React RouterのSwitchとRoutesの違いと移行ガイドを徹底解説

React Routerは、Reactアプリケーションにおいてルーティングを管理するための主要なライブラリです。特に、バージョン5からバージョン6へのアップデートでは、SwitchからRoutesという新しいコンポーネントへの移行が行われ、大幅な仕様変更が加えられました。この変更により、より直感的で柔軟なルーティングが可能となった一方で、従来のSwitchを使用していたコードベースを持つ開発者にとっては移行が課題となっています。本記事では、SwitchとRoutesの違い、移行の手順、そして新機能の活用方法について詳しく解説します。これにより、React Router v6へのスムーズな移行と、新たなルーティングの可能性を最大限に引き出すための知識を提供します。

目次

React Routerの概要

React Routerは、Reactアプリケーションにおいてクライアントサイドのルーティングを実現するためのライブラリです。これにより、シングルページアプリケーション(SPA)でありながら、ユーザーに複数のページが存在するような体験を提供することができます。

React Routerの基本機能

React Routerは以下のような機能を提供します:

  • URLに基づく画面のレンダリング:URLのパスに応じて特定のコンポーネントを表示します。
  • パラメータの受け渡し:ルートパスにパラメータを含めて、動的なページを作成できます。
  • ネストされたルート:階層構造のルーティングを構築し、複雑なナビゲーションにも対応します。
  • リダイレクト機能:特定の条件下で別のパスにユーザーをリダイレクトします。

ルーティングの重要性

React Routerを使用すると、以下のような利点があります:

  • ユーザー体験の向上:ページ遷移がスムーズで、SPA特有の高速なナビゲーションを実現。
  • コードの分割:各ルートごとに独立したコンポーネントを作成することで、コードの可読性と再利用性を向上。
  • 動的コンテンツ対応:ルートごとに動的なデータを表示できるため、複雑なアプリケーションに対応可能。

React RouterはReactプロジェクトのナビゲーションを簡素化し、効率的で直感的なコード構成を可能にする重要なツールとして広く利用されています。

SwitchとRoutesの主な違い

React Router v5で使用されていたSwitchと、v6で導入されたRoutesには、いくつかの重要な違いがあります。これらの違いを理解することで、Routesを活用した効率的なルーティングを実現できます。

SwitchとRoutesの基本的な動作の違い

Switch (v5)

  • 機能:指定されたルートの中から最初に一致するものを描画します。
  • 動作:ルートが複数一致しても、上から下に探索し最初に一致したものだけを描画します。
  • 書き方
import { Switch, Route } from 'react-router-dom';

<Switch>
  <Route path="/home" component={Home} />
  <Route path="/about" component={About} />
  <Route path="/" component={Default} />
</Switch>

Routes (v6)

  • 機能:Switchを置き換える形で導入され、さらに明確で厳密なルーティングが可能。
  • 動作:パスが完全一致するルートのみを描画する仕様になっています。
  • 書き方
import { Routes, Route } from 'react-router-dom';

<Routes>
  <Route path="/home" element={<Home />} />
  <Route path="/about" element={<About />} />
  <Route path="/" element={<Default />} />
</Routes>

具体的な変更点

  1. エレメント指定の変更
    Switchではcomponent属性で描画するコンポーネントを指定していましたが、Routesではelement属性を使い、JSXエレメントとして指定します。
  2. マッチングの精度
    Routesはデフォルトで「完全一致」のみを描画します。一方、Switchは「部分一致」でも最初に見つかったルートを描画していました。
  3. ネストされたルートの簡略化
    Routesではネストされたルーティングがより簡潔に書けます。
<Routes>
  <Route path="/" element={<Layout />}>
    <Route path="home" element={<Home />} />
    <Route path="about" element={<About />} />
  </Route>
</Routes>

変更の意図

  • コードの明確化:ルートの設定がより明確で、デバッグがしやすくなります。
  • パフォーマンス向上:完全一致の動作により、不要なマッチング処理が削減されます。
  • 可読性の向上:JSXに一貫性を持たせ、直感的なルーティング構造を構築可能です。

SwitchからRoutesへの理解と移行は、React Router v6の採用において必須のステップです。次のセクションでは、Routes導入の具体的なメリットについて掘り下げます。

