導入文章
PowerShellを使用して、Azure Arc-enabled Kubernetesのリモートインストールを行う方法を解説します。Azure Arcは、オンプレミスや他のクラウド環境にあるKubernetesクラスターをAzure上で一元管理するための強力なツールです。これにより、複数の環境を統合し、クラウド上での管理をシームレスに行えるようになります。PowerShellを利用することで、コマンドラインから簡単にインストールや管理を行うことができ、リモート操作が可能となります。本記事では、PowerShellを使ってAzure Arc-enabled Kubernetesをリモートでインストールし、クラウド接続を効率的に構築する方法を紹介します。
Azure Arcとは何か
Azure Arcは、Microsoft Azureのサービスで、オンプレミスや他のクラウド環境にあるリソースをAzureで一元管理できるようにする技術です。Azure Arcを活用することで、物理サーバーや仮想マシン、さらにはKubernetesクラスターを、Azureポータルを通じて管理することが可能になります。これにより、クラウドとオンプレミス環境のハイブリッド構成が容易になり、インフラ全体の一貫性が保たれます。
Azure Arcの主な特徴
- 統合管理: Azure Arcを使用すると、異なる環境(オンプレミス、他のクラウド、エッジ)にあるリソースを、Azureポータルで一元的に管理できます。
- インフラの一致: インフラの管理方法やセキュリティポリシーをクラウド上で統一でき、複数の環境に対して一貫したポリシーを適用できます。
- 拡張性: Kubernetesやデータベースなど、Azureが提供するクラウドサービスをオンプレミスや他のクラウドにも拡張でき、柔軟なインフラ運用が可能です。
Azure Arc-enabled Kubernetes
Azure Arc-enabled Kubernetesは、KubernetesクラスターをAzure上で管理するための機能です。これにより、オンプレミスや他のクラウドにあるKubernetesクラスターを、Azureの一元管理機能を通じて操作・監視できるようになります。この機能を活用することで、クラウド上でのコンテナ管理やリソースの自動化が容易になり、DevOps環境の効率化が図れます。
Azure Arcは、クラウドとオンプレミスの間でシームレスな管理体験を提供し、企業にとっては一貫した運用が可能になるため、非常に便利なツールです。
PowerShellの準備
Azure Arc-enabled KubernetesをPowerShellでリモートインストールするためには、いくつかの準備が必要です。PowerShellはWindows環境だけでなく、LinuxやmacOSでも使用でき、リモート管理のためにさまざまなモジュールを活用できます。この記事では、PowerShellを使って効率よくインストール作業を行うための準備手順を解説します。
PowerShellのインストール
まず、最新のPowerShellをインストールしていることが前提です。Windows 10以降では、PowerShellが標準でインストールされていますが、最新のバージョンが必要な場合は、公式サイトからダウンロードしてインストールします。
- PowerShell公式ページから最新バージョンをダウンロードし、インストールします。
- インストール後、PowerShellを管理者権限で実行できることを確認してください。
Azure PowerShellモジュールのインストール
次に、Azure環境を操作するために必要なPowerShellモジュールをインストールします。これにより、PowerShellから直接Azureリソースにアクセスし、管理操作を行えるようになります。
以下のコマンドで、Azure PowerShellモジュールをインストールします。
Install-Module -Name Az -AllowClobber -Force -Scope CurrentUser
インストールが完了したら、次にAzureにサインインして操作を行う準備をします。次のコマンドを実行し、Azureアカウントにサインインします。
Connect-AzAccount
サインイン後、Azureアカウントが正しく設定されていることを確認するために、次のコマンドで現在のサブスクリプション情報を確認します。
Get-AzContext
Azure CLIのインストール (任意)
Azure Arcのインストールには、Azure CLIも役立ちます。特に、Kubernetesクラスターの管理やAzure Arcの設定にAzure CLIを併用することがあります。
以下のコマンドで、Azure CLIをインストールします。
Invoke-WebRequest -Uri https://aka.ms/installazurecliwindows -OutFile "AzureCLI.msi"
Start-Process msiexec.exe -ArgumentList "/i", "AzureCLI.msi", "/quiet", "/norestart" -NoNewWindow -Wait
インストール後、以下のコマンドでサインインします。
az login
これで、PowerShell環境が整いました。Azureへの接続準備が完了したので、次はAzure Arc-enabled Kubernetesのインストールに進む準備が整います。
Azure Arc-enabled Kubernetesの概要
