Microsoft Surface Laptop 6を使用していて、「従来のBIOSメニューにアクセスできるのか?」と気になった方も多いのではないでしょうか。この記事では、Surface独自のUEFIへの入り方や活用のヒントをわかりやすく解説します。
UEFIとBIOSの違いを理解しよう
パソコンの起動プロセスにおけるファームウェアとして、従来は「BIOS(Basic Input/Output System)」が主流でした。ところが近年の多くのデバイスでは後継規格となる「UEFI(Unified Extensible Firmware Interface)」が採用されています。Microsoft Surface Laptop 6もその例外ではありません。
なぜBIOSからUEFIへ移行したのか
BIOSからUEFIへ移行した背景には、以下のような要因があります。
- 大容量ストレージのサポート
BIOSでは基本的にMBR(Master Boot Record)パーティション方式を前提にしており、2TB以上のハードディスクを扱う際に制約がありました。UEFIではGPT(GUID Partition Table)パーティション方式に対応し、大容量ストレージの利用が容易になります。 - セキュリティ機能の強化
Secure Boot機能など、UEFIにはシステム起動時のセキュリティを高めるための仕組みが実装されています。これにより、改ざんされたプログラムや不審なOSをブロックできる可能性が高まり、より安全なコンピューティング環境を実現します。 - 高速なブート速度
従来のBIOSと比較して、UEFIによる起動のほうが高速化しやすいといわれています。各ハードウェアの初期化手順などが最適化されやすく、Surfaceシリーズでも起動の速さを体感できるようになっています。
Surface Laptop 6でもUEFIが標準
Surface Laptop 6は最新の技術を積極的に取り入れるMicrosoftブランドの製品です。そのため、従来のBIOS画面へのアクセスではなく、UEFI専用のメニューへのアクセス手段が用意されています。
Surface Laptop 6でUEFIメニューに入る方法
Surfaceシリーズはキーボード上のBIOSキー(よくあるF2キーやDelキーなど)を押しても、従来のBIOSメニューは立ち上がりません。代わりに、次の手順でUEFIにアクセスする仕組みになっています。
本体起動時にUEFIを呼び出す手順
実際にSurface Laptop 6を電源オフの状態から起動し、UEFIメニューを開くための操作は以下の通りです。
- Surface Laptop 6の電源を完全に切る
- Windows上から「シャットダウン」を選択してオフにしてください。スリープモードだとUEFIにはアクセスできません。
- 数秒待機する
- 内部的な動作が停止するまで数秒(約10秒)程度待つことで、次の操作で確実にUEFIを呼び出しやすくなります。
- 音量アップボタン(+)を押し続ける
- キーボードではなく、Surface本体側面にある音量ボタンの「+」側を長押ししてください。
- 電源ボタンを短く押して離す
- 音量アップボタンを押し続けたまま、電源ボタンを一度だけ押します。
- ロゴ表示後も音量アップボタンを離さない
- MicrosoftロゴやSurfaceロゴが表示される場合がありますが、そのままボタンを押し続けてください。
- UEFI画面が表示されたらボタンを離す
- しばらく待つとUEFI設定画面が起動します。
この一連の操作により、初めてSurface Laptop 6の「BIOS相当」といえるUEFIメニューを開くことができます。従来のF2キーやDeleteキーを押すタイミングを狙う必要がないため、慣れてしまえば非常に簡単で直感的な方法です。
Windows上から「詳細オプション」を利用する方法
もう一つの手段として、Windowsの回復オプションを使ってUEFIに入ることも可能です。こちらはWindowsが起動した状態からアクセスできるため、手間をかけずに再起動するだけでUEFIに入れます。
- 「設定」から回復オプションに入る
- Windowsの「スタート」ボタンをクリックし、「設定」→「システム」→「回復」と進みます。
- 詳細オプションの再起動を選択
- 回復画面内にある「Advanced startup」や「再起動」ボタンをクリックすると、システムが回復モードで再起動します。
- オプションの選択画面
- 再起動後に「オプションの選択」という青い画面が表示されますので、「トラブルシューティング」→「詳細オプション」と進みます。
- UEFIファームウェアの設定を選ぶ
- 表示された一覧から「UEFIファームウェアの設定」を選択し、「再起動」ボタンをクリックすると、PCがUEFIメニューを起動します。
この方法は、Windowsが正常に起動している状態でのみ利用できます。もしWindowsが起動しなくなった際には、本体起動時のボタン操作の手順でUEFIにアクセスする必要があります。
UEFI画面でできる設定項目
Surface Laptop 6のUEFI画面で調整できる設定には限りがありますが、主なものを以下にまとめます。
設定項目 | 内容 |
---|---|
Secure Bootの設定 | Microsoft独自のセキュリティ機構。オンにしておくことで改ざんされたブートローダーなどが実行されにくくなります。必要に応じてオフにすることも可能。 |
