社内コミュニケーションを活性化するには、気軽に情報交換ができるディスカッションの場が欠かせません。Modern SharePointでフォーラムを構築したいというニーズは多いですが、従来のディスカッションボードは非対応となっています。本記事では、Yammer(Viva Engage)を活用しながらModern SharePointでフォーラムを実現する方法を詳しく解説します。
Modern SharePointでディスカッションフォーラムを活用する意義
Modern SharePointを利用して情報共有や協働作業を行う際、「気軽に質問ができ、回答が得られる」場があると非常に便利です。例えば新製品の情報をやりとりしたり、運用上の課題を相談したり、ナレッジを蓄積したりと、フォーラム形態のコミュニケーションは数多くのメリットをもたらします。
しかしながら、Modern SharePointにはクラシック版で利用できた「ディスカッションボード」の機能が標準実装されていません。そのため、従来のようにネイティブなディスカッションリストを使いたい場合は、クラシックUIに切り替える必要があり、モダンUIのもつ魅力的なデザインや動的機能との両立が難しいという課題があります。
そこで、多くの組織で選択肢として挙がるのが「Yammer(Viva Engage)」との連携です。Modern SharePointページ上にYammerの会話(Webパーツ)を埋め込むことで、ユーザー同士がトピックを投稿し、返信をやり取りするディスカッションフォーラムのような仕組みを再現できます。
ディスカッションフォーラムがもたらす主な効果
- ナレッジの蓄積
社内で頻出する質問やアイデアが蓄積され、後から誰でも確認しやすくなります。 - コミュニケーションの活性化
チャットのような即時性だけでなく、じっくり回答を得る場としても活用でき、社員同士の交流が深まります。 - 検索性の向上
SharePointやYammer上のディスカッションは、Microsoft 365全体の検索機能と連動しやすく、過去のやり取りを探しやすいメリットがあります。
クラシックディスカッションボードとの違い
クラシックのディスカッションボードとModern SharePointをYammer連携した場合との主な違いは次のとおりです。
比較項目 | クラシックディスカッションボード | Modern (Yammer連携) |
---|---|---|
見た目・UI | SharePointのクラシックUI。モバイル表示はやや不便 | モダンUIに準拠。レスポンシブ対応でモバイル最適化 |
管理・権限 | SharePointリストとして管理。きめ細かな権限設定が可能 | Yammerコミュニティの管理。Office 365グループと連携 |
投稿や返信のやり方 | SharePointリストのフォームを利用 | Yammerの会話形式。メンションやいいね機能が利用可能 |
検索・通知 | SharePoint内検索。通知はSharePointワークフローなどで実装 | Microsoft 365全体で検索可能。Yammer通知機能が充実 |
将来性・サポート | クラシックUIのため将来的に非推奨化される可能性あり | Modern SharePointに最適化された方式で、Microsoftの推奨手段 |
表から分かるように、モダンUIとの親和性や将来的なサポートを考えると、Yammerを使ったほうが安心感があります。またYammer側に投稿すれば、モバイルアプリから気軽にやり取りできる点も大きな強みです。
Yammer(Viva Engage)によるディスカッションフォーラム実装の全体像
Modern SharePointでディスカッションフォーラムを実装する場合、Yammerコミュニティ(グループ)をベースに進めるのが一般的です。Microsoft 365テナント内でYammerが有効化されていれば、既存のコミュニティも活用できますし、新規にコミュニティを作成することも可能です。
Yammer自体はSNSに近いフラットなコミュニケーションを特徴としていますが、トピック(スレッド)単位で投稿・返信を行う点で、いわゆるフォーラム形式と大きく乖離することはありません。特にYammerでは「いいね」機能やメンション機能を標準提供しており、多くの組織にとって使い勝手が良い手段となります。
また、Modern SharePointページ上にYammer Webパーツを埋め込むことで、ユーザーはSharePointのページを閲覧しながらYammerの会話スレッドをチェック・参加できるようになります。これにより、トップページや特定の部門サイトにフォーラムを集約し、組織全体で情報や意見を交換しやすい環境を作れます。