Routes導入のメリット

React Router v6のRoutesは、v5のSwitchに比べていくつかの大きなメリットを持っています。これらの利点を活用することで、アプリケーションのルーティング構造をより効率的かつ直感的に構築できます。

完全一致による意図したルーティングの実現

Routesでは、デフォルトでURLパスの完全一致のみを描画対象とします。これにより、複数のルートが部分一致する場合でも、期待するルートだけが選択されるようになります。これにより、Switchでの曖昧なマッチングに起因するバグを防ぐことができます。

Switchの場合

<Switch>
  <Route path="/" component={Home} />
  <Route path="/about" component={About} />
</Switch>

上記では、/aboutにアクセスしても/が部分一致して描画される可能性があります。

Routesの場合

<Routes>
  <Route path="/" element={<Home />} />
  <Route path="/about" element={<About />} />
</Routes>

この仕様により、/aboutには正確にAboutコンポーネントが表示されます。

ネストされたルートの簡略化

Routesは、ネストされたルーティングを簡潔に記述できる構文を提供します。これにより、複雑なルーティング構造を明確に表現できます。

例:ネストされたルート

<Routes>
  <Route path="/" element={<Layout />}>
    <Route path="dashboard" element={<Dashboard />} />
    <Route path="settings" element={<Settings />} />
  </Route>
</Routes>

これにより、Layoutコンポーネントは共通レイアウトとして利用され、ネストされたページがその内部で描画されます。

TypeScriptとの相性向上

Routesでは、elementにJSXエレメントを明示的に渡すため、TypeScriptによる型チェックが強化されます。これにより、エラーが開発段階で検出され、バグの発生が減少します。

パフォーマンスの最適化

Routesは完全一致を前提とした動作により、不要なマッチング処理を削減します。特にルート数が多いアプリケーションでは、これによりパフォーマンスの向上が期待できます。

直感的なルーティング構造

Routesの新しい構文は、コンポーネントベースの設計と一貫性があり、React開発者にとって直感的に理解しやすいものとなっています。これにより、コードの可読性が向上し、チームでの共同開発も効率化します。

Routesは、React Router v6を採用する最大の理由の一つであり、より堅牢で効率的なルーティング構造を構築するための鍵となる機能です。次に、SwitchからRoutesへの移行手順を具体的に解説します。

SwitchからRoutesへの移行手順

React Router v5のSwitchからv6のRoutesへ移行する際には、いくつかの重要な変更点を理解して適切にコードを修正する必要があります。本セクションでは、移行手順をステップバイステップで解説します。

1. React Routerのバージョンアップ

まず、React Routerをv6にアップグレードします。以下のコマンドを使用して、最新バージョンをインストールします:

npm install react-router-dom@latest

これにより、v6の新しい機能を利用できるようになります。

2. SwitchからRoutesへ変更

SwitchをRoutesに置き換えます。v5ではSwitchを使用してルートを切り替えていましたが、v6ではRoutesに統一されています。

変更前(v5)

import { Switch, Route } from 'react-router-dom';

<Switch>
  <Route path="/home" component={Home} />
  <Route path="/about" component={About} />
  <Route path="/" component={Default} />
</Switch>

変更後(v6)

import { Routes, Route } from 'react-router-dom';

<Routes>
  <Route path="/home" element={<Home />} />
  <Route path="/about" element={<About />} />
  <Route path="/" element={<Default />} />
</Routes>

3. `component`から`element`への変更

v5ではcomponentプロパティを使ってコンポーネントを指定していましたが、v6ではelementプロパティを使い、JSXエレメントを直接渡す必要があります。

変更前(v5)

<Route path="/about" component={About} />

変更後(v6)

<Route path="/about" element={<About />} />

4. ネストされたルートの再構築

v6ではネストされたルートがより簡単に記述できるようになりました。親ルートに対して子ルートを直接ネストさせます。

変更前(v5)

<Switch>
  <Route path="/dashboard" component={Dashboard} />
  <Route path="/dashboard/settings" component={Settings} />
</Switch>

変更後(v6)

<Routes>
  <Route path="/dashboard" element={<Dashboard />}>
    <Route path="settings" element={<Settings />} />
  </Route>
</Routes>

5. リダイレクトの実装方法の変更

v5ではRedirectコンポーネントを使用していましたが、v6ではnavigateを利用します。

変更前(v5)

import { Redirect } from 'react-router-dom';

