Reactアプリケーションを開発する際、ユーザー体験を向上させるためには、エラーが発生した場合でも適切なメッセージを表示し、ユーザーを混乱させないことが重要です。その中でも、複数の言語を話すユーザーを対象としたアプリケーションでは、エラーメッセージを多言語対応させることが必要不可欠です。Error Boundaryは、Reactにおいてエラーをキャッチして処理するための仕組みであり、この機能を活用することで、エラーメッセージを多言語に対応させることが可能です。本記事では、Error Boundaryの基本から、翻訳機能を統合する具体的な方法、そして応用例までを詳しく解説します。
Error Boundaryとは
Error Boundaryは、Reactにおけるエラーハンドリングのための機能です。コンポーネントツリー内でエラーが発生した際に、そのエラーをキャッチし、ツリー全体をクラッシュさせることなく適切なフォールバックUIを表示することができます。
Error Boundaryの役割
Error Boundaryの主な役割は以下の通りです:
- UIの崩壊を防ぐ:アプリケーション内で予期せぬエラーが発生しても、全体が動作不能になるのを防ぎます。
- ユーザー体験の向上:エラーが発生した場合でも、わかりやすいエラーメッセージや代替のUIを表示することで、ユーザーにストレスを与えません。
- デバッグの容易化:開発者にエラー情報を提供し、迅速な問題解決を可能にします。
Error Boundaryの制限事項
- Error Boundaryは、イベントハンドラー内のエラーや非同期処理中のエラーをキャッチできません。これらにはtry-catchやPromiseのエラーハンドリングを使用する必要があります。
- クライアントサイドでのみ動作します。サーバーサイドレンダリングではError Boundaryを直接活用できません。
基本的な使い方
Error Boundaryは、クラスコンポーネントでcomponentDidCatch
ライフサイクルメソッドとstatic getDerivedStateFromError
メソッドを実装することで作成できます。
以下は、Error Boundaryの基本的なコード例です:
import React, { Component } from 'react';
class ErrorBoundary extends Component {
constructor(props) {
super(props);
this.state = { hasError: false };
}
static getDerivedStateFromError(error) {
// エラー発生時に状態を更新
return { hasError: true };
}
componentDidCatch(error, info) {
// エラーログを外部サービスに送信
console.error("Error caught by Error Boundary:", error, info);
}
render() {
if (this.state.hasError) {
// フォールバックUIを表示
return <h1>Something went wrong.</h1>;
}
return this.props.children;
}
}
export default ErrorBoundary;
この仕組みを多言語対応に拡張することで、ユーザーに適切なエラーメッセージを提供する基盤が整います。
多言語対応の重要性
Reactアプリケーションにおいて、多言語対応(i18n)は、ユーザー体験の向上とアプリケーションの市場競争力を高める重要な要素です。特にグローバルなユーザー層をターゲットにする場合、エラーメッセージを含むすべてのUI要素を複数の言語で提供することは欠かせません。
多言語対応のメリット
- ユーザーエクスペリエンスの向上:ユーザーが慣れ親しんだ言語でエラーメッセージを受け取ることで、アプリケーションの使いやすさが向上します。
- 市場拡大:異なる言語圏のユーザーを取り込むことで、アプリケーションの利用者層を広げることが可能です。
- ブランドイメージの向上:多言語対応は、ユーザーの多様性を尊重し、グローバル志向であるブランドの印象を与えます。
エラーメッセージにおける多言語対応の課題
- コンテキストの正確さ:エラーメッセージが、発生した問題を適切に伝えるためには、翻訳が文脈に沿ったものである必要があります。
- 動的データの管理:エラーメッセージに動的なデータ(例: ユーザー名、日時など)が含まれる場合、これを多言語で正確に表示する仕組みが求められます。
- パフォーマンスの最適化:複数の言語ファイルをロードする場合、アプリケーションのパフォーマンスに影響を与えない工夫が必要です。
多言語対応の実現に向けた考慮点
- 翻訳ライブラリの選定:i18nextやreact-intlなどの信頼性の高い翻訳ライブラリを使用することで、実装コストを削減できます。
- 翻訳ファイルの管理:JSON形式やYAML形式で翻訳文字列を一元管理し、簡単に拡張できる構造を設計することが重要です。
