Office 365でClutterをオフにする方法│Focused Inboxの設定ポイント

ふと気づけば、Outlookの受信トレイに見慣れない「Clutter」や「フォーカスされた受信トレイ」という機能があって、どこから手をつければいいのかわからない、という経験はありませんか。特にOffice 365(Microsoft 365)ビジネスアカウントをご利用の方からは「Clutterをオフにしたいのにメニューが見当たらない」「Focused Inboxを切れば代わりにClutterもオフになるのか?」など、戸惑いの声が多く寄せられています。本記事では、こうした疑問を解消し、メールの自動振り分けを自在にコントロールするための実践的な方法をご紹介します。

「Clutter」とは? その歴史と役割

Clutter(クラッター)は、かつてOffice 365(Microsoft 365)で導入されていた自動仕分け機能です。重要度が低いと判断されたメールを「Clutter」フォルダーに振り分けることで、ユーザーが本当に読むべきメールを見逃さないようにサポートしていました。

しかし、Microsoftはより直感的で使いやすい機能として「Focused Inbox(フォーカスされた受信トレイ)」を開発し、2020年1月31日以降、Clutter機能を段階的に廃止する方針を打ち出しました。結果として、現在のバージョンのOutlookでは、Clutter機能そのものはほぼ利用されなくなり、多くの環境ではFocused Inboxが代替機能として標準搭載されています。

ClutterからFocused Inboxへ置き換えが進んだ理由

  • ユーザー体験の改善
    Clutterの仕組みでは、メールが「Clutter」フォルダーに自動振り分けされるため、ユーザーがそもそも気づかない可能性がありました。Focused Inboxは受信トレイ上で「優先タブ(フォーカスされた受信トレイ)」と「その他タブ」を切り替えられるため、よりスムーズに重要なメールとそうでないメールを判別できます。
  • 管理の一元化
    ClutterとFocused Inboxの両方があるとユーザーも管理者も混乱しやすく、「どの設定をどう変えればいいのか分からない」となるケースが少なくありませんでした。フォーカスされた受信トレイへの一本化により、管理が容易になりました。

現時点でClutter機能は存在するのか?

公式には「Clutter」は廃止され、Focused Inboxに完全移行されています。ただし、以前のメールが残った状態で「Clutter」フォルダーそのものは消えずに表示され続ける場合があります。これはあくまで“残存しているフォルダー”であり、新規のメールがClutterフォルダーに振り分けられるわけではありません。

Clutterをオフにする方法は? 実は「Focused Inbox」の設定が鍵

「Clutterを無効化したい」と思っても、現在では該当する設定画面がほぼ表示されないため、一瞬戸惑います。しかし、結論からいうと「Focused Inboxをオフにすれば、Clutter相当の動作も停止する」という仕組みになっています。

Outlookデスクトップアプリの場合

  1. Outlookを起動し、メインウィンドウの上部メニューから[表示]タブを選択する
  2. [フォーカスされた受信トレイを表示]のチェックを外す
  • これだけで「優先タブ」と「その他タブ」が消え、フォルダー構成も従来の「受信トレイ」のみになります。
  • 事実上、Clutterと同等の自動振り分け機能が無効化された状態になります。

Outlook on the web(ブラウザ版)の場合

  1. Outlook on the webにサインインし、右上の歯車アイコン(設定)をクリック
  2. 「クイック設定」パネルが開いたら、[フォーカスされた受信トレイをオン/オフ]を切り替える
  • オフにすると、ウェブ版の受信トレイも「優先」「その他」の区分がなくなります。
  • 結果的にClutter相当の自動整理は行われなくなります。

スマートフォンやタブレットのOutlookアプリの場合

Outlookのモバイルアプリでも同様に「優先受信トレイ」の設定をオフにすることで、Clutterと同じ自動整理機能が無効になります。操作手順はやや異なりますが、以下が一般的な流れです。