<Switch>
  <Redirect from="/old-path" to="/new-path" />
</Switch>

変更後(v6)

import { Navigate } from 'react-router-dom';

<Routes>
  <Route path="/old-path" element={<Navigate to="/new-path" />} />
</Routes>

6. useHistoryからuseNavigateへの変更

v5で利用されていたuseHistoryはv6ではuseNavigateに置き換えられました。これにより、プログラムによるナビゲーションがさらに簡単になります。

変更前(v5)

import { useHistory } from 'react-router-dom';

const Component = () => {
  const history = useHistory();
  const handleClick = () => {
    history.push('/new-path');
  };

  return <button onClick={handleClick}>Navigate</button>;
};

変更後(v6)

import { useNavigate } from 'react-router-dom';

const Component = () => {
  const navigate = useNavigate();
  const handleClick = () => {
    navigate('/new-path');
  };

  return <button onClick={handleClick}>Navigate</button>;
};

7. 移行後のテストとデバッグ

移行作業が完了したら、以下を確認します:

  • 全てのルートが意図した通りに動作しているか。
  • リダイレクトやネストされたルートの挙動に問題がないか。
  • useNavigateやRoutesなど、新しいAPIが適切に利用されているか。

以上の手順を実行することで、SwitchからRoutesへの移行をスムーズに進めることができます。次のセクションでは、Routesを使ったネストされたルーティングについてさらに詳しく解説します。

Routesでのネストされたルーティング

React Router v6では、ネストされたルーティングがより直感的かつ簡潔に記述できるようになりました。これにより、階層的なルート構造を持つアプリケーションを効率的に構築できます。

ネストされたルートとは

ネストされたルートとは、親ルートの下に子ルートを配置し、同じレイアウト内で異なるコンテンツを表示する方法です。例えば、ダッシュボード内に複数のセクションを持つ場合などに有用です。

ネストされたルートの基本構文

v6では、子ルートを親ルートの中にネストさせることで、構造が明確になります。

例:基本的なネスト構造

以下は、ダッシュボードの中に「設定」と「プロフィール」ページを持つ例です。

import { Routes, Route } from 'react-router-dom';

<Routes>
  <Route path="/dashboard" element={<DashboardLayout />}>
    <Route path="settings" element={<Settings />} />
    <Route path="profile" element={<Profile />} />
  </Route>
</Routes>
  • 親ルート/dashboardDashboardLayoutをレンダリングします。
  • 子ルート/dashboard/settings/dashboard/profileがそれぞれSettingsProfileをレンダリングします。

親コンポーネントでの子ルートの表示

親コンポーネントで子ルートをレンダリングするためには、<Outlet />コンポーネントを使用します。

例:DashboardLayoutコンポーネント

import { Outlet } from 'react-router-dom';

const DashboardLayout = () => {
  return (
    <div>
      <h1>Dashboard</h1>
      <nav>
        <a href="/dashboard/settings">Settings</a>
        <a href="/dashboard/profile">Profile</a>
      </nav>
      <Outlet />
    </div>
  );
};
  • <Outlet />:ネストされた子ルートがこの場所にレンダリングされます。

動的なネストルートの実装

動的なルートをネストさせることも可能です。たとえば、ユーザーIDに基づく詳細ページを作成する場合です。

例:動的ルートのネスト

<Routes>
  <Route path="/users" element={<UsersLayout />}>
    <Route path=":userId" element={<UserDetails />} />
  </Route>
</Routes>

UsersLayoutコンポーネント

const UsersLayout = () => {
  return (
    <div>
      <h2>Users</h2>
      <Outlet />
    </div>
  );
};

UserDetailsコンポーネント

import { useParams } from 'react-router-dom';

const UserDetails = () => {
  const { userId } = useParams();
  return <div>User ID: {userId}</div>;
};

この例では、/users/123にアクセスすると、UserDetailsコンポーネントが表示され、123userIdとして取得されます。

ネストされたルートの利点

  1. コードの簡潔化
    子ルートを親ルートに明確に関連付けることで、コードがより整理されます。
  2. コンポーネントの再利用
    共通レイアウトを親ルートとして設定することで、コンポーネントの重複を削減できます。
  3. 柔軟な構成
    大規模なアプリケーションでも、ルート構造を簡単に変更・拡張できます。

注意点

  • 親ルートで<Outlet />を配置しないと子ルートがレンダリングされないため、必ず<Outlet />を設置しましょう。
  • 子ルートのパスは親ルートに相対的で記述されます。