- ユーザーの言語設定の検出:ブラウザの言語設定やユーザーの選択に基づいて、自動的に適切な言語を適用する仕組みを構築する必要があります。
多言語対応を通じて、アプリケーションのエラーメッセージがグローバルユーザーにわかりやすく伝わる環境を整備することが重要です。次のステップでは、この実現に向けた具体的な仕組みを構築していきます。
言語選択の仕組み
多言語対応アプリケーションを構築する上で、ユーザーの言語選択を取得し、それに基づいてエラーメッセージやUIを表示することが重要です。Reactでは、言語選択の仕組みを実装する際にいくつかの方法があります。
ブラウザの言語設定を利用する
デフォルトでは、navigator.language
またはnavigator.languages
を使用してユーザーのブラウザ設定を検出できます。この値を基に初期言語を設定します。
const userLanguage = navigator.language || 'en';
console.log(userLanguage); // 例: 'en-US'
これを翻訳ライブラリ(例: i18next)に渡して初期化できます。
言語選択UIを提供する
ユーザーに言語選択の自由を提供するために、ドロップダウンメニューやボタンを使って明示的に言語を切り替えるUIを実装します。
以下は簡単な実装例です:
import React from 'react';
import { useTranslation } from 'react-i18next';
const LanguageSelector = () => {
const { i18n } = useTranslation();
const changeLanguage = (lang) => {
i18n.changeLanguage(lang);
};
return (
<div>
<button onClick={() => changeLanguage('en')}>English</button>
<button onClick={() => changeLanguage('ja')}>日本語</button>
</div>
);
};
export default LanguageSelector;
ユーザーの選択を保持する
選択した言語を永続化するには、localStorage
やクッキーを使用します。アプリケーションのロード時にこの情報を読み取り、ユーザーの言語設定を復元します。
const savedLanguage = localStorage.getItem('language') || 'en';
i18n.changeLanguage(savedLanguage);
// 言語変更時に保存
const changeLanguage = (lang) => {
i18n.changeLanguage(lang);
localStorage.setItem('language', lang);
};
動的な言語切り替え
翻訳ライブラリを使用することで、リアルタイムで言語を切り替えることができます。これにより、ページ全体をリロードすることなく言語変更が反映されます。
例:i18nextの設定
import i18n from 'i18next';
import { initReactI18next } from 'react-i18next';
import enTranslations from './locales/en.json';
import jaTranslations from './locales/ja.json';
i18n
.use(initReactI18next)
.init({
resources: {
en: { translation: enTranslations },
ja: { translation: jaTranslations },
},
lng: 'en', // デフォルト言語
fallbackLng: 'en',
interpolation: { escapeValue: false },
});
export default i18n;
ユーザーの言語選択を適切に反映することで、エラーメッセージを含むUI全体を多言語対応させる土台を作ることができます。この仕組みを利用して、さらにエラーメッセージ表示をカスタマイズしていきます。
エラーメッセージの翻訳ファイル管理
多言語対応を実現するためには、エラーメッセージを各言語で効率的に管理する仕組みが必要です。Reactでは、JSONやYAML形式の翻訳ファイルを使用して、エラーメッセージを一元的に管理する方法が一般的です。
翻訳ファイルの構造
翻訳ファイルは、キーと翻訳された文字列のペアで構成されます。エラーメッセージに特化したセクションを用意し、管理を簡単にすることが推奨されます。以下は、JSON形式の例です:
en.json
{
"errors": {
"networkError": "A network error has occurred. Please try again later.",
"serverError": "A server error has occurred. Contact support if the issue persists."