Azure Arc-enabled Kubernetesは、Azure Arcの機能の一部であり、オンプレミスや他のクラウドプロバイダーに存在するKubernetesクラスターをAzureで一元管理するためのソリューションです。この機能により、Azureの強力な管理機能やサービスを、従来のKubernetes環境にも適用できるようになります。オンプレミスのKubernetesクラスターをAzureに接続することで、セキュリティ、監視、更新など、クラウドと同じレベルの管理が可能になります。
Azure Arc-enabled Kubernetesのメリット
Azure Arc-enabled Kubernetesの導入にはさまざまなメリットがあります。主な利点は以下の通りです。
- 一元管理: Azure Arcを利用することで、複数のKubernetesクラスターをAzureポータルを通じて統合的に管理できます。これにより、複雑なインフラ管理をシンプルに保つことができます。
- クラウドのセキュリティ機能: クラウドで利用可能なセキュリティ機能やポリシーをオンプレミスのKubernetesクラスターに適用できるため、セキュリティが強化されます。
- リソースの最適化とコスト削減: クラウド環境にリソースを統合することで、運用の効率化が図られ、リソースの最適化が可能になります。また、コストの予測や管理が容易になり、運用コストを削減できます。
- デプロイメントの一貫性: Azure Arc-enabled Kubernetesにより、DevOps環境での自動化されたデプロイメントやCI/CDパイプラインの構築がシームレスに行えます。これにより、開発から本番環境までのデプロイ作業を一貫して管理できます。
Azure Arc-enabled Kubernetesの構成要素
Azure Arc-enabled Kubernetesを構成する主要な要素は以下の通りです:
- Azure Arcエージェント: Azure Arcを有効化するためには、対象となるKubernetesクラスターにAzure Arcエージェントをインストールする必要があります。このエージェントは、クラウドとの通信を行い、Azureによる管理を可能にします。
- Azure Resource Manager (ARM): KubernetesクラスターがAzureと連携するため、リソースはAzure Resource Manager (ARM)を介して管理されます。この仕組みにより、リソース管理が一貫して行われます。
- Kubernetesリソース: クラウド上で管理するリソースは、Kubernetesのリソースとして定義され、Azure Arcを通じて監視や更新が行われます。
Azure Arc-enabled Kubernetesを利用することで、クラウドとオンプレミスのリソース管理を一元化でき、より効率的で安全な運用が可能になります。この機能は、企業がハイブリッドクラウド環境を構築する際に非常に有用です。
PowerShellでのリモート接続手順
PowerShellを使ってAzure Arc-enabled Kubernetesのインストールをリモートで実行するには、まずAzure環境にリモート接続する必要があります。ここでは、PowerShellを使用してAzureに接続し、必要なリソースを操作する手順を詳しく説明します。
Azureアカウントへのサインイン
最初に、Azure PowerShellモジュールを使用してAzureアカウントにサインインする必要があります。以下のコマンドで、Azureアカウントへのサインインを行います。
Connect-AzAccount
コマンドを実行すると、サインイン用のウィンドウが表示されるので、Azureの資格情報を入力してサインインします。サインイン後、Azureサブスクリプションにアクセスできる状態になります。
使用するサブスクリプションの選択
複数のサブスクリプションを利用している場合は、目的のサブスクリプションを選択する必要があります。以下のコマンドで、現在のサブスクリプションのリストを確認できます。
Get-AzSubscription
目的のサブスクリプションが確認できたら、次のコマンドでそのサブスクリプションを選択します。
Set-AzContext -SubscriptionId "your-subscription-id"
これで、指定したサブスクリプションに対する操作が可能になります。
Azure Arc-enabled Kubernetesクラスターに接続
Azure Arc-enabled Kubernetesクラスターを管理するためには、Kubernetesクラスターに接続する必要があります。リモートで接続するためには、Kubernetesの管理情報を取得し、接続設定を行います。
以下の手順で、Azure Arc-enabled KubernetesクラスターをAzureと接続します。
- クラスターの接続設定
Azure Arc-enabled KubernetesクラスターをAzureと接続するために、az
CLIを利用してクラスターに接続します。まず、次のコマンドで必要な設定を行います。
az connectedk8s connect --name <クラスター名> --resource-group <リソースグループ名> --kube-config <kubeconfigファイルのパス>
- 接続の確認
クラスターが正常に接続されているかを確認するには、次のコマンドで接続状態をチェックします。
az connectedk8s show --name <クラスター名> --resource-group <リソースグループ名>
これで、Azure Arcを通じてKubernetesクラスターへの接続が完了します。接続が確認できれば、リモートからKubernetes環境を操作できる状態になります。
接続時のトラブルシューティング
リモート接続時に問題が発生した場合は、次の点を確認してみましょう:
- 認証情報: Azureへのサインインに使用した資格情報が正しいか確認してください。
- インターネット接続: クラスターがAzureに接続できる状態であるか、ネットワーク設定を確認してください。
- Kubernetes設定: クラスターの
kubeconfig
が正しく設定されているか確認し、必要に応じて再生成します。
以上で、PowerShellを使ったAzure Arc-enabled Kubernetesクラスターへのリモート接続準備が整いました。次は、実際のインストール作業に進むことができます。
Kubernetesクラスターの設定
Azure Arc-enabled Kubernetesを利用するためには、Kubernetesクラスターの設定が必要です。PowerShellを使用してAzure Arcに接続した後、Kubernetesクラスターに対して必要な設定を行い、Azure Arcとの連携を完了させます。このセクションでは、KubernetesクラスターをAzure Arcと統合するための設定手順を詳しく説明します。
Azure Arcの準備
まず、Azure Arcを有効にするために、KubernetesクラスターにAzure Arcエージェントをインストールする必要があります。これを行うことで、KubernetesクラスターをAzureの管理下に置くことができます。
- Azure Arcエージェントのインストール
Azure Arcエージェントをインストールするために、まず必要なHelmチャートをインストールします。以下のコマンドを使用して、Azure Arcエージェントをインストールします。
az connectedk8s connect --name <クラスター名> --resource-group <リソースグループ名> --kube-config <kubeconfigファイルのパス>
上記コマンドは、Kubernetesクラスターに対してAzure Arcエージェントを設定し、Azure Arcと接続を確立します。この処理が完了すると、Azure ArcはKubernetesクラスターをAzureリソースとして認識し、管理できるようになります。
Kubernetesクラスターの確認
Azure Arcエージェントがインストールされた後、クラスターの状態を確認して、正常に接続されているかをチェックすることが重要です。次のコマンドでクラスターの状態を確認できます。
az connectedk8s show --name <クラスター名> --resource-group <リソースグループ名>
このコマンドを実行すると、Azure Arc-enabled Kubernetesクラスターの詳細情報が表示されます。接続の状態や、必要な構成が正常に完了しているかを確認できます。
Kubernetesクラスターの管理者権限の設定
Azure Arc-enabled Kubernetes環境を効果的に管理するためには、管理者権限を適切に設定する必要があります。Azure Arcでは、Kubernetesクラスターのリソースに対する権限を設定するために、RBAC(Role-Based Access Control)を使用します。
- Azure Arcに対する役割の割り当て
Azure Arc-enabled Kubernetesに関連する操作を行うために、Azureアカウントに適切な役割を割り当てます。次のコマンドで、クラスターに対して管理者権限を付与することができます。
az role assignment create --assignee <ユーザーまたはサービスプリンシパルのID> --role "Owner" --scope /subscriptions/<サブスクリプションID>/resourceGroups/<リソースグループ名>/providers/Microsoft.Kubernetes/connectedClusters/<クラスター名>
- Kubernetes RBAC設定の確認
次に、Kubernetesの設定ファイルを使用して、クラスターの管理者権限を確認します。以下のコマンドで、クラスター内のユーザー権限をチェックできます。
kubectl get clusterrolebindings
これにより、Kubernetesクラスターの管理者やユーザーに付与されたロールが一覧表示されます。
Azureポータルでの確認
KubernetesクラスターがAzure Arcと正常に統合されたかどうかを確認するために、Azureポータルにアクセスします。ポータルにログイン後、「Azure Arc」セクションから接続されたKubernetesクラスターを確認できます。ここでクラスターのステータスやメトリクスを確認し、問題がないかチェックします。
これらの手順を完了することで、KubernetesクラスターはAzure Arc-enabled Kubernetesとして設定され、Azureポータルから管理できる状態になります。次のステップでは、実際のインストール作業を進めます。
Azure Arc-enabled Kubernetesのインストール
Azure Arc-enabled Kubernetesをインストールするためには、Azure ArcエージェントをKubernetesクラスターにインストールし、Azureとの接続を確立する必要があります。以下では、実際にKubernetesクラスターにAzure Arcをインストールする手順を詳細に解説します。
Azure Arcエージェントのインストール
まず、KubernetesクラスターにAzure Arcエージェントをインストールします。これにより、KubernetesクラスターがAzureの管理下に置かれ、リモートでの操作や監視が可能になります。エージェントのインストールは、Helmを利用して行います。