ネストされたルーティングを正しく理解し活用することで、React Router v6の強力な機能を最大限に引き出すことができます。次に、移行時に直面する可能性のある互換性の問題について解説します。

古いコードとの互換性の問題

React Router v5からv6への移行では、新しい構文や動作仕様に伴い、いくつかの互換性の問題が発生する可能性があります。これらを理解し、適切な対応策を講じることが、移行プロセスをスムーズに進めるために重要です。

1. SwitchからRoutesへの非互換性

問題:SwitchはRoutesに置き換えられたため、v6ではSwitchを使用できません。
対策:SwitchをRoutesに置き換え、さらにcomponentではなくelementプロパティを使用してコンポーネントを指定するように修正します。

例:変更前(v5)

<Switch>
  <Route path="/home" component={Home} />
  <Route path="/about" component={About} />
</Switch>

例:変更後(v6)

<Routes>
  <Route path="/home" element={<Home />} />
  <Route path="/about" element={<About />} />
</Routes>

2. useHistoryの廃止

問題:v6ではuseHistoryフックが廃止され、新たにuseNavigateが導入されました。
対策useHistoryuseNavigateに置き換え、ナビゲーション用のコードを修正します。

例:変更前(v5)

const history = useHistory();
history.push('/new-path');

例:変更後(v6)

const navigate = useNavigate();
navigate('/new-path');

3. Redirectの仕様変更

問題:v5ではRedirectコンポーネントを使用してルートをリダイレクトしていましたが、v6ではNavigateに置き換えられました。
対策RedirectNavigateに変更し、新しい構文を使用します。

例:変更前(v5)

<Switch>
  <Redirect from="/old-path" to="/new-path" />
</Switch>

例:変更後(v6)

<Routes>
  <Route path="/old-path" element={<Navigate to="/new-path" />} />
</Routes>

4. useRouteMatchの廃止

問題useRouteMatchuseMatchに置き換えられました。これにより、ルートの一致情報を取得する方法が変わります。
対策:コード内のuseRouteMatchuseMatchに置き換えます。

例:変更前(v5)

const match = useRouteMatch("/profile");
if (match) {
  console.log("Matched!");
}

例:変更後(v6)

const match = useMatch("/profile");
if (match) {
  console.log("Matched!");
}

5. パスの一致方法の変更

問題:v6ではパスの完全一致がデフォルトになり、v5で使用されていた部分一致の挙動が廃止されました。
対策:必要に応じてワイルドカード(*)やuseMatchを使用して動的な一致を実現します。

例:ワイルドカードを使用した柔軟な一致

<Routes>
  <Route path="/posts/*" element={<Posts />} />
</Routes>

6. ネストされたルートの構成変更

問題:v6ではネストされたルートが新しい構文に統一され、親ルートで<Outlet />を使用する必要があります。
対策:親ルートに<Outlet />を追加し、子ルートを正しくレンダリングできるように設定します。

例:親ルートでの“の追加

<Routes>
  <Route path="/dashboard" element={<Dashboard />}>
    <Route path="settings" element={<Settings />} />
  </Route>
</Routes>
const Dashboard = () => {
  return (
    <div>
      <h1>Dashboard</h1>
      <Outlet />
    </div>
  );
};

7. ルートの動作確認

移行後には、以下を重点的に確認します:

  • 全てのルートが正確にレンダリングされるか。
  • リダイレクトや動的ルートが意図通りに機能するか。
  • 子ルートが適切に親ルート内で描画されるか。

まとめ

React Router v6への移行は、非互換な仕様変更への対応が必要ですが、新しい機能を活用することでより効率的で直感的なルーティングを実現できます。次に、移行の成功例を具体的に見ていきます。

実際のプロジェクトでの移行事例

React Router v5からv6への移行は多くのプロジェクトで行われており、その成功例から学ぶことは多いです。本セクションでは、ある中規模のReactプロジェクトを例に、SwitchからRoutesへの移行過程とその成功要因を詳しく解説します。

事例概要

  • プロジェクト規模:20以上のルートを持つ中規模のReactアプリケーション。
  • 使用していたReact Routerのバージョン:v5.2.0。
  • 主な課題
  • 部分一致による意図しないルートの描画。
  • ネストされたルーティングの複雑さ。
  • リダイレクトの多発によるコードの煩雑化。