}
}
ja.json
{
"errors": {
"networkError": "ネットワークエラーが発生しました。後でもう一度お試しください。",
"serverError": "サーバーエラーが発生しました。問題が解決しない場合はサポートに連絡してください。"
}
}
ファイルの配置
翻訳ファイルはプロジェクトの明確な場所に配置することで管理を簡単にします。例えば、以下のようなディレクトリ構造が考えられます:
src/
├── locales/
│ ├── en.json
│ └── ja.json
└── components/
└── ErrorBoundary.js
翻訳ファイルのロード
翻訳ライブラリ(例: i18next)を使用して翻訳ファイルをロードします。以下はi18nextを使った基本的な設定例です:
import i18n from 'i18next';
import { initReactI18next } from 'react-i18next';
import en from './locales/en.json';
import ja from './locales/ja.json';
i18n
.use(initReactI18next)
.init({
resources: {
en: { translation: en },
ja: { translation: ja }
},
lng: 'en',
fallbackLng: 'en',
interpolation: {
escapeValue: false
}
});
export default i18n;
エラーメッセージの取得と使用
翻訳ファイルをロードした後、エラーメッセージを簡単に取得できます。以下は、Reactコンポーネント内での使用例です:
import React from 'react';
import { useTranslation } from 'react-i18next';
const ErrorComponent = ({ errorCode }) => {
const { t } = useTranslation();
return (
<div>
<p>{t(`errors.${errorCode}`)}</p>
</div>
);
};
export default ErrorComponent;
動的データの対応
エラーメッセージ内に動的なデータ(例: ファイル名やエラーコード)を埋め込むには、i18nextのinterpolation
機能を使用します。
翻訳ファイルの例
{
"errors": {
"fileError": "The file '{{fileName}}' could not be uploaded."
}
}
使用例
<p>{t('errors.fileError', { fileName: 'document.pdf' })}</p>
翻訳ファイル管理のポイント
- 一貫性の維持:キー名を一貫性のある命名規則で管理します(例:
errors.networkError
)。 - 冗長性の削減:同じ文言が複数のファイルで重複しないように共通セクションを設けます。
- 拡張性の確保:新しい言語やメッセージを簡単に追加できる構造を設計します。
このように、エラーメッセージを翻訳ファイルで効率的に管理することで、Reactアプリケーションの多言語対応が容易になります。次は、この翻訳ファイルをError Boundaryに統合する方法を説明します。
Error Boundaryでの翻訳機能統合
Error Boundaryを用いて多言語対応のエラーメッセージを表示するには、翻訳ライブラリ(例: i18next)をError Boundaryに組み込む必要があります。これにより、エラーが発生した際にユーザーの選択した言語で適切なエラーメッセージを表示できます。
Error Boundaryに翻訳を組み込む方法
以下は、Error Boundaryコンポーネントに翻訳機能を統合する具体的な手順です。
ステップ1: 翻訳ライブラリのセットアップ
翻訳ライブラリ(ここではi18nextを使用)を事前にセットアップしておきます。翻訳ファイルや初期設定については、前項(a5)で説明した内容を参照してください。
ステップ2: Error Boundaryの作成
Error Boundaryをクラスコンポーネントで作成し、翻訳ライブラリを利用できるようにします。以下は基本的なコード例です。
import React, { Component } from 'react';
import { withTranslation } from 'react-i18next';
class ErrorBoundary extends Component {
constructor(props) {
super(props);
this.state = { hasError: false };
}
static getDerivedStateFromError() {
// エラー発生時の状態を更新
return { hasError: true };
}
componentDidCatch(error, errorInfo) {
// ログを記録したりエラー追跡ツールに送信する
console.error("Error caught by Error Boundary:", error, errorInfo);
}
render() {
const { t } = this.props;
if (this.state.hasError) {
// 翻訳されたエラーメッセージを表示
return (
<div>
<h1>{t('errors.generalError')}</h1>
<p>{t('errors.tryAgainLater')}</p>
</div>
);
}
return this.props.children;
}
}
export default withTranslation()(ErrorBoundary);
ステップ3: 翻訳キーの準備
翻訳ファイルにエラーメッセージを追加します。
en.json
{
"errors": {
"generalError": "Something went wrong.",
"tryAgainLater": "Please try again later."
