導入文章
SharePointに保存しているフォルダーを、ネットワークドライブにまとめてコピーしたいと考える方は多いのではないでしょうか。日々の業務で扱うファイルが増えるなか、一つひとつ手作業で移動するのは効率が悪いものです。今回は、SharePointフォルダーをスムーズにネットワークドライブへコピーする実践的な方法について、多角的に解説します。ちょっとした設定のコツや自動化のヒントもご紹介するので、業務効率化を目指す方はぜひ参考にしてみてください。
SharePointフォルダーをネットワークドライブへコピーする基本方法
SharePoint Onlineのドキュメントライブラリは、Microsoft 365内での共同作業に非常に便利ですが、ローカル環境やオンプレミスのサーバー、NASなどに置かれたネットワークドライブにコピーするのは意外と手間がかかることがあります。ここでは最もシンプルな方法として、「SharePointからダウンロード→ネットワークドライブへアップロード(またはコピー)」という流れを中心に解説します。
例えば、SharePointライブラリ上に「プロジェクト資料」というフォルダーがあったとします。このフォルダーをネットワークドライブにコピーする代表的な手順は以下のようになります。
- SharePointのドキュメントライブラリをブラウザで開く
- コピーしたいフォルダー(例:プロジェクト資料)を選択する
- [ダウンロード]をクリックしてローカルPCへZipファイルとして保存
- ローカルPCに保存されたZipファイルを解凍
- 解凍したフォルダーをネットワークドライブへドラッグ&ドロップまたはコピー貼り付け
この方法は最も単純で、特別な設定も必要ないため、多くのユーザーにとって手軽に実行できます。ただし、フォルダー容量が非常に大きい場合や、サブフォルダーの階層が深い場合はダウンロードに時間がかかる点に注意が必要です。
SharePointからフォルダーを一括ダウンロードするステップ
「フォルダーをまとめてダウンロードする」という操作自体はSharePointの標準機能でサポートされています。次の手順でスムーズにフォルダー全体を取得できます。
- 対象となるSharePointライブラリにアクセスします。
- コピーしたいフォルダーにカーソルを合わせ、チェックボックスを有効にします。
- SharePointツールバーの「ダウンロード」ボタンをクリックします。
- フォルダーがZipファイル化され、自動的にダウンロードが始まります。
- ローカルPCへ保存されたZipファイルを解凍します。
Zipファイルの解凍後は、フォルダーごとネットワークドライブに移動するだけで済みます。大量のファイルが含まれる場合でも、ワンクッション置いてZipファイルとして取得できるので、一括コピーが容易です。
ネットワークドライブへコピーする際の注意点
ダウンロードしたフォルダーをネットワークドライブへコピーする場合、以下のポイントに注意しましょう。
- 権限設定: ネットワークドライブ側で適切な書き込み権限があるかを確認してください。
- ファイルパスの長さ: Windows環境ではファイルパスの最大長に制限があるため、フォルダー階層が深いとエラーになる可能性があります。必要に応じてフォルダ構成を見直すか、パス短縮の設定を検討します。
- ファイルのロック状態: SharePoint上で編集中のファイルがある場合、ダウンロード時に反映されないことがあります。チームメンバーの作業状況もチェックしましょう。
- サイズに応じた時間: ダウンロード&アップロードにはファイル容量に応じた時間がかかります。特に大容量データの場合、業務時間外の作業や安定したネットワーク環境を確保すると効率的です。
フォルダー移動の効率化を図るヒント
SharePointからネットワークドライブへフォルダーをコピーする際、手動のダウンロード&アップロードだと手間がかかる場合があります。ここでは、より効率的に作業を進めるためのいくつかのアプローチを紹介します。
PowerShellスクリプトで自動化
Windows環境であれば、PowerShellを使うことでSharePoint Onlineからフォルダーをダウンロードし、そのままネットワークドライブへ移動するというフローをある程度自動化できます。代表的な例として、PnP PowerShellを利用する方法があります。
以下に、PnP PowerShellを用いてフォルダーを取得する例を示します。基本的なポイントは「PnP PowerShellをインストールし、Connect-PnPOnlineコマンドでSharePointに接続し、Get-PnPFileコマンドなどを駆使してフォルダーをローカルへダウンロードする」という流れです。
