複数ユーザーに最適なSharePointログブックの活用方法

ログブックを複数人で運用していると、自分が更新した情報がほかの人のデータに干渉しないか心配になったり、一度作ったフォームをあとから修正して全員に同じように反映できるのか不安になることってありますよね。今回は、実際に私がチームで導入した経験を元に、SharePointとPower Appsを活用した便利なログブック作成方法をご紹介していきます。

SharePointを使ってクラウドベースでログブックを管理するメリット

SharePointはMicrosoft 365の一部として利用できるクラウドサービスですが、意外とまだ使ったことがない方もいるかもしれません。私自身、最初はWordでテンプレートを作ってチームに配布していましたが、変更のたびにメンバー全員に再配布する手間と、バージョン違いによる混乱に悩まされました。そこでSharePointリストに移行してみたところ、更新のしやすさや権限設定の自由度など、多くの利点を感じました。

導入のきっかけと背景

チーム内で研修計画や進捗、個人ごとの自己学習記録を一括管理したいという要望がありました。ところが、Word管理では誰が最新バージョンを持っているかが分かりにくかったり、人によってレイアウトが崩れてしまったりする問題が出てきたのです。そこで、クラウド上にリストとして項目を管理できるSharePointを試してみることにしました。

SharePointリストの基本的な構造

SharePointリストは、Excelの表のように列(カラム)と行(アイテム)で構成されます。ユーザーが入力したい項目名(氏名や担当業務、日付、進捗状況など)をそれぞれの列として設定し、入力データは行として増えていきます。さらに、必要に応じて列を追加したり削除したりできるので、運用しながら項目を柔軟に見直せるところが魅力です。

後から列を追加する場合

管理者がリスト設定画面から新しい列を作成すると、既にあるログデータはそのまま保持され、新列には空欄またはデフォルト値が自動的に設定されます。ユーザーが自分のアイテムを次回編集するときに新項目へ入力できるため、一元管理されるログブックとしての整合性を損ねません。

不要になった列を削除する場合

運用を続けていくと、もう使わなくなった項目が出てくるかもしれません。そういうときは管理者が該当列を削除することで、リストをすっきりと保てます。ただし、過去に記録していたデータがある場合は注意が必要で、削除するとその列に紐づくデータも消えてしまいます。データのバックアップを取るか、アーカイブ用のリストを別に作成しておくと良いでしょう。

クラウド上のリストなので、更新内容が即座に全員に反映される点が特に優秀

権限管理の設定でユーザー同士のデータ閲覧を制限

ログブックをチーム全員に展開する上で大切なのは、ユーザー同士のプライバシーや機密情報が漏れないようにすることだと痛感しました。SharePointリストでは、アイテムごとに作成者以外が見られないような設定ができるので、個々人が安心して入力できます。

ユーザーが自分のアイテムしか見られない設定

リストの高度な設定画面で、「ユーザーが作成したアイテムのみ表示する」を有効にすると、あるユーザーが作成したログは、そのユーザーと管理者のみ閲覧可能になります。チームメンバーが他人のログを勝手に見たり編集したりするリスクを未然に防げます。

管理者の全データへのアクセス権

管理者やサイト所有者にはリスト内の全アイテムを閲覧・編集できる権限が付与できます。これにより、管理者は必要に応じて各ユーザーのデータをチェックしたり、代表して修正したりできます。私のチームでは、研修担当者やプロジェクトリーダーがこの権限を持ち、業務状況を確認する体制を整えました。

作成者自身以外にはリストアイテムを非表示にできるので、セキュリティ面でも安心

一部の複雑な権限設定には慣れが必要で、設定画面に戸惑うケースもあり得る

Power Appsで作る見やすいフォームとタブ切り替え

SharePointリストはそのままでもフォームのようにデータを入れることができますが、もっと見栄えを良くしたり、複数の画面を切り替えながら直感的に入力したい場合は、Power Appsを使うと便利です。私のチームは、週ごとに入力する進捗管理フォームや研修ログをタブ分けし、スムーズに切り替えられるようにカスタマイズしました。

Power Appsとは

Power Appsは、プログラミングの専門知識がなくても、ドラッグ&ドロップ中心の操作でフォームやアプリを作成できるMicrosoftのサービスです。SharePointリストをデータソースとして連携することが多く、ユーザーが入力したデータはリアルタイムでリストに保存されます。

使いやすい画面レイアウトとタブ

フォームを複数のタブに分割することで、たとえば「基本情報」「週次報告」「課題管理」「研修記録」などの項目を切り替えて入力できます。私の場合はユーザーが混乱しないよう、最初のタブで氏名や担当プロジェクトなどの基本情報を入力し、次のタブで日々の業務記録をつけるように設計しました。