- Helmのインストール
Helmは、Kubernetes用のパッケージマネージャーであり、Azure Arcエージェントをインストールするために必要です。以下のコマンドを使って、Helmをインストールします。
brew install helm
または、Linuxの場合:
curl https://get.helm.sh/helm-v3.8.0-linux-amd64.tar.gz | tar -xz
mv linux-amd64/helm /usr/local/bin/helm
- Helmリポジトリの追加
Azure Arcエージェントをインストールするために、Azure Arc用のHelmリポジトリを追加します。
helm repo add azurearc https://charts.azure.com/helm-charts
helm repo update
- Azure Arcエージェントのインストール
Helmを使用して、KubernetesクラスターにAzure Arcエージェントをインストールします。次のコマンドでエージェントをインストールします。
helm install azure-arc-agent azurearc/azure-arc-k8s-agent --namespace azure-arc --create-namespace
このコマンドにより、KubernetesクラスターにAzure Arcエージェントがインストールされ、Azureとの接続が確立されます。
接続の確認
インストールが完了したら、KubernetesクラスターがAzure Arcと正常に接続されているかを確認します。以下のコマンドを実行して、接続状態をチェックします。
kubectl get connectedclusters
これにより、Azure Arcに接続されたKubernetesクラスターが表示され、正常にインストールされたことを確認できます。また、Azureポータルからも接続状況を確認することができます。
Kubernetesリソースの同期
Azure Arc-enabled Kubernetesクラスターに接続すると、Azure上で管理するためにクラスターリソースが同期されます。このプロセスには、クラスター内のPod、サービス、デプロイメントなどが含まれます。同期が完了すると、Azureポータルでこれらのリソースが表示され、管理や監視が行えるようになります。
kubectl apply -f azure-arc-resources.yaml
上記のコマンドで、必要なリソース設定ファイルをクラスターに適用し、同期を完了させます。
クラウドとオンプレミスの統合
Azure Arc-enabled Kubernetesがインストールされると、クラウドとオンプレミスのリソースがシームレスに統合されます。これにより、オンプレミスのKubernetesクラスターをAzureポータルから一元的に管理し、リソースの可視化やセキュリティの強化が図れます。また、Azureのモニタリングツールを使用して、パフォーマンスや稼働状況の監視を行うこともできます。
エラーとトラブルシューティング
インストール中にエラーが発生した場合、次の点を確認してみてください:
- Helmのバージョン: Helmのバージョンが古い場合、新しいバージョンをインストールし直すことで問題が解決することがあります。
- Kubernetes設定:
kubectl
が正常に動作しているか、Kubernetesクラスターの設定が正しいかを確認します。 - Azureの接続: Azureアカウントが正しく設定されているか、
az login
でサインイン状態を再確認します。
インストールが正常に完了すれば、Azure Arc-enabled Kubernetesを利用した高度な管理機能を活用できるようになります。次は、Kubernetesリソースをさらに管理し、デプロイを行う準備が整います。
Azure Arc-enabled Kubernetesの運用と管理
Azure Arc-enabled Kubernetesをインストールした後は、実際の運用と管理が重要になります。Azure Arcの強力な管理機能を最大限に活用するためには、定期的な監視、リソース管理、更新作業などの運用管理が求められます。このセクションでは、Azure Arc-enabled Kubernetesの運用と管理に関する具体的な手順を説明します。
Azureポータルでのリソース管理
Azure Arc-enabled Kubernetesクラスターが正常に接続された後、Azureポータルからさまざまな管理操作を行うことができます。例えば、クラスターのパフォーマンス監視やリソースの可視化、さらにはセキュリティの設定を行えます。
- クラスターのダッシュボード
Azureポータルの「Azure Arc」セクションから、接続されたKubernetesクラスターを選択することで、詳細なダッシュボードにアクセスできます。ここでは、クラスターの状態、リソース使用率、エラーの有無など、さまざまなメトリクスをリアルタイムで確認できます。 - Kubernetesリソースの表示
「リソースの表示」セクションでは、クラスター内のPod、サービス、デプロイメントなど、Kubernetesのリソースを一覧表示できます。これにより、必要なリソースを迅速に特定し、状態や構成の変更が可能です。 - ログとモニタリング
Azure Monitorを活用することで、Kubernetesクラスターのログやメトリクスを詳細に分析できます。Azure Monitorのダッシュボードからクラスターに関する情報を集約し、リアルタイムでモニタリングできます。
セキュリティとポリシー管理