}
}
ja.json
{
"errors": {
"generalError": "問題が発生しました。",
"tryAgainLater": "後でもう一度お試しください。"
}
}
ステップ4: Error Boundaryの適用
Error Boundaryをアプリケーションの適切な部分に配置します。通常は、重要なコンポーネントやアプリケーション全体をラップします。
import React from 'react';
import ErrorBoundary from './ErrorBoundary';
import AppContent from './AppContent';
const App = () => (
<ErrorBoundary>
<AppContent />
</ErrorBoundary>
);
export default App;
リアルタイム翻訳切り替えへの対応
ユーザーがアプリケーション内で言語を切り替えた際、Error Boundaryでの翻訳が即座に反映される必要があります。上記の例では、withTranslation
HOCを使用しているため、リアクティブに翻訳が適用されます。
動的なエラーメッセージのサポート
エラーメッセージに動的データを含めたい場合、翻訳キーにパラメータを渡すことで実現できます。
翻訳ファイル例
{
"errors": {
"specificError": "An error occurred: {{errorMessage}}"
}
}
Error Boundary内での使用例
render() {
const { t } = this.props;
if (this.state.hasError) {
const dynamicErrorMessage = "Network timeout";
return (
<div>
<h1>{t('errors.generalError')}</h1>
<p>{t('errors.specificError', { errorMessage: dynamicErrorMessage })}</p>
</div>
);
}
return this.props.children;
}
この手法を用いることで、Error Boundaryを多言語対応させ、ユーザー体験を向上させる準備が整います。次は、この統合の実装例をより詳しく解説します。
実装例:多言語対応Error Boundary
ここでは、多言語対応を実現したError Boundaryの具体的な実装例を示します。これにより、エラー発生時に選択された言語でユーザーにエラーメッセージを表示する仕組みを完全に理解できます。
コード全体の構成
以下は、翻訳機能を組み込んだError Boundaryの完全な実装例です。
import React, { Component } from 'react';
import { withTranslation } from 'react-i18next';
class ErrorBoundary extends Component {
constructor(props) {
super(props);
this.state = {
hasError: false,
errorMessage: ''
};
}
static getDerivedStateFromError(error) {
// エラー発生時の状態を更新
return { hasError: true, errorMessage: error.message };
}
componentDidCatch(error, errorInfo) {
// エラーログを記録(例: 外部サービスへの送信)
console.error("Caught by ErrorBoundary:", error, errorInfo);
}
render() {
const { hasError, errorMessage } = this.state;
const { t } = this.props;
if (hasError) {
return (
<div style={{ padding: '20px', textAlign: 'center' }}>
<h1>{t('errors.generalError')}</h1>
<p>{t('errors.detailedError', { errorMessage })}</p>
<button onClick={() => window.location.reload()}>
{t('errors.reloadPage')}
</button>
</div>
);
}
return this.props.children;
}
}
export default withTranslation()(ErrorBoundary);
翻訳ファイル
エラーメッセージを翻訳するためのファイルを準備します。この例では、errors.detailedError
キーに動的なエラーメッセージを含む構造を使用しています。
en.json
{
"errors": {
"generalError": "An unexpected error occurred.",
"detailedError": "Error details: {{errorMessage}}",
"reloadPage": "Reload Page"
}
}
ja.json
{
"errors": {
"generalError": "予期しないエラーが発生しました。",
"detailedError": "エラーの詳細: {{errorMessage}}",
"reloadPage": "ページをリロード"
}
}
エラーメッセージの表示例
- エラーが発生した場合、
generalError
メッセージが表示されます。 - エラーの詳細が、動的に
detailedError
に挿入されます。 - 「ページをリロード」ボタンでエラー状態から回復できます。
表示例(日本語)
予期しないエラーが発生しました。
エラーの詳細: ネットワークエラー
[ ページをリロード ]
表示例(英語)
An unexpected error occurred.
Error details: Network Error