移行のプロセス

1. コードベースの確認と準備

まず、全てのSwitchRouteRedirectコンポーネントの使用箇所を洗い出しました。また、useHistoryuseRouteMatchなどのフックも確認し、どの部分が新しい仕様に影響を受けるかを特定しました。

2. React Routerのアップデート

react-router-domを最新のバージョンにアップデートしました。次に、以下のコマンドで型定義ファイルを更新し、TypeScriptプロジェクトに対応しました:

npm install react-router-dom@latest
npm install @types/react-router-dom

3. SwitchからRoutesへの変更

Switchコンポーネントを全てRoutesに置き換え、componentプロパティをelementプロパティに変換しました。

変更前のコード
<Switch>
  <Route path="/home" component={Home} />
  <Route path="/about" component={About} />
  <Redirect from="/old-path" to="/new-path" />
</Switch>
変更後のコード
<Routes>
  <Route path="/home" element={<Home />} />
  <Route path="/about" element={<About />} />
  <Route path="/old-path" element={<Navigate to="/new-path" />} />
</Routes>

4. ネストされたルートの再構築

複数のページで同じレイアウトを使用している箇所では、<Outlet />を使用してコードを簡略化しました。

変更前のコード
<Switch>
  <Route path="/dashboard" component={Dashboard} />
  <Route path="/dashboard/settings" component={Settings} />
</Switch>
変更後のコード
<Routes>
  <Route path="/dashboard" element={<Dashboard />}>
    <Route path="settings" element={<Settings />} />
  </Route>
</Routes>

Dashboardコンポーネント内には以下のように<Outlet />を配置しました:

const Dashboard = () => (
  <div>
    <h1>Dashboard</h1>
    <Outlet />
  </div>
);

5. useNavigateの導入

useHistoryを全てuseNavigateに置き換えました。これにより、ナビゲーションロジックがシンプルになりました。

変更前のコード
const history = useHistory();
history.push('/home');
変更後のコード
const navigate = useNavigate();
navigate('/home');

6. テストとデバッグ

変更後、以下のポイントを重点的にテストしました:

  • 全てのルートが正確に機能しているか。
  • ネストされたルートで<Outlet />が正しく機能しているか。
  • 動的なパス(例:/users/:id)で期待通りに動作しているか。

成功のポイント

  1. 移行計画の明確化:事前に影響箇所を洗い出し、移行の優先順位を設定。
  2. 小さな単位での移行:大規模な変更を一度に行わず、機能単位で段階的に移行を実施。
  3. テストの徹底:全てのルートに対してテストを行い、新しい挙動を確認。
  4. ドキュメントの参照:公式ドキュメントを活用し、v6の仕様を正確に理解。

移行後の成果

  • コードの簡素化:ネストされたルートが簡潔になり、可読性が向上。
  • バグの減少:完全一致の仕様により、意図しないルートの描画が解消。
  • パフォーマンスの向上:不要なルート探索が減少し、描画速度が向上。

React Router v6への移行は、初期の手間はありますが、長期的に見れば保守性とパフォーマンスの向上につながります。次は、新機能を活用した応用例を解説します。

新機能を活用した応用例

React Router v6では、Routesや新しいフックを活用することで、より高度で柔軟なルーティングを実現できます。本セクションでは、新機能を使用した応用例をいくつか紹介します。

1. レイアウトの動的切り替え

特定の条件に基づいてレイアウトを切り替える方法を解説します。例えば、管理者と一般ユーザーで異なるレイアウトを使用する場合に便利です。

実装例

import { Routes, Route } from 'react-router-dom';

const App = () => {
  const isAdmin = true; // 条件を定義

  return (
    <Routes>
      {isAdmin ? (
        <Route path="/*" element={<AdminLayout />} />
      ) : (
        <Route path="/*" element={<UserLayout />} />
      )}
    </Routes>
  );
};

この例では、isAdmintrueの場合はAdminLayoutfalseの場合はUserLayoutが表示されます。

2. ロールベースのアクセス制御

ユーザーのロール(役割)に基づいてアクセスを制限する方法を示します。

実装例

import { Routes, Route, Navigate } from 'react-router-dom';

const PrivateRoute = ({ element, isAllowed }) => {
  return isAllowed ? element : <Navigate to="/login" />;
};

const App = () => {
  const userRole = 'admin'; // ユーザーのロール

  return (
    <Routes>
      <Route
        path="/admin"
        element={<PrivateRoute element={<AdminPage />} isAllowed={userRole === 'admin'} />}
      />
      <Route path="/login" element={<LoginPage />} />
      <Route path="/" element={<HomePage />} />
    </Routes>
  );
};