Yammer(Viva Engage)導入前に確認しておくべきポイント
- Microsoft 365サブスクリプションのプラン
Yammerを利用するには、Microsoft 365の対象プランを契約している必要があります。Businessレベル以上であれば多くの場合利用可能です。 - 利用ポリシーとユーザー管理
YammerコミュニティはOffice 365グループと連動する場合があるため、グループ管理ポリシーを統一しておくと管理が楽になります。 - 名前変更の可能性
2023年以降、「Yammer」は「Viva Engage」へのブランド移行が進んでいます。ただし、多くのユーザーにはYammerの名称が馴染み深いため、途中で混乱しないよう周知が必要です。 - 従来型のYammerとネイティブモード
Yammerには「従来型」と「ネイティブモード」が存在します。今後のアップデートでは、Microsoft 365グループと緊密に連携するネイティブモードの利用が推奨される流れです。
Modern SharePointでYammerフォーラムを埋め込む具体的手順
Yammer(Viva Engage)のコミュニティを活用したフォーラムを、Modern SharePointに埋め込む代表的な手順を紹介します。以下の例では既存のコミュニティを使いますが、新規にコミュニティを作成する場合はYammer管理画面で「コミュニティの作成」から進められます。
手順1: Yammerコミュニティ(またはViva Engage)を用意する
- Microsoft 365テナントに管理者または権限のあるアカウントでサインイン
SharePointやYammerを管理できるアカウントで作業を開始します。 - Yammerにアクセスしてコミュニティを確認
既に目的のコミュニティが存在する場合は、そのURLを控えておきます。新規作成する場合は「+コミュニティの作成」(または「Create a Community」)から実施してください。
手順2: Modern SharePointページを編集する
- SharePoint管理画面またはサイトにアクセス
作成済みのModernサイトを開き、「サイトのコンテンツ」からフォーラムを設置したいページに移動します。 - ページを編集モードにする
上部メニューやオプションから「ページの編集」をクリックし、Webパーツを追加できる状態にします。
手順3: Yammer Webパーツを配置する
- Webパーツ追加の「+」ボタンをクリック
ページ内の任意の場所にWebパーツを追加できる領域(セクション)が表示されます。 - 「Yammer」または「Yammer会話」(英語環境の場合「Yammer Conversations」)を選択
サイトによっては「Viva Engage」という名称に変わっていることもありますが、機能は同様です。 - Webパーツの設定を行う
Yammerフィードの種類(ホームフィードや特定のコミュニティなど)を選択します。コミュニティを指定する場合は、そのコミュニティのURLや名前を入力します。 - デザインや表示形式を調整
必要に応じてWebパーツの幅や高さ、レイアウトを変更し、ページデザインに合わせます。
手順4: ページを保存・公開する
- ページの変更を保存
「下書きの保存」もしくは「再発行」を選ぶことで、編集内容が反映されます。 - ユーザーに告知・周知
組織内のユーザーがフォーラムを認識して利用できるように、告知やガイダンスを行いましょう。
以下は、設定をまとめたイメージのJSON例(ダミー)です。実際には管理画面でGUI操作が中心となるため、JSONを直接編集するケースは稀ですが、Webパーツの構成概念を理解する参考としてご覧ください。
{
"webPartId": "b6e44fec-44af-4bf2-a3bb-102d6b1f3a54",
"instanceId": "12345abc-de67-fgh8-9101-2345ijklmn6o",
"title": "Yammerフォーラム",
"properties": {
"feedType": "community",
"communityId": "9876543210",
"layout": "compact"
}
}
上記のように、「feedType」や「communityId」を設定することで表示対象のコミュニティを切り替えられます。実際の操作では、ページ編集画面のWebパーツ設定パネルでコミュニティ名やURLを入力するだけです。
代替案と考慮ポイント
Yammerを使わずにフォーラムを実装する方法としては、次のような選択肢も考えられます。