  1. Outlookアプリを開き、画面左上の自分のアイコンまたはアカウントをタップ
  2. [設定](歯車アイコン)を選択
  3. 利用中のメールアカウントをタップ
  4. 「優先受信トレイの切り替え」をオフにする

以上で、フォーカスされた受信トレイが機能しなくなり、Clutter相当の動作も無効化されます。

管理者が一括でFocused Inboxを制御する場合

組織のIT管理者やMicrosoft 365管理センターの管理者アカウントをお持ちの方であれば、PowerShellやMicrosoft 365管理センターから組織全体のメール設定をコントロールできます。

管理センターからの設定

  1. Microsoft 365管理センターにサインイン
  2. [設定]>[組織の設定]>[サービス]の順に進む
  3. 「メール」を選択し、Focused Inboxのオン/オフを切り替える
  • ここで「ユーザーごとに自由に選択可能」などのオプションを設定することもできます。

PowerShellでの設定例

Exchange Online PowerShellを用いると、より細かい制御が可能です。たとえば、以下のコマンドで特定ユーザーのフォーカスされた受信トレイを無効化できます。

Set-FocusedInbox -Identity user@domain.com -FocusedInboxOn $false

また、組織全体に対してデフォルトでオフにする場合は、ポリシーを設定し新しいメールボックスに適用させる方法などがあります。ただし、最終的にはユーザーが各自でオンにできる場合もあるので、社内ポリシーとして使用禁止にするかどうかを事前に周知しておくのが望ましいです。

「Clutter」フォルダーの扱い方—残存フォルダーは消してもいい?

すでにFocused Inboxへ移行した環境でも「Clutter」フォルダーが表示されているケースは珍しくありません。これは、過去にClutter機能が振り分けていたメールがまだ残っているためです。今後新規メールが自動的にそこへ振り分けられることはありませんが、フォルダーとしては手動で移動・削除などの操作が可能です。

フォルダーをリネームまたは削除する際の注意点

  • アーカイブとして使う場合
    Clutterフォルダーにたまった過去メールをアーカイブ代わりに残しておく場合は、フォルダー名を「旧Clutter」などに変更すると分かりやすいでしょう。
  • 削除しても問題ない場合
    特にメールを残しておく必要がなければ、Clutterフォルダーの中身を確認してから削除してしまって構いません。不要なフォルダーを減らすことで、フォルダー一覧がスッキリします。

Focused Inboxをオフにするメリットとデメリット

「優先受信トレイ」とも呼ばれるFocused Inboxは、一定のルールに基づいて重要そうなメールを「優先」タブに振り分け、それ以外は「その他」タブへまとめるという仕組みです。Clutterを無効化するのと同時に、Focused Inboxを停止することで、メールはすべて一つの受信トレイに表示されるようになります。

項目メリットデメリット
オンのまま・重要度の高いメールを見逃しにくい
・余分なメールは「その他」でまとまる
・機械学習の判定が誤っていると重要なメールが埋もれる
・初期学習が不十分だと分類精度が低い
オフにする・受信トレイが一つにまとまって見やすい
・振り分けミスが起きにくい
・メール数が多いと目視確認が大変
・本当に必要な振り分けをユーザーが手動で行う必要あり

Focused Inboxをオフにすると、すべてのメールが一括で表示されるため、優先とその他で画面を行ったり来たりする手間は省けます。一方で、毎日大量に受信するメールの中から本当に必要な情報を見極めるには、自分で仕分けルールを作成したり整理したりする手間が増えるという面もあります。

ClutterとFocused Inboxを上手に管理するコツ

ClutterやFocused Inboxのメリットは「自動的にメールを振り分けてくれる」点にあります。しかし、いくら便利でも誤振り分けがあると重要なメールを見落としてしまうリスクがあるため、常に運用を見直すことが大切です。

1. 仕分けルールとの併用

Outlookには「仕分けルール」を自分で設定できる機能があります。たとえば、特定の送信者や件名を含むメールは専用フォルダーに振り分けるなど、独自のルールを細かく作成することが可能です。Focused Inboxをオフにしても、仕分けルールを活用すれば、受信トレイを整然と保つことができます。

