量子コンピューター関連株の最新動向と投資戦略:2025年1月時点

世界を変える可能性を秘める量子コンピューター関連企業は、近年急激に株価が乱高下し注目を集めています。本記事ではIonQやRigetti、D-Waveなど主要プレイヤーの株価動向やリスク、成長性を徹底分析。投資家としての視点を交え、今後の可能性を探ります。

量子コンピューター関連企業の株価動向と投資分析

各社の現在の株価と直近の動向

企業名ティッカー直近株価(2025年1月頃)52週高値直近1ヶ月上昇率
IonQIONQ約40ドル50ドル超72%(急騰時)
Rigetti ComputingRGTI約13ドル約21ドル46%(急騰時)
D-Wave QuantumQBTS5~6ドル約11ドル125%
Quantum Computing Inc.QUBT約18ドル419%
Arqit QuantumARQQ20ドル台前半上場直後40ドル近く緩やかな上昇

各社とも2024年後半から2025年にかけて株価が大きく変動しており、特にIonQやRigettiは一時的な急騰が目立ちました。IonQはNVIDIAとの提携や新技術発表を背景に注目を集め、Rigettiも2024年に大きく値上がりした後、ボラティリティの高い展開となっています。D-Waveは量子アニーリング分野での受注増加が好感され、Quantum Computing Inc.(QCI)はフォトニック量子チップ工場(ファウンドリ)に関する発表が材料視されました。Arqitは量子暗号技術を強みに、他銘柄ほどの急騰ではないものの徐々に株価を回復させています。

過去の株価推移(1年・5年)

これら量子コンピューター関連企業は上場歴が浅いケースが多く、短期間で激しい値動きを示すことが特徴です。以下、1年から5年ほどの概略を見てみると、いずれも急上昇と急落の歴史を繰り返している状況がうかがえます。

IonQ (IONQ)

2021年にSPAC経由でNYSEに上場。当初10ドル前後だった株価は一時35ドル近辺まで急騰後、2022年には数ドル台まで下落。2023年~2024年にかけ再び上昇し、52週安値約6ドルから2024年末には50ドル台まで達する大幅な値動きを記録しています (Stock Analysis: IonQ)。

Rigetti Computing (RGTI)

2022年3月上場後に低迷し、2023年半ばには1ドルを割る水準に。ところが2024年後半に$0.74から$20超まで急騰し注目を集めました。その後、2025年初めに市場全体の調整で半値近く下落するなど高いボラティリティが続いています (Benzinga: Jim Cramer Warns)。

D-Wave Quantum (QBTS)

2022年8月に上場。上場後10ドル前後から2023年には1ドル未満にまで下落しましたが、2024年に入り量子アニーリングマシン「Advantage」などのニュースで再評価され、直近1年で$0.75から$11超まで急上昇しました (Stock Analysis: D-Wave)。

Quantum Computing Inc. (QUBT)

他社より上場が早いものの、長く数ドル以下の小型株でした。2024年後半からフォトニック量子チップファウンドリに関する大きな発表や契約獲得が材料視され、6か月で2884%という驚異的な上昇(約30倍)を記録。1ドル未満だった水準が年末に18ドル前後まで急伸しましたが、その後の調整リスクも高い状況です (Investing.com: QUBT)。

Arqit Quantum (ARQQ)

2021年のSPAC上場直後に30~40ドル台へ急騰しましたが、その後は下落基調。2024年後半から持ち直し、現在は20ドル前後で推移しています。量子暗号技術を強みに徐々に回復しつつも、他社のような爆発的な値動きは示していません。

投資の観点からの分析(リスク要因と成長性)

リスク要因

量子コンピューター関連銘柄は将来性への期待が大きい一方で、現時点ではどの企業も赤字経営であり、収益化にはまだ時間がかかります。例えばIonQの2023年の最終損失は約1.58億ドル、Rigettiも年間売上1200万ドルに対して損失7500万ドル超、Quantum Computing Inc.は売上が数十万ドル規模にとどまり、EBITDA損失は2,000万ドルに上ります。追加の資金調達(株式希薄化)リスクも高く、技術ロードマップの遅延による期待倒れや、急激な仕手的な値動きも懸念されます。
さらに、NVIDIAのCEOが「実用的な量子計算機は数十年先」と発言した際、IonQやRigettiが大幅急落するなど、市場の期待やニュースに過度に反応しやすい点は要注意です。

成長性・ポジティブ要素

一方で、量子コンピューティングの潜在的市場規模は大きく、各社とも政府機関や大企業との連携を強化中です。IonQは2024年Q3に前年同期比2倍の1240万ドルの収益を報告し、通年ガイダンスを上方修正。NVIDIAや主要クラウド(AWS、Azure)との提携を通じ、エコシステムの拡大にも積極的です。D-Waveも2024年度の受注額が前年比+120%の2,300万ドル超を見込むなど、実需が少しずつ成長を後押ししています。QCIもNASAとの契約や新規受注を獲得し、Arqitは数百万ドル規模の契約で安定収益が期待されています。技術進歩のスピード次第では、中長期的に大きな成長が見込めると考えられます。

