SharePointで同名ファイルの上書きを確実に行う方法と回避策

SharePointを日々活用していると、ファイルのコピーや移動にまつわるちょっとした操作の違いが業務効率に大きく影響することがあります。特に「同名ファイルを移動・コピーした時に上書きするか両方を保持するか」という挙動について、突然仕様が変わったかのように感じるケースもあり、戸惑う方も多いのではないでしょうか。この記事では、現在一部のユーザー環境で報告されている“ファイル名に自動的に番号が付く問題”の原因や回避策、さらに今後の展望について詳しく解説します。

SharePointでの同名ファイル上書き問題とは?

SharePointを利用していると、同じフォルダー上に同名ファイルをコピーまたは移動する場面がしばしばあります。本来であれば、SharePoint上で同名ファイルを扱う際に「上書きする」または「両方保持する」の選択肢が表示され、ユーザーが手動でどちらかを選択できる仕組みでした。ところが最近、一部の環境で「置き換え」か「両方保持」の選択肢が出ず、自動的にファイル名に「(1)」や「_1」が付与されるケースが増加しているのです。

背景と問題の発生状況

この現象は、特定のバージョンのSharePoint Onlineや特定テナントの設定によって生じているように見受けられます。ただし明確に「これが原因」という公式情報はまだなく、Microsoftの公式ドキュメントにも関連事項が十分には記載されていません。そのため、ユーザーコミュニティやフォーラムでも「仕様変更なのかバグなのか」「従来通り選択肢を表示させるにはどうすれば良いのか」といった議論が盛んに行われている状況です。

突然仕様が変わったように見える原因

  • Microsoft 365全体のアップデートによる影響
  • テナントごとの設定反映のタイミング差
  • ブラウザやOfficeクライアントのバージョン差
  • Power Automateのワークフローが関与している場合の誤作動

これらの要因が絡み合い、あるユーザーの環境だけで現象が発生することがあります。

SharePointの基本的な上書きの仕組み

SharePoint上にファイルをアップロードすると、自動的にバージョン管理が行われます。通常は「ドキュメントライブラリのバージョン設定」で「メジャーバージョンのみ」または「メジャーとマイナーバージョン」を指定でき、履歴を管理することが可能です。以下に上書き時の一般的なフローを示します。

操作期待される動作結果
ファイルアップロード同名ファイルが存在する場合、上書き確認ダイアログ– 上書きを選ぶ → 既存ファイルが新バージョンとして更新
– 両方保持 → 新しいファイルが別名で保存される
ファイル移動同名ファイルが存在する場合、上書き確認ダイアログ上書きか両方保持かを選択できる
ファイルコピー同名ファイルが存在する場合、上書き確認ダイアログ上書きか両方保持かを選択できる

本来は上記のとおり、「上書きまたは両方保持」をユーザーが選択できるのがデフォルトの挙動です。しかし、最近の一部環境で問題となっているのは、このダイアログが表示されず、強制的にファイル名に番号が追記されてしまう点です。

SharePointとOneDriveの違いに注意

同じMicrosoft 365のサービスとして、OneDriveとSharePointはUIが似ている部分も多いですが、設定画面やアップデートの配布タイミングが異なる場合があります。OneDriveで想定どおり動作していても、SharePointサイトでは動作が違うということもあるため注意が必要です。

問題が起きた時に考えられる原因

バージョン管理の設定問題

SharePointドキュメントライブラリには「バージョン管理」が設定されていますが、もしバージョン管理のオフや制限付きの設定がされていると、通常とは異なる挙動が発生する場合があります。例えばバージョン数の上限に近づいているライブラリだと、強制的にファイル名を変更してアップロードされる可能性も考えられます。

バージョン管理設定を確認する方法

  1. SharePointサイトを開き、対象のドキュメントライブラリに移動します。
  2. 「設定」→「ライブラリの設定」をクリックします。
  3. 「バージョン設定」を選択し、「バージョン管理の設定」画面をチェックします。
  4. メジャーバージョンのみか、メジャーとマイナー(下書き)バージョン管理が行われているかを確認し、必要に応じてバージョン数の上限を見直します。

アクセス許可や権限の問題

サイトのアクセス権限が標準の「編集権限」または「共同作業権限」ではなく、独自にカスタマイズされた権限レベルを使っている場合、予期せぬ挙動が起きる可能性があります。たとえばアイテムレベルのアクセス権限が厳しく制限されていると、上書きの選択肢が表示されないケースもあり得ます。