この方法を使えば、特定のユーザーだけが特定のページにアクセスできるようになります。

3. 動的ルートマッチングでカスタムビューを生成

動的なパスに基づいてカスタムコンテンツを表示します。例えば、ブログの詳細ページを実装する場合です。

実装例

import { Routes, Route, useParams } from 'react-router-dom';

const BlogPost = () => {
  const { postId } = useParams();

  return <div>Displaying post ID: {postId}</div>;
};

const App = () => {
  return (
    <Routes>
      <Route path="/post/:postId" element={<BlogPost />} />
    </Routes>
  );
};

URLに含まれるパラメータ(例:/post/123)がuseParamsで取得でき、動的なコンテンツを表示可能です。

4. 404エラーページのカスタマイズ

存在しないルートへのアクセス時にカスタム404ページを表示します。

実装例

import { Routes, Route } from 'react-router-dom';

const NotFound = () => <h2>404: Page Not Found</h2>;

const App = () => {
  return (
    <Routes>
      <Route path="/" element={<HomePage />} />
      <Route path="/about" element={<AboutPage />} />
      <Route path="*" element={<NotFound />} />
    </Routes>
  );
};

この例では、どのルートにも一致しない場合、NotFoundコンポーネントが表示されます。

5. データの事前フェッチ(Loaderの利用)

React Router v6ではデータの事前ロードを簡単に設定できます。

実装例

import { Routes, Route } from 'react-router-dom';

const fetchData = async () => {
  const response = await fetch('https://api.example.com/data');
  return response.json();
};

const DataPage = ({ data }) => {
  return <div>Data: {JSON.stringify(data)}</div>;
};

const App = () => {
  const data = fetchData();

  return (
    <Routes>
      <Route path="/data" element={<DataPage data={data} />} />
    </Routes>
  );
};

この例では、ページがレンダリングされる前にデータを取得し、それをコンポーネントに渡しています。

6. ルーティングのアニメーション効果

ページ遷移時にアニメーション効果を付与することで、視覚的にスムーズな遷移を実現します。

実装例

import { Routes, Route, useLocation } from 'react-router-dom';
import { AnimatePresence, motion } from 'framer-motion';

const App = () => {
  const location = useLocation();

  return (
    <AnimatePresence exitBeforeEnter>
      <Routes location={location} key={location.pathname}>
        <Route
          path="/"
          element={
            <motion.div initial={{ opacity: 0 }} animate={{ opacity: 1 }} exit={{ opacity: 0 }}>
              <HomePage />
            </motion.div>
          }
        />
        <Route
          path="/about"
          element={
            <motion.div initial={{ opacity: 0 }} animate={{ opacity: 1 }} exit={{ opacity: 0 }}>
              <AboutPage />
            </motion.div>
          }
        />
      </Routes>
    </AnimatePresence>
  );
};

このコードでは、framer-motionライブラリを使用してルート遷移時にフェード効果を追加しています。

まとめ

これらの応用例は、React Router v6の新機能を活用して柔軟で高度なルーティングを構築する方法を示しています。プロジェクトに応じてこれらの技術を取り入れることで、ユーザー体験を大幅に向上させることができます。次に、今回の内容を総括します。

まとめ

React Router v6では、SwitchからRoutesへの移行をはじめ、多くの新機能が導入されました。本記事では、SwitchとRoutesの違いや移行手順、Routesを活用した高度なルーティングの方法を解説しました。

Routesの採用により、完全一致の動作、ネストされたルートの簡略化、動的ルートの柔軟な実装が可能となり、コードの可読性とパフォーマンスが向上します。また、ロールベースのアクセス制御や404ページのカスタマイズなど、応用的な機能も簡単に実現できます。

React Router v6は、モダンなReactアプリケーションにおけるルーティングの標準となる強力なツールです。今回解説したポイントを参考に、新しい仕様を活用して効率的で直感的なルーティングを構築してください。v6への移行は一度きりの作業ですが、そのメリットは長期にわたってプロジェクトに貢献します。

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