Azure Arc-enabled Kubernetesを使用する際には、セキュリティを強化し、ガバナンスを確立することが重要です。Azure Arcでは、Azure Policyを使ってKubernetesクラスター内で実行されるリソースに対するセキュリティポリシーを適用できます。
- Azure Policyの適用
Azure Policyを使用すると、Azure Arc-enabled Kubernetesクラスターに対して一貫したポリシーを強制できます。これにより、リソースの整合性を保ち、ガバナンスを実施できます。
az policy assignment create --policy <PolicyDefinitionID> --scope /subscriptions/<subscriptionID>/resourceGroups/<resourceGroup>/providers/Microsoft.Kubernetes/connectedClusters/<clusterName>
- セキュリティの強化
Kubernetesのセキュリティを高めるため、Role-Based Access Control (RBAC)やNetwork Policiesを使用して、ユーザーやアプリケーションのアクセスを制限することができます。これにより、不要なアクセスを防ぎ、セキュアな運用を実現できます。
リソースのスケーリングと更新
Kubernetesクラスターを効率的に運用するためには、リソースのスケーリングと定期的な更新が必要です。Azure Arc-enabled Kubernetesでは、スケーリングや更新作業も容易に行うことができます。
- リソースのスケーリング
Azure Arcを使うことで、Kubernetesクラスターに追加のノードを簡単に追加し、リソースをスケールアップすることができます。以下のコマンドで、クラスターのスケール設定を調整できます。
kubectl scale deployment <deployment-name> --replicas=<number-of-replicas>
- クラスタの更新
Kubernetesクラスターが稼働していると、定期的にバージョンアップやパッチの適用が必要です。Azure Arc-enabled Kubernetesでは、更新作業をAzureポータルから簡単に管理できます。ポータルからは、Kubernetesのバージョン更新を確認し、適用することが可能です。 - 自動更新
クラスターの安定性を保つため、Kubernetesクラスターを自動的に更新する設定も可能です。これにより、セキュリティアップデートや機能追加が手動での操作なしに自動的に行われ、運用負荷を軽減します。
バックアップと復元
重要なデータや設定を守るために、バックアップと復元の仕組みを確立しておくことが重要です。Azure Arc-enabled Kubernetesでは、Kubernetesリソースのバックアップを行うためのツールを提供しています。
- Veleroによるバックアップ
Veleroは、Kubernetesクラスターのリソースをバックアップするツールです。Azure Arc環境でもVeleroを使用して、クラスターのリソースやストレージのバックアップを作成することができます。
velero install --provider azure --bucket <backup-bucket> --secret-file <azure-credentials-file>
- 復元手順
バックアップからの復元は、以下のコマンドで行います。これにより、障害発生時の迅速な復元が可能になります。
velero restore create --from-backup <backup-name>
トラブルシューティング
Azure Arc-enabled Kubernetesの運用中に問題が発生した場合は、以下の手順でトラブルシューティングを行います。
- Kubernetesリソースの確認: クラスター内で問題が発生しているリソースを
kubectl
コマンドで確認します。エラーが発生しているPodやサービスを特定し、ログを確認します。
kubectl describe pod <pod-name>
kubectl logs <pod-name>
- Azureポータルの監視ツール: Azure Monitorを使って、クラスターのパフォーマンスやエラーログを監視します。これにより、問題の根本原因を特定する手助けになります。
Azure Arc-enabled Kubernetesの運用には、定期的な監視、バックアップ、スケーリングなどの管理作業が欠かせません。これらを効果的に実施することで、安定したクラウド環境を提供できます。
Azure Arc-enabled Kubernetesのトラブルシューティング
Azure Arc-enabled Kubernetesの運用中にトラブルが発生することもありますが、適切なトラブルシューティング手順を踏むことで迅速に問題を解決できます。このセクションでは、Azure Arc-enabled Kubernetesに関連する一般的な問題とその解決方法について説明します。
接続の問題
Azure Arc-enabled KubernetesクラスターとAzure間の接続がうまくいかない場合、いくつかの原因が考えられます。接続の問題を解決するためには、次の手順を試みてください。
- Azure Arcエージェントの状態確認
最初に、Azure Arcエージェントが正常に動作しているかを確認します。以下のコマンドでエージェントのステータスを確認できます。
kubectl get pods -n azure-arc
azure-arc
名前空間にエージェント用のPodが正常に動作していない場合、ログを調べてエラーの詳細を確認します。
kubectl logs <pod-name> -n azure-arc