自動保存や複数ユーザー同時編集への対応

Power Appsではフォーム入力途中に自動保存の仕組みを導入したり、他のユーザーと同時に編集しても上書きしあわないようにできる機能があります。ただし同時に同じアイテムを編集している最中に衝突が起きる場合があるため、必要に応じてアプリ内で「誰が編集中か」を確認できるように工夫すると安心です。

色や配置などを自由にカスタマイズでき、ユーザーが直感的に操作しやすいフォームを作りやすい

実際に導入してみたところ、職場でITに詳しくないメンバーもスムーズに扱えて驚きました。レイアウトを整えるだけでも利用率がかなり上がり、入力ミスや入力漏れが減ったのも良かったです。

Wordドキュメントでのテンプレート運用との比較

私が最初に抱えていた悩みはWordテンプレートの更新の煩雑さでした。ここで、Word管理とSharePoint+Power Appsの違いを簡単な表でまとめてみます。

項目 SharePoint+Power Apps Word管理
更新・修正の反映 管理者がリストやアプリを変更すると、即座に全員が同じフォームを利用できる ファイルを配布し直さないといけないため、個々人が異なるバージョンを使ってしまうリスクがある
同時編集 クラウド上のリストなので、複数ユーザーが同時にアクセスしてもデータ衝突が起きにくい 共有ドキュメントでの同時編集はできなくはないが、思わぬ競合が発生するケースがある
権限設定 アイテムごとの閲覧・編集権限を細かく設定できる Wordの場合はパスワード保護やフォルダアクセス権限などに依存し、細かな制御が難しい
ユーザービリティ フォームをカスタマイズしてわかりやすい画面にできる レイアウトを個別の端末環境に合わせるのが難しい

Wordを使ったテンプレート配布が必ずしも悪いわけではないが、運用コストやバージョン管理の面で難易度が上がる可能性がある

具体的な構築ステップ例

ここでは、実際にどうやってSharePointリストを作成し、Power Appsでカスタムフォームを構築していくかをイメージしやすいように段階的にご紹介します。

ステップ1: SharePointサイトの準備

会社や組織でMicrosoft 365を利用している場合は、ポータルサイトなどからSharePointの新しいサイトを作成できます。チームサイトやコミュニケーションサイトのいずれかを作り、そこにリストを配置する流れです。チームサイトを選ぶと、メンバーごとの権限設定があらかじめ用意されています。

サイト名やURLの設定

サイト名はユーザーがアクセスしやすいように、ログブックに関連した名称にすると良いでしょう。わかりやすいサイト名にすることで、混乱が少なくなります。私の場合、チーム用ログ管理サイトとして「Team-Log-Book」などの短い名称を活用しました。

ステップ2: SharePointリストを新規作成

サイト内に移動し、「新規」から「リスト」を作成します。テンプレートを選ぶこともできますが、多くの場合は空のリストを作り、自由に列を追加していくほうが柔軟です。

主な列の設計

氏名や所属、日付、タイトル、コメント、ステータスなど、ログに必要な情報を最初に列として設計します。列の種類は「単一行テキスト」「選択肢」「日付時刻」「数値」などから選択可能です。運用していくうちに、新しい列を追加することになるのはよくあるため、最初から完璧な設計を求めなくても大丈夫です。

権限設定の確認

後ほどリスト設定の高度な項目から、「ユーザー自身が作成したアイテムだけ表示する」設定を忘れずに行ってください。これをしないと、全員が全てのアイテムを閲覧できてしまう状態になります。

ステップ3: Power Appsでフォームを編集

SharePointリストのトップで「Power Apps」→「フォームのカスタマイズ」を選ぶと、ブラウザがPower Appsの画面に切り替わります。そこからドラッグ&ドロップでフォームを自由にレイアウトできます。

タブ切り替えの実装

スクリーンを複数作るか、フォームコントロールを複数のグループに分割してタブを切り替える方式があります。例えば「基本情報」「詳細」「備考」などに分けておくと、ユーザーも見やすく入力しやすいです。

権限チェックのコード例

Power Apps側でも条件によって表示制御を行うことができます。簡単な例として、管理者だけが特定のボタンを押せるようにしたい場合は以下のように実装します。

If(User().Email = "admin@sample.com", true, false)

実際にはOffice 365 ユーザーデータコネクタを利用してユーザー属性を取得し、役職や所属グループなどに応じて制御することも可能です。

運用や更新をさらに快適にする工夫

一度構築したら終わり、というわけではなく、運用を続ける中で新たな要望が生まれたり、もっと使いやすい方法が浮かんできたりします。そういった改善を柔軟に取り入れられるのが、この仕組みの利点です。