[ Reload Page ]
アプリケーションでの統合
Error Boundaryをアプリケーション全体に適用するには、ルートコンポーネントや重要な部分をラップします。
import React from 'react';
import ReactDOM from 'react-dom';
import App from './App';
import ErrorBoundary from './ErrorBoundary';
ReactDOM.render(
<ErrorBoundary>
<App />
</ErrorBoundary>,
document.getElementById('root')
);
リアルタイム言語切り替えの動作
withTranslation
HOCを使用しているため、アプリケーション内で言語を切り替えると、Error Boundary内のメッセージも即座に反映されます。これにより、ユーザー体験がさらに向上します。
カスタマイズの可能性
- エラーごとに異なるUIを表示する
- エラー情報を外部サービスに送信して追跡する
- エラーの種類に応じたフォールバックアクションを提供する
この実装例を活用することで、Reactアプリケーションに多言語対応のエラーハンドリング機能を効果的に追加できます。次に、テストとデバッグの手法を解説します。
テストとデバッグの方法
多言語対応Error Boundaryを正しく動作させるためには、徹底的なテストとデバッグが必要です。ここでは、エラーメッセージの表示や翻訳機能、エラー処理全体を検証する方法を解説します。
基本的なテストのポイント
Error Boundaryのテストでは、以下のポイントを重点的に確認します:
- エラー発生時のUI:エラーが発生したときに適切なフォールバックUIが表示されるか。
- 翻訳の正確性:選択された言語に応じたエラーメッセージが正確に表示されるか。
- 動的メッセージの表示:エラーの詳細などの動的データが正しくレンダリングされるか。
- 言語切り替えの動作:エラー発生後でも言語切り替えが正常に反映されるか。
テスト手法
1. 手動テスト
手動テストは、UIの表示状態や翻訳の整合性を目視で確認するのに適しています。
手動テストシナリオ
- 通常の操作でエラーが発生しないことを確認。
- エラーを意図的に発生させ、Error BoundaryのフォールバックUIが表示されることを確認。
- 言語を切り替えた際にエラーメッセージが正しい言語で更新されることを確認。
2. ユニットテスト
Error Boundaryの主要機能を自動化するためにユニットテストを実施します。
以下は、JestとReact Testing Libraryを用いたテスト例です:
テストケース:エラー発生時のUI確認
import React from 'react';
import { render, screen } from '@testing-library/react';
import '@testing-library/jest-dom';
import ErrorBoundary from './ErrorBoundary';
const ProblematicComponent = () => {
throw new Error('Test error');
};
test('renders fallback UI on error', () => {
render(
<ErrorBoundary>
<ProblematicComponent />
</ErrorBoundary>
);
expect(screen.getByText('An unexpected error occurred.')).toBeInTheDocument();
});
テストケース:翻訳機能の確認
import { render } from '@testing-library/react';
import { I18nextProvider } from 'react-i18next';
import i18n from './i18n'; // 翻訳設定ファイル
import ErrorBoundary from './ErrorBoundary';
test('renders translated error message', () => {
i18n.changeLanguage('ja');
render(
<I18nextProvider i18n={i18n}>
<ErrorBoundary>
{null} {/* 空の子要素 */}
</ErrorBoundary>
</I18nextProvider>
);
expect(screen.getByText('予期しないエラーが発生しました。')).toBeInTheDocument();
});
3. 統合テスト
統合テストでは、Error Boundaryとアプリケーション全体の連携を検証します。これにより、異なるコンポーネント間でエラーが正しくハンドリングされているかを確認できます。
4. エンドツーエンド(E2E)テスト
E2Eテストでは、CypressやPlaywrightなどを使用して、ユーザー視点でエラーハンドリングを検証します。これには、エラー発生時のシナリオや言語切り替え機能の動作確認が含まれます。
デバッグの方法
1. コンソールログの活用
Error BoundaryのcomponentDidCatch
でエラー情報をコンソールに記録します。
componentDidCatch(error, errorInfo) {
console.error("Error caught by ErrorBoundary:", error, errorInfo);
}
2. エラー追跡ツールの導入
SentryやLogRocketなどのエラー追跡ツールを使用して、エラーをリアルタイムで記録し、詳細な情報を収集します。
3. 翻訳データの検証
翻訳ファイルが正しくロードされているかをデバッグします。i18nextのデバッグモードを有効にすることで、翻訳キーの解決状況を確認できます。
i18n.init({
debug: true, // デバッグモードを有効化
...
