企業内や特別な閉域ネットワークなど、インターネット接続が制限されている環境でOfficeを導入したいと考えている方は多いかもしれません。しかし、ライセンス認証やアップデート方法など、オフラインインストールにはいくつか注意点があります。今回は、Office 2021 Home & Businessをオフラインでインストールする方法からライセンス認証のポイントまで、実践的な知識をまとめてご紹介します。
Office 2021 Home & Businessをオフラインインストールするメリットと課題
ネットワーク隔離された環境下でOfficeを導入する場合、インストールファイルを事前に用意できれば、サーバーやクライアントPCへのセットアップをスムーズに進められます。一方で、買い切り型のOffice 2021ではインストールメディアが同梱されないケースもあり、Microsoft公式サイトからのダウンロードが必要となります。ここでは、そのメリットと課題を整理してみましょう。
メリット
- ネットワーク接続が不要な状態でインストール可能
- インストール作業を一括管理しやすい(複数PCに導入する場合など)
- エンタープライズ環境のセキュリティポリシーを順守しやすい
課題
- ライセンス認証のために一時的にインターネット接続が必要
- 言語やアーキテクチャ(32bit/64bit)の変更には追加の手順が求められる
- ドメイン環境での認証方法が不明瞭な場合、サポートを要する可能性
オフラインイメージ(.imgファイル)のダウンロード方法
Office 2021 Home & Businessのオフラインイメージをダウンロードするには、Microsoftが公式に配布している以下のリンクを利用します。英語版64bitのイメージになりますが、必要に応じて言語パックを追加導入することが可能です。
HomeBusiness2021Retail.img (英語版64bit)
通常、上記のリンク先からダウンロードされたファイルは「HomeBusiness2021Retail.img」という名前で取得できます。このファイルはISOイメージと同じように扱え、Windows 10以降であればダブルクリックでマウントして、そのままセットアッププログラムを起動できます。
オフラインイメージを使ったインストール手順
- 外部ネットワークに接続できるPCで上記の.imgファイルをダウンロード
- USBメモリなどのメディアにファイルをコピー
- インターネット非接続のPCで.imgファイルをマウントし、
Setup.exe
を実行 - 画面の指示に従ってOfficeをインストール
- インストール完了後にライセンス認証を実施
ポイント:32bit版が必要な場合
Office 2021のインストーラーを実行した際、64bit版が自動的にインストールされる場合があります。古いアドインなどの互換性で32bit版を使いたい場合は、Office Deployment Tool(ODT)を使ったカスタムインストールが必要になります。
ライセンス認証にはインターネット接続が必須
Office 2021 Home & Businessは買い切り型のライセンスですが、初回のアクティベーション(ライセンス認証)には通常インターネット環境が必須です。ネットワーク隔離された環境では、一時的にオンライン接続を確保するか、電話認証を利用することで認証を完了させます。
電話認証という選択肢
インターネットにまったく接続できない状況下でも、電話認証を利用できる可能性があります。インストール後にOfficeを起動した際、ライセンス認証ウィザードが表示されるはずです。ここで「電話での認証」オプションがあれば、アナウンスに従い入力コードを取得し、電話で認証を完了させることができます。
電話認証手順の一例
- Officeアプリを起動し、ライセンス認証ウィンドウを開く
- 「電話での認証」を選択し、国または地域を選ぶ
- 表示された電話番号に連絡し、案内に従ってインストールIDを入力
- アクティベーションIDをメモして、画面に入力
- 認証が完了するとOfficeがライセンス済み状態になる
ドメイン環境でのOffice展開と認証
企業のドメイン環境に導入する場合、Office 365(Microsoft 365)ではなく買い切り型のOfficeであっても、ライセンス認証のプロセス自体は基本的に大きく変わりません。しかし、環境によってはプロキシサーバーの設定やファイアウォールの制御などが必要になるケースがあります。
注意点
- ドメインコントローラー(DC)が代理でライセンス認証を行う仕組みは通常ありません
- KMSホストなどのボリュームライセンス向けの認証方法とは異なるため注意
- プロダクトキーの種類(RetailキーかVolumeキーか)を確認
もし複数台にわたってインストールと認証を行う必要がある場合、各PCのOffice 2021 Home & Businessがそれぞれライセンス認証を通過する必要があります。ドメインユーザーアカウントでログオンした状態でも、最終的にはOfficeがMicrosoftの認証サーバーへ接続するか、電話認証を行う必要がある点は変わりません。
Office Deployment Tool(ODT)を活用したカスタムインストール
Office Deployment Tool(以下ODT)を使うと、複数言語や32bit版/64bit版などを一度にダウンロードし、オフラインで展開できます。ドメイン環境で一斉にOfficeを配布する際にも大いに役立つツールです。
Office Deployment Toolの基本的な流れ
- Microsoft公式サイトからODTをダウンロード
- 構成ファイル(XML)を作成