バージョン管理を活用する

SharePointリストには標準でバージョン管理機能があります。誤ってデータを消してしまった場合も、以前のバージョンに戻せる可能性があるので重宝します。Power Appsのアプリ自体も同様にバージョンが保存されるので、フォームや機能をアップデートしてトラブルがあったときに、以前のバージョンに戻せるのは安心感があります。

バージョン管理の推奨運用

長期間運用すると、データ量が増えてリストの表示が重くなることがあります。不要になった列を削除し、必要な部分だけを残して、古いデータはアーカイブとして別のリストへ移動する運用を検討すると、快適な動作を保ちやすいです。

Power Automateで通知や集計を自動化する

Power Automate(旧Microsoft Flow)を組み合わせると、たとえばログが更新されたら管理者にメール通知を送る、一定期間入力がなかったらリマインダーを送るなどの自動化も簡単に実装できます。私のチームでは、週次レポートの締め切り直前に「まだ入力していない人リスト」を自動作成し、そのままメールで催促する仕組みを構築して、入力漏れを減らすのに成功しました。

Power Automateを組み合わせると作業効率が一気に上がります。私の経験では、意外に設定も簡単だったので「これはもう少し早く取り入れればよかったな」と感じました。

モバイルやタブレットでの活用

外出先や出張先でログを入力したいケースも考えられます。Power Appsはスマートフォン向けアプリやタブレット向けレイアウトを作成しやすいため、出先でリアルタイムに更新するのに便利です。

オフライン機能の活用

インターネット環境が不安定な場所でも使いたい場合は、Power Appsでオフライン機能を活用すると、後でネットに接続した時にデータを同期できます。少し高度な設定が必要になりますが、現場が多いチームの場合は大きなメリットになるはずです。

モバイル端末でも同じフォームやログを扱えるので、いちいちPCを起動しなくても管理が進む

よくあるトラブルシューティング

運用初期に陥りがちなトラブルや、私自身が経験した問題とその対処方法をまとめてみます。

アクセス権限が正しく設定できていない

ユーザーが自分以外のデータを見える状態になってしまった場合、リスト設定で「ユーザーが作成したアイテムのみ表示する」を確認しましょう。それでも改善されない場合は、アイテムレベル権限が正しく反映されているかや、グループ権限が上書きされていないかをチェックします。

権限グループが混在しているケース

既にチームサイトに参加しているグループに「閲覧」権限以上が割り当てられていると、設定しているはずのアクセス制限が正しく動かないことがあります。リストの権限をサイト全体から切り離して独立させる、もしくは新規グループを作って専用に管理すると安全です。

サイト所有者が過剰に多い場合、意図しないユーザーが全データを見られてしまう可能性もある

Power Appsが更新されたのに反映されない

ユーザーがアプリを開きっぱなしの状態でいると、最新バージョンに更新されない場合があります。その場合は一度アプリを閉じて再読み込みしてもらうよう案内しましょう。また、アプリを公開してからバージョンが切り替わるまでに数分程度のタイムラグがあることもあるため、周知が必要です。

実運用に活かすまとめ

長い説明になりましたが、複数ユーザーが同時に使えるログブックを運用するには、SharePointリストとPower Appsの組み合わせがかなり有効であると実感しています。管理者視点では、簡単に項目を増やせて、ユーザーが古いテンプレートを使わないように一元化できるのが助かりました。ユーザー視点では、自分以外のログを見られない安心感と、モバイルからでも更新しやすいフォームが魅力です。

運用のコツ

大事なのは、チームメンバー全員が「なぜこの仕組みを使うのか」「どうやってアクセスし、編集すればいいのか」をちゃんと理解していることです。簡単な操作マニュアルや、導入初期の説明会を開くだけでも、利用率やデータ品質が格段に向上します。

継続的なアップデートを行う

要件変更は絶対に起こるものなので、運用者が「項目を足したり修正したりしても大丈夫」と思える体制を作りましょう。チームからのフィードバックをすぐにリストとフォームに反映できるのは、紙やExcel運用にはない強みです。

最初は少し慣れが必要ですが、一度セットアップしてしまえば後はカスタマイズしやすくなるので、積極的に改善していく楽しみもありますよ。

まとめ

SharePointリストを使ったログブックとPower Appsを組み合わせることで、複数ユーザーが同時に使用しながらも入力済みデータを損なわずに更新する仕組みが作れます。管理者だけが全員のログを把握でき、ユーザー同士は互いのデータを見られないように設定できるのも魅力です。Wordファイルのテンプレート更新に疲れた方や、チームの情報共有をもっと効率化したい方は、ぜひこの方法を試してみてください。実際に試してみると、驚くほど快適で管理しやすい環境が手に入るはずです。

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