});
最終確認
すべてのテストとデバッグが完了したら、以下を確認します:
- 翻訳されたエラーメッセージが正しく表示されるか。
- エラーメッセージの切り替えがリアルタイムで反映されるか。
- 異常な状態が発生した場合でもアプリケーション全体が安定して動作するか。
これらのステップを通じて、Error Boundaryの多言語対応が完全に機能することを保証できます。次に、応用例としてエラーログと通知機能を統合する方法を解説します。
応用例:エラーログと通知の統合
多言語対応のError Boundaryをさらに強化するために、エラーログの記録や通知機能を統合する方法を解説します。これにより、エラー発生時にリアルタイムで問題を把握し、ユーザーと開発者の双方に価値を提供できます。
エラーログの統合
Error BoundaryのcomponentDidCatch
メソッドを活用して、エラーログを外部サービスに送信します。これにより、エラーの発生状況を追跡し、迅速な対応が可能になります。
例:Sentryを使用したエラーログの記録
- Sentryのインストールと設定
npm install @sentry/react @sentry/browser
import * as Sentry from '@sentry/react';
Sentry.init({
dsn: 'YOUR_SENTRY_DSN', // SentryのDSNを指定
integrations: [new Sentry.BrowserTracing()],
tracesSampleRate: 1.0,
});
- Error Boundaryへの統合
componentDidCatch(error, errorInfo) {
Sentry.captureException(error);
console.error("Logged to Sentry:", error, errorInfo);
}
他のエラーログサービスの例
- LogRocket:ユーザーの操作履歴を追跡してエラー解析を強化。
- Rollbar:リアルタイムのエラーログと通知機能を提供。
通知機能の統合
エラーが発生した際に、開発者や運用チームへリアルタイムで通知を送信します。これにはメール、Slack、またはWebhookを使用できます。
例:Slack通知
- Slack Webhookのセットアップ
- Slackの管理画面からWebhook URLを取得します。
- Error Boundaryで通知を送信
componentDidCatch(error, errorInfo) {
const webhookUrl = 'YOUR_SLACK_WEBHOOK_URL';
const payload = {
text: `Error occurred in the app: ${error.message}`,
attachments: [
{
title: 'Error Details',
text: JSON.stringify(errorInfo),
color: '#FF0000',
},
],
};
fetch(webhookUrl, {
method: 'POST',
headers: { 'Content-Type': 'application/json' },
body: JSON.stringify(payload),
});
console.error("Error logged and notification sent:", error, errorInfo);
}
ユーザー向け通知の実装
エラー発生時にユーザーに通知を送ることで、問題が発生していることを認識させます。これには、Reactの通知ライブラリ(例: react-toastify)を使用します。
例:react-toastifyの統合
- ライブラリのインストール
npm install react-toastify
- Error Boundaryで通知を表示
import { toast } from 'react-toastify';
import 'react-toastify/dist/ReactToastify.css';
toast.configure();
componentDidCatch(error) {
toast.error('An unexpected error occurred. Please try again later.', {
position: toast.POSITION.TOP_RIGHT,
});
}
応用的な設計の例
エラーハンドリングを包括的に管理するために、Error Boundary内で以下を組み合わせた設計を行います:
- エラーログ:Sentryなどで記録。
- リアルタイム通知:SlackやWebhookで即座に報告。
- ユーザー通知:react-toastifyでUI上にメッセージを表示。
総合的なError Boundaryのコード例
import React, { Component } from 'react';
import * as Sentry from '@sentry/react';
import { toast } from 'react-toastify';
class ErrorBoundary extends Component {
constructor(props) {
super(props);
this.state = { hasError: false };
}
static getDerivedStateFromError(error) {
return { hasError: true };
}
componentDidCatch(error, errorInfo) {
// Sentryにログを送信
Sentry.captureException(error);
// Slack通知を送信
const webhookUrl = 'YOUR_SLACK_WEBHOOK_URL';
fetch(webhookUrl, {
method: 'POST',
headers: { 'Content-Type': 'application/json' },
body: JSON.stringify({ text: `Error: ${error.message}` }),
});
// ユーザー通知
toast.error('An unexpected error occurred. Please try again later.', {
position: toast.POSITION.TOP_RIGHT,
});
console.error("Error caught by ErrorBoundary:", error, errorInfo);
}
render() {
if (this.state.hasError) {
return <h1>Something went wrong.</h1>;
}
return this.props.children;
}
}
export default ErrorBoundary;
利点
- 開発者はエラー状況を把握しやすくなる。
- ユーザーはエラー発生時に次のアクションを理解しやすくなる。
- アプリケーションの信頼性が向上する。
これらの手法を統合することで、多言語対応のError Boundaryがさらに実用的で効果的なツールとなります。次は、この記事のまとめを解説します。
まとめ
本記事では、ReactのError Boundaryを利用して多言語対応のエラーメッセージを表示する方法について解説しました。Error Boundaryの基本的な概念から始まり、多言語対応の実現方法、翻訳機能の統合、エラー発生時の通知やログ記録の応用例まで、幅広く紹介しました。
多言語対応を実装することで、エラー時のユーザー体験を大幅に向上させるだけでなく、グローバルなユーザーに対応したアプリケーションを構築できます。また、エラーログや通知を統合することで、運用やデバッグ効率も向上します。
適切なエラーハンドリングと多言語対応の組み合わせは、ユーザー満足度とアプリケーションの信頼性を向上させる重要な要素です。このガイドを参考に、より優れたReactアプリケーションを構築してください。
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