起動順序 (Boot order) | USBメモリやネットワーク経由での起動を設定可能。ただし機種によっては自由度が低く、最小限の選択肢しかない場合があります。 |
デバイスの有効/無効 | UEFIレベルでカメラやオーディオ機能を無効化/有効化できることがあります。企業のセキュリティポリシーで必要になる場合に使われることが多いでしょう。 |
パスワード設定 | UEFIへのアクセスを制限するためのパスワードを設定できます。管理者権限でなければ変更できないようにするなど、セキュリティを高める役割があります。 |
特にSecure Bootのオン/オフは、OSのインストールや一部のカスタムOSをブートさせる場合に重要になる設定です。ただし、むやみにオフにするとセキュリティリスクが高まるため、安易に変更しないよう注意が必要です。
UEFI設定変更時の注意点
UEFIは強力な機能を提供しますが、誤った設定をするとシステムが起動しなくなったり、デバイスが不安定になるリスクがあります。以下のポイントを押さえておきましょう。
バックアップと復元手段の準備
重要なデータは、UEFI設定を変更する前に必ずバックアップを取っておくことが大切です。特に起動順序やドライブ設定を変更する場合、誤操作でWindowsが起動できなくなる可能性があります。また、SurfaceはリカバリUSBを事前に作成しておくと、緊急時に役立ちます。
目的を明確にしてから変更する
「何となく気になるから設定をいじる」という軽い気持ちで操作するのは危険です。例えば、OS再インストールをするためにUSBブートを有効にしたいのか、あるいはセキュリティを強化したいのか、といったように明確な目的を持った上で変更しましょう。
Surface公式ドキュメントの活用
UEFIに関する設定は詳細な情報が公式にも公開されています。特に企業や学校などで多数のSurfaceを管理している場合、Microsoft公式のドキュメントを参照してポリシーを策定しておくことが望ましいです。
参考:Manage Surface UEFI settings – Surface | Microsoft Learn
もしUEFI画面に入れない場合の対処法
「音量アップボタンを長押ししてもUEFIに入れない」「Windowsの回復オプションでもUEFIにアクセスできない」というケースもまれにあります。具体的には以下のような対処方法を試してみてください。
基本的なチェックポイント
- 本当にシャットダウンしているか
スリープや休止状態ではなく、完全に電源が落ちた状態から始めましょう。 - ボタンの押し方のタイミング
音量アップボタンをしっかり押し続けた状態で電源ボタンを一度押して、すぐに手を離すのは電源ボタンだけです。音量アップはロゴが出てもしばらく保持する必要があります。 - デバイスの充電状態
バッテリー残量が極端に少ないと起動プロセスが不安定になる場合があります。ACアダプターを接続した状態で試すのがおすすめです。
UEFIからの起動オプションがロックされている場合
会社支給のSurfaceや学校で使用しているSurfaceでは、管理者によってUEFIのアクセスがロックされている場合があります。この場合は管理者権限がないと設定を変更できないので、IT担当者に問い合わせてみましょう。
「UEFIパスワード」の存在
管理者がUEFIパスワードを設定していると、UEFI画面に入れたとしても各種項目がグレーアウトされて操作できない可能性があります。パスワードを知らない限り変更は不可能ですので、セキュリティポリシーに沿って対応する必要があります。
具体的なブート順序変更の方法
OSの再インストールや別のOSブートが必要な場合、UEFI上でブート順序を設定することになります。Surface Laptop 6のUEFIメニューは、それほど複雑ではありません。以下は一般的な流れです。
- 「Boot configuration」を選択
UEFI画面のメニューに入ると、左側または上部メニューに「Boot configuration」や「Configure boot device order」などの項目が表示されます。 - USBあるいはネットワークブートの優先順位を変更
OSインストール用のUSBメモリを最優先にしたい場合は、リストの上位にUSBを移動させます。 - 設定を保存して再起動
保存方法はUEFIメニューの指示に従います。保存を完了したらSurfaceが再起動し、設定したブートデバイスをもとに起動が始まります。
UEFIのSecure Bootを一時的に無効化する例
Linuxディストリビューションや一部のカスタマイズされたOSをインストールする際にSecure Bootをオフにしたい場合があります。これは例として挙げていますが、実行する場合は十分にリスクを理解した上で行ってください。
- UEFIメニューで「Security」を選択
モデルによって多少表記が異なる場合があります。 - 「Secure Boot Control」の切り替え
「Disabled(無効)」を選ぶと、Secure Bootがオフになります。 - 「Exit and Save Changes」で再起動
設定を保存してSurfaceを再起動します。
Secure Bootをオフにしたまま使い続けるのはセキュリティ上あまりおすすめできません。作業が完了したら再度オンに戻しておくのが望ましいです。
Windowsからの自動修復モードでもUEFIに入れる?