# まずはPnP PowerShellをインストール(初回のみ)
# Install-Module PnP.PowerShell
# SharePointに接続する
Connect-PnPOnline -Url "https://<貴社テナント名>.sharepoint.com/sites/<サイト名>" -Interactive
# 指定ライブラリの特定フォルダーをローカルにダウンロード
Get-PnPFolderItem -FolderSiteRelativeUrl "ドキュメント/プロジェクト資料" -Recursive |
ForEach-Object {
if ($_.ItemType -eq "File") {
Get-PnPFile -ServerRelativeUrl $_.ServerRelativeUrl -Path "C:\Temp\SharePointDownload" -FileName $_.Name -AsFile -Force
}
}
# ダウンロードしたフォルダーをネットワークドライブへコピー
Copy-Item -Path "C:\Temp\SharePointDownload\*" -Destination "Z:\プロジェクト資料" -Recurse
上記の例は非常にシンプルなものなので、実際にはエラーハンドリングやフォルダーの有無確認など、さまざまな考慮が必要となる場合があります。しかし、手動操作よりも大幅に作業を短縮できる可能性があるので、スクリプトに慣れている方にはおすすめの方法です。
PowerShell利用時のポイント
- PnP PowerShellを使う場合は、事前にAzure Active Directoryのアプリ許可やSharePoint管理者権限が必要となることがあります。
- ネットワークドライブのパス(例:
Z:\
)が既にマウントされているかを確認してください。 - 容量の大きいフォルダーを扱う場合、ネットワーク速度やタイムアウトなどに配慮が必要です。
- 自動化スクリプトを定期実行したい場合は、Windows タスク スケジューラなどで定期的に実行するよう設定すると便利です。
サードパーティーツールの利用
SharePointとオンプレミスや別のクラウドストレージ間のデータ移動を円滑に行うためのサードパーティーツールも多数提供されています。代表的な例としては、以下のような機能を持ったものがあります。
- GUI操作でクラウドストレージ間のデータ移行を一括管理
- 自動同期機能により、特定フォルダーの変更をリアルタイムに反映
- フォルダーやファイルの移動だけでなく、メタデータやバージョン履歴の移行にも対応
ただし、サードパーティーツールを導入する場合は、ライセンス費用やセキュリティ上のリスクを考慮する必要があります。データのセンシティブ度や運用予算を踏まえたうえで検討するとよいでしょう。
大容量データ移動における特別な注意点
大容量データや長期プロジェクトの資料などをまとめて移動する場合、ネットワーク負荷や移動時間が大きくなるため、以下のような対策がおすすめです。
- 分割ダウンロード: 何GBもあるフォルダーを一気にコピーしようとすると、回線負荷が高まるだけでなく途中エラーのリスクも高まります。可能であれば期間別やサブフォルダー単位に分割してダウンロードしましょう。
- 非稼働時間帯の利用: 業務時間外であればネットワーク帯域に余裕があるため、夜間や休日に自動スクリプトを走らせるなどの工夫をすると作業負荷が軽減されます。
- 検証環境でのテスト: 大容量の移行を行う前に、テスト用の小規模フォルダーで移行手順を試しておくと、トラブルを未然に防ぐことができます。
- 通信エラー対策: 長時間の転送中に通信が途切れる可能性もあります。レジューム機能(中断から再開できる機能)があるツールやスクリプトを選ぶと安心です。
SharePoint内「コピー機能」とネットワークドライブへの直接コピーの違い
SharePoint Onlineの標準機能に「コピー」というメニューがありますが、これは主にSharePoint内の別サイトやライブラリ、もしくはOneDriveへのコピーが目的です。残念ながら、標準機能だけで直接ネットワークドライブへコピーすることはできません。つまり、
- SharePoint → SharePoint間、もしくはSharePoint → OneDrive間のコピーは可能
- SharePoint → ネットワークドライブへのコピーは未対応
したがって、ネットワークドライブ側へ移動・コピーしたい場合は、どうしても「一度ローカルPCへダウンロードする」というステップが挟まる形になります。これを踏まえて運用フローを考えておくのがポイントです。
OneDriveの同期機能を活用してネットワークドライブに近い使い方をする