Microsoft Teamsを活用する
Teams内にはチャネル会話機能があります。まるでチャットのように使えますが、スレッド形式でのディスカッションも可能です。SharePointのモダンページへTeamsの会話を埋め込むことは標準的には難しいものの、チャネルのWebリンクを案内したりTeamsアプリとして活用したりする方法もあります。
Power AppsやSharePoint Listで独自に作る
自社独自のディスカッションリストやアプリケーションを構築する場合は、Power AppsやSharePointリストのカスタマイズで実現可能です。
ただし、既存の知見が必要であり、通知やモバイル対応などをゼロから構築すると工数がかかります。メンションやいいねのようなSNS的機能を実装するのも、追加の開発が必須です。
サードパーティ製品・外部サービスを利用する
SlackやMicrosoft以外のフォーラムサービスを利用し、SharePointからリンクする方法も考えられます。ただし、セキュリティ要件やライセンス費用などを精査する必要があります。社内利用の場合はシングルサインオン(SSO)が可能かどうかなど、運用上の要件を満たすかを十分に検討してください。
運用・活用のベストプラクティス
Modern SharePointにYammerフォーラムを埋め込んだ後、組織に定着させるにはいくつかの工夫が必要です。
1. フォーラム運用ルールの明文化
- 投稿ルールやマナーを簡潔にまとめる
- カテゴリやタグの付け方(重要な場合はYammerのハッシュタグなど)をガイドライン化
2. 運営チームやモデレーターの設置
- 不適切な投稿がないかをチェックし、迅速に対応できる体制を整える
- 特に大規模組織の場合、モデレーターがいることで利用者の安心感が高まる
3. フォーラム活性化のための仕掛け
- Q&Aの要約やピン止め投稿などで、価値のある情報にアクセスしやすくする
- 社内イベントやキャンペーンを活用して、投稿を促す仕組みを用意する
4. Yammer/Viva Engageのモバイルアプリ活用
- 現場や外出先から気軽に質問・回答できるように、モバイルアプリの利用を推奨する
- 通知をオンにするようにガイドすることで、タイムリーなレスポンスが得られる
よくある質問(FAQ)
Q1. モダンUIでクラシックのディスカッションボードを使う方法はありませんか?
A. リストとしてクラシックのディスカッションボードを追加し、リンクすることは技術的には可能ですが、UIがクラシックになるため統一感が損なわれます。Microsoftはモダン化を推奨しているため、将来的なメンテナンス面でもYammer連携をおすすめします。
Q2. Yammerでの投稿をメールで受け取ることはできますか?
A. はい、Yammerではメール通知を有効にすることで投稿や返信をメールで受け取れます。Office 365グループとも統合されている場合、Outlookなどと連携することで、会話にメールクライアントから直接参加することも可能です。
Q3. Yammer(Viva Engage)は無料で利用できますか?
A. Microsoft 365のプランに含まれているため、追加コストなしで利用できる場合が多いです。ただし、契約プランによっては機能に制限がある場合もあるので契約内容をご確認ください。
Q4. 部門ごとに異なるフォーラムを運用したい場合は?
A. 各部門ごとにYammerコミュニティを作成し、それぞれをModern SharePointページに埋め込む方法が考えられます。サイトコレクションやページを切り分け、部門に合わせたデザインや権限管理を行うとスムーズです。
まとめ
Modern SharePointでディスカッションフォーラムを運用したい場合、旧来のクラシックディスカッションボードは非対応となっているため、Yammer(Viva Engage)を利用する方法が最も一般的かつ確実な手段となります。Yammerの会話はSNSのような気軽さと、スレッド形式による情報共有の効率性を兼ね備えています。また、Microsoft 365全体の検索機能や通知機能と連動できるため、大規模な組織でもスケールしやすいメリットがあります。
実装自体はSharePointページにYammer Webパーツを配置するだけで簡単に行えますが、運用段階でのルール策定や利用促進施策が欠かせません。適切に設定・告知することで、Modern SharePointサイト上で有用なディスカッションフォーラムを構築し、組織のコミュニケーションをさらに充実させることができます。
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