- Kubernetes APIサーバーの確認
Azure ArcとKubernetesクラスターを接続するには、Kubernetes APIサーバーが正常に動作している必要があります。APIサーバーのステータスを確認し、必要に応じて再起動します。
kubectl get componentstatuses
- Azure CLIの認証確認
Azure CLIが正しく認証されていない場合、接続エラーが発生することがあります。az login
を使って、再度ログインを試みてください。
az login
- ネットワークの問題
Azure ArcとKubernetesクラスターが異なるネットワークに接続されている場合、接続に問題が生じることがあります。ネットワーク設定を確認し、適切な通信が可能かを確かめてください。
リソース同期の問題
Azure Arc-enabled Kubernetesがリソースを同期できない場合、以下の原因が考えられます。
- リソースの設定確認
Azure Arcに接続されたクラスターでリソースが正しく設定されているか確認します。例えば、Kubernetesリソース(Pod、Service、Deploymentなど)の設定に誤りがないかを確認します。
kubectl get deployments
kubectl get services
- Helmチャートのバージョンの不一致
Azure ArcエージェントやKubernetesリソースを管理する際、Helmチャートのバージョンが異なると、同期がうまくいかないことがあります。helm repo update
を実行して、最新のチャートを利用するようにします。
helm repo update
- Kubernetes APIバージョンの互換性
使用しているKubernetesのバージョンがAzure Arcと互換性がない場合、リソース同期に失敗することがあります。Kubernetesのバージョンを確認し、必要に応じて更新します。
kubectl version
パフォーマンスの問題
Azure Arc-enabled Kubernetesのパフォーマンスが低下する原因として、リソースのオーバープロビジョニングや不適切なスケーリング設定が考えられます。以下の手順で問題を診断し、改善します。
- ノードの負荷確認
Kubernetesクラスターのノードに負荷がかかりすぎている場合、パフォーマンスが低下します。kubectl top nodes
コマンドでノードのリソース使用状況を確認します。
kubectl top nodes
- Podのリソース使用確認
各Podのリソース使用量が過剰でないか確認します。kubectl top pods
で各PodのメモリやCPU使用率を確認できます。
kubectl top pods --all-namespaces
- リソースのスケーリング
必要に応じて、Kubernetesクラスター内のリソース(Pod、ノード)のスケール設定を調整します。例えば、Podのレプリカ数を増加させたり、リソース制限を設定したりすることで、パフォーマンスを改善できます。
kubectl scale deployment <deployment-name> --replicas=3
セキュリティの問題
セキュリティ関連の問題が発生する場合、RBAC設定やポリシーが原因であることが多いです。セキュリティ関連の問題を解決するためには、以下の手順を試してください。
- RBAC設定の確認
KubernetesのRBAC設定が正しく設定されていない場合、リソースへのアクセスが制限されてしまいます。kubectl get clusterrolebindings
やkubectl get rolebindings
コマンドで、アクセス権限を確認します。
kubectl get clusterrolebindings
kubectl get rolebindings --all-namespaces
- Azure Policyの確認
Azure ArcでAzure Policyを使用している場合、不適切なポリシー設定がアクセスを制限していることがあります。ポリシー設定を再確認し、必要に応じて変更を加えます。
az policy assignment list --scope /subscriptions/<subscription-id>/resourceGroups/<resource-group>
- ネットワークポリシーの確認
KubernetesのNetworkPolicy設定が原因で、通信がブロックされている場合があります。kubectl get networkpolicies
で、ネットワークポリシーを確認します。
kubectl get networkpolicies --all-namespaces
ログとメトリクスの利用
トラブルシューティング中にログやメトリクスを利用することが重要です。Azure MonitorやKubernetesのログを活用することで、問題の原因を特定する手助けになります。
- Azure Monitorのログ
Azure Monitorで、Azure Arc-enabled Kubernetesに関するログやメトリクスを収集し、分析します。これにより、システム全体の状態をリアルタイムで把握できます。 - Kubernetesのログ
kubectl logs
コマンドを使用して、各Podのログを確認します。エラーや異常が記録されている場合、その情報が問題解決の手がかりとなります。
kubectl logs <pod-name>
これらの手順を試みることで、Azure Arc-enabled Kubernetesの運用中に発生した問題を迅速に解決することができます。
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