- ダウンロードコマンドでOfficeのインストールファイルを取得
- インストールコマンドでOfficeをセットアップ
サンプル構成ファイル
以下は、英語版のOffice 2021 Home & Business(Retail版)64bitをダウンロード&インストールするための構成ファイル例です。言語を日本語に変更したい場合は、Language ID="ja-jp"
に書き換えるなど調整を行ってください。
<Configuration>
<Add OfficeClientEdition="64" Channel="PerpetualVL2021" SourcePath="C:\Office2021" >
<Product ID="HomeBusiness2021Retail">
<Language ID="en-us" />
<ExcludeApp ID="Groove" />
<ExcludeApp ID="Publisher" />
</Product>
</Add>
<Display Level="None" AcceptEULA="TRUE" />
<Logging Level="Standard" Path="%temp%" />
<Property Name="AUTOACTIVATE" Value="1" />
</Configuration>
上記のSourcePath
には、Officeファイルを保存する任意のパスを指定してください。また、AUTOACTIVATE
を1
に設定すると、自動的にアクティベーションを試行しますが、最終的には電話認証やオンライン認証が必要になる場合があります。
ODTでのインストール手順例
- ODT(
setup.exe
)と上記の構成ファイルを同じフォルダに配置 - コマンドプロンプトを開き、そのフォルダに移動
- Officeファイルをダウンロード:
setup.exe /download configuration.xml
- Officeをインストール:
setup.exe /configure configuration.xml
ダウンロードとインストールを分離することで、インターネットに接続できるマシンでOfficeファイル一式を取得してから、USBメモリやDVDなどに保存し、オフラインの環境に持ち込めます。
ネットワーク隔離環境での運用におけるポイント
一度Officeを認証してしまえば、ライセンスの再認証を頻繁に要求されることはありません。ただし、Officeの更新プログラムはオンライン接続がないと適用できません。組織のポリシーによっては、定期的に別の方法で更新を検討する必要があります。
電話認証のリスクと注意
電話認証は便利ですが、通話料や時間がかかる場合があります。また電話認証の回数が多いと、Microsoft側のセキュリティチェックに引っかかり、オペレーター対応が必要になる場合もあるため注意が必要です。
セキュリティ更新プログラムの取り扱い
セキュリティ観点でOfficeの更新を無視するのは推奨されません。定期的にセキュリティパッチを取得できる仕組み(WSUSや外部USB経由など)を整えておきましょう。ネットワークを一時的に解放してアップデートをかける運用を採る組織もあります。
よくある質問とトラブルシュート
Q1. ライセンス認証がどうしても通らない
- 電話認証を試しているか
- 入力しているプロダクトキーが間違っていないか
- RetailライセンスとVolumeライセンスを混同していないか
どうしても解決しない場合は、Microsoftアカウントや製品キーの管理画面で引き換え状態やライセンスのステータスを確認するか、Microsoftサポートに直接問い合わせるのが確実です。
Q2. Office 2021以外のエディションはオフラインインストールできないの?
Office 365(Microsoft 365)の場合は、契約プランによってODT経由でのオフラインインストールが可能な場合とそうでない場合があります。買い切り型のOffice 2019や2021であれば、原則ODTまたは公式のイメージファイルからオフラインインストールが可能です。
Q3. ドメインアカウントでインストールしたOfficeがライセンスエラーになる
ドメイン環境自体はOfficeの認証とは直接関係ありません。インストール後にライセンス情報を正しく入力したか、DNSやプロキシ設定で認証サーバーにアクセスできる状態にあるかを確認してください。完全オフラインであれば電話認証を行います。
まとめ:オフラインインストールの鍵は「事前準備」と「適切なライセンス認証手段」
ネットワークが遮断された環境であっても、Office 2021 Home & Businessのインストールは十分に可能です。以下のポイントを押さえれば、スムーズに導入・運用できます。
- Microsoft公式からオフラインイメージをダウンロードし、USBなどで運搬
- Office Deployment Toolを活用して、32bit/64bitや多言語対応を一括管理
- ライセンス認証はオンライン環境や電話認証が必要
- ドメイン環境ではプロキシやファイアウォール設定もチェック
- セキュリティ更新はオフライン環境向けの別途対策が必須
買い切り型のOffice 2021ならば一度アクティベーションに成功すれば、頻繁に認証を求められることは基本的にありません。しかし、新しい脆弱性対策や機能改善を取り入れるためにも、定期的なアップデートをどう行うかは検討が必要です。ドメイン環境のポリシーとも合わせて、トラブルを未然に防げるような運用設計を心がけましょう。
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