権限の調査ポイント

  • ライブラリレベルでのアクセス権限
  • フォルダー単位またはアイテム単位でのユニーク権限
  • 特定ユーザーやグループに対するカスタム権限レベル
  • SharePointサイトコレクションの「サイト権限」の総合設定

暫定的な回避策と具体的な対応方法

問題が発生している環境で、すぐに上書き動作を復旧できない場合は以下の回避策を検討してみてください。

① 事前にファイルを削除してからアップロード

「上書き」扱いにしたいファイルが既に存在する場合は、一旦対象の古いファイルを削除してしまう方法があります。すると新規ファイルとしてアップロードされるので、ファイル名に番号が付くことはありません。

注意点

  • 既存のファイルが完全に削除されるので、バージョンヒストリーなどは引き継がれません。
  • 共有リンクやショートカットが存在する場合は無効になる可能性があります。

② ローカルでファイルを差し替え、再アップロード

既存ファイルをダウンロードし、ローカルで修正したうえで「同名」で再アップロードすることで置き換える方法です。従来であればアップロード時に「上書きしますか?」と質問が出ますが、問題の挙動が出ている環境だとこのダイアログが出ない場合があります。それでもファイルが正しく置き換わることもあるため、試してみる価値はあります。

バージョンヒストリーを維持したい場合

  • 置き換えが成功した場合は、従来のバージョン履歴が新しいバージョンとして統合されます。
  • ダイアログが表示されないまま差し替わった場合でも、履歴は正しく連動するケースが多いです。

③ Power Automateのフロー設定を見直す

もしPower Automateを使用して自動的にSharePointのファイルを管理している場合、そのフロー内で「重複を検知した場合の処理」が指定されているか確認しましょう。自動的に「番号付きファイル名で保存する」設定が行われていると、ユーザーが意図しないタイミングでファイル名が書き換えられることがあります。

Power Automateでの設定例

// ファイルをコピーするアクション
{
  "name": "Copy_file",
  "type": "File",
  "source": "SharePoint",
  "destination": "SharePoint",
  "onNameConflict": "rename" // ←ここで rename が指定されていると自動で番号が付く
}

上記のように、onNameConflictrenameとなっていると自動的にファイル名に番号が付加されます。上書きしたい場合はoverwriteを指定する必要があります。

今後の見通しとMicrosoftの動向

現在、多くのユーザーから同様の報告がなされており、Microsoftのコミュニティフォーラムでも「正式な仕様変更なのか、それとも特定バージョンのバグなのか」をめぐって議論が続いています。Microsoft側の公式アナウンスがまだないため、現状ではユーザー自身の運用でカバーする必要があります。

フォーラムやコミュニティへの積極的な参加

  • Microsoft Tech CommunityのSharePointフォーラム
  • Office 365専用のサポートコミュニティ
  • 各種SNSやブログなどでの情報共有

これらの場で同様の問題を抱えるユーザーと情報交換することで、早めにワークアラウンドを見つける可能性が高まります。

実際の運用で気を付けたいポイント

バージョン管理における容量と上限

SharePoint Onlineには、サイトコレクション単位でストレージ容量の制限が存在します。大量のバージョンを保持していると、意図せずストレージの上限に近づき、挙動がおかしくなるケースもあります。定期的に不要なバージョンを削除する、バージョンの最大数を適切に設定するといった対策が必要です。

共有リンクの有効期限とリンク切れ

既存ファイルを削除して新しくアップロードする方法を取ると、共有リンクが切れる恐れがあります。組織内や顧客と共有しているリンクが多い場合は、リンク切れによるトラブルを避けるために、上書き機能を使った差し替えが理想的です。

トラブルシューティングの手順例

以下は、トラブル解消に向けたステップを体系的にまとめた例です。

  1. バージョン管理の状況確認
  • ライブラリのバージョン設定を確認し、メジャー/マイナーバージョン数が適切かをチェック。
  1. 権限の確認
  • 「編集権限」「共同作業権限」など、ユーザーが適切なアクセス権を持っているか。
  1. Power Automateやサードパーティアドインの有無を確認
  • 自動フローが動作していないか、onNameConflictの設定を確認。
  1. 別ブラウザ・別ユーザーでの再現テスト
  • ChromeやEdge、Firefoxなど別のブラウザで試し、同様の現象が起きるかチェック。
  • テナント管理者アカウントや他の共同作業者アカウントで試す。
  1. 手動での削除と再アップロード
  • 緊急対応として、上書きしたいファイルを削除 → アップロードで問題が解消するかテスト。
  1. フォーラムやMicrosoftサポートへの問い合わせ
  • 自力で解決が難しい場合、公式サポートやコミュニティに情報を提供しフィードバックを得る。