量子コンピューティング市場全体の成長性・業界動向

世界の量子コンピュータ市場は2023年に約12億ドルと試算される一方、2030年前後には数十億~数百億ドル規模に拡大するとの予測もあり、マッキンゼーは今後10年で数兆ドル規模の価値創出を見込んでいます (McKinsey)。各国政府が大規模な支援を行い、大手企業(Google、IBM、Microsoftなど)も巨額投資を進めており、技術エコシステムの形成が加速中です。

ハードウェア面では超電導方式(IBM、Rigetti)、イオントラップ方式(IonQ)、アニーリング方式(D-Wave)、フォトニクス方式(PsiQuantum、QCI)など多様なアプローチがしのぎを削っています。NISQ時代から誤り耐性のある本格的な量子計算機への移行には不確実性が残るものの、金融、医薬、暗号など幅広い分野での応用が期待されており、長期的には巨大市場に成長していく可能性が非常に高いと言えます。

各企業の将来予測と投資家向け見解

IonQ

トラップイオン方式のリーダー的存在で、技術面・業績面でも頭一つ抜けていると評価される企業です。2024年通年売上を3,850万~4,250万ドルと予想しており、今後数年も高い成長が見込まれています。株価はすでに強気な将来予測を織り込んで高騰しているとも言われますが、「強い買い」推奨のアナリストも多く、長期的には量子業界の本命として高い期待が寄せられています。ただし技術的マイルストーンの達成や業績面での進捗を注視する必要があり、ボラティリティリスクにも注意が必要です。

Rigetti Computing

超電導量子プロセッサを開発する米国スタートアップで、株価は一時大幅に上昇しましたが割高感も指摘されています。年間売上1,000万ドル程度に対して数十倍の時価総額となっており、アナリストの目標株価は現在水準を下回る見方もあります。次世代チップ「Ankaa」やマルチチップ構想を実現できるか、提携先を拡大して収益を伸ばせるかが鍵であり、進捗次第では再評価の余地がある一方、ハイリスクな投資対象である点は否めません。

D-Wave Quantum

量子アニーリングで先行する企業として、特定分野(組合せ最適化など)での実用化に期待がかかっています。すでに5000量子ビット級マシン「Advantage」を販売開始しており、受注額拡大も好材料です。ただしアナリストによる12か月目標株価はやや控えめで、追加資金調達も進めていることから、財務面と技術開発ロードマップの両面に注目が必要です。ゲート型量子計算が普及する前にアニーリング方式での商用実績をどこまで積み上げられるかが勝負どころとなります。

Quantum Computing Inc. (QUBT)

フォトニック量子技術と量子関連サービスを掲げ、小型株ながら投機的な急騰が注目されました。自社ファウンドリ発表やNASAとの契約ニュースは大きな材料ですが、依然として売上高は数百万ドル未満と小規模で赤字経営が続きます。目標株価が8.25ドルに引き下げられるなど過熱感を警戒する声もあり、リスクは非常に高い一方でフォトニクス量子技術がブレイクスルーを生み出せればハイリターンも期待できる典型的なハイリスク・ハイリターン銘柄です。

Arqit Quantum (ARQQ)

量子暗号(量子鍵配信)に特化した異色の存在であり、ポスト量子時代のセキュリティ需要を取り込むビジネスモデルです。衛星経由のサービスから地上インフラへ戦略転換するなど柔軟な対応を模索中で、今後大手企業とのライセンス契約拡大に期待がかかります。アナリストの一部では強気予測もありますが、市場全体でのコンセンサスには至っていません。キャッシュ焼却リスクや技術的な標準化競争もあり、投資家はその動向を慎重に見守る必要があります。

まとめと投資家への提言

量子コンピューター関連株は、その破壊的イノベーションの可能性と未成熟な収益構造という両面を持ち合わせており、投機性が高い反面、中長期では巨大な成長ポテンシャルを秘めています。短期的なニュースや市場の思惑で乱高下することが多いため、過度な集中投資は避け、ポートフォリオの一部としてリスク管理を徹底することが重要です。各社の技術的マイルストーン達成や提携ニュース、財務状況などを継続的にウォッチしながら、量子革命の果実を取りに行くかどうかを判断していきましょう。

【参考資料】
Quantum Stocks: Weighing The Bullish and Bearish Cases
Jim Cramer Warns On ‘Quantum Stories’
IonQ, Inc. (IONQ) – Stock Analysis
Quantum Computing Inc. receives key photonic chip orders
Quantum Computing Market Size, Share & Growth Report, 2032
The Rise of Quantum Computing | McKinsey & Company


コメント

コメントする