Windowsが何らかの理由で正常に起動しなくなり、自動修復モードに入るケースもあります。その際にオプションを選択できる画面が出たら、次のステップでUEFIに進むことが可能です。
- 自動修復モードで「詳細オプション」を選択
システムの修復プロセスが走った後、「詳細オプション」をクリックできる画面が現れます。 - 「UEFIファームウェアの設定」を選ぶ
通常の回復モードと同様にUEFI設定画面へ進む項目があります。
万一、この手順でもUEFIにたどり着けない場合や、本体起動時のボタン操作でも入れない場合は、ハードウェアトラブルの可能性を考慮する必要があるでしょう。
Surface UEFIの管理者向け活用シーン
企業や教育機関などで大量のSurface Laptop 6を管理する場合、UEFI設定を統一したりパスワードを一括で設定したりする場面があります。IT担当者やシステム管理者向けに、代表的な活用シーンを紹介します。
大量導入時の一括設定
同じモデルを一括で導入する場合、起動デバイスの順序やセキュリティレベルを統一することで、展開作業やトラブルシューティングがスムーズになります。たとえば、USBブートを無効にして情報漏洩リスクを最小化するといったセキュリティ対策がしやすくなります。
リモート管理ソリューションとの連携
Microsoft IntuneなどのMDM(Mobile Device Management)ソリューションと組み合わせることで、一定範囲のファームウェア設定をリモートで制御することが可能です。オフィスの外にあるSurfaceでも設定ポリシーを適用できるため、管理者の負担が減るメリットがあります。
UEFIパスワードの配布管理
UEFIパスワードを一意に配布している場合は、従業員が各自のデバイスで任意の設定を変更できなくする運用形態も考えられます。従業員のレベルに合わせ、必要に応じて設定権限を与えるかどうか判断するとよいでしょう。
UEFIとWindows OSの連携を理解しよう
UEFI設定だけではなく、Windows OSの設定とも連動させることで、さらに高度な運用が可能になります。特にBitLockerなどのドライブ暗号化機能を用いている場合、UEFIのSecure Boot設定がセキュリティと直結します。
BitLockerとSecure Bootの関係
BitLockerはドライブを暗号化してデータの不正アクセスを防ぐ仕組みですが、UEFIでSecure Bootを有効にしておくと、起動時のセキュリティが強化され、トラブルに遭いにくくなります。逆にSecure Bootをオフにした状態でBitLockerを使うと、一部の機能が制限される可能性があります。
Windows UpdateとUEFIファームウェアの更新
Surfaceシリーズでは、Windows Updateを通じてUEFIファームウェアの更新が配信されることがあります。ファームウェアの更新はシステムの安定性向上やセキュリティパッチの適用などが含まれているため、定期的にアップデートを適用するようにしておきましょう。
カスタムOSやデュアルブートを試したい方へ
Surface Laptop 6でWindows以外のOSを利用したい場合、UEFI設定のカスタマイズが必要になる場合があります。たとえば、Linuxディストリビューションをインストールしてデュアルブートを構築する際、ブートローダーの設定をいじることもあるでしょう。
Linuxブートローダーへの対応
一般的なディストリビューションでは、UEFI用のブートローダー(例:GRUB EFI)を用いて起動します。インストールメディアをUSB経由で読み込めるようにUEFIでブート順序を調整し、Secure Bootをオフにする必要がある場合もあります。インストールが完了すると、WindowsとLinuxを切り替えられるようになります。
ドライバの相性と注意点
SurfaceシリーズはWindows向けに最適化されたデバイスです。Linuxなどで動作させる場合、一部のデバイスドライバがうまく動かない、あるいはWi-Fiやタッチパネルが正常に認識されないケースも報告されています。UEFI設定をいじるだけでなく、コミュニティの情報や最新のドライバを収集しておきましょう。
トラブル発生時の緊急コマンド操作例
Windowsが起動しなくなるなどの緊急事態では、以下のコマンドを使った修復作業を試すことができます。コマンドプロンプトを利用するには、回復モードやインストールメディアから起動し、「トラブルシューティング」→「詳細オプション」→「コマンド プロンプト」を選択します。
# 例:システムファイルをスキャンして修復を試みる
sfc /scannow
# 例:ブート構成データを再構築する
bootrec /fixmbr
bootrec /fixboot
bootrec /scanos
bootrec /rebuildbcd
上記の操作でも解決しない場合は、UEFI設定そのものに問題がある可能性や、ハードウェア的な故障も考えられます。
まとめ:Surface Laptop 6のUEFIを正しく使いこなそう
Microsoft Surface Laptop 6には従来のBIOSではなくUEFIが搭載されており、起動時に音量アップボタンを押し続ける操作、もしくはWindowsからの回復オプションを使ってアクセスします。UEFIを利用して起動順序やSecure Bootのオン/オフなどを設定できますが、慎重に行わないとシステム不具合の原因にもなります。
日常的にUEFIをいじる機会は少ないですが、トラブル対応やOSの再インストール時には必須の知識です。Surface Laptop 6を最大限に活用するためにも、UEFIの基本をしっかり理解しておきましょう。
- UEFIはBIOSの後継規格であり、高度なセキュリティや大容量ストレージに対応
- Surface特有の操作で、音量アップボタンを使って起動時にUEFIにアクセス
- Windows上の回復オプションからもUEFIメニューに入れる
- Secure Bootの設定変更はセキュリティリスクを伴うので慎重に扱う
- IT管理者は公式ドキュメントを活用し、複数台のSurfaceを効率よく管理できる
以上がSurface Laptop 6でUEFIを活用する際のポイントです。快適なSurfaceライフを送るためにも、UEFIの知識を身につけておくと万が一のトラブル対応時にも安心です。
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