実際にネットワークドライブにコピーするのではなく、SharePointフォルダーをOneDriveクライアントで同期設定するという手段もあります。同期したフォルダーはエクスプローラー上であたかもローカルフォルダーのように扱えます。さらに、以下のようなメリットがあります。
- ファイルを常に最新バージョンで利用できる
- 必要に応じてローカルにのみ存在させる「常に利用できるファイル」と、クラウド上に置いて必要時だけダウンロードする「オンラインのみのファイル」を切り替え可能
- ネットワークドライブが使えない外出先や自宅でもアクセスしやすい
もし、物理的なネットワークドライブでなくても運用上問題ない場合は、OneDrive同期を利用した方が便利なケースが多いでしょう。ただし、社内規定やセキュリティ要件によってはネットワークドライブでの保管が求められるケースもあるので、自社のポリシーを確認することが大切です。
ネットワークドライブとSharePointのハイブリッド運用を成功させるために
クラウドサービスのSharePointとオンプレミスのネットワークドライブを併用している企業では、データの最新化や整合性を保つのが課題になりがちです。ハイブリッド環境での運用をスムーズに進めるために、以下の点を確認しておくと良いでしょう。
アクセス権限のルール整備
部署やプロジェクトチームごとにアクセス権限が異なる場合、SharePointとネットワークドライブでの権限管理ルールを統一しておくと混乱を防げます。たとえば、管理者権限でしかコピー操作ができないフォルダーがある場合、担当者への周知徹底が不可欠です。
バージョン管理・履歴の取り扱い
SharePointでは標準でバージョン管理機能が用意されており、ファイルの変更履歴を簡単にたどれます。一方、ネットワークドライブへコピーしたファイルは通常、バージョン履歴が引き継がれません。もし履歴情報を重要視する場合は、ネットワークドライブへコピー後の運用ルールやバックアップ手順を検討する必要があります。
自動化と監査ログ
フォルダーの移動や同期を自動化する仕組みを導入する際は、いつ誰がどのデータをコピーしたのか追跡できるログ記録を確保できると安心です。万一、誤って機密データをコピーしてしまった場合にも迅速に対応できます。特にコンプライアンスが厳しい業種では必須事項と言えるでしょう。
その他よくある質問とトラブルシューティング
最後に、SharePointからネットワークドライブへフォルダーをコピーする際によくある質問や問題点をまとめました。トラブルに直面した場合、以下の情報を参考に解決を進めてみてください。
「フォルダーごとダウンロード」ボタンが表示されない
- 管理者がUIをカスタマイズしている場合や古いブラウザを使用している場合、ボタンが見つからないケースがあります。最新のMicrosoft EdgeやChromeなどで再度試してください。
- アクセス権限が不足していると、ダウンロード機能が制限されることもあります。所属グループの権限を確認しましょう。
ネットワークドライブが認識されない
- ドメインに接続していないPCやVPN外からアクセスしている場合、ドライブマッピングの設定が必要な場合があります。「ネットワークドライブの割り当て」からドライブレターを再設定してみてください。
- 企業のセキュリティポリシーで、外部との通信や大容量ファイルの転送が制限されている場合があります。IT管理者に問い合わせが必要な場合もあります。
ファイル数やサイズが大きすぎると途中でエラーが発生する
- 一度に転送する容量を分割して行う、あるいは時間帯を工夫するなどして回避できます。
- PowerShellなどで自動化する場合は、通信エラー時にリトライするロジックを組み込むと安定します。
自動化スクリプトがエラーを出して途中で止まってしまう
- スクリプトの実行ポリシーが原因になることがあります。
Set-ExecutionPolicy RemoteSigned
など設定を確認してみてください。 - PnP PowerShellのバージョンが古いとAPI変更に追随できずエラーが出る場合があります。最新版へのアップデートを試すと良いでしょう。
まとめ
SharePointのフォルダーをネットワークドライブへコピーする場合、標準的には「一度ローカルPCにフォルダーをダウンロードしてから移動・コピーする」という流れが最も確実かつ簡単です。大容量や定期的に移動する必要があるなら、PowerShellスクリプトやサードパーティーツールの活用も検討してみましょう。セキュリティポリシーやバージョン管理の要件によっては、OneDriveの同期機能だけで事足りるケースもあるかもしれません。自社の運用環境に合わせて、最適な方法を見つけてみてください。
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