが、専用アプリで動作するメールクライアントや動画配信アプリなどは保護されません。
通信量制限がある
一度VPN接続すると、意外に通信量は多く消費されることがあります。特にクラウド上でのファイル編集や動画視聴などを常にブラウザで行っている場合は、5GBの制限に早々に到達してしまう可能性もあります。月末になる前に制限にかかり、いざ必要なときにVPNが使えない事態を避けるためにも、「オンにするタイミング」を意識しましょう。
大容量通信や汎用VPNには不向き
大容量ファイルのやり取りや、スマホ・PC全体の通信を保護したいといった用途には不向きです。その場合はNordVPNやExpressVPN、あるいは自社で構築するVPNなどの有料サービスを検討したほうがよいでしょう。
Edge VPNの利用シーンと活用例
公共Wi-Fi利用時
カフェやホテル、空港などで提供される無料Wi-Fiを利用する際、Edge VPNをオンにしておくと、通信が暗号化されるため安全性が高まります。IDやパスワードを入力するウェブサービスを利用するときの心理的ハードルが下がるのは大きいポイントです。
海外出張・旅行時
海外のネットワークを使用して国内の銀行口座にアクセスする場合など、機密情報を取り扱うケースでも役に立ちます。海外のホテルやフリーWi-Fiはセキュリティが万全でないことが多いため、ブラウザ上の通信だけでもVPN化できるメリットは大きいでしょう。
プライバシー保護と制限回避
海外サイトの閲覧で検閲が厳しい地域などでは、ブラウザVPNが役立つ場合もあります。ただし、国や地域によってはVPN自体を禁止・制限している場合もあるため、現地の法律に則って利用するように注意が必要です。
Edge VPNのブロック・利用制限に関する実情
「ブラウザは使いたいがVPNは使わせたくない」ケース
家庭や職場で、子供や特定のユーザーが勝手にVPN機能を使うことを防ぎたい場合があります。たとえば、子供がペアレンタルコントロールをすり抜けてサイトアクセスするのを防ぐ目的などです。通常、Microsoft Family Safetyなどの機能でWebサイトやアプリ全体の利用を制限することはできますが、「Edge VPNだけをピンポイントで無効化する」標準機能は現状存在しません。
Microsoft Family Safetyだけでは不十分
Microsoft Family Safetyは、時間帯や利用できるサイトの設定など、基本的なペアレンタルコントロールに対応しています。ただし、EdgeのVPN機能だけを制限する細かなオプションは用意されていません。
さらに、Windows Homeエディションの標準機能では、グループポリシーなどの高度な設定が使えない場合が多いです。そのため、「ブラウザは認めるが、VPNはNG」というような繊細な制御は難しいのが現状です。
グループポリシーやプロキシ設定の可能性
Windows ProやEnterpriseエディションを使っている企業環境ならば、グループポリシーで特定の機能を制御する方法が残されています。ただし、Microsoftが正式に「Edge VPNを無効化するグループポリシー設定」を提供しているわけではありません。将来的に要望が多ければアップデートで追加される可能性はありますが、現時点では明確なガイドラインはなく、実現するにはかなりの技術的ノウハウが必要です。
ルーターやファイアウォールでのブロック
Edge VPNが使用するCloudflareのサーバーへの通信をブロックする方法も考えられます。ルーターの管理画面やファイアウォール設定で特定のドメインやIPアドレスをブロックしてしまえば、結果的にEdge VPNを利用できなくなる可能性が高いでしょう。ただし、Cloudflareは多くのWebサイトに利用されているため、VPN以外の通信にも影響が出るリスクがあります。「Cloudflare = VPNサーバー」というわけではなく、世界中のWeb運営者が幅広く使っているインフラです。そのため過度なブロック設定は、一般的なサイト閲覧やサービス利用にも支障をきたすかもしれません。
サードパーティーのペアレンタルコントロールソフト
Microsoft Family Safetyよりも高度な制御が可能なサードパーティー製のペアレンタルコントロールソフトやエンドポイント管理ソフトを導入するという選択肢もあります。アプリケーション単位、機能単位で細かく利用の可否をコントロールできるようなソフトウェアであれば、Edge VPNを含む特定機能の使用をブロックできるかもしれません。ただし、ソフトの導入やメンテナンスにコストがかかる場合があるため、導入の際はコストと管理負荷を検討する必要があります。
Edge VPNの利用を制限する方法の比較表
実際にEdge VPNの利用を制限したい場合、どのような方法があるかを表にまとめました。
制限方法 | メリット | デメリット | 難易度 |
---|---|---|---|
Microsoft Family Safetyで制限 | Windows環境全体の時間制限やサイトブロックが簡単に設定可能 | VPN機能だけをピンポイントでオフにすることはできない | 低 |
グループポリシー(Windows Pro以上) | ブラウザ機能の詳細な制御が可能な場合がある | Edge VPN自体を無効化する公式なポリシーは存在せず、独自で設定が必要 | 中~高 |
ルーターやファイアウォールでブロック | VPN通信を根本的に遮断できる可能性が高い | CloudflareのIPやドメインを幅広くブロックすると他サービスへ影響 | 中~高 |
サードパーティー製の管理ソフト | 細かい機能単位の使用可否を設定できる可能性 | ソフトの導入コストや設定の煩雑さがある | 中~高 |
それぞれ一長一短があり、どれが最適かは利用環境や費用面、どこまで厳密に制御したいかに左右されます。いずれにしても「VPN機能だけをブロックする」公式機能はまだ存在しないため、総合的な対策やサードパーティーツールの検討が必要です。
Edge VPNの今後とまとめ
現時点では、Microsoft EdgeのVPN機能は無料で手軽に使える一方、月5GBの通信制限やブラウザ限定の保護範囲など制約も多く、さらに企業や家庭でのピンポイントなブロック機能も未整備です。今後、ユーザーの要望やセキュリティ意識の高まりに応じて、Microsoft側が制御手段を拡充する可能性はありますが、いつどのように対応されるかは明言されていません。
それでも、「とりあえず公共Wi-Fiでも安全にオンラインバンキングしたい」「海外出張中の緊急対応でブラウザだけでもVPN接続が欲しい」というケースでは十分に役立つ機能です。一時的なセキュリティ向上策としては非常に手軽で、Cloudflareのバックボーンを利用できるのは大きなメリットといえます。
一方、「一部ユーザーだけがこの機能を使うのを防ぎたい」「Edgeブラウザは使わせたいがVPN機能は制限したい」という要望がある場合には、ルーター・ファイアウォールレベルでのドメインブロックやサードパーティーのペアレンタルコントロールソフト導入が現実的な方法となるでしょう。設定や維持管理は難易度が高いかもしれませんが、安全性や利用ポリシーを確立するうえで検討する価値があります。
最終的には、利用目的と制限したい範囲に応じて最適な方法を選択することがポイントです。Edge VPNはあくまで気軽に使えるVPN機能として理解しておき、もし本格的なセキュリティやアクセス制御が必要であれば、外部サービスや社内ネットワークのVPN、そして各種管理ツールと組み合わせて運用していくのがベストと言えるでしょう。
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