具体的なワークフロー例

以下は、上書きしたいファイルを自動で置き換えるためのシンプルなPower Automateフローの例です。
「SharePointドキュメントライブラリに新規ファイルが追加された場合、自動的に特定フォルダーにコピーし、同名の場合は上書きする」フローを作成します。

  1. トリガー「SharePoint – ファイルが新規作成されたとき」
  • 対象サイトとライブラリを選択。
  1. アクション「SharePoint – ファイルをコピーする」
  • コピー元:上記トリガーで取得したファイルパス
  • コピー先:目的のライブラリ/フォルダー
  • 同名ファイル衝突時:Overwriteを選択

これで、同名ファイルのときに自動的に上書きが行われ、番号が付かない形でファイルが管理されます。もしRenameを選択している場合は番号付きのファイルが作成されるため、注意が必要です。

OfficeクライアントアプリとSharePointの連携

WordやExcelなどのクライアントアプリから直接SharePointへ保存する場合にも、同様の問題が発生する可能性があります。Officeアプリ側の設定で「自動保存(AutoSave)」が有効になっていると、意図しないタイミングで一時保存やバージョンアップが行われるため、ファイル名に番号が付くケースもゼロではありません。

Officeアプリの自動保存をオフにしてみる

  • リボンの上部にある[自動保存]をオフにする
  • 上書き保存やバージョン管理を手動でコントロールする
  • チーム内で運用ルールを決め、変更履歴の管理方法を統一する

将来的に予想される仕様変更

Microsoftは常にSharePoint OnlineのUIや機能を更新しており、ユーザーインターフェイスの改善を進めています。従来の「上書き」または「両方保持」といったダイアログは今後より直感的なデザインに変わる可能性があります。実際、SharePointを含むMicrosoft 365関連のサービスは、ユーザーエクスペリエンスの一貫性を高めるために統合的なアップデートが行われ続けています。

バグ報告の行方

現在報告されている「選択肢が表示されないままファイル名に番号が付与される」問題が正式なバグである場合、早期に修正される可能性があります。しかし、段階的なロールアウトの影響で全テナントに一斉反映されないことが多いため、修正完了まで数週間から数ヶ月を要することも珍しくありません。

ユーザーがとるべきアクションまとめ

  1. まずは設定の再確認
  • バージョン管理や権限、Power Automateのフローを見直し、意図しない挙動を回避。
  1. フォーラム・サポート活用
  • Microsoft Tech Communityやサポートなどで最新情報を収集。
  1. 緊急時の回避策を用意
  • 古いファイルを削除してからアップロード、または自動保存のオフなどで対応。
  1. 共有リンクの継続性を重視
  • 上書き機能を活用することで、リンクを途切れさせない運用を目指す。

まとめ

SharePointで同名ファイルをコピー・移動した際の上書き動作について、突然ダイアログが表示されなくなり、番号が自動的に付加されてしまう問題が最近各所で報告されています。現時点でMicrosoftから公式のアナウンスはなく、一部ユーザー環境でのみ発生しているようです。

しかし、以下のような手順や運用方法で一定の対処が可能です。

  • バージョン管理やPower Automateの設定を確認し、意図せずリネーム処理が走らないよう調整する。
  • どうしても上書きしたい場合は、古いファイルを削除してアップロードし直すなどの回避策を取る。
  • フォーラムをこまめにチェックし、同じ問題を抱えている他ユーザーの事例を参考にする。

今後のMicrosoftによる修正やアップデートにより、従来どおりの「上書き」・「両方保持」選択が安定して利用できるようになる可能性は高いと考えられます。それまでの間は各種回避策を駆使しながら、必要に応じてコミュニティで情報交換を進めることが有用です。ファイル管理がスムーズに行えれば、業務効率が大きく向上しますので、ぜひ継続的に最新情報を追いかけてください。

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