1TB規模のファイル共有をSharePoint Onlineへ移行したい、そんな時に強い味方となるのが「SharePoint Migration Tool(SPMT)」です。本記事では、合計容量1TBを超えるデータでも移行は可能なのか、注意点や速度対策を含めて詳しく解説します。
SPMTで1TBのファイル共有移行は可能?
SPMTはMicrosoftが提供する公式ツールで、オンプレミスのファイルサーバーやSharePoint Serverなどから、SharePoint OnlineやOneDriveへデータを移行するためのソリューションです。ドキュメント上では「250GB」という数字が目立ちますが、これはあくまでも“1つのファイルあたりの最大サイズ”を指しています。そのため「合計で1TBを移行する」こと自体には制限はありません。各ファイルが250GBを超えないのであれば問題なく移行できます。
SPMTの最大ファイルサイズ制限
SharePoint Onlineにアップロードできるファイルのサイズ上限は、現時点で1ファイルあたり最大250GBとされています。もし移行対象のフォルダ内に250GBを超えるファイルが含まれている場合は、その部分だけ別途対応や分割が必要になるでしょう。
SharePoint Onlineのストレージ容量を確認する
また、SharePoint Onlineのテナントに十分な容量を確保しておくことも大切です。たとえばE3ライセンスなど、Microsoft 365プランごとに割り当てられるストレージ容量が異なるため、1TB超のデータを置く余裕があるか事前に調査しておきましょう。必要に応じてアドオン(追加ストレージ)を購入すると、テナント全体の容量を増やすことができます。
移行速度やスロットリング(制限)を考慮する
ファイルの合計容量が大きいほど、移行にかかる時間も長くなります。特にMicrosoft 365側でのスロットリングや、オンプレミス—クラウド間のネットワーク帯域が速度に大きく影響するため、以下の対策をあらかじめ検討してください。
移行のスケジュール設計
大規模移行では、一度にすべてを実行するのではなく、ある程度の単位でジョブを分割すると効率的です。週末や夜間など、業務利用が少ない時間帯に移行を集中させることで、ネットワーク負荷による速度低下を緩和できます。また、SPMTは移行ジョブを作成して並列で実行できますが、同時に走らせすぎると逆にMicrosoft 365側のスロットリングに引っかかりやすくなるので要注意です。
ネットワーク帯域を確保する
社内ネットワークを経由してクラウドへファイルをアップロードするため、ネットワーク回線の実効速度がボトルネックになりがちです。移行作業を行う端末やサーバーの優先度を上げ、帯域幅を十分に確保しましょう。もし回線速度に余裕がない場合は、一時的に回線増強やVPN設定の見直しを検討するのも手です。
移行前のファイルとフォルダ構成チェック
移行作業をスムーズに進めるためには、SharePoint Onlineで不適切とされる要素を事前に洗い出すことが重要です。以下のポイントに気を配り、移行後にエラーが発生しないように準備しましょう。
パスの長さや特殊文字の確認
Windows Server上のフォルダパスと比較すると、SharePoint OnlineにはURLとしての制限があるため、フォルダ階層が深すぎる場合に問題が起こりやすいです。Microsoft公式ドキュメントではおおむねパスの長さは400文字前後を上限としており、特殊文字(#や%など)を含むファイル名も移行エラーを引き起こす場合があります。SPMTの事前スキャン機能を活用し、不適合のファイル名を洗い出してリネームしましょう。
無効なファイル拡張子と権限の整合性
SharePoint Onlineでは、特定の拡張子がブロックされているケースがあります(例:.exe, .comなど)。移行対象に含まれていないか確認しておくと安心です。さらに、ファイルやフォルダのアクセス権限が適切に移行されるように、オンプレミスのNTFS権限とSharePoint Onlineの権限モデルを事前に把握しておきましょう。SPMTの設定画面で、「権限移行を有効化」オプションを確認し、必要なアカウントの権限が正しく付与されるようにします。
SPMTの主な制限事項と設定項目
以下はSPMTの主な制限事項や設定項目を表にまとめたものです。移行前に一読しておくと、想定外のエラーを回避しやすくなります。
制限・設定項目 | 内容 |
---|---|
単一ファイルサイズ制限 | 最大250GB(SharePoint Onlineが対応している限り) |
パスの長さ | おおむね400文字まで(フォルダ構成が深すぎるとエラーが起こりやすい) |
特殊文字や無効なファイル名 | #、%、アンダースコアで終わるファイル名などはエラーとなる場合がある |
移行ジョブ並列実行数 | 高すぎるとスロットリングのリスク増大。ネットワーク帯域を考慮のうえ設定。 |
権限移行 | NTFS権限をSharePoint Onlineに移行可能。事前にグループやユーザーがテナント内で存在するか確認が必要。 |
メタデータおよびバージョン履歴 | 可能だが完全な保持には設定が必要。バージョン数が多いと移行時間が増加。 |
フィルター機能 | 更新日や拡張子などで移行対象を選別可能。不要ファイルの移行を避けて時間短縮。 |
段階的に進めるメリット
一括移行も可能ですが、1TBという大容量を安全かつ効率よく移行するためには、段階的に進める方法が有効です。たとえば以下のプロセスを踏むことで、移行失敗やトラブルのリスクを分散できます。
- パイロット移行
まずは移行対象の一部を抽出し、小規模でテスト移行を実施します。これによりSPMTの設定や速度、ネットワークの状況を実地で確認できます。 - 結果の検証と調整
テスト移行後、SharePoint Online上でファイルの整合性や権限の設定状況を確認します。ファイル名のエラーやパス長オーバーなどの問題点が見つかったら修正し、本番移行に備えます。 - 本番移行の実行
複数のジョブに分割して一括で移行することで、時間を分散しながら着実にデータを移行できます。移行完了後はログを確認し、移行漏れや失敗ファイルがないか検証しましょう。 - フォローアップと最終調整
移行後のSharePoint Onlineをユーザーが実際に使い始めた段階で、新たに生じる要望(権限の追加やライブラリ構成の変更など)に対処します。最終的に円滑な運用に落とし込むことがゴールです。
まとめ
SharePoint Migration Tool(SPMT)は、250GBを超えない単一ファイルであれば合計1TB以上でも移行可能です。重要なのは、「合計容量の制限」ではなく「ファイルあたりのサイズ制限」が存在するという点を正しく理解すること。さらに、SharePoint Onlineの空き容量や移行速度、ファイルパスの長さなどを事前に確認し、必要に応じてジョブ分割やネットワーク帯域確保などの対策を講じることで、スムーズな大容量移行が実現できます。
最後に、SPMTはMicrosoftが公式に提供している移行ツールであるため、安心感は高いものの、速度や制限事項の把握、そして移行後の運用を踏まえた準備が不可欠です。今回紹介したポイントを押さえたうえで、1TBの大容量ファイル共有をSharePoint Onlineへ移行してみてください。正しいステップを踏むことで、オンプレミスからクラウドへの移行がより円滑になり、ビジネスの生産性向上に大きく貢献します。
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