2. メールの定期的な見直し

特に重要な連絡がフィルタリングされていないか、あるいは必要のないメールが受信トレイを埋め尽くしていないか、定期的にフォルダー構成をチェックしましょう。過去に作成した仕分けルールや連絡先のブロック設定を放置すると、いつの間にか大事な情報を逃しているかもしれません。

3. 社内運用ガイドラインの整備

組織全体でClutterやFocused Inboxの使用をどうするか、ガイドラインを決めておくと混乱が少なくなります。新しく入社した社員にも「うちはFocused Inboxはオフで運用」「仕分けルールは各自で作ってください」などルールを伝えておくと、メールトラブルが減るでしょう。

なぜ「Clutterをオフにしたいのに見当たらない」と感じるのか

「Clutter」そのものの設定画面を探しても見つからない最大の理由は、MicrosoftによってFocused Inboxに統合され、従来のClutterのオン/オフ切り替え項目が非表示・削除されているからです。古いサポート記事やブログ投稿などを見ると「Clutterの設定をオフにする項目がある」と書かれている場合がありますが、現在のバージョンではほぼ残っていないか、メニュー構成が変わっているため、同じ手順では対応できません。

「Clutter」という名称の表示が残っているケース

  • 旧バージョンのOutlookのヘルプ画面やメニュー
    最新版へアップデートしていないと、稀に「Clutter」という文言が見えるかもしれませんが、実際にはFocused Inboxが動いているケースが多いです。
  • Outlook on the webの地域設定や言語設定
    一部の言語設定で古い文言が表示される場合があります。この場合でも、実際の動作はFocused Inboxと同じであることがほとんどです。

よくある質問(FAQ)

Q1. Clutterフォルダーにたまっているメールはどうすればいい?

A. 基本的にはフォルダーを確認してから、必要なメールだけを受信トレイに戻す、またはフォルダーごと削除するかを判断してください。Clutterフォルダーは今後自動振り分けの対象にはならないため、不要ならば削除しても問題ありません。

Q2. Focused Inboxをオンにしていても、一部メールが「その他」に振り分けられて困る

A. Focused InboxのAI分類は、ユーザーの操作履歴や学習データを基に行われます。誤って振り分けられたメールを「優先」に移動すると、その操作が学習され、次回以降は正しく優先タブに振り分けられる可能性が高まります。それでも問題が続く場合は、手動で仕分けルールを作ることも検討してください。

Q3. 組織全体でFocused Inboxを無効化したいが、ユーザーの設定変更で再度オンになる?

A. 管理センターやPowerShellでデフォルトをオフに設定しても、各ユーザーが個別にオンに変更できるケースはあります。そのため、社内ポリシーとして禁止する、あるいは周知文書を配布するなどの対応が必要となる場合があります。

まとめ:Clutterのオフ=Focused Inboxのオフ

Clutterが廃止された現状においては、「Clutterをオフにしたい」と思ったら、実質的には「Focused Inboxをオフにする」という操作が必要になります。古い設定画面や説明が混在しているためややこしい印象がありますが、ポイントは以下の通りです。

  • ClutterはすでにFocused Inboxに置き換えられているため、個別にオン・オフは不可
  • Focused Inboxを無効にすれば、Clutter相当の自動振り分けも停止
  • Outlookデスクトップ版は「表示」タブの[フォーカスされた受信トレイを表示]のチェックを外す
  • Outlook on the webやモバイルアプリも同様の手順でオフに切り替え可能
  • 管理者としてはMicrosoft 365管理センターまたはPowerShellで組織全体の設定を制御できる
  • 「Clutter」フォルダーは過去のメールを残しているだけの場合が多く、必要に応じて削除やリネームが可能

メール管理をスムーズに行うためには、使われていない機能や古い情報を整理し、定期的にメールボックスや仕分けルールを見直すことが不可欠です。ぜひ本記事を参考に、自分や組織に合ったメール運用スタイルを確立してみてください。

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